2016年5月31日号(経済、経営)

2016.06.15

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年5月31日号
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                発行日:2016年5月31日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2016年5月31日号の目次
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★増税再延期の言い訳は不必要だった
★世界経済はどうなるのか?(4):日中の課題
★建設業界紙の記事から思うこと
☆小さな会社の大きな手(14):投資資金の確保
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
 今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
オバマ米国大統領の広島訪問が脚光を浴びた一方、肝心の伊勢志摩サミットのほうはすっかり霞んでしまった感があります。
今回のメインテーマは「世界経済」でしたが、各国の思惑が目立ち、議論が深まったとはいえませんでした。
議長役の安倍首相の失敗というより、サミットそのものが曲がり角にあるという印象を受けました。
 
 
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┃★増税再延期の言い訳は不必要だった                ┃
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安倍首相は、サミットの場で以下のように討議を切り出した。
「リーマンショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。その轍(てつ)は踏みたくない。世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」
そして、各国首脳に積極的な財政出動の必要性を訴えた。
 
しかし、英国のキャメロン首相から「危機は言い過ぎ」との指摘が出、ドイツのメルケル首相からも「財政規律のほうが大事」との発言が出た。
安倍首相はサミット直前に訪欧し、両首脳に熱心に根回ししたが、その努力もむなしく両国とも態度を変えることはなかった。
なんとか「世界経済の見通しに対し下方リスクが高まってきている」との共同声明までこぎつけたが、
今やG7各国は自国のことで頭が一杯なのである。
 
英国のキャメロン首相は、6月23日に迫ったEU離脱を問う国民投票が心配でたまらない。
ドイツのメルケル首相は、難民問題に加え、1.3%と下落した経済成長率見通しに苛立っている。
また、両国とも関係強化に力を入れすぎた中国の経済失速に怯えている。
 
そんな中、安倍首相は、国内外に向けて「現在の経済情勢がリーマンショック前と酷似している」との発言をしたが、もっと上手な言い方があったはずである。
報道で指摘されているように、「リーマンショック級の不況が来る」と言わないと1年半前の自身の発言と整合が取れないことを危惧したのであろうが、一言で言って「みっともない言い訳」である。
堂々と「世界は不況に落ちる崖っぷちにある。今は増税できる状況にない」と言い切れば良いだけの話である。
リーダーには言い訳など不要である。
もし、前言との矛盾を解消したいならば、解散総選挙で国民に信を問えば良いことである。
その必要は全くないが・・・
 
それより、今回のサミットの共同宣言には注目すべき箇所がある。
以下の部分である。
 
「前略・・鉄鋼の世界規模での過剰生産能力が,我々の経済,貿易及び労働者に与える負の影響を認識する。特に,我々は,海外へ生産能力を拡大するために与えられる支援を含め,市場を歪曲し,世界規模の過剰生産能力を助長する,政府及び政府によって支援された機関による補助金その他の支援について懸念している・・後略」
 
これは明らかに中国のことを指しての懸念と非難である。
中国の経済が実際はマイナス成長になっていることは、今や世界の常識である。
中国政府は、それをごまかすため、過剰生産を止められない。
結果として、消費される当てのない大量の資材が世界市場に溢れ出している。
その象徴が鉄鋼生産なのである。
この事実が、今回の共同声明に盛り込まれた意味は大きい。
G7は、世界経済の波乱要因を作っている中国に対し、一体となって対処するとの宣言だからである。
案の定、中国は感情むき出しで共同声明を非難している。
 
安倍首相は、中国経済崩壊の兆しがリーマンショック級の不況を招く恐れがある、と言いたかったのであろうが、さすがに、そこまでは踏み込めず、妙に歯切れの悪い言い訳になったのだと思う。
でも、ここはやはり正攻法で国民に訴えるべきであった。
 
 
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┃★世界経済はどうなるのか?(4):日中の課題           ┃
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強気の姿勢を崩さない中国ですが、中国経済が危ない状態に陥りつつあることは確実です。
習近平政権は、軍事力を動員してでも、ここを強引に突破しようとしています。
しかし、この解決は「改革」などというレベルではなく、「ゼロからの再構築」といえるほどの困難なレベルなのです。
そのことを中国の意識の高い人達は理解していますが、政権中枢にいる人達は決して認めようとはしません。
民主的な政権交代の方法を持たない国家の最大の欠点です。
 
中国は、近年の30年間で驚異的な経済成長を遂げました。
しかし、その成長は「独裁」という中世型の古い政治ハードウェア上での成果です。
たしかに、このハードウェアは、開発途上国には有効な機能として効果を発揮します。
そうして経済が豊かになると国民の意識が上がり、自由を求め出します。
その結果、初期の経済成長をもたらした「独裁」政治は終焉を迎えて、民主政治へと移行します。
 
しかし、中国共産党は、この政治的破滅を防ごうと、なんと資本主義を大々的に取り入れたのです。
この試みは大きな成功をもたらし、世界第二位の経済力を有するまでになりました。
大成功と言えますが、その成功要因は中国の特殊性にあったのです。
それは、13億人という巨大な人口から生まれる大きな経済格差です。
 
経済というものは、格差があってこそ活発になります。
格差のない社会が実現したら、経済活動は極限まで低下するでしょう。
なぜなら、みなが満ち足りて欲しいものがなくなり、市場が形成されなくなるからです。
購買意欲が経済活性化のカギですが、その原動力が「格差」なのです。
だから、経済活性化のためには、常に新しい形の「格差」を生み出していかなければならないのです。
それを、今の言葉で美しく表現すると「イノベーション」と言うのです。
 
今の時代は、情報の自由化によって、この「イノベーション」を起こす時代なのです。
しかし、「共産党一党独裁」というハードウェアでは、こうした新しい時代には対応できません。
情報の自由化を保証する政治は「独裁」を終わらせなければ実現出来ないからです。
 
一方で、情報の自由化は、容易に情報の暴走を招きます。
情報の自由化を部分的に許容した中国ですが、今度は情報の暴走に直面したわけです。
中国は、政権にとって不都合な情報を強権的な政治力によって抑えこもうと必死です。
しかし、強権力で情報の暴走を防ぐことは出来ません。
厳正なる法の支配の下、知的財産権や高いレベルの人権尊重が確保される社会が形成されることが必要なのです。
さらに、国家が好む企業が優遇されるのではなく、その国に整合する企業が成長するのに必要な営業機会や資金にアクセスできるような環境を保証する制度が必要なのです。
しかし、今の中国の体制では、そのような世界から離れていくばかりです。
 
では、日本はどうでしょうか。
近代に入って、日本はアジアでの発展の競争から外れたことは一度もありません。
あの戦争でさえ、アジアでの経済競争で負けたせいではありません。
アジアの多くの国は、自国発展のモデルとして日本を手本にしてきました。
だから、敗戦で焼け野原になっても、日本はアジアNo.1の座を保持できたのです。
 
現代でも、アジアのみならず、世界は日本に期待しています。
今後の東アジアのパワーバランスを保つ上からも日本には戦略的に重要な役割が求められています。
GDPで日本を抜いたはずの中国が、アジアで日本のような支持を得られないのは当然なのです。
アジアから米国を追い出し、日本を4つの島に閉じ込め、アジアを自分の足元にひれふれさせようという習近平の「中国の夢」など、中国以外の国にとっては悪夢にすぎないのです。
こうした背景で、米国やアジアの大半の国は、安倍外交を支持しているのです。
 
しかし、日本も、この優位を失わないためには、もっと努力を重ねなくてはなりません。
自国の構造改革を大胆に進め、貿易の自由化というアジア経済圏の確立に寄与することです。
安倍首相が掲げるアベノミクスの第三の矢とは、まさにこのことのはずです。
農業を含めた分野の門戸を広く国際競争に向けて開くための構造改革のはずです。
アベノミクスの真の成功は、ここにかかっていると思いますが、どうでしょうか。
 
 
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┃★建設業界紙の記事から思うこと                  ┃
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最近の建設業界紙から以下の記事を抜粋し、簡単な解説を付け加える。
 
「4月25日、建設経済研究所は2030年度の建設投資の予測値を発表した。政府投資額は18.3兆~23.4兆円」
つまり、公共投資は、悪くすると現状よりやや落ち込むが、税の増収次第では上向く。
一方、住宅着工戸数は50万戸台 (現状の40%減) と厳しい予想。
民需は期待できないから官需主体で行けということか。
 
「群馬県建設業協会、16年度行動指針を発表。除雪や災害対応への維持に必要な限界工事量の確保を」
業界を知るものには「当然」の要求なのだが、一般国民には「おどし」にしか聞こえない。
「限界工事量」という言葉が身勝手に聞こえてしまうのである。
 
「海外工事の受注が好調」
結構なことだが、欧米ゼネコン並の受注が出来る日は来るのか。
 
「大手を中心に、営業利益率の増加が顕著」
これも結構なことだが、生産性向上の結果より市場に恵まれた結果ならば、短期で終わる。
 
「労務のひっ迫。土曜休日を広げるためにも適切な工期の確保を」
弊社は、つい最近、施主の立場で、ある建築工事を監理した。
元請けの希望通りの工期を、余裕を持って確保した。
しかし、工期終盤は、土曜はおろか日曜も施工する事態となり、工期の延長まで認めた。
真面目で技術力もそこそこある施工会社であったが、やはり“いつもの”光景になってしまった。
 
原因はもちろん分かっているし、分析もした。
工期が逼迫(ひっぱく)するターニングポイントも分かっていた。
それでも追い込まれていった。
「適切な工期の確保」といったようなスローガンは、こうした事態には全くの無力である。
同様に「適切な利益の確保」も同じである。
 
これらの記事を俯瞰して、建設業界は重大なことを見逃していると思う。
いや正確に言えば、分かっているが改善する実態が伴っていないのである。
それは「信用を得る」ということである。
 
「そんな事はない」と反論する方は多いであろう。
でも、近年のデータ改ざんや偽装の蔓延を見れば、業界に対する社会の「信用」が大きく揺らいでいることは分かるはずである。
業界として自分たちの要求を主張する前に、自らがやるべきことがたくさんあるのではないか。
 
 
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┃☆小さな会社の大きな手(14):投資資金の確保          ┃
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戦略投資の最大のポイントは資金確保です。
「そんなことは当たり前」ですね。
でも、もう少しだけ考えてください。
 
たとえば、富豪が行う戦略投資の成功率は高いでしょうか。
明確な統計データは知りませんが、「たいてい失敗」していると思います。
そのような富豪の失敗例は多く聞きますが、成功例の話を聞いたことがありませんから。
 
「そんなことはない」と言われるかもしれませんね。
たしかに、大企業や資金豊富な企業が行った成功例はたくさんあります。
富豪が資金を出した成功例もたくさんあります。
しかし、富豪自らがリーダーとなって行った事業の成功例を聞かないのです。
 
企業の場合、社員の中から責任者が任命されて行う例がほとんどでしょう。
その失敗は、クビか左遷か窓際に直結するという“後のない”状況だったはずです。
 
要するに、戦略投資が成功するためには、「失敗が許されない」状況が必要なのです。
いわゆる「背水の陣」です。
だから、経営者自らが行う戦略投資の資金は、自前ではダメなのです。
自前の資金で出来る投資は、経営者自らが行うのではなく、だれか責任者を任命して行わせるべきです。
そして、失敗した場合は・・、当然、厳しい処分が必要です。
 
自前の資金では出来ない大きな戦略投資こそ、経営者自らがリーダーとなって行うべきものです。
そして、そのような社運を掛けるような大きな投資は、失敗すれば返済不能となるような借入金で行うべきなのです。
それでこそ、シビアなプロジェクトとなるのです。
 
創業当時の弊社は、そのような原則を知らず、自己資金を中心とした資金で商品開発を始めたのです。
だから失敗を重ねたのです。
1億円を失ってようやく自分の愚に気付いたわけですから、”おめでたい”経営者だったわけです。
 
それからは必死の融資交渉を続け、借入金による商品開発を継続しました。
しかし、追加融資も使い切る事態に追い込まれ、倒産が頭にちらつきだした時に奇跡が起きました。
とある会社の社長から資金提供を受けたのです。
 
何年もの時間が経ってから、この時なぜ資金提供をしてくれたのか聞いたことがあります。
その社長はこう言われました。
「自分の業界は成熟産業だ。これ以上の投資をしても効果は薄い。一方、君のやっている事業のことは正直よく分からん。だが、これから伸びる産業だ、ぐらいは分かる。だから、君に投資しようと考えたのだ」
 
今の弊社は創業から26年経ちましたから、一般にはベンチャーと言えないかもしれません。
でも、その頃は、まだ創業から3年目でしたから、ベンチャー企業でした。
ベンチャーが成功するには、幸運とスポンサーになってくれる存在の2つが必要なのだと思います。
今をときめく成功者の方々にも、そのような存在がいらっしゃった話をよく聞きます。
 
これから創業を目指す方に申し上げたい。
あなたには、スポンサーとなるような方がいらっしゃいますか?
「思い浮かばない」なら止めたほうが良いと思いますよ。
 
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<後記>
局アナからフリーアナウンサーに転身したあとも、バラエティーや情報番組などでよく顔を見る羽鳥慎一アナウンサー(45)。
その羽鳥さんは、スマホを持たず、今でもガラケーだそうです。
 
実は、私もそうなのです。
スマホを持たない理由は羽鳥さんとは違うようですが、以下の理由です。
第一に「必要がない」のです。
普段からパソコンが身近にありますから、情報アクセスに不便していません。
また、パソコンのほうが一度に把握できる情報量が多くて便利です。
 
2番目の理由は「危険を避ける」ためです。
スマホを持つと、24時間監視される危険があります。
電源を切っても追跡できる技術があることを知ってからは特に持ちたくないと思いました。
これから、ますますスマホの技術は進化していきます。
その分、加速度的に「持つことの危険」が増えるわけです。
同じ理由で、自動運転車など、絶対に乗りません。
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