2022年5月15日号(国際、政治)

2022.06.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年5月15日号
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発行日:2022年5月13日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年5月15日号の目次
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◇米国の役割
★ウクライナ侵攻が教えていること(その1)
★民主主義の脆さ(その1)
◇軍隊という組織
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
ロシアのウクライナ侵攻とウクライナの予想外の善戦は、我々の世界観を大きく揺さぶっています。
平和の大切さは言うまでもありませんが、「願うだけでは平和は来ない、守れない」と、突きつけられた現実は重たいです。
「悪は善より強く、人はその悪を生み出す存在」という言葉がありますが、悪を戦争、善を平和と言い換えると、暗澹とした思いに囚われます。
 
前月号で3つのシリーズを終えましたが、新たな論点で国際問題、政治問題を論じていきたいと思います。
 
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┃◇米国の役割                           ┃
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5月9日のプーチン大統領の演説は、大方の予想を裏切って、拍子抜けする内容でした。
これまでの主張を繰りかえすだけの内容に、本人の疲れの濃さを感じました。
 
そもそも、5月9日を「戦勝記念日」として、大々的な軍事パレードを誇示するのはロシアだけです。
しかし、欧州戦線でナチスドイツを倒した主役はロシアではなく米国という事実は、ごまかしようがありません。
その米国では、なんのイベントも行いません。
 
ロシアと同様、中国は9月3日を「抗日戦争勝利記念日」として大々的に祝いますが、これも滑稽な話です。
日本を降伏に追い込んだのも米国であり、中国でないことを知らない日本人はいません。
しかも、日本と交戦していた当時の中国は、今は「台湾」となっている中華民国であり、共産党軍はゲリラ的な戦いしかしていません。
 
米国は、ドイツ降伏日の5月8日を「V-E day」、日本降伏日の9月2日を「V-J day」と呼ぶだけで式典などは行いません。
では、なぜ、中露両国が、そんなにもこだわるのかといえば、国内向けのアピールの道具だからです。
77年も昔の、それも自分に都合よく解釈した歴史を盛大に祝う茶番にすぎません。
 
ところで、ロシアを今回の暴挙に踏み切らせるキッカケを作ったのは米国バイデン大統領の「軍事介入しない」の発言といってよいかと思います。
世界最大の経済力と軍事パワーを持ち、民主主義国家のリーダーでもある米国の責任と役割は重いのです。
そこを認識して、ロシアや中国の野望を止める役割が求められているのです。
その意思を強固に表示した上で、欧州や日本に連携を求め、世界平和の維持に尽力すべきなのです。
そこに次世代の大国インドが加わって欲しいのですが、その不透明さが、今後の世界に与える不安要因となるかもしれません。
日米豪印のクアッド(QUAD)の首脳会談が5月24日ごろ、日本で開催されることになっています。
共同声明の内容とインドの姿勢に注目しています。
 
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┃★ウクライナ侵攻が教えていること(その1)            ┃
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ロシアによるウクライナ侵攻は「明日は我が身」という冷徹な現実を日本国民に突き付けています。
その思いから、ためらいがありましたが、このシリーズを書くことにしました。
 
まず、以下の3つの原則が浮かんできました。
第一、他国侵略を目論む独裁国家は、平和的融和策や経済制裁では止められない
第二、侵略に立ち向かうには、国民の戦い抜く意思と有効な軍事力の保持が必須
第三、有事に即応できる軍事同盟が必要
 
この原則の中に国連を入れられないことが、今の世界の大きな課題です。
国連は、誰もが知るように、米英仏ソ中の5カ国を常任理事国として1945年10月に発足しました。
常任理事国には、世界の警察官として世界平和を守る義務を負って特権が与えられました。
この5ヶ国だけが安保理での拒否権を持ち、核兵器を持つことができるのは警察官だからです。
核に関して、それ以外の国は丸腰とされたわけですから、5カ国にはそれ以外の国を守る義務を負っているわけです。
しかし、インド、パキスタン、北朝鮮は公然と核武装し、公言はしていませんがイスラエルも核を持っていると言われています。
しかし国連は、北朝鮮だけに制裁を課しただけで、他は知らん顔です。
 
そうこうしているうちに、米国は「世界の警察官を辞める」と言い出しました。
中国は、自分勝手に縄張りを広げるヤクザになってしまったし、英国とフランスは、交番から動かない怠け者警官になってしまいました。
ロシアに至っては、とうとう警察官が押し込み強盗になってしまったというわけです。
グテーレス事務総長がプーチンに会いましたが、てんで相手にされませんでした。
そもそも「事務総長」という役職に、どんな権限があるというんでしょうか。
「ただの事務屋さん?」と揶揄されそうです。
 
その国連重視を志向してきた日本外交は完全に行き詰まったといえます。
ロシア、中国、北朝鮮という核を持つ独裁国家に囲まれ、かつ領海領空侵犯が日常化している現状を考えれば、防衛戦略の練り直しは待った無しです。
 
本メルマガで何度も言及していますが、中国が尖閣に軍事侵攻しないのは、外交軋轢や経済制裁を恐れているからではありません。
在日米軍と自衛隊が一体になった軍事力に勝てないからです。
ロシアが「北海道はロシアのものだ」と脅しても、侵攻する可能性が薄いのも同じ理由です。
 
ただし、自衛隊には大きなアキレス腱があります。
それは、武器弾薬を補充する兵站の脆弱性です。
憲法違反との指摘を恐れ、弾薬や兵器部品の備蓄は心細いのが現実です。
付き合いのある元将官が、そのことを嘆いていました。
「1ヶ月も戦えるかどうか・・」
しかし、ウクライナ侵攻の状況を見れば分かるように、最低1年分は必要です。
こうした状態の分析と打開策を議論しない国会には首をひねるのみです。
 
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┃★民主主義の脆さ(1)                      ┃
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5年半前の米国トランプ大統領の誕生から今回のウクライナ侵攻に至る過程は、民主主義の脆さを浮き彫りにしているといえます。
特に、民主主義国家群のリーダーである米国の振れ幅の大きさは、世界を不安定にさせている大きな要因となっています。
 
現在、米国ではバイデン大統領に対する失望が広範に広がっています。
私の義弟を始めとする米国の知人は民主党支持者が多いのですが、言葉の端々から強い失望感を感じます。
同時に、未だ根強いトランプ前大統領への支持の高さを危惧しています。
今年秋の中間選挙の結果によってはトランプ氏の復活が現実化する恐れがあります。
なぜなら、トランプ氏を大統領に選出した要因が一向に改善していないからです。
 
ラストベルトに代表される製造業の落ち込みや違法移民の増加は、バイデン政権になっても改善される様子が見えません。
そのことが「トランプだったら・・」という根拠のない待望論が維持される原因を作っています。
 
バイデン大統領が就任後に真っ先にやるべきことは、その待望論を払拭することでした。
しかし、アフガニスタンからの撤退という失態を犯した上に、バイデン大統領自身の失言や放言、虚言といったことが続き、統治能力に疑問を生じさせてしまいました。
そこへ、ロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったという事態が生じました。
侵攻の危機が高まった時に、バイデン大統領は早々と「軍事的対抗手段は取らない」と発言してしまいました。
その言葉だけでプーチンが侵攻を決断したとは思いませんが、何らかの影響を与えた可能性は排除できません。
 
バイデン大統領の発言は、ロシアとの間で核戦争が起きることを危惧したというより、腰が引けてしまったと受け取られています。
そのことへの後悔からか、ウクライナへの軍事支援は大方の予想を超える早さと規模です。
結果としては良い方向に向かっているといえますが、ロシア軍の予想外の弱さに助けられている側面は否定できません。
 
一方のプーチンは、一応、民主選挙で選ばれた大統領です。
少々、陰ってきたとはいえ、いまだ80%以上の支持率を得ています。
この事実は、民主主義の欠陥を証明した形になっています。
さりとて、「では、どんな政治体制がよいのか?」と問われると「民主主義・・」という答えしか浮かんできません。
熱烈な宗教信者であれば「神が・・」と言うのでしょうが、それでは答えになりません。
 
さて、次回は、もうひとつの民主主義の弱点について話をしたいと思います。
 
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┃◇軍隊という組織(1)                      ┃
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ウクライナ侵攻では、ロシア軍の“意外な弱さ”が露呈しています。
このことは、「日本の自衛隊は大丈夫なのか」という反面教師にもなっています。
しかし、77年の平和に慣れた日本国民の意識からは「軍隊」への関心も理解も薄いものになっています。
 
戦後生まれの私も同様なのですが、環境が少々違っていました。
本メルマガで何度も言及していますが、父は旧日本陸軍の将校で、最前線で米軍と戦った過去を持っていました。
また、父の男兄弟で、子供の時に亡くなった者を除く4人のうちの3人が父と同様に軍人でした。
うち、兄の一人は沖縄戦で戦死、弟はシベリア抑留で命を落としました。
死亡率5割ですが、前線における若い将校の死亡率は、そのぐらいでした。
(ちなみに陸海軍の戦闘機パイロットの死亡率は9割と言われています)
 
そうした軍人家系の中で育った私は、父たちから、戦場での実体験の他に、軍隊という組織について様々な話を聞きました。
さらに、40代からは孫子研究の第一人者であった故武岡先生に学ぶことができました。
先生も、実戦を戦った旧陸軍将校で、戦後は陸上自衛隊で陸将として多くの自衛官を指導してきました。
その縁もあり、私は自衛隊の実戦演習に参加したことがあります。
 
そうした話や経験から今回のウクライナ侵攻におけるロシア軍の戦略や行動を見ていると、ロシア軍の組織上の欠陥がよく分かります。
前段が長くなりましたが、今回から数回に分けて、軍隊という組織について論じてみます。
私の力には余るテーマですが、会社組織にとって参考になることも多いと思います。
 
問題のロシア陸軍は、軍管区単位で編成されていて、以下の構成になっています。
上位組織から、軍、軍団、師団、旅団、連隊、大隊、中隊、小隊、分隊です。
世界標準的な編成といえます。
最小の分隊は5~10人編成で、最上位の軍は10万~20万というところでしょうか。
今回の侵攻兵力は17~20万と言われていますが、東・南・北の三方向からの侵攻です。
ということは、軍としてではなく、軍団単位での侵攻であることが分かります。
全体の指揮を取る軍司令官の存在が見えないことも、そのことを裏付けています。
 
親露派が一定の支配をしている東部地区へ侵攻した軍団、および2014年から占領を続けるクリミヤ半島を起点とする南部地区へ侵攻した軍団に比べて、ベラルーシから侵攻した北部地区の軍団は、後方からの兵站に難があり、敗退という結果になっています。
この軍団の司令官を待っている処分は過酷なものになるでしょうが、敗退はプーチンが最高司令官としての資質に欠けることを意味しています。
 
三軍団を統括指揮する軍司令官がいなかったということは、軍団単位の各司令官が、連携なくバラバラに作戦を進行させていたということを意味しています。
大失敗に終わった旧日本軍のインパール作戦と似たような状況になっていたと思われます。
インパール作戦では、牟田口廉也中将が全体の指揮を取る立場でいたのですが、彼の作戦立案は願望が先走り過ぎ、机上の空論だったと言われています。
その結果、三方向に分かれて侵攻した各軍団が互いに呼応しながら進撃することはなく、それぞれが孤立し、かつ兵站線が寸断され無惨な結果に終わりました。
 
まったく同様の愚を、現代のロシア軍が冒しているといえます。
遅まきながら、プーチン大統領は全戦域を統括する司令官に、ロシア連邦軍の南部軍管区司令官を務めるアレクサンドル・ドゥボルニコフ大将を任命しました。
同大将は、シリアでの残虐行為の報道が伝えられているだけで、力量はよく分かりません。
しかし、任命後の軍事指導の情報がなく、その力量は不明のままです。
というより、「今さら・・」と本人も思っているのではないでしょうか。
 
次回は、別の側面からロシア軍の致命的な弱点の話をしようと思います。
 
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<編集後記>
5月10日、韓国の新政権が発足しました。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)新大統領は、日本との関係修復を目指し、就任前に政策協議団を日本に派遣しました。
しかし、文政権の5年間で、韓国に対する日本世論は冷え切ってしまっています。
韓国でも、反日に凝り固まっている「共に民主党」の候補が大統領選挙で尹新大統領とほぼ同じ得票を得ています。
疑惑だらけで前科4犯の候補が、これだけの支持を得たという現実は重いです。
前政権下ですっかり離反してしまった両国の国民感情を思うと、「現状打破は難しいな」が、率直な気持ちです。
 
 
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