2022年11月15日号(国際、政治)
2022.11.16
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年11月15日号
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発行日:2022年11月15日(火)
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2022年11月15日号の目次
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★中国はどこに行く気なのか?
★中間選挙後の米国はどこに行くのか?
★自民党は、本当に統一教会と手を切れるのか(後半)
★戦争の終わらせ方
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
中国の共産党大会も、米国の中間選挙も、巷の予想とは違う結果となりました。
共通項として言えるのは「両国の未来は明るい・・」とはいえないことです。
しかし、両国とも大国ですから、世界へ与える影響は“大”です。
両国には、その責任を十分に考えた行動を期待したいものです。
今号は、その両国の政治の解説から始めます。
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┃★中国はどこに行く気なのか? ┃
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胡錦濤前国家主席の異様な退出劇と習近平主席の取り巻きで固めた人事。
今年の共産党大会は、中国の未来に懸念を抱かせる形で幕を閉じました。
習近平主席が2期10年とされていた任期のルール(といっても明文化されていたわけではありませんが)を破って3期目に入ることは確実視されていました。
それでも、最高幹部の人事変更は小規模になるとの報道が大半でした。
しかし、共青団(共産党青年団)派を完全に排除し、習近平主席の子分で固めるという人事に世界は驚き、かつ、中国に対する警戒感を高めています。
この警戒感は、台湾侵攻という軍事面だけでなく、経済面での停滞ないしは後退への懸念から来ています。
経済通の李克強(リークチアン)首相と汪洋(ワンヤン)が排除され、次世代のホープと目されていた胡春華(フーチュンフア)に至っては、政治局委員からも外されました。
その代わりに、上海市党委員会書記の李強(リーチャン)や北京市党委書記の蔡奇(ツァイチー)が最高幹部のチャイナ7に抜擢されました。
彼らは、習近平主席の側近(というより“腰巾着”と揶揄されている・・)であり、新型コロナ対策や強制立ち退きなどでの失政が批判を浴びている人物です。
それでも、強引にこの人事を断行した習近平主席の狙いとは何でしょうか。
習主席は、経済よりも自分に対する忠誠心を重視した人事で、軍事力こそが国の強さであり、外国に屈しない「戦狼外交」を強めていくことを内外に示したのです。
彼は「東昇西降(西欧は衰退し、中国は栄える)」を信じ、「中国はもう西側先進国を師とする必要はない。外国と歩調を合わせる必要もなく、中国の意思で勝手に振る舞う」との意思を固めたと理解すべきでしょう。
中国の軍事研究家であるスタンフォード大学のオリアナ・スカイラー・マストロ研究員は、次のように指摘しています。
「中国が到達したいと考えている地点は2つある。1つ目は『中国の力が突出している状況で、自国が望んでいることを何でもすることができ、それに誰も口出しすることができず、ネガティブな反応も示してこない地点』。そして2つ目は、『主に当該地域の国々がそれぞれの決定を下す際に中国の志向に合わせざるを得ないという地点だ』」。
まさに、中国が世界の覇者となる地点こそが習近平主席の目指す場所という見方です。
しかし、一方で、李克強を始めとする共青団派が、習主席に抗議の意味で全員身を引いた結果の人事との見方もあります。
李克強は、かつて深圳(しんせん)の塩田港を視察した際にこう語りました。
「黄河と長江(揚子江)が逆流することができないように、中国の開放は引き続き推進する。一部の人が中国は世界一だと言っている。そう考えるのはいいが、『山外有山(山の外に山があり)』も忘れてはならない」
つまり、中国の外には、はるかに大きな世界がある。そうした大きな世界と交わってこそ中国の未来はあるとの言葉です。
共青団派は、貧困の中から自力で道を切り開いてきた苦労人のエリートが多いと言われています。
共産党幹部のお坊ちゃん集団と揶揄される派閥に属する習近平主席とは、しょせん水と油です。
政治は「王道を目指すか」あるいは「覇道を目指すか」であり、李克強は前者、習近平は後者です。
そして、その結果を負うのは中国国民に他なりません。
自分の国がどちらへ行こうとしているのか、中国国民一人ひとりが考えて欲しいものです。
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┃★中間選挙後の米国はどこに行くのか? ┃
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今回の中間選挙は「民主党が善戦して上院の過半数を維持し、下院の敗北を予想以下のレベルに抑えた」という表面より、トランプ前大統領の影響力が落ちてきたという裏面にスポットが当たっています。
予想どおり、トランプ氏は、また「選挙は盗まれた」と騒ぎ出しています。
こうした芸のない話に“うんざり”しますが、根っからのトランプ支持派でもない限り、もう信じる人は少数でしょう。
こんな子供じみた言い分が通ってしまったら民主主義が壊れてしまうという危機感が、若い人を中心に広がっているからです。
米国では、こうしたトランプ派の言い分を“big lie(ビッグ・ライ=大嘘)”と呼んでいて、トランプ派のことを「トランプ・カルト」と呼ぶ声も増えています。
こう呼ばれても“big lie”にしがみつきたがるトランプ支持者には共通点があります。
かつての「白人男性優位社会」を取り戻したいという思いの強さです。
つまり、女性、マイノリティー、若者、低所得者層などが、自分たちと同等以上の存在になることは決して認められない。まして、同性愛者などのLGBTは欠陥人間であり、社会の表に出てはいけない存在なのだという、男性を中心とした白人の既得権益者としての感情が爆発しているのです。
トランプ氏が被っている赤い帽子に書かれているスローガン“MAGA=Make America Great Again“が「過去のアメリカに戻ろう」という標語だということを知らない方はいないでしょう。
その「過去」とは、第2次世界大戦後の1950年代、軍事力も経済力もアメリカがダントツの世界トップだった時代であり、
白人男性だけがあらゆる権利を持って社会に君臨し、女性は、白人でも主婦かせいぜい秘書や事務員などの男性の下で働く存在だった時代です。
それが60年代の公民権運動により有色人種に対する差別が公にできなくなり、70年代になると女性の社会進出が進み、白人男性優位が崩れてきました。
それでも80年代までは、まだ白人男性優位の時代が続きましたが、白人人口の減少と移民の増加により企業がダイバーシティを先取りし、法律がそれを追いかける形が本格化してきました。
女性やマイノリティーを一定数経営陣に加える動きも進み、今や映画やドラマ、コマーシャルなどでは、あらゆる肌の色や性別をバランスよくキャスティングするのが普通になっています。
もはや、マイノリティーや女性に関する差別的な物言いは、たとえジョークであっても許されなくなり、社会的地位の高い人や経済力がある人でも「#me too」運動により、その地位を失うリスクも高まってきています。
ただし、こうした動きに危機感を抱く層の人たちが一定数存在し、彼らの思いを代弁する形で登場したのがトランプ氏だったわけです。
彼は、タブー視されることを恐れず、人種やジェンダー差別の発言をあからさまに行い、悪びれる様子も見せない。
堂々と白人至上主義者を賛美し、「古き良きアメリカを取り戻せ」と単純に叫ぶ戦術が、新しい時代に不安を抱く人々を引き寄せているのです。
こうした層の人々は、今回の選挙結果に強烈な不満を抱いていて、トランプ氏を批判する政治家、それもマイノリティーや女性議員、選挙関係者に対し「殺してやる」などの脅迫状が連日届いているということです。
また、彼らは、黒人やアジア人、もちろんLGBTQの人々、さらにはユダヤ人などに対してネットでヘイトクライムを浴びせ続けています。
ただし、共和党の首脳部は同調せず、トランプ氏では2年後の大統領選も負けるとの危機感を募らせています。
こうした党内の動きに逆の危機感を持ったトランプ氏は、党上院トップのマコネル氏を「ポンコツ」と呼び、党の選挙資金の使い方を間違えたと批判して「あいつは最悪だ!」と口汚く罵っています。
同調するトランプ派議員とマコネル氏ら党指導部との対立が深まれば、2年後の大統領選で共和党は敗北する公算が高くなるでしょう。
しかし民主党にしても、次の大統領選には82歳となるバイデン大統領で戦えるかという不安が増しています。
民主、共和両党とも、若い候補者が躍り出る素地は整いつつあるといえるのかもしれません。
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┃★自民党は、本当に統一教会と手を切れるのか(後半) ┃
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誰もが知るように、安倍元首相の祖父である岸元首相はA級戦犯被疑者としてGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に逮捕され、巣鴨プリズンに収監された人です。
結局、不起訴処分で釈放されましたが、公職追放令で政治活動はできなくなっていました。
その岸氏が住んでいた邸宅の隣に世界基督教統一神霊協会(旧統一教会)があり、政界復帰を睨んで岸氏は交流を深めていったのです。
特に、統一協会の関連団体「国際勝共連合」への接近は、日本に共産主義が浸透することを恐れた米国の思惑とも一致し、岸氏の復権に大いに役立ちました。
戦前・戦中に要職についていた保守政治家の多くは、岸氏と同様A級戦犯被疑者となり政界から追われていました。
公職追放令が解けても、彼らが政治家として復権することは容易ではなく、岸氏を頼る者が周囲に集まってきたのです。
岸氏は、統一教会の選挙協力を仕切ることで彼らの復権を助け、自民党の主力政治家の地位を獲得していったわけです。
統一教会の人間も日本人の顔をして日本語を話しますから、支援を受けた政治家の多くは他の支援者との違いが分かっていたかどうかは不明です。
また、分かったところで、選挙への不安から協会と決別することは難しかったでしょう。
こうして、国民の知らないところで自民党の汚染は広がっていったのです。
それが、図らずも衝撃的な銃撃事件により、この汚染が明るみに出されたわけです。
政権担当能力のある野党がいたなら、間違いなく政権交代です。
しかし、「今の野党じゃなあ・・」との国民の諦め(?)のおかげで自民党の政権は揺るがないのです。
こうした政治の不毛状態が一番の危機といえます。
野党は、この問題を与党追求の道具にするのではなく、被害者救済と被害拡大を防ぐという観点に立ち、与党との法案制定協議に臨んで欲しいものです。
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┃★戦争の終わらせ方 ┃
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戦争で勝利を得ることは、防衛側に比べて攻撃側のほうが格段に難しいものです。
防衛側の「勝利の方程式」は至ってシンプルです。
攻撃側を撤退に追い込むことだけが勝利であり、それが出来なければ敗北です。
現在のウクライナ側の勝利への道を考えれば、理解できると思います。
それに対し、攻撃側の「勝利の方程式」は複雑です。
防衛側を皆殺しにしてしまえば勝利は確実ですが、人が一人もいなくなった土地を得ても意味がありません。
となると、攻撃側の勝利は侵攻された側の「抵抗力」を完全に削ぐことでしか得られないことになります。
では、攻撃を受けた側の「抵抗力」を考えてみましょう。
戦争における抵抗力の3要素というものがあります。
それは、「戦闘力」、「領土」、「防衛意思」で、抵抗力を削ぐということは、この3つを潰すことになります。
「戦闘力を潰す」は単純です。
もはや軍事的抵抗を続けることができない状態まで兵器を破壊し、兵隊を無力化すれば良いのです。
「領土を潰す」とは、相手の国土を占領し、その国土から新たなる戦闘力が生ずるのを防止することです。
「防衛意思を潰す」は明白ですね。
降伏以外は考えられないほどに防衛側の意思をくじくことです。
ウクライナに侵攻したロシアは、この3要素を理解していなかったようです。
1番目の「戦闘力を潰す」は、欧米の軍事支援をまったく考えなかった時点で破綻しています。
2番目の「領土を潰す」は、ウクライナの国土の広さを考えれば、完全なる兵力不足です。
3番目の「防衛意思を潰す」に至っては、ウクライナの国民意識を全く軽視していました。
この3要素のうち、軍事力で潰せるのは「戦闘力」だけです。
残りの2つは、軍事力より政治力に重きが置かれる要素です。
1800年代初頭の「戦争論」の著者クラウゼヴィッツは、「戦争は他の手段を持ってする政治の継続である」と述べました。
つまり、戦争は政治の一要素の手段に過ぎないと言っているのです。
政治の根幹は、軍事力より経済力にあります。
どんな国であれ、戦争遂行能力はGDP(国内総生産)に比例していて、経済体力を超えて戦争を遂行することはできません。
日米の経済力の差を無視して太平洋戦争を起こした日本の例は、教訓中の教訓です。
ウクライナの戦争は、ロシアvsウクライナではなく、西側諸国vsロシアの戦争ですからGDPの差は圧倒的です。
また、政治における軍事力の行使は「戦略」の一環ですが、その遂行は戦術の問題であり、その根幹は正確な情報の収集にあります。
戦前の日本と現在のロシアの共通項は、「作戦遂行には正確な情報が必要」との大原則を無視したことにあります。
米国は、CIA(中央情報局)、BIR(国務省情報調査局)、DIA(国防情報局)を中心に15の情報機関から成る「情報コミュニティ」を有しています。
今回のウクライナ侵攻に対しても、ここから得られる広範で精緻な情報からロシアの行動を先読みし、ロシアの電撃作戦の詳細をウクライナに伝え、防衛策を指導していました。
さらに、国際社会に情報を発信し、英国からは共同でのウクライナ支援の約束を取り付けていました。
中国にも情報を発信し、ロシアとの共同歩調を採ることがないよう圧力を掛けていました。
そして、ロシアには偽情報を流し、侵攻が成功裏に終わるかのような幻想を抱かせていました。
結果、ロシアは主導権を奪われて後手に回り、ウクライナに対応の暇を与えてしまい、国際社会からは矢継ぎ早の厳しい経済封鎖を受ける羽目に陥ったわけです。
ロシアが戦争の終わらせ方を考えていなかったわけではありませんが、正確な情報が入らず、戦術の遂行が頓挫し、戦略が完全に狂ってしまったわけです。
経営にも通じることなので、どんな企業も「情報の価値」を一段と高めていくことが大事ですね。
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<編集後記>
「死刑(執行)のはんこを押すだけ・・」の葉梨康弘法相をクビにした岸田首相は、相変わらずの紋切り口調で「誤解を招くことがないよう、発言はくれぐれも丁寧に、慎重に行ってもらわなければならない」と述べました。
巷の声は「誤解を招くってなに? どうして『バカ野郎、オマエはクビだ』って言えないのか」でしょうが・・、首相の“聞く力”では聞こえないのでしょうね。
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