2020年11月15日号(国際、政治)
2020.11.29
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年11月15日号
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発行日:2020年11月14日(土)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年11月15日号の目次
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◇菅首相と学術会議
◇核兵器禁止条約
◇中国の思考法を学び、対処する(5)
◇抑止力という名の軍事力(7)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
13日のアリゾナ州の勝利で、バイデン氏の獲得した選挙人は290人となり、過半数の270人を20人上回りました。
ただ、法廷闘争に持ち込もうとしているトランプ大統領の抵抗で、最終決着は来年1月6日の選挙人投票の開票日に持ち越されそうです。
とはいえ、現在の状況を覆す結果になるとは考えづらく、バイデン氏の勝利は動かないと思われます。
ただ、社会主義勢力が勢いを増している民主党自体がバイデン氏のアキレス腱となりそうです。
まずは、主要閣僚の人選に注目です。
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┃◇菅首相と学術会議 ┃
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読者のみなさまは、タイトルを見て「学術会議委員の任命拒否問題か」と思われたかもしれませんね。
そうではありません。
就任2ヶ月で見えてきた菅首相の思考の傾向に注目しています。
菅首相は、内面的には感情性向の強い性格ですが、最後は勝算と利益で結論を出す合理主義者だと思います。
時に感情が表に出ても、すぐに合理主義者の顔に戻ることで、そのことが推察されます。
それゆえ、冷たい印象を与えますが、リーダーはそれで良いのだと思います。
後は、自分の内面との葛藤に負けないかどうかです。
一方の学術会議は、問題だらけです。
梶田議長は物理学者ですから、そもそも、こうした組織の長には不向きな方です。
ノーベル賞の肩書で担ぎ上げられただけの不運な方です。
学術会議を実質的に牛耳っているのは、政治関係の学者さんたちのようです。
これらの方々には単純平和主義の信奉者が多いように見受けられます。
1950年から3回も「軍事目的のための科学研究を行わない」という趣旨の声明を出していることからもそうした傾向が伺えます。
学術会議から圧力を掛けられた大学は、話題になっている北大だけではありません。
筑波大学などの国公立大学も執拗な圧力を掛けられ、さらに各種の研究機関や東海大学のような私立大学にまで、その圧力は及んでいます。
こうした「軍事研究に反対」という大義名分を掲げた学者さんたちこそ、学問の自由を侵害しているといえるのではないでしょうか。
そもそも、平和利用だけ、軍事利用だけの研究などありえません。
今では必要不可欠なインフラとなっているインターネットも、開発したのは米国国防総省ですから、当然、軍事研究がスタートです。
その最初の実証実験は、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー分校、イリノイ州立大学の3大学をつないで行われました。
つまり軍学共同研究だったのです。
自動車のナビゲーションシステムなどで広範に活用されているGPSも、もともとは軍事研究から始まった技術です。
学術会議は、これらすべての技術を否定するのでしょうか。
日米欧など多国籍の物理学者が、東北・北上山地に巨大実験装置の次世代加速器「ILC(国際リニアコライダー)」を誘致・建設する計画を立てました。
ところが、日本学術会議は、2018年12月に、「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」を出し、軍事利用の恐れを理由に「支持するには至らない」と反対したのです。
技術に平和限定も軍事限定も無いのは常識中の常識です。
その技術を何に使うかという利用法の問題です。
また、たとえ軍事目的だとしても、国家の防衛に技術は必要不可欠です。
それらをひとくくりにして否定する彼ら学者は、学者ではなく政治活動家です。
彼らに関して、特定の政治勢力の影響化にあるという疑惑もあります。
今の学術会議は解散し、改めて純粋な民間組織として再出発すべきと考えます。
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┃◇核兵器禁止条約 ┃
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核兵器禁止条約」の批准国・地域数が、条約の発効に必要な50ヶ国に達したことで、来年1月22日に効力を持つ国際条約となります。
しかし、今の核兵器保有国は、ただの一国も核兵器を手放すことはないと断言できます。
しかも、国連常任理事国の5カ国はすべて核兵器保有国です。
ということは、国連安保理が核兵器廃絶の決議を行うこともあり得ないということになります。
かつて、世界に7万発と言われた核爆弾は、現在は1万3400発に減っています。
それでも、地球上の全人類を絶滅させるのに十分な量です。
しかも、小型化かつ精密さが進化し、ピンポイントの局地戦で使えるとまで言われています。
核兵器使用のレベルが下がってきていることは確かですし、偶発的な核戦争が起きる可能性は高くなっています。
こうした情勢に、「唯一の被爆国」である日本が条約に参加しないことを非難する声が内外で高まっています。
ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)は、「禁止条約の発効は核兵器の時代の終わりの始まりだ」として、「被爆国の日本が核兵器の正当性を訴えるのは許されない」と日本政府の姿勢を非難しています。
しかし、中国、ロシア、北朝鮮と、政治体制を異にし、核兵器を保有する仮想敵国に囲まれている日本は、地理的、政治的条件の違う条約賛成国のように簡単に条約参加に踏切ることができません。
米国の核抑止力に頼る現状からも米国が反対する条約には参加できないでしょう。
「核攻撃なんか、あるわけないよ」と腹をくくり、日米安保条約を破棄してもかまわないと覚悟して条約参加に踏み切る道も、もちろんありますが、どうでしょうか・・
「平和」という言葉は、平時においては誰も反対することができない強い言葉です。
しかし、いったん戦争状態になったとたん、まったく無力になる弱い言葉です。
高校生の時、トルストイの名作「戦争と平和」を1週間かけて読みました。
その時、結局、人間は平和を願いながらも戦争から逃れられない宿命にあるのだと思いました。
今は、当時より深い考えができるようになっていますが、この宿命論は変わりません。
私は、理想主義者ではなく現実主義者です。
会社の理念は理想といえる内容です。
しかし、現実を基にした戦略の立案・実行でなければ過酷なビジネス社会を生きていけません。
それ故、現実主義は一種の生存本能です。
そうした生存本能から考えると、核兵器禁止条約はファンタジーにしか思えません。
核戦争をなくす唯一の現実的な道は、地球が一つになることです。
ゆえに、宇宙開発を国際協力で推進することが、その希望への一里塚ではないでしょうか。
再び月へ人類を運ぶアルテミス計画に日本も参加します。
私は、この道が人類同士の戦争を無くす世界につながることを願っています。
しかし、その時代が来ても、人類が核兵器を手放すことはないでしょう。
広大無限な宇宙は、我々の想像を遥かに超えた、厳しく危険に満ちた世界です。
どんな「未知との遭遇」が待っているかもしれません。
丸腰でそんな世界に入ってはいけないでしょう。
さて、発効から1年以内に締約国会議が開かれます。
保有国や未締約国もオブザーバーとして参加できます。
日本は参加すべきか否か、難しいところです。
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┃◇中国の思考法を学び、対処する(5) ┃
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日本人の多くは、他国との経済・文化交流は、政治と切り離してできると思っています。
しかし、中国のような独裁国家相手には、政治と分離した交流は不可能です。
中国は、親中派だったオーストラリアの前大統領時代、経済を武器に深く入り込んでいました。
こうした「目に見えない侵略」に気づいたオーストラリアの現政権は、見えない侵略に対する防衛のための立法措置に取り組んでいます。
中国に脅迫されながらも最近のオーストラリアが屈しないのは、こうした背景があるからです。
民主主義国家にとって大事なことは、安全保障があってはじめて民主主義、自由主義が保障されると
いう、あたりまえの事実を認識することです。
中国の侵略は、孫子の兵法に基づいて行われています。
これを習近平主席は「魔法の武器」と呼び、兵法の駆使を各機関に指示しています。
その中核にいるのが、共産党中央委員会直属の機関「統一戦線工作部(略称、統戦部)」です。
この機関は、海外工作費に年間6億ドル(約6300億円)を使っているということです。
3兆円ともいわれる米国CIAの予算に比べれば少ないといえますが、外国への工作費用だけという点に要注意です。
シャープ侵略といわれる全体の予算額は、闇の中です。
習近平主席が唱える「中華民族の偉大な復興」の戦略は、次の二段階(平和・軍事)に集約されます。
(1)「平和的」に中国経済圏を膨張させる「一帯一路共栄圏構想」の実現
(2)組織改革や軍備拡大により統合作戦能力を高めた人民解放軍によるアジア・西太平洋地域への段階的「軍事進出」
しかし、第一段階の一帯一路は、その展開先で激しい反感を引き起こし、現地住民の心を勝ち取ることに成功しているとは言い難い状況にあります。
2018年9月、ナウル共和国で開催されたPIF(南太平洋地域・太平洋諸島フォーラム)の首脳会議で象徴的な出来事が起こりました。
中国外交部特使団の杜起文団長が、格上の各国の大統領や首相たちを差し置いて先に演説しようとして、議長国ナウルのバロン・ワカ大統領に制止されました。
それに対し、杜団長は、謝るどころか、逆ギレして退場してしまったのです。
中国の外交官が品性に欠け、傲慢であることが世界に示された1件でした。
議長のワカ大統領は、「杜氏は非常に無礼で大騒ぎを引き起こし、一当局者という立場でありながら、かなりの時間にわたって首脳会議を中断させた。おそらく大国から来たといって、われわれをいじめたかったのだろう」と皮肉を込めて指摘しました。
このように、度量に欠ける中国の一帯一路は、中世時代の中国が周辺国に強いた朝貢冊封関係に他ならないことが暴露されてきているのです。
最初は、平和的で相互利益をもたらすと喧伝されていた一帯一路共栄圏ですが、いまや「参加国の資源が狙い」「土地買収で地元を浸食」「現地人を人間扱いしない」「カネと大量移民による乗っ取り」「縁故主義で腐敗している政府の買収」「暴利をむさぼる外交」など、当事国の国民の評判はガタガタです。
一帯一路で甘い汁が吸える現地の特権階級を除き、現地住民の人心は中国から離れています。
習近平主席の「中華民族の偉大な復興」は、第1段階の平和的進出において、すでに破綻しているのです。
この状態に業を煮やした習近平主席は、「国内問題だ」として、人民解放軍に台湾への軍事侵攻を指示したという情報も入ってきています。
おそらく、台湾侵攻の緒戦において人民解放軍は大勝利を収めるでしょう。
しかし、台湾軍は徹底抗戦を続けるでしょうし、台湾人民の人心は決して中国になびかないでしょう。
そうしている間に、米国や周辺国(豪州、インドなど)が結束し、軍事支援に踏み切る可能性が高くなります。
こうした事態になった時、日本も支援の輪の中に入る覚悟が必要です。
その結果、「中華民族の偉大な復興」そのものは崩壊となり、習近平主席の失脚で幕を閉じます。
しかし、こうしたことが起きても、朝鮮半島の二カ国は中国に従うでしょう。
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┃◇抑止力という名の軍事力(7) ┃
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中国の歴史に詳しい方はもちろん、TVや映画などで中国の歴史ドラマを観られた方なら、合従連衡(がっしょうれんこう)という言葉はご存知かと思います。
紀元前の春秋戦国時代、多くの国が相争う中で強大になった秦国に対し、他の六カ国が連合を組んで対抗したことが語源と言われていますが、そう単純な話ではありません。
合従(がっしょう)とは、縦(つまり南北)につながった六カ国が秦に対抗したことを指し、連衡(れんこう)とは、秦がその六カ国を分断し、それぞれと別々の同盟を組む横糸(東西)の関係を指す言葉です。
この言葉は、戦争というより、外交術を指す言葉です。
現代でいうなら、アジアで最大の力を持つに至った中国に対し、周辺の日本、豪州、インドが連合を組み、さらに遠方の米国を後ろ盾にして、他のアジア諸国もこの連合に加えようとする外交戦略です。
これに対し、中国が、それらの国々と個別の関係を結び、この同盟を分断させようという駆け引きといったら良いでしょうか。
この合従に入らず、中国に媚びを売る韓国は、中国の真っ先のターゲットになっているわけです。
しかし、中国にとって、太平洋への入口を持たない韓国を味方にする利点は薄く、子分扱いから抜けることが出来ない宿命です。
韓国は、日米を核とする連合に加わり、中国に対する橋頭堡の役割を果たすほうが自国の国益にかなうはずです。
だが、それが分かっていても、小中華思想から抜け出せない国民性が障害となり、反日思想から抜けることは無理なようです。
日本は「朝鮮半島は中国の属国から抜けられない」と認識し、対馬海峡を防衛ラインとする防衛戦略を早期に組み立てる必要があるのかもしれません。
「インド太平洋」の合従は日米同盟が基軸となりますが、地理的に遠い米国の軍事力に全面的に依存するわけにはいきません。
日本単独でも中国の侵略から尖閣を含む日本国土を守るだけの防衛力を備える必要があります。
もちろん、中国が全力をあげて攻撃してきた場合、守り切ることは難しいので、後方支援的に「自由で開かれたインド太平洋」戦略を、早期に実効性のあるものに進化させる必要があります。
まごまごしていると、中国が仕掛けてくる連衡で、この連合が崩されてしまいます。
外交とは、平和な付き合いではなく戦争の一形態です。
孫子は、戦争とは「謀攻、外交、野戦、城攻」の順に行うものと教えています。
尖閣諸島に対する中国の領海・領空侵犯は、もはや「野戦」と呼ぶべき状況になってきています。
中国による城攻(つまり尖閣奪取)が始まる前に、外交と野戦の組み合わせで、尖閣防衛を果たす必要があります。
一帯一路が行き詰まりを見せ、習近平主席の焦りは、かなりのものと思われます。
その打開を図るため、台湾への武力攻撃、その前哨戦としての尖閣奪取の可能性は高まっていると考えたほうが良いでしょう。
その武力侵攻を諦めさせるために、日米豪印の合従の重要性は高まっているのです。
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<編集後記>
コロナ禍の長期化に伴い、世界的に自分と相容れない存在を排撃する傾向が強まっています。
国レベルだけでなく個人レベルでも、この傾向が強くなっているように感じます。
それは、自分に自信が持てない人が増えてきたからではないかと思うのです。
その自信のなさを他人攻撃でバランスしようという心理が働いているのではないでしょうか。
他人攻撃の前に、まず自分の対する自信を高める努力を実践したいと思います。
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