2025年9月30日号(経済、経営)
2025.10.01
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年9月30日号
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発行日:2025年9月30日(火)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2025年9月30日号の目次
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◇経済政策から考える総裁選
◇企業の投資(4):投資と投機の違い
◇新車陸送の世界(6)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
世界全体の負債総額は、国家債務100兆ドル(約1京4900兆円)、民間債務226兆ドル(約3京3674兆円)と、感覚がまったく追い付けないレベルになっています。
それでも世界経済は回っています。
現代の経済は「おカネが動く」のではなく「数字が回転する」だけなのです。
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┃◇経済政策から考える総裁選 ┃
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自民党の次期総裁に誰がなろうと、少数与党という足かせは続きます。
その制約の中で、どのように日本を導いていくのか、正真正銘の力量が問われます。
今号は、外交や安全保障政策は横に置き、経済政策に絞って論じます。
日本のGDPは長く低迷を続けたことでドイツに抜かれ4位に落ち、インドにも抜かれそうです。
しかし、長く続いたデフレの影響は大きく、経済の一番のけん引役である消費マインドが上昇に転じたようには感じられません。
それはそうです。
日本のデフレ経済は30年も続いたのです。
消費の主役が代わってしまうのは当然です。
バブル時代に消費の中心であった30代、40代は、今や60代、70代となり、勢いを失っています。
それに代わる新しい30代、40代は、バブル時代は0歳、10代だったわけで、バブルの恩恵どころか、その後の長期デフレの影響をもろに受けた年代です。
消費に関する意欲も行動もまったく違っていて当然です。
また、この年代になると、消費行動だけでなく人生そのものに対する意識が180度違うのです。
30年前の日本社会は、出身学校、就職先、そして年功序列で人生の多くが決まってしまう世の中でした。
そして、AIはおろかIT環境すら、ごく一部の人以外、触れることすらできない時代で、プライベートはもちろん、ビジネスの大半も人間関係だけで回っていた時代でした。
これはこれで20世紀にはうまく回っていたのです。
しかし、21世紀になった今日、前世紀の常識の大半が急速に使い物にならなくなっています。
使い物にならなくなったのは、それまで長期政権を続けていた自民党も同じです。
しかし、21世紀に新たに政権の座についた旧民主党を率いていたのは、20世紀の、それも古いマルクス・レーニン主義に染まった団塊世代の人間です。
彼らが行った公共事業の見直し、事業仕分けなどの政策自体が間違っていたわけではありません。
しかし、経済通がいない政権の弱さから、結局、財務省が主導権を得てしまい、増税政権となってしまったのです。
しかもその後、政権を取り戻した自民党も、この増税路線を変えることが出来ずに経済の低迷から抜け出すことができませんでした。
こうした自公政権が少数与党に落ちたのは当然です。
自民党の新総裁には、岸田・石破と続いた増税政策を捨て、積極財政で経済の立て直しができる能力と見識、そして新たな時代を切り開いていける本物の政治力が問われているのです。
では、総裁候補の5人の誰がその役にふさわしいのでしょうか。
ネットでの配信や報道を見ての判断ですが、残念ながら全員失格というしかありません。
しかし、それでOKというわけにはいきませんので考えました。
各候補が持つ経験や持ち味、能力はそれぞれ違います。
ならば、それらを組み合わせるチーム内閣を結成するという考えです。
それでも、なお不足なので「一部の野党の人材を加えたチームで内閣を組む」ことです。
そうなると、今回の総裁選は「こうしたチームを組むことが出来るのは誰か」の選択になります。
さらに、首相となれば、日本の顔として、トランプをはじめとする世界各国のリーダーたちと対等に相対する力量も必要となります。
そうした顔としての首相は、別に自民党総裁でなくても良いのです。
そのように幅広く、かつ鋭い力量を持つ人が選ばれて欲しいと思います。
前号で断定したように、小泉氏以外という条件が付きますが・・
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┃◇企業の投資(4):投資と投機の違い ┃
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米国企業が、自社株買いのための借り入れを大幅に増やしています。
企業が自社株買いを行うと、当然、その分の現預金高が減ります。
その欠損を穴埋めするため借入が増えているわけです。
日本でも、2023年に東京証券取引所が上場企業へ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したことをきっかけにして、自社株買いが増えています。
企業が市場から自社株を買い上げれば、その分だけ市場における株式数が減り、株価は上昇します。
つまり自社株買いは、株主への還元になるわけです。
2025年4月、トランプ政権が関税政策の発動を実施したことで日米とも株価は急落しました。
その結果、自社株買いが急激に増え、その勢いは現在も続いている状況です。
もちろん、そのことで日米とも株価は持ち直しましたが、その後も自社株買いが止まらないことで株価は上がり続けているわけです。
これが最近の株価上昇の要因です。
大量の自社株買いが可能なのは、企業の現預金高が贅沢にあるからです。
この傾向は、特に日本において顕著です。
もともと日本企業は欧米企業に比べて保有する現預金高はかなり高い水準にあります。
2015年の「現預金高/純資産」を見ると、米国10%、欧州6.5%に対して日本は15%と、以前から多かったのですが、2022年には米国11.5%、欧州12%に対し、日本は24%と大幅に上昇しました。
2024年に若干下がりましたが、それでも米国12%、欧州10%、日本22.5%と相変わらず高水準です。
もちろん、この現預金高には金融機関からの借り入れが含まれます。
日本は記録的な低金利状態にあるので、借入を増やして自社株を買う動きがさかんになっていることが分かります。
日本より金利が高い米国でもこの動きは顕著で、それが株価上昇をもたらし、大株主の資産をさらに押し上げる要因になっているわけです。
このように、日米とも実質的に「当期利益<株主配当」となっている現状は健全な経営状態とは言い難い状況なのです。
本来、企業は「魅力ある商品やサービスの開発」に投資を行い、そこから生み出される利益の中から株主配当を行うべきです。
しかし、現在の自社株買いは投資ではなく、「投機」の範疇に入る資金の使い方です。
このように資金が投資に回らず、投機に回っている現状の行き着く先は、本来の企業活動である商品開発や販売が先細りとなり、カネだけが価値を持つ世界です。
そして、金融機関や投資家だけが儲かる“カネ余り”経済となり、やがてバブルを生み、弾け、そして不況が来るのです。
そうした暗い予想に危険を感じた経営層から「企業が長期的に成長するためには、ESGが大事だ」とする考えが米国で生まれています。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉で、これら3つの観点が経営において重要であるという考え方です。
以下のような説明がされています。
E(環境): 気候変動、温室効果ガス排出、廃棄物管理、汚染など、組織が環境に与える影響や環境管理者としての活動を指す。
S(社会): 多様性、包括性、人権、サプライチェーンがもたらす社会的影響など、組織が人、文化、コミュニティーに与える影響を指す。
G(ガバナンス): 役員報酬、後継者計画、取締役会管理慣行、株主の権利など、組織の運営方法や企業統治の要因を指す。
「国際問題、政治問題」の「トランプ対DEI」で解説したDEIはDiversity(多様性), Equity(公平性), Inclusion(包括性)の頭文字をとった言葉ですが、似ていて混同しますね。
DEIは政治的なメッセージで、ESGは投資活動に関する概念です。
ゆえに、DEIを執拗に攻撃するトランプ大統領も、ESGには“今のところ”何も言いません。
米国においては、企業の財務状況だけでなく、「ESG投資」の投資額が注目されています。
ESGに配慮する「ESG経営」という言葉も広まっており、投資に限らず企業の社会的な責任を示す指標にもなっています。
日本ではまだまだで、特に中小企業は、そのことに考慮する余裕もないでしょう。
しかし、自社が成長を目指すなら勿論、ESGに配慮する取引先企業が増えてくるなら無関心ではいられません。
純粋に利益を上げるための投資に加えて、ESG投資も考えていく必要があります。
<追記>
ESGと関連するキーワードとして、SDGs(持続可能な開発目標)があります。
SDGsが「目標」であるのに対し、ESGはそれを「達成するための手段」としての意味合いが強いとされています。
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┃◇新車陸送の世界(6) ┃
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さて、前回までの話を読んだ読者の皆様は疑問を持たれたのではありませんか。
「一般国道を150km/hで走る」とか「赤信号を無視して交差点を突っ切る」とかは、とんでもない違反行為です。
それが今も昔も変わらないことは当然です。
ゆえに「こいつは、どこかで必ず警察に捕まったはずだ」と思われたことでしょう。
当時の私自身も「いつか捕まる」と思っていましたし、「その場合は、免許停止だけじゃ済まないかも」と覚悟していました。
しかし、それでも「チームで走る」という“重し”はとても重いのです。
工場を出て埠頭へ向かうときは各車バラバラになります。
そして、最後の車が埠頭に到着するのを待って全員がマイクロバスで工場に戻ります。
こうしたサイクルが一晩に数回繰り返されます。
違反せずに普通に走った場合、とうぜん埠頭への到着はかなり遅れます。
その間、マイクロバスは発車できず、工場への戻りが遅くなります。
その結果、チーム全員の運ぶ台数は減り、全員の収入が減ることになります。
ゆえに、私だけ法規を守って安全運転とはいかなかったのです。
これは会社命令ではありませんし、もちろん入社時にそんな説明はありません。
また、リーダーや先輩たちの誰も「法規は無視しろ」なんて一言も言いません。
完全なる「暗黙の了解」なのです。
結局、私は「捕まったら、そん時はそん時だ」と開き直り、信号を無視し、アクセルを目いっぱい踏み続けました。
各工場から本牧ふ頭までは、それなりの距離があります。
工場の広い駐車場から自分が運ぶ車を見つけ、簡単な自主点検を終えて工場から出るタイミングは、みなバラバラです。
また、いくら信号を無視するといっても、信号を守って走っている一般車にぶつけるわけにはいきませんし、対向車があるときに反対車線から一般車を追い抜くことはできません。
渋滞に巻き込まれたときなどは、さすがに大人しく運転するしかありません。
そうしたことで、いつしかチームの他の車と離れ、単独で走ることが常でした。
それでも、十数台のチームの車は2~3分遅れぐらいで次々に埠頭に到着してきます。
こう言うのもおかしいですが、神業のような走りをするチームだったなと思い出します。
このバイトを始めて2か月ぐらいが経った頃でした。
私の運ぶ車に不具合があり、それを修理してから出発したため、他の車にかなり遅れました。
その遅れを取り戻そうと、いつも以上の無茶な走りでチームを追いかけました。
目の前に広い交差点が見え、信号が赤に変わりました。
私は赤信号を無視し、青信号で動き出した車の間を縫って突っ切りました。
その中にパトカーを発見しましたが、私はかまわず、パトカーの鼻先をかすめて突っ走りました。
さすがにパトカーはサイレンを鳴らしながら全速で追いかけてきました。
マイクでしつこく(?)「止まれ、止まれ」と言うのと、前方で車がつかえているのが見えたので、私は車を左端に寄せ止まりました。
降りてきた警官は、顔を真っ赤にしながら、私に罵声を浴びせてきました。
「お前は人間のクズだ」とか「いつか死ぬぞ」とか、ありとあらゆる罵詈雑言を、つばを飛ばしながら怒鳴り続けました。
警官の罵声を聞きながら、私は「変だな?」と思い始めました。
警官はつばを吐き怒鳴り散らしながらも、一向に違反切符を切る様子を見せないのです。
「はて?」と思っていると、後ろに1台の車が止まりました。
それはチームリーダーの車でした。
リーダーは、怒りで真っ赤な顔の警官に向かって、こう言いました。
「すみませんね、お手を煩わせて。後でよく言っておきますから」
そして、私に向かって「おー、いくぞ、“安全運転でな”」とわざとらしく言いました。
パトカーの警官は、苦虫をかみつぶしたような怖い顔で、小さく「行けっ」と私に言いました。
この瞬間、私は理解したのです。
警察は、我々を絶対に捕まえない、いや「捕まえることが出来ない」ということをです。
法治国家の日本で、こんな治外法権が存在していることを知ってしまったのです。
我々には道路交通法が効かないのです。
ただし、会社はもちろん、リーダーも先輩たちの誰も、絶対に口にはしないのです。
すべては暗黙の了解なのです。
もちろん、その裏では相当のおカネが動いていたことでしょう。
しかし、すべては闇の中で、私が知る由もありません。
そんなことより「道交法が我々には効かない」という治外法権が暗黙に与えられていることに軽い興奮をおぼえました。
そして、その瞬間、自分が無敵になったような気持ちになりました。
とんでもないことですが、なにしろ当時は19歳の未熟な若者です。
しかも、学費を稼ぐため仕事で車を運んでいるわけで、遊んでいるわけではない。
こうした「偏った」というより「半ば狂った」考えに支配されたのです。
しかし、「行けっ」と言った後で聞こえた「警官の舌打ち」は、今でも鮮明に耳に残っています。
この話、半世紀以上が経った今は時効と言えるので書ける話です。
こうした狂った世界が、高度成長期の日本の1ページであり、今日の繁栄の基礎を作ったわけです。
このシリーズの話、もう少し続けます。
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<編集後記>
静岡県の伊東市長の卒業問題に端を発した“Fラン大学”なる言葉がSNSに飛び交っています。
大学時代が“はるか後方”に過ぎ去ってしまった私は「Fランクの大学のこと?」と思っていましたが、そうではなくて「どのランクにも入れない大学」の意味だと若者に教えられました。
実に嫌な言葉ですが、若い人には「意味のない言葉」と分かって欲しいですね。
人生の勝負は、学校を出た後の社会に出てからです。
たしかに学歴が“ものをいう”世界や場面はありますが、それにすがる人生はみじめなものです。
「Fラン大学けっこう」と胸を張って頑張って欲しいですね。
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