2018年6月30日(経済、経営)

2018.07.17

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年6月30日号
┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓
   H  A  L  通  信
┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛ http://www.halsystem.co.jp
発行日:2018年6月30日(土)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           2018年6月30日号の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★駆け引きだけの経済政策は行き詰るであろう
★北朝鮮問題を日本経済の視点で見ると
★中国経済のアキレス腱
★太陽光発電事業は、しょせんバブルなのか
 
http://magazine.halsystem.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
北朝鮮に甘い顔で手を差し伸べたトランプ大統領、一転して中国に貿易戦争を仕掛けてきました。
すぐさま中国も報復を発表しましたが、この戦争は拡大するのでしょうか。
米中の争いが激化すれば世界経済に悪影響を及ぼします。今後の進展を追っていきたいと思います。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★駆け引きだけの経済政策は行き詰るであろう       ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
前号(6/15号)で「トランプ大統領は選挙公約を正直に実行している」と書いたが、もちろん賞賛ではない。
そもそも選挙公約自体が時代錯誤的なのだから、それを忠実に実行するのは狂気としか思えない。
だから、多くの者は「実行するわけない」と思っていたのである。
しかし、我々はトランプ氏の性格を甘くみていたようである。
 
今朝(30日)も「トランプ大統領、WTO(世界貿易機関)からの脱退を主張」といったニュースが流れ、すぐに「財務長官が否定」といった報道が続いた。
脱退が口癖になっているようである。
 
一部のメディアは、トランプ氏を不動産王などといって、成功した経営者のように扱っていたが、ただのワンマン経営者で、幹部が必死にカバーしていただけではなかったのか。
その諫言(かんげん)がもとで、「おまえ、クビ」と言われた幹部も大勢いたようである。
それをそのままホワイトハウスに持ち込んでいるので、政権の人事の混乱は続いている。
トランプ氏は軍事には疎いので、そこだけは軍人出身の幹部に任せているようだが、他は感情的な人事を繰り返している。
経営トップとしての資質にも疑問だらけである。
 
そもそも、「高関税を掛けて貿易赤字を減らす」という主張も、経済の素人丸出しの発想である。
実際、トランプ大統領は簡単な計算も出来ないのではないか。
例えば、「輸入自動車に25%の関税をかけろ」という指示を商務省に出しているが、簡単な計算をしてみるまでもなく「出来っこない」のである。
2017年の米国の自動車輸入額は3590億ドル(約40兆円)に上っている。これに25%の関税をかけるとなると、実に10兆円の課税となる。
 
問題は、これを誰が負担するかであるが、それは自動車を買う米国民である。
トランプ大統領は、輸入車の値段が25%上がれば米国民は米国車を買うと思ったのかもしれないが、
今の米国車には、そんな魅力はない。
知り合いの米国人数人にメールで尋ねたが、一人として米国車に買い換えると返答した者はいなかった。
つまり、この政策は、米国民に対する10兆円の増税になってしまうのである。
 
そんなこと百も承知の商務省は、調査だけで最短270日かかるとしている。
秋の中間選挙が終わった頃に調査結果(それも否定的な結果)が出るということである。
選挙対策としたら、間の抜けた話である。
(それも承知の上のアドバルーンかもしれないが・・)
 
トランプ大統領は、物事を深く考える、あるいは計算して考えるということが苦手なようである。
メキシコ国境に壁を作っても、経済格差がある限り不法移民は減らない。
やたらめったら貿易戦争を仕掛けても、その結果はすべて米国に跳ね返ってくる。
 
軍事的にも台頭著しい中国へのけん制という意味合いならば、多少は理解できなくもないが、同盟国である欧州や日本までターゲットにしては、安全保障上はマイナスしかない。
まして、本気で中国締め出しを図ったら、米国経済も相当の痛手を負う。
また、今の中国が米国の要求に屈服する可能性は低い。
政治に駆け引きは必要だが、駆け引きだけの経済政策は行き詰る。
米国議会、とりわけ共和党の姿勢がカギを握っている。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★北朝鮮問題を日本経済の視点で見ると          ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
米朝首脳会談を1回行っただけで、極東に平和が来ると本気で思っているとしたら、失礼だが、相当に“おめでたい”人と言わざるを得ない。
一応、安倍首相を含めた各国の首脳は歓迎の意を述べているが、本気度は1%もないであろう。
政治的見解は次の号(7/15号)で述べるとして、今号では経済面での考察を述べる。
 
もし、南北朝鮮が連邦制にしろ、統一国家になるとしたら、短期的には日本の持ち出しが増え、長期的には、すぐそばに大きな未開の市場が出現することになる。
南北あわせて7600万人の人口になる隣国市場は、人口減の日本経済にとって魅力である。
 
たとえ、北朝鮮復興に10兆円の拠出が掛かっても、長期的にはプラスとなるであろう。
しかし、韓国民の心に宿る反日感情を考えると、半島とは距離を置きたい気もする。
 
韓国経済が復興を果たした「漢江の奇跡(ハンガンのきせき、かんこうのきせき)」は、日本からの巨額な支援および民間の技術移転や資本投下なくしてはなしえなかったことである。
しかし、韓国政府は、その一切を国民には知らせず反日感情を煽る教育を進めてきた。
その結果の反日感情はとどまるところを知らない。
 
北朝鮮支援も同じ轍を踏む可能性が大きい。
結果として、すぐ隣に反日の大国が日本の支援で誕生することになりかねないのである。
それでも経済的にプラスであれば進めるべきかどうか、結論を出すのはなかなかに難しい。
 
また、北朝鮮の現政権が延命することは、非人道的な独裁国家が栄えていくことになる。
その後ろで糸を引く中国も、また独裁国家の色合いをどんどん深めている。
米国をはじめとする民主主義国家は、そのことも併せて考えて政策を進めていかなければならないのである。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★中国経済のアキレス腱                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
先ごろ、IMF(国際通貨基金)は、中国の負債情報を発表した。
それによると、2016年の負債総額は25兆5000億ドル(2800兆円)という巨額である。
日本の国債1000兆円がかわいく見える額である。
2007年には4兆9000億ドル(約540兆円)だったので、10年で5倍以上に膨れ上がった計算になる。
 
この負債の主は地方政府と企業だが、共産主義の中国に純粋な民間企業はほとんど無い。
全てが国家統制の下にある中国では、この負債こそがアキレス腱であり、時限爆弾である。
すでに中国企業の負債総額は、GDP(国内総生産)の160%にのぼっている。
また、「陰性債務」と呼ばれる「地方政府が投資公社を通じて借りた負債」は公式統計の2倍と言われているが、実態は闇の中である。
 
IMFによると、中国商業銀行の企業貸出の15.5%は企業収益で利子を返せない「危険」状態にあると推定されている。
FRB(米国連邦準備制度理事会)は政策金利の引き上げ姿勢を鮮明にしているが、今後、市場金利は連動して上がってくると思われる。
さらにドル高傾向が強まれば、ドルで借りた企業の負担は破滅的になってくる。
 
中国政府と中央銀行(人民銀行)は、金融引き締めの方向に入り、地方政府と国有企業に負債の縮小を指示している。
このため、この先、破綻する企業や銀行が加速度的に増えていくことは容易に想像できる。
しかし、中国は自由主義経済ではなく国家統制経済である。
おそらく、企業の社債デフォルトを容認する政策を打ってくると思われる。
その代わり、それらの企業を強制的に倒産させ、事業を国営企業に吸収させるという延命策を打ってくるであろう。
 
しかし、そうしたデフォルトの波がやがて国有企業におよび、さらにドル建て負債の償還にまで影響が出だすときが、本当の危機となるであろう。
人民元を大量に刷ってしのぐという麻薬政策に手を出せば、ハイパーインフレを招き、中国経済は破綻しかねない。
さて、政権はどんな手を打ってくるか、日本は注意深く情報を集め、備える必要がある。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★太陽光発電事業は、しょせんバブルなのか        ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
小泉元首相と小沢一郎氏が反原発で手を組んだというニュースを見て、「この二人、本当に政治の中枢にいた人なのか」と思ってしまいました。
というより、この程度の政治家を「大物」として扱うメディアに辟易しています。
 
福島の原発事故の後、欧米では一気に反原発運動が力を得て、世界中で「太陽光発電バブル」がおきました。
もともと原子力に対するアレルギーの大きかった日本では、事故当事国ということもあり、事故前は年間100万KWに過ぎなかった太陽光発電設備の導入量が、一気に1000万KWと10倍に膨らみました。
ここで注意して欲しいのは、この数字が「発電量」ではなく「設備量」だということにです。
太陽光発電は効率が悪く、しかも天候に左右されるというネックがあります。
太陽光発電業者は、効率15~20%とうたっていますが、晴天の場合の効率ですから、実際は半分以下と考えたほうが良いでしょう。
 
ですから、各国の太陽光事業は、経済性を無視した高額の「固定買取制度」や補助金に依存したバブルに過ぎなかったのです。
このような無理が続けられるはずはなく、買い取り価格の低減や補助金の打ち切りで、どんどんバブルが弾け出しています。
たとえば、2013年に固定買取制度の大幅変更を行ったスペインでは、それ以降の新規導入がほぼゼロとなりました。
イタリアは、2011年に導入量が1000万KWになりましたが、制度を変えた翌年、一気に1/3に落ち込み、それ以降も数十万KWレベルに落ちてしまいました。
自然再生エネルギー派のリーダー国であるドイツにおいても、買取額の減額と補助金廃止により、一挙に数分の一に落ち込んでしまいました。
 
こうして、太陽光バブルは各国ではじけていっているのですが、その一方で増やし続けているのが中国です。
次回、中国における太陽光バブルの話をしたいと思います。
 
----------------------------------------------------------------------
<編集後記>
サッカー日本代表の西野監督のポーランド戦での戦術が、海外のマスコミから叩かれています。
それで思い出した言葉があります。
その昔、ボクシングのスーパーウェルター級世界王者になった輪島功一さんの言葉です。
輪島さんは「かえる飛び」に代表される変則ボクシングが特徴で、邪道だと叩かれることも多かったボクサーでした。
そんな彼は、ある時こう言いました。
「長い時間が経ってみれば、結局、『買ったか負けたか』しか残らないのです。いくら綺麗なボクシングで善戦しても負ければそれで終わりなんです」
 
まだ若かった私には、この言葉は衝撃でした。
そう、世間なんてそんなものだ。結果を出すことでしか真の評価は得られないのだ。
今でも、あの言葉は脳裏から離れることはありません。
 
西野さん、結果が全てです。迷わず自分を貫いて、そして勝ってください。