2016年4月28日号(経済、経営)

2016.05.15

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年4月28日号
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 H  A  L  通  信
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                発行日:2016年4月28日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2016年4月28日号の目次
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☆アベノミクスを総括する
★世界経済はどうなるの?(3)
★セブン&アイ・ホールディングスの乱
☆小さな会社の大きな手(13):戦略投資の失敗から成功への転換
 
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こんにちは、安中眞介です。
 今号は経済、経営の話題をお送りします。

 
東北地震からわずか5年で、また大きな地震です。
間隔が短くなっていることに要警戒ですが、そもそも、リスクに対する国民意識がいまひとつ高まらないことが一番の問題かもしれません。
民主党政権時代に盛り上がった「公共工事はムダ」論を煽(あお)ったマスコミや有識者たちの意見を、いま聞きたいものです。
 
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┃☆アベノミクスを総括する                     ┃
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前号で「マイナス金利の効果はあった」と書いた時点から、皮肉にも日経平均株価は大幅に下落。
しかし、その後、また持ち直すという乱高下状態にある。
円相場も、112円台から一時107円台まで落ちた後、111円台まで戻すという激しい展開。
かろうじて日本経済は支えられているが、危うい状況にあるといえる。
 
安倍首相と黒田日銀総裁の二人三脚によるアベノミクスは、当初、大きな成果を収めた。
思えば、2011年10月末には、1ドル=75.32円の史上最高の円高になり、日本沈没論すらささやかれていた。
その1年後に誕生した安倍政権は日本銀行に量的・質的金融緩和を打ち出させ、円安を増幅した。
その結果、企業業績のかさ上げによる株高を演出し、賃上げ環境を整備した。
こうして、20年間デフレに苦しめられてきた日本経済を、少なくとも平衡状態にまで戻した功績は大きい。
野党や一部マスコミは、さかんに「アベノミクスは失敗」と言うが、公平な見方とは言えない。
最初の2年間は「成功」との見方が正しい。
 
前述したとおり、この前段のアベノミクスの成功は、円安によってもたらされたものである。
国内景気の期待醸成を狙ったアベノミクスにとって円安は重要な要素であった。
円安から株価上昇が誘導され、そして賃上げ、国内消費の喚起と続き、インフレ率2%の達成というシナリオであった。
ということは、逆に円高に振れれば、株価下落、企業業績の悪化、賃金上昇の停滞につながるという「アベノミクスの逆回転」が起きるということになる。
これに、来年4月の消費税10%による消費意欲の悪化が加われば、間違いなくデフレ状態に戻ってしまうであろう。
こうなった時は「アベノミクス失敗」として、安倍首相は退陣すべきである。
 
このような情勢を知ってか知らずか、4月11日、安倍首相は不用意な発言をした。
米メディアに対する「恣意的な為替介入は避けるべき」との発言である。
結果として、「日本による為替介入はない」との判断を市場に誘引し、円買いを加速させた。
もちろん、この発言の本意は、「為替レートの安定が望ましく、各国政府は恣意的に圧力をかけるべきではない」だったと思うが、市場の敏感さに対し、あまりにも鈍感と言わざるを得ない。
 
米国は、明らかにドル高の是正を狙っている。
次の大統領が誰になっても、この動きは加速されるであろう。
各国の通貨当局は、これからの為替市場(ドル高修正)の中で、いかに自国経済に好ましい為替レートを実現できるかに頭を悩ませている。
どの国も輸出サポートのために通貨安を志向したいのである。
こうした環境下では、どうしても国際的な通貨安競争が起きる。
 
実際、ヘッジファンドなど投機筋は、為替先物の持ち高を「ドル売り円買い」にシフトしている。
このまま事態が進むと、円高・株安による景況悪化というアベノミクスの逆回転が始まる危険が高まる。
安倍首相が、いくら国内に向けてアベノミクス効果を主張しても金融市場がドル高修正に向かう以上、円高というわが国への逆風は強まりやすいといえる。
 
アベノミクスの初期段階は成功したが、すでにステージは次に移ったのである。
首相が為すべきことは、選挙向けのアベノミクスの意義の強調ではない。
円高に耐えられる民間企業の成長を支える政策の実行である。
それこそが、アベノミクスの3本目の矢ではなかったのか。
霞が関の抵抗を排除し、それが実行できるかどうかにアベノミクスの真価がかかっている。
 
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┃★世界経済はどうなるのか?(3)                 ┃
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前号で、中国経済の崩壊を回避する最後の一手を今号で解説すると予告しました。
それを含めて解説します。
 
2008年のリーマン・ショックの時、中国は、いち早く景気を回復させた。
その源は、約4兆元(当時の相場で約57兆円)規模の超大型の景気刺激策である。
その大部分は公共投資であり、同時に行った空前絶後の金融緩和策である。
これらの政策は、生産設備、不動産などへの爆発的な投資ブームを起こし、欧米や日本の低迷をよそに、中国は9~10%の経済成長を維持してきた。
一党独裁の政治体制だからこそ出来た強引な政策が功を奏したのである。
 
この経験から自信を付けた中国は、共産党一党独裁の政治体制のほうが民主主義より優れていると内外に宣伝してきた。
だが、中国の共産党政権は、やはり「経済音痴」である。
リーマン・ショック時の強引な経済政策は、中国がまだ「開発途上国」だから成功したのであり、そのツケがいま来ているのである。
 
公共投資といえども「投資」には変わりない。
投資はリターンがあってこそ成功といえる。
投資した金額は負債であるから、最終的には返済しなければならない。
しかし、リターンがなければ返済はできない。
開発途上国の多くは、先進国からの援助や借款で投資を行っている。
当然、援助する側からの干渉や成約を受け、窮屈である。
しかし、だからこそ、リターンなき無謀な投資は行われにくいといえる。
 
それに対して、中国は自前のカネ(実際は対外債務もかなりある)で投資を行ってきた。
支援国からの干渉が無い代わりに、甘い投資計画が簡単に通ってしまう。
特に、共産党幹部が関わる案件には利権による過大投資が行われてきた。
まさに、一党独裁の弊害である。
その結果、中国が行ってきた投資は、リターンが見込めない「名ばかり資産」ばかりになってしまったのである。
そんな中国に、世界は過大な幻想を抱いてきた。
このツケは、中国のみならず、全世界が被ることになる。
 
このような中で中国が打てる「最後の一手」とは、国際通貨基金(IMF)から一応のお墨付きを得た人民元資金の活用である。
しかし、この最後の一手は、人民元の金融市場が中国政府によってがんじがらめに規制されているため、使い勝手がすこぶる悪い。
金融・資本の自由化が成されず、情報の自由もない市場は、北京の意志次第でどうにでも動く。
結局、だれも投資したくない市場となっているのである。
 
日米の資金が欲しい中国は、AIIBを設立し、「今からでも遅くない」と秋波を送り続けてくるが、
やはり、北京の意志が強く働くAIIBには日本はとても乗れない。
朝日新聞や日経などは「乗るべき」との記事を掲げるが、考えが浅すぎる。
 
経済も政治も自由が基本である。
8000万人ともいわれる共産党員の既得権益をそのままにしての自由経済はあり得ない。
パナマ文書で暴露された共産党の最高幹部たちの腹黒さをみれば分かる。
彼らが率先して人民元を売り払い、資本逃避を拡大させているのである。
日本や欧米が中国を救うことはできない。
全ては、中国自身が解決すべき問題なのである。
 
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┃★セブン&アイ・ホールディングスの乱               ┃
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セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が4月7日に突然の辞任を決断しました。
鈴木会長は、一人勝ちを続ける「セブン・イレブン」を育て上げたカリスマ経営者の筆頭のような方だから、正直びっくりしました。
 
しかし、「絶好調の時ほど危ない」という格言は生きていたようです。
結果論ですが、今年の1月8日、ヨーカ堂の戸井社長の辞任が突然発表された時に異変を感じました。
そもそも、ヨーカ堂のような総合量販店は、今や役割を終えた旧態事業です。
「ニトリ」や「しまむら」のような単一商品に徹する量販店に押された「滅び行く業態」です。
全く新たな業態へ大胆に改変するしか生き残る道はありません。
だからこそ、鈴木会長は、エースと呼ばれていた戸井社長を抜擢したはずです。
 
しかし、これほどの大変革は数年で出来るものではありません。
それなのに、鈴木会長は、不振が続くヨーカ堂に切れて、戸井社長を厳しく責めたようです。
鈴木会長の物言いの厳しさは有名です。
戸井社長に対しても、「成果が出なければ惰性でやっているのと同じ。ヨーカ堂は何も変わっていない」
と叱責したと聞きます。
 
鈴木会長は、社員の前でも容赦なく幹部を叱責すると言われています。
直接お会いしたことはありませんが、経済誌のインタビュー記事などを読むと、自信たっぷりなのでしょうが、記者に対する高飛車な物言いが気にかかっていました。
例えに上げるのは失礼ですが、元東京都知事の石原慎太郎氏にそっくりな言い方にあまりよい感じは受けませんでした。
もちろん、私のこんな感想を目にしたら、鈴木会長は激昂されるかもしれませんが、正直な感想です。
叱責された戸井社長の心中は察するに余りあります。
 
鈴木会長が戸井社長に厳しく当たったのには、さらに別の伏線があったと聞きます。
その一つは、「モノ言う株主」と言われる外資系ファンドの「サード・ポイント」がセブン&アイ・ホールディングスの大株主になったことです。
取得したのは5%ですが、このくらいの大会社になると大変な圧力になります。
サード・ポイントは、赤字が続くヨーカ堂を切り離すべきと主張しています。
この対処のため、ヨーカ堂の黒字化達成に鈴木会長は焦っていたと考えられます。
実際、役員会で鈴木会長の人事案に反対を表明した中には、サード・ポイント寄りの役員がいたと言われています。
1票差で否決されたことを思うと、鈴木会長の焦りも理解できるところです。
 
第二に、ヨーカ堂を大会社に育て上げた伊藤雅俊名誉会長との確執もあったと言われています。
実際に確執があったかどうかは定かではありませんが、コンビニの成長とスーパーの凋落という時代の変化が、二人のカリスマの間に隙間風を吹かせたことは想像できます。
 
そして第三に、鈴木会長の83歳というご年齢があります。
団塊の世代である私も高齢と言われる年代になってしまったので感じますが、この年齢になると「明日は短い」のです。
改革は「短期で成し遂げなくてはならない」と思ってしまうのです。
私は、次の世代が長期の改革を成し遂げてくれると信じて焦りませんが、セブン&アイほどの大会社のカリスマ経営者ともなると、そんな悠長なこと言っていられないのでしょう。
 
大企業になったならば、カリスマ経営から抜け出さなければいけないのです。
その点から見れば、セブン&アイは、未だ発展途上企業なのですね。
 
最後に、ヨーカ堂の実質的な創業者、伊藤雅俊名誉会長のお母さんの言葉です。
 
「お客さんは来ないもの」
「取引をしたくてもお取引先は簡単に応じてくれないもの」
「銀行は貸していただけないもの」
そのようなないない尽くしから、商いというものは出発するのだよ。
だからこそ、一番大切なのは信用であり、信用の担保は、お金や物ではなく、人間としての誠実さ、真面目さ、そして何より真摯であること。
 
経営者のひとりとして身にしみる言葉です。
 
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┃☆小さな会社の大きな手(13):戦略投資の失敗から成功への転換      ┃  
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弊社の社運を掛けた戦略投資は大失敗に終わりそうでした。
しかし、この投資が失敗で終わることは会社が潰れることを意味します。
何としても進むしかありませんでした。
しかし、「進む」ことの最大の問題は、新たな開発資金の確保です。
今回は、この話を中心に話しましょう。
 
この当時の一番の収益源は、ソフトウェアの受託開発でした。
しかし、パッケージソフトの開発と同時に新規受注を断っていましたから、新規はもうありません。
それでも、断り切れない注文はありました。
現金なものですが、この時は注文を下さったお客様がまさに神様のように思えました。
このように、まず現金収入が入る仕事の受注に努力し、経費圧縮に努めました。
当たり前のことばかりですが、困難な時ほど、まず確実な策を実行することです。
 
もちろん、この程度の稼ぎでは、とても開発資金の捻出は出来ません。
さらなる借入れは必須でした。
金融機関に日参しましたが、そうそう色よい返事が出るわけはありません。
でも絶望せずに、何度も話をするうちに、担当者もいろいろなヒントは言ってくれます。
これが大事です。
金融機関の営業(支店の営業)は「出来れば貸したい」のです。
しかし、彼らの前には3つの関門があります。
支店長決済、本店決済、そして金融庁査察です。
この全てから合格点を得られないと融資は無理です。
 
幸い、私の実弟が大手銀行の本店審査部に勤めていました。
ただし、私が期待したのは、その銀行からの融資ではありません。
銀行が融資を出す内部査定基準および金融庁の査察基準を知りたかったのです。
これらの情報を得た上で、弟の銀行から融資を受ければ違法性を問われます。
だから、情報だけ欲しかったのです。
 
この情報は貴重でした。
実際に他行から融資を受けることが出来たからです。
「情報戦を制することが何より大事」と孫子の兵法も教えていますが、身を持って実感しました。
 
しかし、それでも必要な金額に大きく不足していました。
でも、開発は見切り発車で継続させました。
時間を置けば、それまで開発した成果物はすぐに劣化してしまいます。
資金問題は経営者である自分の問題と腹をくくり、開発は社員の力を信じて続行しました。
 
結果として、最初の1億円とほぼ同額、さらに1億円の資金が必要でした。
自分の目論見の2倍でしたが、これを当然と捉えていた自分がいました。
 
有名な「マーフィーの法則」というものがあります。
その中に書かれていました。
「時間にしろ資金にしろ、自分が必要と思う倍はかかるものだ」
さらに書かれていました。
「だからといって、最初から倍を見積もると、その倍(つまり最初の4倍)になってしまうものだ」
とです。
この法則を「なるほど」と思っていましたから、このような事態になっても、「やはりね」と思っている自分がいました。
結果としては、これが良かったのだと思います。
このような事態に陥っても、パニクらなくて済むからです。
本はたくさん読んでおくものですね。
 
結局、銀行から4000万円の追加融資を引き出すことに成功しましたが、さらなる資金調達が必要でした。
いろいろな金融機関と資金交渉を続けましたが、そうはうまくいきません。
こうして、追加融資も使い切る頃、奇跡が起きました。
とある会社の社長から資金提供を受けたのです。
続きは次回に
 
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<後記>
3月末、安倍首相は、訪日外国人数を2020年に現在の2倍の4000万人、
2030年には同3倍の6000万人に増やす新しい目標を決めたと発表しました。
しかし、その発表に水を差すかのように熊本地震が発生しました。
当然、今後の観光にはマイナスに働くでしょう。
 
大前研一氏は、地震発生前の2016/04/15のメルマガで、
この目標を不可能と批判しましたが、全く同感です。
安倍首相は、思うように上昇しない経済の現状に焦ったのでしょうか。
もう少し冷静に事態を分析すれば、無理なことはすぐにわかります。
何より国民は訪日観光客が短期間で4000万人になることなど望んでいません。
安倍首相には、もっと地に足を付けた目標を発表して欲しいものです。
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