2025年7月31日号(経済、経営)
2025.08.01
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年7月31日号
┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓
H A L 通 信
┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛ http://www.halsystem.co.jp
発行日:2025年7月31日(木)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年7月31日号の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇日米関税交渉
◇企業の投資(2)
◇新車陸送の世界(4)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇日米関税交渉 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
今回の合意で25%の関税が15%になったことを評価して日経平均株価が上がりました。
しかし、今までの2.5%から考えればとんでもない大幅アップで悪材料のはずです。
「とにかく株価上げの材料にしたい」という投資(投機?)筋の思惑にしか見えません。
この15%の見返りとして、日本は自動車やコメの輸入増大、さらに米国への投資5500億ドル(約80兆円)を押し付けられました。
しかも、この投資による利益の90%は米国が得るという「なんじゃ、それは」と言いたい内容です。
交渉役の赤澤大臣は「合意文書は作らない」ことを明言しました。
つまり、公式には「明文化された約束は何一つしていない」ということになります。
日本政府には、この文書の無いことを逆手に取るくらいの外交手腕を期待しますが、「でもな~」と悲観的にならざるを得ません。
最大の問題は、関税率より5500億ドル(約80兆円)の投資であることは明白です。
しかし、赤澤大臣の説明は意味不明で話になりません。
そこで、ネットを探したところ、米側のラトニック商務長官が、放送局のインタビューアに長時間答えているやりとりが見つかりました。
これを繰り返し聞いて、ようやく見えた程度の内容ですが、以下にそれを書きます。
ラトニック長官は、こう言っていました。
「必ずしも日本企業が米国で工場を建てたりすることを想定しているわけではありません。
投資するのが誰でもいいのです。日本はあくまでも『資金提供者』であり、『運営者』ではありません。
つまり、日本の企業が工場を建てるという話ではないのです。
例えば、アメリカの企業が医薬品や半導体の工場などを建てたい、または鉱物資源の発掘を行いたいとしたときに、その資金を日本が提供するということなのです。
かつ、その投資から得られる利益の90%はアメリカが持っていくというものです」
要するに、投資の主役は米国企業であり、日本は「その資金を負担する」役割だというのです。
具体的には、日本の政府系金融機関が5500億ドル(80兆円)の出資・融資・融資保証の枠を設ける。
そこから米国で行われる民間投資に対し融資や出資を行うということのようです。
もともと、日本の民間対米投資額は、すでに年間7800億ドルに達していて、今年2月には石破首相が年1兆ドルまで増やすと発言していました。
ゆえに、今回の合意は、この増額分の2200億ドルを5500億ドルに上げるということで、できないことではない。
これが日本側の腹積もりのようです。
しかし、「利益の9割はアメリカが持っていく」は、完全な”やくざ”恫喝で、呆れた話です。
出資100%の日本側は、投資利益の10%しか得られず、出資0%の米側が利益の90%を持っていくわけで、「そんなバカなことあるか」と席を蹴るのが普通です。
トランプ大統領は、赤澤大臣と「怒鳴り合った」と、激しい“やりとり”を交わしたと説明していましたが、たぶん「ウソ」で、一方的にトランプが恫喝した会談だったのが本当でしょう。
しかも、この合意後の日米の担当高官たちの発言が支離滅裂で意味不明です。
以下に記します。
◇赤澤大臣
この対米投資の期間については、「(2029年1月までを予定する)トランプ大統領の任期中にできればいい。そして、実際の出資は1~2%になるだろう。
残りは政府系金融機関による融資や融資保証だ。出資で生まれた利益の日米配分を日本は5対5を提案したがトランプ氏が主張した1対9となった。
でも、関税引き下げで回避できた損失は10兆円に及ぶだろうから、この配分の変更で失うのはせいぜい数百億円の下の方」
※筆者注:「計算根拠、まったく不明」
◇ベッセント財務長官
「トランプ氏が不満であれば、自動車を含む日本製品すべてに25%の関税を再び適用する。四半期ごとに日米合意の履行状況を米国が評価して決める」
※筆者注:「何様だと思っている」
◇ラトニック商務長官
「日本は『アメリカの規格でアメリカ車を受け入れるのです。だから、わざわざ違う車を作る必要はなく、デトロイトで作った車を船に乗せて送ればいいのです』。
ヨーロッパが同じ事を、本当の意味で受け入れれば、それはアメリカにとって何千億ドルもの輸出機会になります。それは大統領を動かすでしょう。
このEUが完全に市場を開放することはアメリカがこれまでに経験したことのないことです。
ドナルド・トランプが世界中の市場を開いているのです。アメリカの牧場主や漁師のためにも、私たちの農家にとっても、誰も見たことのない素晴らしい機会です。
世界は私たちアメリカをあまりにも長く抑圧してきたので、他国がアメリカにするように自由に輸出できる世界を想像すらできませんでした。
しかし、その世界が到来します。それが、ドナルド・トランプが『黄金時代』と呼ぶものです。
他国がアメリカを扱うように、アメリカが世界に輸出できる能力を得たのです」
※筆者注:「寝言としか思えない」
まったく整合性のない発言ばかりです。
要するに、すべてはトランプが決めるので、日本は黙って従え、さもないと・・という「恫喝」であり、外交の形は成していないということです。
このようなトランプ政権に対峙できない石破首相では日本国は疲弊する一方です。
日本の経済規模は4.4兆ドル、アメリカは30兆ドルなので、たしかに喧嘩にはなりません。
ですが、EUは20兆ドル、ASEANは、ほぼ日本と同じ4.4兆ドル、これらの国々と力を合わせれば、アメリカと同規模になります。
中国の20兆ドルは魅力ですが、危なくて手を組むことは難しいでしょう。
つまり、日本政府にはEUとASEAN諸国と連携しての外交手腕が求められているのです。
ですが、『石破じゃ無理だ』なのが悲しいです。
早く、新たな政治体制に変わることが望まれます。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇企業の投資(2) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
参院選での党首討論において、石破首相は「消費税減税には断固反対」しか言わず、最も重要な成長戦略への言及は皆無でした。
野党からは、国民民主党と維新の党が「成長戦略が見えない」として非難しましたが、対案となる具体論がなく、選挙戦では成長戦略の議論そのものが乏しい結果に終わってしまいました。
つまり、与野党とも「成長戦略」を持っていないことを露呈した結果となり、日本全体の成長は望むべくもないなと感じました。
このような戦略なき国家運営に倣うかのように、企業の「成長戦略」の声も乏しいのが今の日本です。
新入社員確保のための「賃上げ」の声に比べ成長戦略の声はあまりにも“か細い”と言わざるを得ません。
「成長戦略」は、企業経営にとっては一番大事な、しかし一番難しいテーマといえます。
多額の投資を行い、成長を目論んでも、失敗すれば投資した金額が焦げ付き、下手したら巨額の債務だけが残るリスクが顕在化し、経営が傾く危険が大きくなるからです。
そのうえ、金融機関も投資家も、売り上げ維持と内部留保にしか興味を示しません。
投資に対しては懐疑的な見方のほうが強く、短期の出口戦略(つまり投資回収)にしか関心を示しません。
こうして政府および経済界全体が「現状維持」を続けた結果が「30年のデフレ」だったわけです。
たしかに、国内的にはそれで「可もなく不可もなし」としてバランスが取れていたわけですが、
ゼロ成長を30年も続けた結果、諸外国の成長に対し大きく後れを取ってしまい、国際競争力を失う危険の淵に立たされて、ようやく「これではアカン」と気が付いたわけです。
しかし、「現状維持」という環境に甘えてしまった経営者は、賃上げせず、研究開発も販売増進活動もせず、少ししか出ない利益を内部留保として貯めておくだけの経営に慣れてしまったのです。
その結果、日本国全体の地盤沈下が進み、ようやく慌て出し始めたのですが、成長戦略への投資を思い切って踏み出すことに、まだ躊躇があり、景気を押し上げる力は弱いままです。
そこには、大きな要素への理解が欠けています。
ここ数年、ようやく賃金が上がってきましたが、物価の上昇に追いつかない程度の賃上げで、経済全体を押し上げる力強さに欠けています。
それは、相変わらずベースアップという春闘型の横並び政策での賃上げだからです。
経済全体を押し上げるには、人員の移動や整理といった構造改革が必要です。
そして、それは労働組合主導の春闘型の賃上げでは不可能なことです。
30年のデフレの間に最も進化したのは、ITやネットです。
この理解や扱いによって、個々の従業員の生産性には大きな差が生まれています。
50年も昔、IBM社は「コンピュータは個々人の生産性の差を15倍以上に広げる」と予測しました。
生成AIなどを扱っていると、近未来には、その差は100倍以上になることが実感されます。
1人の会社が100人の会社と同等の生産性を有したら、これは勝負になりませんね。
そこまでいかなくとも、すでに10倍に達している例は出ていると思います。
そうした中で、「全従業員一律5%のベースアップを・・」などを掲げる春闘のばかばかしさを感じる方(特に若者)は多くなっていると思うのです。
ただし、企業がたった1日で10倍の生産性を上げることは不可能です。
そのための投資と人員の再配置、業務の劇的改革が必要だからです。
しかも、その投資には利益を上げる目標と道筋の整備が必要です。
このことが企業に投資を躊躇させる難しさになっています。
私の会社でも、利益目標なき投資を進言してきた営業幹部がいました。
私が「この投資で、いくらの利益増進を見込むのかね」と聞いたところ、彼は「やってみなければ分かりません」との答え。
私が「それは分かるよ。だから、ノルマではなく利益の増進目標を聞いているんだよ」と言っても、頑として「やってみなければ分かりません」を繰り返すのみ。
たとえ、結果が出なくても原因を総括した上で、再挑戦することを期待したのですが、「やってみなければ・・」に固執するばかり。
期待していたのですが、がっかりでした。
ただ、それだけ投資責任を負うことが社員にとっては大きな重荷なのです。
サラリーマン時代を振り返ってみれば、自分が進言した投資が失敗した場合、クビにはならないまでも出世の道は絶たれた可能性が高かったかと思います。
だから「やってみなければ・・」の社員の気持ちはよく分かります。
ですが、そうした計画無き投資は、企業を弱める結果となりかねません。
企業が生存するための“コメ”である資金を使う以上、いい加減な投資を許可することはできません。
次回は、そのことを論じたいと思います。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇新車陸送の世界(4) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
日産自動車が、2027年度末までに追浜工場を閉鎖することを発表しました。
この工場は、若かった私が、座間工場の次に輸出用の新車を多く本牧埠頭まで運んだ工場です。
座間はとうの昔に閉鎖され、そして追浜かと思うと“何とも言えない”寂しさを感じました。
では、ここから、その過去にタイムスリップします。
陸送2日目は、その追浜工場からの新車陸送でした。
追浜は、他工場より横浜・本牧埠頭に近いので、夕方の陽の光が残る時間に私は最初の輸送で埠頭に着きました。
そして、埠頭の光景に目を見張りました。
昨日の最後の輸送(つまり当日の明け方)、最後の車を運び終えた時、広い埠頭は想像もつかない数の車で埋め尽くされていました。
それが、1台残らず消えていたのです。
あの膨大な数の車は、昼間のうちに全て船積みされ、出航されていたのです。
我々のチームが最初に埠頭に着いたので、広大な埠頭には1台の車もなかったのです。
本牧埠頭の面積は、287.7haあります。
1haは1万平方メートルで、坪数だと3025坪です。
50坪平均の住宅地だと道路部分を除いて、50区画ぐらいとなるでしょうか。
つまり、本牧埠頭に住宅街を作るとすると、1万区画以上の住宅が立ち並ぶ広大な街となる計算です。
気が遠くなる面積ですね。
そこを文字通り“びっしり”と埋め尽くしていた車が、たった1日で1台残らず無くなっていたのです。
あの当時、そうした光景が休みなく毎日繰り返されていたわけです。
それも本牧埠頭だけでなく、日本の多くの港においてです。
考えただけでめまいがしてきます。
その光景の延長線上に、今日の日米自動車摩擦があるわけです。
我々は、その先兵だったのです。
この日、埠頭から工場に戻るマイクロバスの中で、一人の先輩が、こんなことを私に聞きました。
「おまえ、アクセルは何のためにあるか、知っているか?」
私は困惑しながら、「車を走らせるためです」と答えました。
先輩は、面白そうにニヤッと笑い、
「違うな、アクセルはな・・床まで目いっぱい踏み込むためにあるんだよ」
こうした新米いじりは、先輩方の楽しみのようで、全員ニヤニヤしながら、こうした“やり取り”を聞いていました。
しかし、この答えは冗談ではないのです。
全員が、本当にアクセルを床まで踏みつけ、夜の国道を全速力で駆け抜けていたのです。
当時の車でも時速150~160km以上に達していました。
その速度で、制限50~60km/hの一般国道を、信号を無視して走っていたのです。
さすがに横浜市内に入ると夜でも交通量が増えるので、そんな運転はできません。
それでも100km/hぐらいの速度で、他の車を追い抜き、かわしながら突っ走りました。
輸出する車のタイヤは空気圧を目いっぱい高くしてあります。
船で輸送する間に徐々に空気が抜けるからです。
ですから、ハンドル操作が異常に軽くなり、少しでもオーバー気味に切ると思わぬ方向にすっ飛んだり大きくスピンしたりするので命がけです。
この高い空気圧で突っ走る雨の日の道路は、スケート場と化します。
カーブはすべて4輪ドリフトで大きく横滑りしながら曲がります。
レース場のほうが安全なくらいです。
ですが、当時の私に“危ない”という意識はなく、「レースの訓練だ」との意識で運転していました。
これも若さという「バカさ」のせいですね。
年を取った今の私から見ると、まったくの別人です。
当時の私は、陸送のバイトとは別に、レーシングチームのメカニックを手伝っていました。
そのレーシングチームは自動車会社がスポンサーの、日本でもトップクラスのチームでした。
そして、そこには4人の「エース」と呼ばれるドライバーがいました。
いずれもレースの世界では自動車雑誌を飾るほどの超有名人で我々の憧れの存在でした。
その中に、私と同じ新車陸送の世界からレーサーになった方がいました。
その方は、私が新車陸送のバイトをしていることを知って、なにかと声を掛けてくれ、ドライビングテクニックの指導もしてくれました。
その方が、ある日、こんな話をしてくれました。
「僕も新車陸送で腕を磨いたんだよ。でも間一髪が何回もあった。陸送車で公道を突っ走るのはレース場より危険だ。君はもう分かっているだろうが、命の大切さは忘れるな。そして、一般人を巻き込むことだけは何が何でも避けろ」
素晴らしい先輩でしたが、それから3年後、返らぬ人となってしまいました。
サーキットでの練習走行中の事故でしたが、原因は分からないままでした。
あの方の言葉と、あの事故当時の胸の痛みは今でも消えることがなく、思い出すと涙が出てきます。
その事故の少し前、もう一人のエースの方が、やはりレースの練習走行で命を落としました。
エース4名中2名の方が20代半ばで命を落としたのです。
当時のレース世界が、とんでもない世界であることがお分かりかと思います。
----------------------------------------------------------------------
<編集後記>
ついにガソリンの暫定税率廃止が決まりました。
51年という「暫定期間」が終わるわけです。
衆参両院での与党の過半数割れの最初の成果といえます。
30日に発表されたガソリンの店頭価格は174円ですが、私が使っているスタンドの価格は23日で162円でしたから、次回は150円を切る計算になります。
----------------------------------------------------------------------
◎[PC]配信中止、変更の手続きはこちら
http://www.halsystem.co.jp/mailmagazine/
このメールは送信専用です。お問い合わせはこちらからお願いします。
http://www.halsystem.co.jp/contact/
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
【編集・発行】
株式会社ハルシステム設計
http://www.halsystem.co.jp
〒111-0042 東京都台東区寿4-16-2 イワサワビル
TEL.03-3843-8705 FAX.03-3843-8740
【HAL通信アーカイブス】
http://magazine.halsystem.co.jp
【お問合せ・資料請求】
email:halinfo@halsystem.co.jp
tel:03-3843-8705
Copyright(c)HAL SYSTEM All Rights Reserved.
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵