2018年3月15日号(国際、政治)

2018.03.31

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年3月15日号
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発行日:2018年3月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年3月15日号の目次
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★日本の周りは敵だらけになる?
★文書書き換え
◇中国の現状を読み違えるな(その3)ついに皇帝が誕生!
◇韓国の歴史を学ぶ(その8)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
思いもかけぬ米朝会談が実現しそうです。
北朝鮮だけでなく、トランプ大統領の米国も「先の読めない国」です。
日本の頭越しに行われたニクソン大統領の米中国交樹立の再現となるのでしょうか。
 
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┃★日本の周りは敵だらけになる?                 ┃
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予想外の米朝会談合意だが、雲行きは相変わらず不透明である。
マスコミや評論家の意見も、北朝鮮の「時間稼ぎだ」という意見と、経済制裁に追い詰められ「核を捨てても体制保障を」に気持ちを変えたという説に分かれている。
また、日本は完全に蚊帳の外という意見もあれば、日米は水面下で緊密な連携を取っているという意見もある。
 
はっきりしていることは、米国と北朝鮮は、相当長い間、マスコミに嗅ぎつけられることなく秘密交渉を続けてきたということである。
米国は、北朝鮮の五輪参加を機に韓国に仲立ちをさせ、最後通牒を金正恩に突きつけたと見るのが妥当である。
つまり「核放棄に応じれば体制は安堵するが、応じなければ攻撃する」との本気の脅しである。
 
それでも米国は、すぐに効果は出ないだろうと考えていた。
ところが、予想に反して北朝鮮が動いた。
ホワイトハウスで開かれた緊急会議では「もう少し様子見を」という慎重論が多かったようであるが、トランプ大統領の独断で「5月に会談を」という発表が決まった。
かれ独特の「商売のカン」といったところか。
 
しかし、本当に米朝会談が行われ合意に至るかどうかは不明である。
北朝鮮が「IAEA(国際原子力機関)による核放棄の検証」を承諾しない限り会談は流れる可能性がある。
「検証受入れの表明がなくても対話を」と主張したティラーソン国務長官をトランプ大統領は解任し、強硬派のポンペオCIA(中央情報局)長官を任命した。
拳銃を持って(つまり、軍事攻撃体制を伴い)米朝会談に臨む姿勢を鮮明にしたといえよう。
4月の米韓合同軍事演習が大規模なものになる公算は大きい。
 
この問題はもう少し先の情報を待つとして、日本にとっての不都合な未来につながる可能性を考えてみた。
多くの韓国民は南北統一を何よりも願っている。
ただし、金正恩が統一朝鮮のトップになるのは「とんでもない」と思っている。
だが、統一朝鮮が「核保有国」となるなら、それは大歓迎なのである。
そうなれば、世界に“でかい”顔ができるし、にっくき日本を格下に落とすことができる。
65%もの韓国民が核保有を望んでいるという世論調査もあるくらいである。
日本のような核アレルギーもない。
 
核保有国になる最大の障害は「決して米国が許さない」ということで、韓国はその願望を諦めていた。
しかし、ここに来て「金正恩は意外に柔軟な考えを持っているじゃないか」というような感情が出てきた。
その結果、連邦制でいいから今の体制のまま統一朝鮮ができれば、核保有国になれるという願望が急速に大きくなってきているのである。
そして、文大統領もそのような思想を持っていると考えたほうがよい。
 
さて、日本はどうすべきか。
このシナリオで進めば、ロシア、中国、統一朝鮮、そして米国と、日本の周りは核保有国だらけとなる。
国際社会においては「平和志向」なんて言葉は「都合の良いウソ」ということが常識である。
この現実を直視して、冷静に日本が生き残る戦略を練り直す必要がありそうだ。
 
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┃★文書書き換え                         ┃
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財務省の森友文書書き換えで国会が紛糾していますが、「何を騒いでいるのか? 行政機関の書き換えなど、昔からやってきたではないか」と思っておられる方も多いと思います。
先日も、TVで、元財務官僚の方が「書き換えなど考えられない」と発言していましたが、笑ってしまいました。
 
サラリーマン時代、現場代理人として、また営業として、国の公共工事をいくつも担当してきましたが、落札後に書類や図面が書き換えられていたことを何度も経験しています。
あまりにもひどい改ざんに「図面や書類が違っている」と抗議したこともありましたが、「だから、オタクに頼んだのではないか」と呆れた返答が返ってきました。
施工が始まってからも、設計の不備を文書で指摘したら、日付を落札前に変えさせられ、「入札前の質問事項」と書き換えるよう強制されたこともあります。
こうした私個人の経験から考えても、官僚による文書書き換えは「あり得ない」話ではないのです。
 
森友問題と似たような経験もしました。
財務省払い下げの土地にマンションを建設する仕事で、地中から大量の産業廃棄物が見つかりました。
顧客に代わって財務省と交渉を重ね、撤去・処理費用の全額を補填させました。
籠池ほど、あくどい金額ではありませんでしたが、それなりの金額にはなりました。
この交渉を通じて、財務省側の土地管理のいい加減さを痛感しました。
 
私は、政府を擁護したいのではなく、国会が、いま為すべきことは、こうした官僚機構の根本的な改革に踏み出すことだと言いたいのです。
しかし、野党は、この問題を安倍政権打倒に結びつけようとやっきになって、肝心な国家構造の問題にはまったく言及しようとしません(もしかして、出来ない?)。
野党の低次元化は、目を覆うばかりの深刻な状態です。
 
ただし、安倍内閣の対応はあまりにもお粗末すぎました。
“木で鼻をくくる”かのような佐川氏の国会答弁では火に油を注ぐだけなのは明らかでした。
そして、その要因を作ってしまったのは安倍首相自身です。
そもそも、トップリーダーたる者は、自分個人の信条に引きずられてはいけないのです。
安倍首相は、そうしたイデオロギー的な信条を、上手く籠池氏に利用されたのです。
(首相夫人が悪いのですが、夫人の行動を制御するのも首相の責任です)
 
それなのに、1年前、国会での批判に逆切れして、「国会議員も辞める」などと、感情走った発言をしてしまいました。
結果、あの発言が財務省を狂わせてしまったのです。
理財局が、籠池氏の策にはまり、首相夫人の存在に忖度(そんたく)したことは明らかです。
しかし、忖度が悪いわけではありません。
民間企業だって、トップの命令がなくても、社員はその意志を忖度して動きます。
官僚だって同じです。
だから、書き換えの事実が明らかになった以上、忖度があったことは認め、ただし官邸からの指示はなかったと説明する以外に道はないのです。
 
しかし、急転回しつつある外交情勢を考えれば、今ここで政治空白を作ることはできません。
日本にとってのリスクを最小限に抑えるため、外交経験を積んだ安倍政権しか選択肢はないのです。
また、経済での対米交渉を考えれば、麻生氏を切ることもできません。
政権交代議論は、冷静に秋の総裁選まで待つべきです。
 
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┃◇中国の現状を読み違えるな(その3)              ┃
┃  ついに皇帝が誕生!                     ┃
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中国は、ついに国家主席の任期を撤廃する憲法改正を行なった。
内外のマスコミが指摘するように、習近平主席が皇帝になるということである。
 
だが、一件盤石に見えるこの体制は脆(もろ)い。
習近平主席の権威が経済成長のおかげであることは誰もが知る所である。
しかし、日本以上に少子高齢化が進む中国経済の失速は、かなりの確率で確実である。
しかも、経済は習主席の苦手分野である。
どうしても、そこはNo.2の李克強首相の力が必要なのである。
それが分かっているから、全人代での習近平主席礼賛の中で、李首相が仏頂面でいられるのである。
しかも、李首相のバックには共青団が控えている。
習近平主席は、共青団を危険視しているが、しかし潰せない。
この2人の暗闇での闘争は年を追うごとに激しくなっていくものと思われる。
 
2人以外のトップ常務委員はあと5人いるが、うち3名は太子党派で習主席の言いなりである。
上海派の韓正氏は力がなく、脅威にもならない。
残る汪洋氏は、共青団派なので李首相に近いし、なによりも裕福な広東省を仕切っている。
また知日派でもあり、日本とのパイプも持っている。
当然、習近平主席は汪洋氏を警戒していると思うが、チャイナセブンに加えたということは、彼の力を無視できないということである。
日本は、重要なキーマンとして汪洋氏を扱っていくべきだと思う。
 
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┃◇韓国の歴史を学ぶ(その8)                  ┃
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韓国の再独立は、誰もが知るように、日本の敗戦という“他力”によって成されたものです。
だが、それは韓国民にとっては感情的に受け入れがたい事実なのです。
それゆえ、教科書では、日韓併合下の1919年3月1日の宗教指導者たちの独立宣言を起因として起きた三・一運動を「独立の日」として教えているのです。
しかし、その運動が鎮圧された後は、目立った独立運動はなく26年後に終戦の日を迎えています。
ゆえに、三・一運動を「独立の日」とするには無理があるのです。
 
このように棚ぼた式の独立であったため、韓国には有力な政治指導者が育っていなくて、米国は、仕方なく自国に亡命していた李承晩を大統領に持ってきたのです。
 
一方で、平壌に侵攻していたソ連は、自国に亡命していた金日成を北朝鮮の指導者として送り込みました。
半島の戦後史が米ソの傀儡政権によって始まったことが、その後の不幸に繋がっていくのです。
 
当時、北朝鮮には日本が残した鉱山や工場が多くあったことで、南の韓国を圧倒する経済力と軍事力を有していました。
独裁者となった金日成は、「今なら半島を武力で制圧できる」と考え、1950年6月25日、中華人民共和国とソ連の同意と支援を受け、暫定国境線となっていた38度線を越え韓国に侵略を開始したのです。
 
この戦争の経緯は、よくご存知の通り、いったんは釜山まで追い詰められた国連軍(実体は米韓軍)ですが、仁川(インチョン)逆上陸という奇策で形勢を逆転させ、黒竜江付近まで北朝鮮軍を押し返しました。
しかし、そこで中国軍が大軍を送って本格参戦し、38度線まで押し返したところで休戦となったわけです。
 
この朝鮮戦争の戦死者ですが、国連軍側はかなり正確に分かっていて、米軍4.5万人、韓国軍6.5万人、ほか国連軍(豪州、英仏カナダなど)0.3万人 計11.3万人です。
一方の北朝鮮側は、推定値ですが、北朝鮮軍40万人、中国軍50万人、計90万人以上と言われています。
それより悲惨なのは市民の犠牲者数です。
これも推定値ですが、北朝鮮市民250万人、韓国市民133万人 計383万人とも言われています。
太平洋戦争での日本の犠牲者数を上回る数です。
特に、ソウル市は、韓国→北朝鮮→韓国と目まぐるしく統治が変わったことで、市民は、最初は北朝鮮軍によって、次には韓国軍によって、大量に虐殺されました。
双方から虐殺を受けたわけで、悲惨という言葉しかありません。
(韓国映画「ブラザーフッド」では、このあたりの悲劇を克明に描いています)
それも、北朝鮮軍は金日成主席の命令で、そして韓国軍は李承晩大統領の命令で、大量の市民虐殺が行われたのです。
理由は「敵側のスパイや協力容疑」という根拠のないものです。
 
当時の韓国軍の実態はひどいもので、急ごしらえで徴兵したため、軍事訓練も受けずに武器も不足というように、まともな軍隊の体を為していなかったと言われています。
北朝鮮軍や中国軍も似たような状態で、市民の大量虐殺を生む大きな要因となったのです。
 
しかも、将軍たちは、軍の食料物資を横流し、自らの懐に入れたり、李承晩大統領の政治資金に使われたりもしました。
そのため、9万人の兵士が餓死したとも言われています。
そうした悲劇の原因となったのは「日本による併合(韓国は侵略と主張)」だと、韓国では教えています。
日本でも、そう主張する人たちがかなりいますが、それは違います。
そのことを次号(最終号)では解説したいと思います。
 

<編集後記>
国際社会では独裁型の政治が強くなり、民主主義型の政治の弱体化が顕著になっています。
「アベ辞めろ」と首相官邸に押しかけるデモ隊を見ていると、これも暴力にしか思えません。
民主主義も容易に暴力化する危険をはらんでいるのです。