2025年2月15日号(国際、政治)

2025.02.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年2月15日号
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発行日:2025年2月15日(土)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2025年2月15日号の目次
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◇日本のトランプ対策は大丈夫か?
◇ウクライナ戦争の行方
★中東に平和は来ない
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
石破・トランプ会談に対し、最初は「概ね成功だった」の論調が多かったように思いますが、時間が経つにつれ厳しい指摘が増えています。
いずれにしろ、評価はまだ早いでしょう。
何しろ相手は“あの”トランプ大統領ですから・・
今号は、この問題から解説します。
 
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┃◇日本のトランプ対策は大丈夫か?             ┃
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「石破首相はトランプとの会談で厳しい要求を突き付けられる」という事前報道が多かったことへの反動のような好意的な事後報道が続いています。
国民民主党の玉木氏などは「80点」と持ち上げましたが、「軽いな~」としか言いようがありません。
これは、石破首相にではなく玉木氏に対してです。
 
本題に戻ります。
この会談後すぐに、トランプ大統領は「相互関税25%」を打ち出しました。
日本政府は慌てて「日本は例外にして」と泣き付いた格好ですが、トランプ大統領の真意をまったく理解していない外交音痴ぶりに、この先が心配になりました。
 
トランプ大統領は、関税が最大の武器と固く信じています。
4月2日から輸入車に対する関税を課すと発表したように、その考えはまったく揺らいでいません。
この関税の税率や対象国を明らかにしていないので、日本政府は除外に向けて米国に働きかけるとしていますが、どうでしょうか。
メキシコを経由する数量を含めれば日本車の輸入量が圧倒的に多いという現実から、望みは乏しいのではないかと思います。
 
そもそも、輸入車に関税を課せば米国の消費者が米国車を買うとは思えず、結局、関税の負担は米国民が負うことになります。
日本は静観していれば良いのです。
石破首相の訪米成果が幻に過ぎないか否かが分かる事例ですので、これからの経緯を追っていきます。
 
もう一つの課題が、日本製鉄によるUSスチールの買収問題です。
両社はこの買収に合意していますし、従業員の過半も賛成しているようです。
反対しているのは、全米自動車労連と保守系の議員ですが、アメリカ・ファーストを掲げるトランプ大統領としては買収に賛成するわけにはいきません。
石破・トランプ会談では「買収ではなく投資だ」という意味不明な合意(?)になりましたが、石破首相は、果たして「その後の戦略」を持っているのでしょうか。
たぶん、考える力も無いのだと思います。
 
その後、トランプ大統領は「誰も過半数の株は持たない」と、第三者(たぶん、米国の会社)の株取得を促すような発言を行っています。
さらに、以下のような意味不明な発言も行っています。
「USスチールは今かなりいい感じだ。だからUSスチールが日本や他の誰かと取引するのを望まなかったんだ」
そして、来月発動予定の鉄鋼とアルミニウムへの25%の関税について「これでUSスチールは新たな活路を得た」と妙な自画自賛を行いました。
要するに、米国企業なので関税がかからないUSスチールの製品の価格競争力が上がり、同社は自力再建できるという認識のようです。
その上で「だから、USスチールは日本と取引するのを望まなかったんだ」という明確なウソまで言っています。
しかし、トランプ大統領がなんと言おうと、同社の苦境は価格面だけでなく技術力の劣化が招いたことであり、それは関税では埋められません。
トランプ大統領も、そこは分かっていて「買収ではなく投資だ」と得意のディール(取引)で、日本からカネと技術の両方を取ろうと目論んでいるのです。
石破首相が卓越した戦略眼の持ち主ならば、さらに逆手を取ることが期待できるのですが、どうでしょうか。
これからの政策を見て判断することにします。
 
それより問題は、安全保障問題です。
「米軍駐留費の負担を増やせ、米国製の武器を買え」の要求が次から次へと出てくることが予想されます。
そこを、どう上手に切り抜けていくのか、首相の真価が問われます。
ヒントは「トランプ大統領は商売人であって、軍事に関しては素人」という点です。
ゆえに、軍事面には足を踏み込みたくない意思がはっきりと見てとれます。
その意味では、たしかに「平和的な」指導者といえます。
 
以上を俯瞰すると、案外組みしやすい相手だなと思います。
だから、石破首相、びくつかないで、頑張ってください・・
 
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┃◇ウクライナ戦争の行方                  ┃
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トランプvsプーチンの電話会談が行われたことを、トランプ大統領自身が発表しました。
続けて「これでウクライナ戦争を終わらせる」と“いつも”のトランプ節ですが、具体案はゼロです。
 
ロシアによる軍事侵攻が始まったのは2022年2月ですから、もう丸3年もウクライナでの戦闘が続いているわけです。
ゼレンスキー大統領が明らかにした数字ですが、死者の数はウクライナ側が約4万5100人、ロシア側が約35万人に上っているということです。
ロシアは、最初の首都キーウ占領の電撃作戦に失敗しましたが、諦めることなく、圧倒的な兵力差を背景に兵士の犠牲を顧みない突撃攻撃でウクライナの東部や南部での戦闘を優位に進めてきました。
この間、ロシア兵士による民間人の虐殺や非人道的行為をロシア政府が黙殺してきたのは、戦死に怯える兵士に対する見返りの意味です。
 
その昔、日本の戦国時代を含めて、世界中で行われてきた下級兵士に対する見返り行為と同じです。
彼らは報酬もなく手弁当で死地ともいえる戦場に駆り出されました。
そうした兵士の戦闘意欲を掻き立てるため、戦死者の武器や鎧を剥ぐという行為だけでなく、民間人に対する強奪や虐殺、人さらい、女性に対する非道な行為などを容認したのです。
その戦国時代にあって、戦闘能力に劣る織田信長は、給料を払う常備兵制度にして、その代わり民間人に対する乱暴狼藉行為を禁止し、破った者は即刻打ち首にしました。
結果、信長は民間人からの支持を得、さらに堺の商売人などからの支持も得ることに成功し、天下取りに大きく足を踏み出したわけです。
そうした信長とは真反対の原始的な戦争行為を21世紀の現代で行うロシアという国の異常さが際立つわけです。
 
そんな中、去年の8月、ウクライナ軍が突如ロシア西部のクルスク州へ越境攻撃を仕掛けました。
不意を突かれたロシアは、かなりの土地をウクライナ軍に占領されましたが、その後反撃に転じ、4割ぐらいの領土奪還を果たしたところで戦線は膠着しています。
その結果、現在もウクライナが支配する地域はかなり残っています。
 
ゼレンスキー大統領は、英国・ガーディアン紙のインタビューで、トランプ大統領がロシアを交渉のテーブルにつかせることに成功した場合は、『ロシアに領土交換を提案する』と語っています。
そして、クルスク州を念頭に『我々は1つの領土を別の領土と交換するつもりだ』とも話しています。
ただ、どの領土と交換するのかについては『私たちのすべての領土が重要です』と述べ、「侵攻前のウクライナの領土すべてを奪還する」という大きな目標は掲げたままです。
 
これに対し、米国のヘグセス国防長官は、『ウクライナが占領されたすべての領土を回復することは非現実的な目標だ』と発言し、『それを認めることから出発しなければならない』と述べています。
しかし、プーチン大統領は、領土交換案は断固拒否の構えで、ロシア軍はクルスク州の奪還に向けて戦闘を激化させています。
結果として、停戦交渉の糸口すら見つからない中で、ますます戦闘が激化する状況になっています。
 
一方、米国は経済制裁の強化でロシアの後方を締め付ける戦略を加速させています。
ロシアが相当の経済制裁を受けながらも市民生活を保てているのは、「影の船団」と呼ばれる「老朽船を使う闇タンカー」による違法行為の効果といえます。
その船団の数は586隻に上り、ロシアの輸出の80%を担っていると言われています。
この船団を使った石油輸出により、ロシアは年間37兆円の収入を得て戦争を継続しています。
日本の国家予算の1/3ぐらいの金額なので、ロシアにとっては十分すぎるくらいです。
 
バイデン前大統領は、退任直前にこの船団を念頭に追加関税を課しました。
この政策で「影の船団」の183隻(31%)が対象となり動けなくなっているということです。
このように、この政策の有効性は分かっていましたが、バイデン前大統領は選挙結果に影響があるとして躊躇していました。
しかし、ようやく退任直前に実行に移したわけです。
片っ端からバイデンの政策を無効にしているトランプ大統領ですが、この政策だけはそのままにしています。
この処置は、船会社だけでなく、荷揚げした港湾も制裁対象となるので、対象数を増やしていけば、「影の船団」は崩壊するでしょう。
今のロシアには、新たな影の船団を作る資金も時間もないし、造れても、おそらくトランプ大統領は追加制裁を行ってディール(取引)材料に使うでしょう。
 
トランプ・プーチンの直接会談の結果によっては短期停戦が実現するかもしれませんが、それが続くことはないでしょう。
「影の船団」が壊滅し、さらに中国の支援も止まり、石油代金がバレル45$まで下がってロシア経済が破産状態となり、プーチンが退陣か逃亡となれば、ウクライナ戦争は終わるでしょう。
つまり、プーチンが音を上げるしか、この戦争は終わらないということになります。
ただし、プーチンには時間がありますが、トランプ大統領には実質2年間の時間しかありません。
 
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┃★中東に平和は来ない                   ┃
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2023年10月のハマスによるイスラエルの音楽フェスへの襲撃テロから始まった今回の戦争は、1年4か月後にようやく停戦が成りました。
しかし、このまま平和になると思っている人は皆無でしょう。
イスラエルには自制を続けて欲しいものですが、そもそもの事を起こしたのはハマス側であり、ネタヤニフ政権にとっては「ハマスの殲滅しか道はない」という意識に変わりはありません。
しかも、中東への支援金の一部がハマスに渡っている恐れがあると言われている現実は、「国連が機能しない」状況を生み出しています。
国連としては、少々の違反には目をつぶり、人道支援第一で行きたいところですが、イスラエルにとっては看過できないことなのです。
 
トランプ大統領が、猪突に「パレスチナ人150万人をエジプトなどに移住させる」という案を出しましたが、賛同する国はありません。
移住先として名指しされたエジプトなどは即座に「No」を表明しました。
 
この案は、トランプ大統領の娘婿のクシュナー氏がイスラエルのネタヤニフ首相との会談で提案したと言われていますが、中東問題を自分の商売に利用する気持ちが露骨過ぎて、反発を生んでいます。
住民を移住させた後のガザ地区を「高級リゾート地」に造り変え、大統領引退後の大儲けを企んでいるとまで言われています。
トランプ大統領本人が、そこまでは言っていませんから、フェイクニュースの範疇を出ませんが、「あり得るかも」と思わせてしまう危うさを感じさせてしまっています。
 
あまり品がよくありませんが、こんな言葉があります。
「肥溜めの蓋をどんなに綺麗に磨いても、中身は“くさいもの”が詰まっている」
つまり、どんなに蓋を磨いて綺麗にしても(要するに、国家が法律や規則を整えても)、中身は糞尿という“くさいもの”が詰まったままであるという意味です。
「糞尿を浄化しない限り(国民の意識を変えない限り)、中身(国家)は綺麗にはならない」ということですね。
 
中東は、2000年以上に及ぶ「多くの人々の怨念」が詰まったままの状態です。
世界中の国が一致協力して、この糞尿自体を浄化しない限り、平和が来ることは無いのです。
こんな言い方をしてはいけないのでしょうが、現状での打開策は思い浮かびません。
その意味では、荒唐無稽なトランプ案も一考の余地があるのかもしれませんが、とても賛同は得ることは無理ですね。
 
さらに2000年の時が流れ、世界が統一される日まで、この地に平和は来ないかと考えると、私の思考も停止してしまいそうです。
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<編集後記>
前回とは真逆な見方となりますが、中国の人民解放軍の幹部は、日米相手の戦争は回避したいのが本音です。
しかし「腰抜け」と見られると首が飛ぶので、宮古海峡通過のような嫌がらせは行うし、「隙あらば」と考えてはいます。
日本は、「だから、中国を刺激しないように」ではなく、「来れば痛い目に会うぞ」というメッセージを送り続けるべきなのです。
 
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