2018年8月31日(経済、経営)

2018.09.15

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年8月31日号
┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓
   H  A  L  通  信
┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛ http://www.halsystem.co.jp
発行日:2018年9月2日(日)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           2018年8月31日号の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★アマチュアスポーツ界の闇
★教育がおかしくなっている
★中国製造2025(後半)
★企業における社長の力(2)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
貿易戦争の影響など無いかのように、日米の株価に変動はありません。
経済界は「すべて織り込み済み」ということでしょうか。
さすがに中国経済には徐々に影響が出始めているようです。
 
今号は、いま世間を騒がせているスポーツの話題からお送りします。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★アマチュアスポーツ界の闇                    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
日大アメフト部の問題に端を発したかのように、アマチュアスポーツ界の闇が次から次へと明るみに出てきました。
ボクシング、バスケット、チアリーディング、体操と続いていますが、これからも出てきそうな雰囲気です。
スポーツ界の積年の膿が一気に出てきたようです。
報道各社は「統括団体のガバナンスに問題がある」との論調ですが、「いまさら・・」と言いたいですね。
一部のスター選手だけを過度に持ち上げてきたマスコミにも責任があるはずですが、そこは素通りしています。
 
私は、競技者や指導者として40代までスキー連盟に所属していましたが、連盟幹部の一方的な権限行使を目の当たりにしてきました。
アマチュア精神を前面に掲げた連盟会長の時代には、「選手が企業から支援を受けることはけしからん」とのお達しが出て、公式競技に出た時には、スキー板の企業マークのところにガムテープを貼られました。
それどころか、ウェアや手袋のマークにまでクレームを付けられ、テープを貼られました。
 
競技を続けるには、相当のお金がかかります。
選手たちは、メーカーからの用具の提供や援助がなければ、とてもやっていけません。
そうしたことを知りながら、アマチュア精神を押し付けてくる連盟には嫌悪しかありませんでした。
しかし、逆らえば、競技に出られません。
弱い立場の選手の上に君臨する連盟役員という図式は、今に至るまで崩れていないのです。
 
こうした図式が成り立つ背景のひとつが、スポーツ団体の役員の大半が無給のボランティアであることにあります。
ゆえに、彼らは「自分たちは崇高な使命感でやっているのだ」という妙な自意識が芽生え、周囲も口を出せない構図になっているのです。
 
しかし、人気スポーツになると、所属員からの会費も増え、また企業からの協賛金や国の補助金も多くなります。
しかし、こうしたお金が、どこへどう流れるかは、常に不透明なのです。
役員の多くは「おれたちは無給で奉仕しているんだから、うるさいことは言うな」という姿勢なので、どうしても「どんぶり勘定」になっていきます。
 
長野五輪の巨額な招致費用が問題になったことがありますが、当時のスキー連盟会長だった西武の堤義明氏の「不正はなかったと信ずる」の一言で、一切の追求は打ち切られました。
会場予定地を視察に来たIOC(国際オリンピック委員会)役員への金銭授受が疑われましたが、この一言で一切が闇の中に消えました。
 
スポーツ界に自浄作用など期待できないのは明らかです。
本当に「選手ファースト」と言うのであれば、スポーツ庁やJOC(日本オリンピック委員会)は、各スポーツ団体のガバナンス機構を監視する監査部署を設け、選手たちの意見も聞けるような仕組みも設けるべきではないかと思います。
こうした部署を東京五輪までに作って機能させなければ、スポーツ界の闇はいつまでも続くのではないでしょうか。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★教育がおかしくなっている                    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
バブル崩壊までの日本は、猛烈サラリーマンが評価される社会でした。
「24時間働けますか」というTVコマーシャルが、あの時代を象徴していたと思います。
それが、バブル崩壊で一気に経済が停滞したことで、「猛烈」が否定され、「やりたいことをやろうよ」とか「夢を持とう」という個人の時間重視へと世の中の価値観が変わってきました。
 
某サッカー選手の「自分探しの旅に出る」なんていう言葉がかっこよく受け取られ、「自己実現こそが生きる意味」というような論調がさかんになったのも、この頃からです。
 
こうしたブームも去ったのかと思いきや、そうではないようです。
いま、中学校や高校では、常に「君のやりたいことは何か?」や「自分らしく生きるには?」というような問いを生徒に問い続けていると聞きます。
中学生になったら、将来のキャリア形成のために、どの高校から、どの大学へ進学するのが良いかを生徒自身に考えさせる教育がさかんということです。
どうやら、「夢を持つことは素晴らしい」ということが、深い掘り下げもなく、表面的に学校の教育現場で形成されているようなのです。
 
しかし、漠然とした夢を持っても実現できる見込みはないし、「やりたいこと」がそう簡単に見つけられるわけでもない。
まして、自己実現なんて「なんのこっちゃ?」というくらい意味不明な言葉です。
これだけの時間を生きてきた私だって答えに窮する言葉です。
 
社会人向けの「キャリア形成講座」みたいなセミナーに参加して講師の話を聞いたことがあります。
資格を取る話や会社の重要な仕事で経験を積むなどの「当然」の話が中心で、身を乗り出すような話は聞けませんでした。
最後に「自分がやりたいと思うことを見つけよ」という話があった時には「見つかれば苦労ないだろう」と突っ込みを入れたくなりました(もちろん、そんなことしませんでしたが・・)
 
これだったら「24時間働け!」と檄を飛ばされていた時代のほうが単純明快でよいのかもしれません。
現に、あの時代のほうが経済は格段に良く、給料も上がり続けたのです。
バブル崩壊は、資本主義経済下では必然として起こることであり、また必要なことなのです。
ただ、時の政権が着地方法を誤ったことで規模が大きくなってしまったのです。
軟着陸に失敗したことで、その後の経済停滞を招き、今日に至っているわけです。
途中、国民が期待を込めた政権交代があったのですが、迷走した挙句に自爆してしまい、経済再生などどこかへ飛んでいってしまいました。
 
それ以来、国はやたら建前論に走るようになり、教育にもそうした押し付けが強まってきました。
そうではなくて、現実に立脚したことから徐々に考えを積み上げていくしかないのです。
「やりたいことを見つけるより、今の力でもっとカネを稼げないかな?」と考えるほうが自然と思うのです。
「やりたいことを見つけろ」とか「自分らしく生きる」なんていう哲学問答は、教育の現場で行うべきものなのでしょうか。
そうした意識は、自分の中から自発的に生じることなのだと思うのです。
「見つけろ」「見つけろ」と若者に迫る今の教育は「やはり、変だよ」と感じます。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★中国製造2025(後半)                    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「中国製造2025」を読んだとき、あまりにも壮大かつ性急すぎる内容に、「実現はしないさ」と感じました。
習近平主席が唱える「強国」「強軍」路線の中身は、製造業のハイテク化を進め、さらに「軍民融合」を促進することで、経済と軍事の両面で米国を追い落とすという強硬一辺倒の内容です。
 
この宣言を受け、昨年秋以降、中国の国営メディアは自国の技術力向上を盛んに宣伝していましたが、米国が米中貿易戦争を仕掛けて以来、パタッと止まったままです。
知り合いの中国人によると、今や中国国内で「中国製造2025」を言う人なんかいないよ、ということでした。
 
7月12日に中国商務部が、長文の「商務部声明」を出しましたが、米国は完全に無視しました。
それはそうでしょう。
「中国は何も悪くない。米国は自国の構造的な問題をすりかえて中国を非難している」とし、
さらに、「中国の成功は、市場改革と対外開放を拡大した自助努力によるものである。中国は、知的財産権の保護に関する法令や制度も整えている。米国が非難する『強制的な技術移転』は事実無根である」と続きます。
これでは、火に油を注ぐ結果にしかならない反論です。
 
では、客観的に近年の中国経済の発達を追ってみます。
中国経済はトウ小平の開放路線によって外資が急速に流れ込み、それを基に輸出を急増させて天文学的な貿易黒字を生み出しました。
この相乗効果で、当事の中国のGDPの15%に相当する資金が生まれ、この資金を国内のインフラ投資に使い、さらなる乗数効果で驚異の高度成長を達成したのです。
まさに「国家資本主義」です。
 
こうして、2010年にはGDPで日本を抜き、現在は米国の約60%にまで迫っているのです。
世界はこの数字に目がくらみ、中国が世界一の経済大国になるのも間近だと、どんどん中国に擦り寄ってきました。
 
それに気を良くした中国は、かつての唐や明・清王朝の時代を取り戻すことを「中国の夢」として世界に声高に喧伝し始めたのです。
しかし、米国は、中国経済は「米国に先端技術製品を輸出して稼ぐ」モデルに過ぎないことを看破し、全面的な貿易戦争に打って出てきました。
実は、中国の輸出の50%は外資企業によるものと推定されています。
そうした外資企業は、トランプ大統領の今回の措置を見て、中国への更なる投資は控える傾向にあります。
中国の国内消費はGDPの40%内外に過ぎません。
米国や日本は70%ぐらいですから、伸び代は大きいですが、外資企業が縮小すれば、数百万の失業者が出る構造になっています。
市場が大きいと言っても、カネが減れば増産のための投資もできません。
「中国製造2025」は砂上の楼閣となる公算が大きいといえます。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★企業における社長の力(2)                   ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
本シリーズは、「社長の力」と力んでしまったので、いきなり大上段の話から入ります。
 
そもそも企業トップの一番大切な役割とはなんでしょうか。
と聞くと、「会社をつぶさないこと」という答えが返ってきそうなので、付け加えます。
「会社をつぶさないために、一番大切なことは何か」。
 
私なら「カネとヒトの確保」と答えます。
読者のみなさまも同様にお答えになるのではないでしょうか。
 
もっと具体的に言うと、「カネの調達」と「ヒトを育てる仕組み」となるでしょうか。
ただし、この両者は「戦術」であり「戦略」ではありません。
では、この2つの上にくる「戦略」とはなんでしょうか。
私は「自社が生き抜き、発展するための方向を見極めること」と考えています。
付け加えて言えば「自分がいなくなった後も・・」が枕詞に付きます。
 
これはかなり難しいことです。
死んだ後は、社内外に自分の考えを伝え、具体的な指示を出すことができなくなります。
となると、「戦略」の上に位置するものが必要になります。
戦略は、その時々において変化するものですが、その上に来るものは時代を超えて「不変」なものである必要があります。
これが「理念」というものなのでしょうか。
 
私は自社の理念をこう考えています。
「将来、創業者がだれかなんて、だれも分からなくなる企業になる」
だから、カリスマというものを嫌います。
 
かつて、知り合いの松下電器の役員から「社名から『松下』を消し、幸之助を忘れ去ることが必要だ」と聞かされたことがあります。
産業界が松下幸之助を「経営の神様」とあがめていた頃の話だったので、驚きました。
でも、彼の言葉通り、社名から「松下」は消えました。
さて、幸之助を忘れさる日は来るのでしょうか。
残念ながら私が生きているうちには来ないでしょうが、100年、200年先にはそうなっているのでしょうか。
 
明治維新から150年ですが、150年前に現代を予想できた人は皆無に近いでしょう。
でも、福沢諭吉のように、的確に国家の発達過程を説いた人はいます。
では、福沢諭吉がそのような考えを持つに至った最大の要素とはなんだったのでしょうか。
それは、咸臨丸で米国に渡ったことです。
あの時代のリーダーたちの多くは、海外に行った経験を持っていました。
唯一、経験がなかったのが西郷隆盛でした。
彼の非業の最後が、それに関係しているのは分かりませんが、リーダーに「外を見る目」を持つことが大事なのは確かです。
 
ということで、「世界を見つめて、自社の進むべき“新たな”方向を見極める」力こそが、社長が持つべき力の第一だと考えます。
 
次回は、「見極めた新たな方向に舵を切ることの難しさ」について論じてみたいと思います。
 
 
----------------------------------------------------------------------
<編集後記>
高校野球のタイブレーク制、過酷な延長戦を防ぐ意味からは良いと思いますが、選手の心理は微妙であろうと思います。
筆者も1試合だけ経験したことがありますが、自分の責任で出したわけではないランナーを背負う投手としては、正直「おもしろくない」と思う気持ちが強かったことを思い出しました。
現代の高校生投手に正直な感想を聞きたいところです。
 
----------------------------------------------------------------------
◎[PC]配信中止、変更の手続きはこちら
http://www.halsystem.co.jp/mailmagazine/
このメールは送信専用です。お問い合わせはこちらからお願いします。
http://www.halsystem.co.jp/contact/
 
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
【編集・発行】
  株式会社ハルシステム設計
http://www.halsystem.co.jp
 
  〒111-0042 東京都台東区寿4-16-2 イワサワビル
  TEL.03-3843-8705 FAX.03-3843-8740
 
【HAL通信アーカイブス】
http://magazine.halsystem.co.jp
 
【お問合せ・資料請求】
email:halinfo@halsystem.co.jp
tel:03-3843-8705
 
Copyright(c)HAL SYSTEM All Rights Reserved.
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵