2024年3月31日号(経済、経営)

2024.04.15 9:00:00


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年3月31日号
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発行日:2024年4月1日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年3月31日号の目次
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◇5%賃上げに妥当性はあるか?
◇2024年への展望(4):日本経済が上りきれない理由
◇これからの中小企業の経営(4)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
今の日本、賃上げラッシュ(?)といえるような状況ですが、経営者の心理は複雑です。
賃上げで従業員の喜ぶ顔を見るのは経営者として“うれしい”ものですが、それも利益向上ができてこその話です。
思ったような利益確保ができていない会社の場合、人件費増は単純に経営の圧迫要素です。
今号は、この話題から入ります。
 
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┃◇5%賃上げに妥当性はあるか?              ┃
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岸田首相は、やっきになって「5%賃上げ」を煽っていますが、その先の「経済の好循環」の青写真はボケたままで、よく見えません
(そもそも、あるのかな?)。
社員が賃上げを喜ぶのは当然ですが、企業側、特に中小企業の経営者の顔色は複雑です。
各種調査によれば、ある程度の価格転嫁ができている企業は4割程度にとどまり、さらに賃上げ率を上回る転嫁ができている企業となると、割合はかなり下がります。
まして、この先も5%賃上げを約束できる企業となると、ゼロに近いのではないかと思われます。
 
物価の値上りが従業員の「給料上がった」という意識を帳消しにしていますが、その従業員を雇っている企業はもっと苦しい状態にあります。
円安が収まらず、原材料費、エネルギー費が想定以上に高騰しています。
大企業など輸出比率の高い企業にとっては円安が追い風になり利益が増え、消費税の還付もあって、賃上げ原資は十分にあります。
しかし、輸出恩恵のない多くの中小企業にとっては大きな負担となっており、その上に人件費の増加がのしかかってきているわけです。
もちろん、生産性の向上や新製品の開発などで、こうした原価・経費の増加を吸収する努力が企業経営に求められますが、そうした投資が必ずしも成功するとは限らず、失敗すればさらに経営を圧迫します。
 
政府は、中小企業向けに「事業再構築」なる補助金や助成金を設けていますが、発表されている内容を読んでも、どうにも意欲が湧きません。
コロナ禍の補助金で大判振る舞いしたつけが回ってきている政府の本音は、「もうカネを出したくない」のです。
もともと増税派である首相は、民間企業に「5%賃上げ」をさせれば、所得税や社会保険料の自然増収が見込めると目論んでいます。
結局、賃上げしても、かなりの部分は、消費税を含めた税収増で吸い上げられる構図となっています。
 
野党やマスコミの追求が自民党のキックバック問題に矮小化されている現在、賃上げに便乗する増税に対する議論がまったく聞こえてきません。
「なぜ5%?」という数字の根拠への追求もありません。
ただ単に「切りが良い数字」で、このくらいなら経済界も納得するだろうという程度の“いいかげんさ”で決めたのだと思います。
つまり、妥当性なんかまるで無いのです。
どうして、野党は、こうした点を突いてこないのでしょうか。
立憲民主党の後ろにいる連合という大手労働組合は、政界における自民党と同じで、自分たちのことしか考えていないのでしょう。
 
一方、人手不足が深刻ですが、「使えない、すぐ辞める・・」社員を雇うことのマイナスのほうが企業にとってはダメージです。
企業規模に関係なく「人手に頼らない経営」を目指していくしかありません
それには、今いる従業員の能力向上と重武装化(この中身が重要ですが・・)に投資を行うことです。
そして「誰でもいいから、とにかく新入社員が欲しい」という気持ちを封印し、
「使えないやつはいらん」のドライな人事戦略に切り替えるべきです。
そうした経営姿勢を貫かないと「5%賃上げの継続」で会社は潰れます。
 
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┃◇2024年への展望(4):日本経済が上りきれない理由    ┃
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日銀のマイナス金利解除に対し、経済評論家の森永康平氏は、「銀行が日銀の当座預金への積み増しを行い、企業への貸出しを渋るようになる」として、否定的な意見を述べています。
さらに法人税を上げるべきとの意見に賛同していました。
賛同の理由はこうです。
「企業は税金として取られるのなら、人件費に使うほうがいいというインセンティブが働き、賃金アップが見込める」
ただ、「経団連の偉い人からすれば、なんでうちの金を取るんだ、と考え、政治家に“(選挙で)落とすぞ”ということになってしまう」ので無理だろうとも言っていました。
森永氏らしい意見に「なるほど」と思う反面、そんな単純思考の経営者ばかりではないだろうと言いたくなりました。
 
人件費は大事な経営要素であり、税金支払いも企業の義務として避けるわけにはいきません。
しかし、どちらも資金繰り上はマイナス要素です。
ゆえに、人件費も税金も、経営者の本音は「少なければ少ないほど良い」であることは当然です。
一方で、社員にできるだけ多くの給料を払いたい、また税金もきちんと払いたいとする気持ちを持つ経営者が多いことも事実です。
 
このように、まるで正反対のアンバランスな気持ちを抱えているのが経営者です。
こうした経営者心理に対する考察もせずに「経営者は悪」として一方的な報道を繰り返すのがマスコミです。
マスコミも商売なので、視聴者や読者の気持ちを喚起する目的で煽り記事を書くことは当然かもしれません。
ならば、そうした公平性を政治に期待したいところですが、現実は「でも~」な低レベル状態です。
 
日銀のマイナス金利解除に対する政府の姿勢も明確さを欠き、不安しかありません。
財務省は、相変わらず財政法を盾に「プライマリーバランスの堅持」しか言いませんし、鈴木財務相は官僚が作成したペーパーを読むだけ。
要するに、「歳出は歳入で賄う」という一般家庭の家計を預かる主婦目線の物言いしかしません。
では、岸田首相はというと、「貯蓄より投資を」を唱え、学校で投資を教えるというように国民を投資に向かわせることに前のめりです。
しかし、はたして学校の先生方は「ギャンブルと投資」の違いを正しく教えられるのでしょうか。
渦中の「水原一平氏」のような人間を作り出す危惧しか感じません。
 
敗戦後の惨めな経済から日本が脱出できたのは、思惑付きとはいえ米国からの大きな経済援助があったからであり、
また、当時の日本人が懸命に働いたからです。
私の幼かった頃の思い出の大半は、必死に働いていた父や母の姿で占められています。
我が家は生活費がやっとの零細商売でしたが、元旦の一日だけ休んで、後の364日はまったく休み無く働いていました。
我が家が例外ではなく、大半の商売屋は似たような状態でした。
 
ただ、その昔に戻れというつもりは毛頭なく、経済発展に投資は大事な要素であることは百も承知です。
しかし、肝心の日本国政府の投資戦略がさっぱり分かりません。
「プライマリーバランスが・・」なんて言っている財務省に投資戦略など無いのは当たり前です。
政府内で投資の先頭に立つのは国土交通省ですが、そのトップが公明党に独占されている事態は異常というしかありません。
また、かつて政権を担った当時の民主党も、「コンクリートから人へ」を掲げ、必要な投資まで削りました。
その名残を引きずる立憲民主党にも全く期待できません。
八方塞がりの今、現在の与野党体制に代わる政治の枠組みの大胆な変更しか道はないのだと思います。
次の総選挙における国民の意志を期待します。
 
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┃◇これからの中小企業の経営(4)             ┃
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故武岡先生の戦場での話を続けます。
数人の小部隊で300名程度の敵とぶつかった時、最初の銃撃戦で2名の部下が倒れました。
その後、いったん膠着状態となりましたが、「ここで死ぬのか」と覚悟し、「どうせ死ぬなら」と、破れかぶれの突撃を考えたそうです。
しかし思い直し、最年長の上等兵の部下に「どうする?」と聞いた時の話です。
 
CMの竹野内豊くんの部下は、スマホでタクシー会社を呼びましたが、昭和20年にスマホはありません。
若干20歳の少尉だった先生に対し、父親世代の上等兵は、こう言ったそうです。
「こっちは少尉殿を含めてわずか、あっちは数百人ぐらいいそうです。立ち向かったところで全滅でしょう。
じゃあ『逃げるか』ですが、すぐに追い打ちを掛けられ、やっぱ全滅ですな~」
これを東北弁で悠長に喋った(もちろん小声で)そうです。
上等兵は、続けて「逃げて、後ろから撃たれ、背中に穴が空いた状態で死ぬのは、少々“みっともない”ですな~」と言う。
「じゃあ、突撃するか」と立ち上がろうとした先生の服を抑えて、一転してドスの効いた低い声で「静かに! 動かないことです。敵はこちらの様子までは分からないでしょう。我々は偵察部隊で少人数ですが、動かなければこちらの人数は分からないはずです」と言う。
なるほどと納得した先生は、部下たちに「動くな!」と指示し、敵が攻めてきたら迎え撃って死のうと決意したそうです。
ところが、一向に敵は攻めてこない。
そこで、先生はその上等兵と二人で這って進んだところ、丘の縁に出た。
その眼下に見えたのは、引き上げていく中国兵たちの姿でした。
つまり、中国軍は相対している日本軍がわずか数名とは分からず、危険を感じて引き上げたというわけです。
おそらく最初の銃撃戦で敵はそれなりの損害を出し、“それなり”の敵がいると判断したのだろうと先生は推測したそうです。
 
この話から得られる教訓は、「絶体絶命の事態に際しリーダーは何をすべきか」ということです。
一番“マズイ”のは、破れかぶれの行動を起こすことです。
リーダーがまず“すべきこと”は「内外の情報を徹底的に収集し、その情報を精査すること」です。
その時、経験豊富な部下の意見を聞くことは大事です(この上等兵のような部下です)。
そうした意見を参考に、「一番に重視すべきことは何か?」そして「二番は?」「三番は?」と順位付けることが指揮官(リーダー)の役目です。
もちろん、その全責任を負う覚悟があってこそのリーダーです。
 
それでも、前号で述べた「槍の穂先」にかかる“ハシゴ”が見つかる保証はありません。
しかし、その“すべきこと”の順番で行動を起こしていくことで“ハシゴ”が現れる確率は高くなるのです。
「そんなわけ無いよ」と言われるでしょうが、私はこう考えるのです。
「どっちみちダメかもしれないが、行動を起こさなければ100%ダメ。しかし、行動を起こせば、必ず周りの事態に変化が起き、そこに“ハシゴ”が現れる可能性があるのだ」と。
 
創業企業が10年生き延びられる確率は10%も無いと言われますが、生き延びた企業は、ほぼ例外なしに、こうした経験を経ています。
次回から、私が接触してきた数社の実例を紹介したいと思います。
 
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<編集後記>
今回は、少々長くなりますが、私が実際に遭遇した出来事をお話しします。
電車の中や往来での理不尽な暴力行為のニュースが時々流れます。
以下は、昔のことですが、私が電車の中で遭遇した出来事です。
 
私が乗っていた電車に、明らかに“ヤクザ”風の男が乗り込んできました。
彼は、私の向かい側の席に座っていた若い男を「どけっ」と脅し、その席にドカッと座りました。
他の乗客は、「かかわり合いにならないように」とばかり、見て見ぬふりです。
電車は次の駅に着き、ヤクザ風の男に席を取られた若い男は、電車を降りていきました。
そして、電車の発車ベルが鳴り、ドアが閉まった・・その時です。
 
ヤクザ風の男が座った席の後の窓が開いていました。
その窓の外に、席を取られて電車を降りた若い男が立っていました。
「えっ」と思った刹那、彼は、窓の外からヤクザ風の男の頭をポカリと殴ったのです。
 
殴られた男は驚き、次の瞬間、怒ってドアに向かいましたが、電車は動き出しました。
私も他の乗客も、あっけに取られた後、笑いをこらえるのに必死でした。
で、ヤクザ風の男は、きまり悪そうに隣の車両に移っていきました。
社内はクスクスとした笑い声でいっぱいでした。
あの若い男に「乾杯!」の昔話です。
 
 
 
 
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