2018年2月28日号(経済、経営)

2018.03.15

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年2月28日号
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                発行日:2018年3月1日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年2月28日号の目次
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★日本をめぐる経済環境は?
★下町ボブスレー
◇仮想通貨の超簡単な説明
◇日本経済は新次元の入り口にある(その8)<自動運転車>
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
前評判は芳しくなかった平昌オリンピックですが、羽生選手や小平選手たちの活躍で思った以上に盛り上がりました。
改めて、五輪の持つ力を感じた17日間でしたが、政治的利用が前面に出た韓国にとって経済的効果は薄く、これから政治の現実にさらされていくでしょう。
2年後の東京が同じように政治に振り回されるのはゴメンですね。
 
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┃★日本をめぐる経済環境は?                    ┃
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2月22日、WTO(世界貿易機関)の紛争処理小委員会は、2011年の東電福島の原発事故を理由に韓国政府が日本の水産物の輸入を禁止し、追加検査を義務付けていることを不当として提訴した日本政府の主張をおおむね支持する判断を下した。
この判断に対し、予想通り韓国政府は即刻上訴した。
 
このニュースが示すように、文大統領の日本嫌いは、政策というより信念であり、国民感情を煽る言動は過激化する一方です。
つまり、日韓関係の改善に期待感はまったくゼロということです。
日本は外交では一切譲らず、民間は政治と無関係という姿勢を貫くべきです。
日韓関係が重要な企業はあるでしょうが、経済全体から見たら、日韓関係は小さな要素です。
経済関係が冷え込んでも、損失が大きくなるのは韓国のほうです。
 
それより、米国の経済情勢に気を配る必要があります。
2017年の米国の貿易赤字は7962億ドルという高水準です。
このうちの3752億ドルが対中赤字ですから、約半分です。
トランプ政権が北朝鮮制裁に絡む中国企業に対し強硬姿勢に出ているのも、制裁強化の側面より対中貿易戦争の側面のほうが大きいということです。
 
それに対し、対日赤字は688億ドルと対中赤字の2割以下です。
しかし、「やれやれ」というわけにはいきません。
「アメリカ第一主義」はトランプ大統領の金看板です。
貿易赤字の圧縮を狙って、露骨な保護主義を日本にも突きつけてくるはずです。
こうした事態を先取りしたように、最近の為替相場も円高基調に傾いてきています。
FRB(米国連邦準備制度理事会)の新議長であるパウエル議長は、さらなる利上げを示唆しています。この影響もあって決算期を控えて米国への資金還流が一層強まっていくと思われます。
株価の低下とあいまって、円買いの材料ばかりが目白押しです。
まだ警戒水域には入っていませんが、4月の動向に要注意です。
 
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┃★下町ボブスレー                         ┃
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五輪の開始前、ジャマイカチームによる土壇場での「下町ボブスレー」の不採用が話題に上りました。
日本選手の活躍によっていつの間にか話題は消えてしまいましたが、「DIAMOND online」の2月18日号に、ITジャーナリストの中尾真二氏が興味深い記事を載せています。
 
まずは、以下に原文を紹介します。
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「さまざまな背景や、そこから来る感情論を抜きにしていえば、結果的に下町プロジェクトはBTCに勝てなかったというだけの話だ。勝負の世界の隠れたストーリーは、勝者に華を添える。が、それもこれも結果が出てからの話である。実際、BTCは下町プロジェクトが認めるように技術力は決して低くない。元選手が中心となる6名ほどの中小企業だが、各国のチームが採用するほど信頼を得ている。
技術的な面でいえば、公平に見て大田区の工場もランナーやボディの加工技術に世界有数のものを持っていると言っていいだろう。しかし、同じスペックを持つ部品を組み立てても、まったく同じ製品ができるとは限らない。それがワンオフ生産の競技用である場合はなおさらだ。
だからこそ専属のコーチやエンジニアがついて選手をサポートする。自動車レースでも、個別の性能や技術に勝る日本チームが、歴史あるレースでなかなか表彰台に立てない。1位がとれないのはなぜか。その理由は、ものづくりとエンジニアリングを現場で実践している町工場ほどわかっているはずだ。
土壇場だったかもしれない。契約があったかもしれない。そうしたなかにあって、下町プロジェクトはソリ製作の勝負に負けたという結果を正面から受け止め、次に繋げればいいだけなのだ」
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BTCはラトビアという小国のメーカーですが、日本以上の優秀な技術を持っていたのです。
実際、韓国チームも自国の現代製の製品を退けてBTC製を採用しています。
そのことを真摯に受け止めなくてはなりません。
 
最近のTVは、さかんに「日本の中小企業の優秀さ」をアピールする番組を流しています。
ドラマの「下町ロケット」や「陸王」のヒットなども後押しして「日本スゴイ」となっていますが、下町ボブスレーの不採用は、こうした脳天気な世間に冷水を浴びせる効果があったのでないでしょうか。
世界は広いし、卓越した技術は日本の専売特許ではありません。
それどころか、新幹線の台車にまで不正がまかり通っていたという現実の重さを噛みしめるべきです。
売上や利益至上主義がまかり通る現代の大企業では、ものづくりの現場が、疲弊を通り越して、倫理感覚の麻痺や誇りの喪失まで起きているのです。
そうした大企業が末端の中小企業の上に君臨しているのです。
いくら頑張っても、下請けの中小企業の抵抗には限度があります。
日本の落日の始まりのような不気味な予感を払拭できないのです。
 
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┃◇仮想通貨の超簡単な説明                     ┃
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ビットコインに代表される「仮想通貨」が話題になっています。
その話題も「1ヶ月で○○倍になった!」などという、“ウソのような”ニュースが中心で、
人々は、「怪しい」と思う一方で「本当だったら、自分も・・」のような欲望を抑えきれずにニュースを見てしまうことで拡散しています。
でも、「いくらニュースを見ても、実態はさっぱり分からない」という人が大半で、私もよく質問を受けます。
そこで、少々乱暴ですが、超かんたんな説明をしてみようと思います。
 
まず、一部とはいえ、仮想通貨の普及が広がりつつあるのは確かです。
「どうして?」という質問には、「仕組みを信用する人が増えているから」とお答えしておきます。
「私は信用できない」と言われますか?
でも、そのような人は買いません。
だから、「買っている人は、信用しているし、増えているのです」と言うしかありません。
 
次に「仮想通貨の仕組みを教えて」という方にお答えします。
「仮想」という日本語訳が誤解を生んでいます。
英語では、最初「crypto currency」と言っていましたから「暗号通貨」と訳すべきでした。
でも、ネットの世界でしか通用しなかったので、「仮想通貨」という言葉になってきたようです。
ここから分かるように、仮想通貨とは、ある種の「暗号」に電子署名をくっつけたものです。
ネットゲームの中には、課題をクリアすると「特典」がもらえて、それが貯まると強い「アイテム」が手に入るというゲームがありますが、あの特典も「暗号」です。
それと同じ仕組みです。
 
そうはいってもコインですから、その暗号が複雑で大量の計算を必要とするように出来ているのです。
そして、その暗号を解いて「たったひとつの答えを見つける」行為を「マイニング(採掘)」と呼んでいて、そうして作った(発掘した)暗号通貨を新たに市場に投入できるようにしています。
山に入ってゴールド(金)を発掘する行為になぞらえて「採掘」という言葉にしているわけです。
一攫千金を夢見て採掘で金を手にするように、おカネがなくて仮想通貨を買えない人は、マイニングで手に入れようとするというわけです。
 
しかし、複雑で大量の計算を解くためには、高性能のコンピュータが必要で、時間もかかりますから、マイニングへの投資はバカにできない金額になります。
仮想通貨の中には、特殊な「画像ボード」が無いと計算できないものもあり、こうしたボードが高値で取引されています。
マイニングで仮想通貨を手に入れても、結局投資額のほうが高かったとなることが多いようです。
 
とにかく、こうして見つけた答えを、大勢の人を「確認要員」にして認知させることで、通貨としての担保を持たせているのです。
つまり、大勢の人が確認要員となり「買う」と言えば、それが担保となり、通貨として流通するというわけです。
 
ただし、こうした仮想コインの流通量が極端に増えると価値が無くなりますから、コインの埋蔵量に制限を加えています。
ビットコインの場合は、最大で2100万BTCと決めています。
実際の通貨でも流通量が増えれば、インフレとなり貨幣価値が下がりますが、それと同じです。
実際の通貨との大きな違いは、実際の通貨のように国家が価値を保証していないという点です。
 
どうでしたか、少しは読者のみなさまの理解が進んだでしょうか。
 
誤解して欲しくないのは、私が仮想通貨をお薦めしているのではないことです。
どちらかと問われれば「反対派」です。
しかし、理解せずに反対するのでなく、理解して反対したいのです。
それと、もし、国家の貨幣を駆逐するような事態になれば、無視するわけにはいかなくなります。
実際にハイパーインフレの国では、仮想通貨のほうが信用されているという現実も出ています。
 
その時にそなえて、これからも研究はしていきます。
その過程で、実際に手を出すこともあると思います。
そうご理解ください。
 
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┃◇日本経済は新次元の入り口にある(その8)            ┃
┃  <自動運転車>                        ┃
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自動運転車が実用化されようとしています。
この流れは停滞することなく、日本でも2020年台には市販車が投入されるでしょう。
 
高齢者による自動車事故を防ぐという社会情勢上の事情も後押ししています。
私も前期高齢者の一員ですから、家族からは白い目で見られ出しています。
しかし、「かつてはレース場も走ったんだぞ」という子供じみた自負もあり、心の中の抵抗は大きいものがあります。
こうした葛藤は、年を追う度に深まっていくでしょう。
 
そうした感情を抜きに少し考えてみました。
現在運転している車は2年半前に買ったものですが、すでに様々な自動化が施されています。
その中に「自動ブレーキ」があります。
読者のみなさまの中にも経験されている方が多いと思うのですが、自動ゆえの不安が別に芽生えています。
たしかに、急に車や人が飛び出した時など、自動が働く“はず”ですが、いつも自分のブレーキングのほうが早いのです。
「衝突回避の緊急警報」にしても、いつも、警報は自分のタイミングより遅いのです。
 
「私の運動神経のほうが上だ」と言いたいわけではありません。
コンピュータの判断と私の認識タイミングの“ずれ”を感じて気持ちが悪いのです。
レーン保持の自動ハンドル修正の車にも乗りましたが、かえって怖いです。
当然、手動の修正動作と重なる時があって、思わぬ動きになる場合があります。
完全自動化の前に、こうした運転者の感覚とのずれを解消出来るのかが心配なのです。
自動運転が新たな事故を誘発するのではという不安を払拭できないのです。
 
上記の意見は、若い方に言わせれば、「化石世代の戯言(たわごと)」と一蹴されるでしょうが、個人的には、80歳ぐらいまでは自分の手で運転したいと思っています。
ちなみに「戦争中は戦車まで運転できた」と豪語していた父は89歳で他界する前の月まで運転していましたが、怖くて横に乗っていられませんでした。
その経験から80歳が限界かなと思っているのです。
 
<編集後記>
ニュースでは「日銀のインフレ目標は達成できていない」と報道していますが、周辺のモノの値段が上がっていることを実感します。
お菓子などは、値段は据え置きでも、量は目に見えて減っています。実質的な値上げです。
洋服なども、値段はそのままで質を落としているケースが増えています。
統計データは、こうしたこともすくい上げているのでしょうか。
はなはだ疑問に思います。