2016年10月15日号(国際、政治)

2016.11.02

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年10月15日号
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                発行日:2016年10月17日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2016年10月15日号の目次
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★トランプ氏は過去の亡霊?
★わかりやすい北朝鮮
★稲田防衛相と蓮舫代表、ひどさの競い合い
☆戦争を起こさせない二つの仕組み(3)
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
新潟県知事選で東電柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な立場を取る米山隆一氏が当選しました。
予想通りですが、票の開きが予想以上でした。
 
少々乱暴ですが、原発再稼働と豊洲移転は同種の問題です。
市民感情という心理の前には、論理や技術的説明は無力です。
つまり、原発はこの市民感情が収まらない限り推進できないし、豊洲は移転できないということです。
もちろん、法的には、日本国政府は原発を再稼働出来るし、東京都も豊洲移転は出来ます。
安倍首相や小池知事が市民感情を押し切ってその決断をするか否かがカギですが、どうでしょうか。
 
個人的感情ですが、新潟の新知事になる米山氏の当選の言葉に違和感を覚えました。
「オール新潟の勝利だ」
このような言葉が好きになれません。
私は新潟出身です。県民をひとつの色に染め上げようとする傲慢さを感じて不快に思うのです。
 
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┃★トランプ氏は過去の亡霊?                   ┃
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アメリカ大統領候補のトランプ氏は「とんでもない政治家」と断言してもよいであろう。
彼は平気でウソをつき、そのウソに抗議する人々を口汚くののしる。
自分にとって不都合なことは、大統領選の討論会という公式な場でも、ウソを並べ立てて平然としている。
 
もちろん、米国マスコミは、トランプ候補のウソを暴き立て、オール反対の立場を鮮明にしている。
通常の選挙だったらこれで「勝負あった」となるであろう。
しかし、彼の発言はとどまるところを知らない。
一般人でも、これほど公然と社会的弱者に対しても容赦なく口撃を浴びせかける人物は、ごく少数である。
また、そのような人物は社会から相手にされなくなるのが、これまでの”普通”である。
それでも、トランプ氏の言動は止まらない。
最も驚くべきことは、その彼がクリントン候補と接戦を繰り広げていることである。
メール問題でみそを付け、高飛車な言動が嫌われているクリントン氏が相手とはいえ、米国の有権者の意識のほうが異常としか思えない。
 
それで、Webサイトからその理由らしきものを探してみた。
エール大学のチャールズ・ダイク教授は、ツイッターで以下のように述べている。
「病的虚言者には、自身の利益につながらないような虚言行為を頻繁に繰り返す傾向がある」
つまり、トランプ氏は「損得も意識せずにウソを繰り返す」一種の精神病なのだという論である。
また、アラバマ大学のチャールズ・フォード教授は,こう述べている。
「こうした人々(つまり、トランプ氏のような人)にとって、虚言は無意識的に発せられるもので、ある事柄が『起きたかもしれない』という不確定情報はすぐさま『起きた』という確定情報にすり替わる」
つまり、自分が願う方向に沿った情報は、それが不確定情報であっても「実際にあったこと」にすり替わってしまうという説である。
 
たしかに、上記のような心理的分析はある程度、的を得ているようには感じる。
しかし、トランプ氏の心理分析より大切なのは、そんな彼を熱狂的に支持する選挙民の心理分析である。
その中で最も適切だと思えたのは、「トランプ氏は過去から来た人物だ」とする意見である。
現代に比べて過去の米国(二つの世界大戦で存在感を増した米国)は輝いていた。
今のように有色人種たちがのさばることもなく、白人が人種の頂点に君臨していた「古き良きアメリカ」を現代に持ってこられる人物、それがトランプ氏なのである。
彼を熱狂的に支持している人たちの多くが「プア・ホワイト(貧しい白人層)」であることからも、それは裏付けられている。
 
今回の選挙は、不人気とはいえクリントン氏が勝つであろう。
しかし、クリントン氏には、トランプ氏を大統領候補に押し上げるまでになった米国国民の不満を払拭することは出来ないであろう。
ある米国人が以下のように言っていた。
「時々、過去は私たちを単に苦しめるためではなく、未来を支配するために舞い戻る。トランプ氏のような世界観を持ちながら、しかし明確な欠点がない誰かが次回大統領選挙に出馬するなら、勝つのではないか」
恐ろしい予言である。
 
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┃★わかりやすい北朝鮮                      ┃
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もう年中行事と化した北朝鮮の挑発。
最初は驚いたり憤ったりしていた日本の世論も無関心になりつつある。
焦った北朝鮮が日本領海内にミサイルを打ち込んだりすれば、再び大騒ぎになるであろうが、そこまでエスカレートさせることはないであろう。
 
領海とは、基線(波打ち際)からわずか12海里(約22.2km)の範囲である。
北朝鮮のミサイルに、そこまで正確に打ち込む精度はない。
下手すると陸地に打ち込んでしまう危険がある。
そうなると、一気に米軍の攻撃をくらうかもしれない。
それを恐れている。
日米安保条約からすれば、当然の反撃だからである。
だから、今のような、ある種“生ぬるい”挑発を続ける以外に策はないのである。
危険な話だが、滑稽な話である。
 
ところで、なんで北朝鮮がこんな高価な無駄使いを続けられるかであるが、当然、中国の支援があるからである。
 
先日、ジョーン・ペッパー米国外交政策フォーカス所長が以下のような見解を発表した。
「9月の北朝鮮による5回目の核実験後、中国は米国の圧力を背景に、北朝鮮の核開発を支援していたとされる遼寧省丹東の企業グループ「鴻祥実業発展有限公司」と女性創業者の馬暁紅会長を摘発した。同社は中国共産党の中央対外連絡部の影響下にあったとされ、中国の指導部がこれまで北朝鮮の核開発や制裁逃れを事実上黙認していたことが明らかとなった」
 
つまり、中国が北朝鮮の核開発を支援していたとする見解なのである。
中国は、北朝鮮の体制崩壊による難民流入や米韓との緩衝地帯を失うことに対する危機感を強く持っており、現状維持が中国の本音である。
ゆえに、中国が北朝鮮の核開発を影で支援していたことは国際常識である。
 
しかし、さすがに金正恩はやりすぎている。
ミサイル発射の失敗がかなりあることは、中国が支援を控え出してきた証拠だと思える。
これが、今後にどう影響するか、北朝鮮の今後を見ていくしかない。
 
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┃★稲田防衛相と蓮舫代表、ひどさの競い合い            ┃
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稲田防衛相のひどさには、少々辟易してきた。
軍事評論家の前田哲男氏は、以下のように述べている。
「資質もないのに大臣となり、ボロが出たのだろう」
「防衛相には憲法と日米安保体制に折り合いを付ける覚悟と見識が求められる。稲田氏は、そのどちらも持ち合わせていないようだ。そこが野党側に狙われた」
 
まさにこの指摘どおりである。
防衛大臣の職は、政治と軍事の両面において高い専門知識が要求される。
単に「タカ派の政治家」だからでは勤まらない職なのである。
稲田氏は全くの知識不足、勉強不足であり、かつ国防という任に対する強靭な精神を持ち合わせていない。
付け焼き刃であろうが、早急に猛勉強して次の国会までには少しはマシになっていただきたいものである。
 
ところで、マスコミは、稲田氏の大臣就任前、氏のことをさかんに「将来の首相候補の一人」と書き立てていた。
今は、知らん顔をして「答弁で涙を浮かべた」などのどうでもよいことばかり報道する。
もう少し自ら発信した記事に対して責任を持ってもらいたいものである。
 
さて、稲田防衛相一点に絞って攻勢を強めている野党であるが、こちらも輪をかけて”ひどい”状態である。
稲田氏の過去の「核保有を巡る発言」など、腐ったような話題を持ち出しても意味はない。
大臣就任前の一国会議員の発言であり、明確に「核武装すべき」と言ったわけでもない。
いくら日本が否定しても、諸外国からは「日本はいつか核武装する」と言われ続けている。
また、日本に核武装する技術力があることは否定しようがない事実である。
ならば、「日本が核武装した場合の損得を議論してみる」のもひとつの提言だと思う。
現職大臣としては核武装を否定し続ける必要があるが、一国会議員ならば、さまざまな提言を行うことは職務であろう。
この点に関して、国会議員としての稲田氏に落ち度はない。
こんなことでは、民進党は、とても安倍政権に対抗はできない。
 
蓮舫代表、野田幹事長の執行部では次の選挙も惨敗であろう。
私は民進党の議員から「我々が目指しているのは、ユニバーサリズムだ」と聞いたことがある。
経済用語であるが、的確な日本語がない。
低調だった先の民進党代表選挙であるが、敗れた前原議員がこんなことを言っていた。
「われわれが目指す内政の基本的な考え方は社会民主主義だ」
ユニバーサリズムの正確な訳ではないが、これが民進党の「基本政策」なのだと思う。
 
しかし、先の参院選では、これに沿った政策提言が打ち出されることは全くなかった。
アベノミクスを批判するだけでなく、これらの基本政策を対案として出すべきではなかったのか、と先の議員に向けたら「党内がまとまらない」と嘆いていた。
 
私は、ユニバーサリズムしても社会民主主義にしても、それを貫く思想の根幹は、「人のやさしさ」であろうと思う。
競争に破れても、人には生きる尊厳と価値がある。
そんな思想を実現するリーダーには、強さの中に見える『人としてのやさしさ』が必要なのではないか。
残念ながら、人に厳しく自分に甘い蓮舫氏の言動からは、それが見えない。
 
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┃☆戦争を起こさせない二つの仕組み(3)             ┃
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前号では、「戦争を回避する方策は2つの戦略に集約されている」とした国際政治学の以下の見解の1番と2番を解説した。
1.有効な同盟関係を結ぶ(戦争リスクの軽減効果40%)
2.相対的な軍事力を保持する(同、36%)
3.民主主義の程度を増す(同、33%)
4.経済的依存関係を強める(同、24%)
5.国際的組織への加入(同、24%)
(数値はいずれも標準偏差なので、合計100%を超える)
 
今回は、「軍事力の均衡」を重視するリアリズム戦略以外の、「経済的要素や、国際的組織および各国の政治体制」を重視するリベラリズム戦略の解説を行う。
 
3.民主主義の程度を増す
これが一番難しい策と言える。
日本と関係が悪化している中国や北朝鮮は、独裁国家で民主主義を明確に否定している国家である。
国際政治学の世界では「カントの三角形」と呼ばれる有名な理論がある。
それによると、民主主義の程度が低い国ほど戦争をしやすくなるという。
それは当然である。
国民が反対でも、独裁者の「鶴の一言」で戦争できるのだから。
 
日本にとって目下の最大の危険は、北朝鮮ではなく中国である。
近年、とみに独裁強権的政治を強めている習近平政権の中国の危険性は、多くの国民が感じていることである。
最近の動きを見ていても、本気で尖閣奪取を狙っているのではとの疑念は消えない。
 
残念ながら、今の中国政府に尖閣奪取や南シナ海の支配を断念させる妙策はない。
だから、万が一の軍事侵攻に備えることは当然としても、文化交流や観光を通じて民主化の風を中国国民に送り続けることが一番の策であろう。
そして、侵略は勿論のこと、たとえ防衛戦争であっても「戦争は国民に不幸をもたらす」ことを中国国民に理解させる努力を継続することである。
外国との文化的つながりの素晴らしいことを感じさせ、政治の主役は国民なのだということを実感させる、息の長い取り組みが必要である。
 
4.経済的依存関係を強める
これは、日中両国を例に取るまでもなく、先進国同士はそうなっている。
どこの国同士であれ、お互いに戦争をしたら大損害が出る関係になっている。
好戦的思考の強い現在の中国政府とて、そのことは十分に理解している。
ゆえに、TPP(環太平洋経済連携協定)や日中韓FTA(自由貿易協定)を進め、やがてそれらの協定をひとつにして、太平洋を「自由経済の海」にすることが環太平洋からアジア全域が平和で豊かになる道である。
しかし、成り行きとは言え、米国の大統領候補は二人ともTPPに反対を表明している。
そもそも日本にTPPを迫ったのは米国である。
「身勝手もいいかげんにしろ」と言いたい。
 
5.国際的組織への加入
最近の中国は、「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」など自らの影響力を行使できる国際機関を独自に創設しているが、これは将来の波乱要因となる大きな問題である。
AIIBが中国に有利な投資決定を行うことは明らかであり、やがて行き詰まると思われる。
そのときの混乱を考えると、短期的な利を求めて続々参加した日米以外のG7各国は無責任である。
 
南シナ海における常設仲裁裁判所の裁定を無視する動きなど、中国が国際的組織の決定に背を向けていることは、平和に対する明らかなマイナス要因である。
今後、中国が、さらに国際社会での孤立を深めるようであれば、戦争が起こるリスクが増え、やがて、かつて日本が歩んだ道の悪夢が現実になってしまうかもしれない。
 
しかし、国際社会は、多国間の協力で中国の野望を封じ込めながら、一方で対話や交渉で忍耐強くアジアの平和体制を維持することに努力すべきである。
 
 
3回に渡って「軍事力の均衡」を重視するリアリズム戦略と「経済的要素や国際的組織および各国の政治体制」を重視するリベラリズム戦略の2つの戦略を個別に解説してきた。
 
日本での国会論議や国民意識を見ていると、ベストの答えを巡って不毛な議論が続いている。
「戦争はいやだ」と言うだけで戦争は防げないし、ハリネズミのような軍事国家になっても国は安全にならない。
国民は、上記の2つの戦略のどちらか一方の戦略を採るかの「選択問題」ではなく、どう組み合わせるかの「ミックス問題」だということを理解せねばならない。
そして、それは感情を排した論理で議論されなければならないのである。
自分が、野党に代わって国会で政府にこうした論戦を挑んでみたい誘惑に駆られることもあるが、政治の世界は最も入りたくない世界ですね。
 
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<編集後記>
プロ野球日本ハムの大谷選手、「マンガの主人公みたい」と言う声が聞こえますが、今のマンガで描いたら「ウソくさい」と敬遠されてしまうほどのスーパーマンぶりです。
同僚の中田選手が「こっちが練習しているのがバカバカしくなる」と言うほどです。
プロ集団である野球選手の中で一人だけ別次元の世界にいるようで、「スゴイ」以外の言葉が見つかりません。
こうなったら、全盛期のうちに大リーグに行き、米国でも別次元の世界を我々に見せて欲しいものです。
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