2019年6月15日号(国際、政治)
2019.06.17
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年6月15日号
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発行日:2019年6月15日(土)
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2019年6月15日号の目次
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◇戦争抑止力としての軍事同盟(1)
★半島との心理的な距離は、絶望的に遠くなった
◇日本流の中国との付き合い方を(その7):台湾
◇純粋な軍事の話(8)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
安倍首相のイラン訪問に合わせたかのようなタンカー攻撃。
首相とハメネイ師の会談の日というのは偶然ではないであろう。
「日本はよけいなことはするな」という強烈なメッセージと受け止めたほうがよいであろう。
2000年前からの怨念が渦巻く中東の事情は、日本が考えるより遥かに複雑である。
仲介はポーズで良いと自覚し、中東石油への依存度を減らす策を本格化するべきである。
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┃◇戦争抑止力としての軍事同盟(1) ┃
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今回のトランプ大統領訪日の最大のイベントは、天皇との会見や大相撲観戦ではなく、安倍首相とともに護衛艦『かが』に乗艦したことです。
それは、このイベントが日米安保条約を日米軍事同盟へと進化させるショーという意味合いを持つからです。
こうした点をマスコミは見逃し、どうでもよい報道に終始しています。
今回から数回に分けて、最も大事なポイントを解説しましょう。
トランプ大統領が掲げる「アメリカン・ファースト」は身勝手な主張と受け取られていますが、本当にそうでしょうか。
トランプ大統領は、気の向くままにツイッター等で発言しているように見えますが、あれは一種の「陽動作戦」です。
マスコミはまんまとその罠にハマっていますが、それが一般人をミスリードする結果となっているのです。
前振りはこのくらいにして本筋に入るとします。
米国およびトランプ大統領は、その真意を隠しているわけではありません。
それは、2017 年 12 月にトランプ大統領が公表した「国家安全保障戦略」を読めば分かります。
この戦略の主旨は、非常に単純なものです。
「今の世界は競争的な状況にある。そうした認識のもとアメリカは自国第一主義を掲げる」
うがった見方をしなければ、当然といえば当然の主張です。
トランプ大統領の奔放な発言に惑わされて見過ごされ勝ちですが、米国がこうした新戦略を打ち出す背景を考察することが大事です。
それは、近年、中国とロシアが軍事力を前面に出し、米国が主導してきた戦後の国際秩序を根本から変えようとしていることです。
実際、軍事力にものを言わせて、ロシアはウクライナからクリミア半島を奪取し、中国は南シナ海を一方的に自分の海にするべく、強引に軍事基地化を進めています。
こうした現実を無視して「アメリカン・ファースト」は身勝手だと批判しているのがマスコミに誘導されている世論なのです。
中国は、世界第二位となった軍事力をむき出しにして、自国の覇権拡大に邁進しています。
ロシアのプーチン大統領は、こうした中国の覇権戦略に乗る形で米国への挑戦姿勢を鮮明にしています。
米国は、中国とロシアの、こうした軍事的挑戦を抑える軍事的優位を損なうわけにはいかず、「大規模戦争も厭わない」とのメッセージを世界に送ったのです。
これが「アメリカン・ファースト」の本質です。
ここにきて、中国とロシアの関係が軍事同盟化してきました。
この動きを、米国対中露という「1:2」の構図としないため、日本など米国の同盟諸国の動きが重要になってくるわけです。
つまり、自国の主権と独立を守るため、自国の軍事力強化と合わせて米国との同盟関係の強化が重要になってくるというわけです。
「独裁国家群vs民主主義国家群」という新たな冷戦の始まりです。
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┃★半島との心理的な距離は、絶望的に遠くなった ┃
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日韓関係は、もはや修復不可能なレベルになってしまった。
さすがに、ここにきて、右派系や中立系の韓国マスコミは、文政権に関係修復を促す社説を掲げ出したが、常に及び腰である。
関係修復を政府に要求しながらも、必ず「原因を作ったのは日本側であり、韓国は被害者だ」とする言葉を付け加える。
そうしないと世論の袋叩きに合うからである。
しかし、そうした日本悪玉論に呼応してくれる日本人は、鳩山元首相や左派系学者ぐらいなものであり、両国の関係修復の機運はほぼゼロとなっている。
文政権の反日行動は、越えてはいけない一線を越えてしまったのである。
最近の韓国側の主張ロジックには共通項がある。
それは、自分たちが起こした問題に対して、いかにして自らの責任を逃れるかに終始していることである。
外交の現場にいる外交官や前線にいる軍関係者は、自分を守ることしか念頭になく、自国の国益なんか全く考えていない。
そもそも韓国政府自身が、この現実を前にしても日本との関係改善を重要とは思っていない。
しかも、文在寅大統領には、そうした国益を損なう状況を変えようとするリーダーシップ力が決定的に欠けている。
文大統領の頭の中は北朝鮮と一体になることだけで占められ、日本との関係改善が入る余地がないのであろう。
ならば、閣僚や側近がその足らないところを補っていくべきであるが、今の文在寅政権の要所は、人権運動家や学生運動家出身者で固められている。
彼らは、文大統領以上に、一つの凝り固まった考えに囚われて抜け出せない人たちである。
彼らの意識の根底にあるのは「北朝鮮は同胞、日本は敵」という単純で強い感情である。
そこに日本と共存するという考えが入り込む余地はない。
福岡から釜山まで高速船で3時間ぐらいの距離だが、心理的な距離は絶望的に遠くなったと思うしかない。
古代中国の秦王朝が覇権を取った戦略を「遠交近攻策」という。
「遠方の国と結び、近隣国を攻める」という戦略である。
現代の日本に置き換えると、遠い米国と結び、近くの国を攻めるということであろうか。
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┃◇日本流の中国との付き合い方を(その7):台湾 ┃
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今号の最初の章で書いたとおり、膨張を続ける中国と阻止せんとする米国の争いは激化の一途をたどっている。
こうした中、韓国の迷走が続く限り、米中の最前線が38度線から第一列島線へと後退する危険性が増している。
しかし、日本列島がその第一列島線の真上に乗っている現実を、ほとんどの日本人は深く考えていない。
これが戦後74年間、平和を貪ってきた“つけ”なのであろうか。
この第一列島線の西の端に台湾がある。
歴史的な経緯もあり、中国政府にとって台湾を制覇することは必須事項である。
ただ、今すぐ軍事攻撃をかけるかというと、それは無い。
急速に力を付けたとはいえ、今の中国軍に米国の空母艦隊を撃破する能力はない。
また、台湾の軍事力も侮れないものがある。
侵攻を開始したとしても、上陸を阻まれ、米国の機動艦隊にはさみうちにされるのがオチであろう。
あの孫子を生んだ中国である。
そのような拙策な戦略を取るはずはない。
まずは、カネの力で後方を攪乱し、そして台湾人民の心理誘導戦を仕掛ける。
こうした戦略はすでに発動され、台湾に対する中国のサイバー攻撃は激しさを増している。
この効果で、相当数の台湾マスコミが中国寄りの報道を行うようになり、台湾政府に対するフェイクニュースまで垂れ流される事態となっている。
勿論、台湾政府も手をこまねいているわけではなく、対策を打ち出している。
民間機関や大学、研究機関を広く包含した台湾戦略研究学会と戦略対話の定期開催に関する覚書を結んだ。
米国から100両超の戦車を購入する話も進んでいる。
一方、こうした状況に対する日本の対応はどうであろうか。
米中対立が激化する中で、気持ちが悪いほど日中関係は雪解けが進んでいるように見える。
この理由を考えてみたい。
もちろん、中国の意図は明白である。
「離間の計」で日米の間に楔(くさび)を打ち込もうという戦略である。
安倍首相の訪中を仕掛け、その首相を最大限にもてなし、首相に「日本と中国の関係は完全に正常な軌道に戻った。日中関係は競争から協調へ変わった」と言わしめたのである。
こうした首相を後押ししているのが、中国市場が大事な日本の経済界、そして中国とのパイプを誇示したい与党の親中政治家、そして左派マスコミである。
誤解しないで欲しいが、私は中国との対立を煽っているわけではない。
中国とは上手に付き合っていくべきである。
だが、尖閣周辺海域に60日以上にわたって侵入し続ける中国海警の行動を座視するわけにはいかない。
「尖閣諸島は中国の領土」という主張を、侵犯を続けることで既成事実化しようとしているのは明白である。
このような中国の挑発は実力をもって排除しながら、外交力で中国との関係を正常化することが日本の政治には求められている。
かつ、台湾との付き合いも日本の国益にとっては重要である。
二股と捉えられようが、それが台湾海峡の平和にとって、また日本の国益にとって必要なのである。
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┃◇純粋な軍事の話(8) ┃
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映画版「空母いぶき」は、映画ゆえの制約か、その出来栄えについて辛口の映画評が多いようです。
原作では「中国が尖閣諸島を武力で奪う」という設定が明快に示されていますが、映画では「できて間もない独裁国家が、西太平洋にある日本の架空の島を奪う」という設定になっています。
あまりにも架空すぎる設定で、原作では濃厚だったリアル感が、一気に無くなってしまっています。
そもそも、漫画や小説、映画、TVの世界は、そのほとんどが架空の話なのですが、こうした近未来ものは、リアル感をどう醸し出すかが生命線となります。
その意味で、原作は成功したが、映画は失敗したといえそうです。
映画の製作者は、どのくらい原作を読み込んだのか疑問に思うところです。
政府が護衛艦の“かが”と“いずも”を空母化すると発表して以来、「空母」という言葉が戦争に直結するイメージを醸し出すのか、賛否両論が溢れています。
本章は、純粋に軍事を論ずる場なので、そうした賛否抜きで論評したいと思います。
まず、空母と言っても垂直離着陸型の戦闘機を10数機搭載できるだけですから、軍事的には大した戦力とは言えません。
重武装の戦闘機を100機以上搭載できる米国の原子力空母と比較するまでもない戦力です。
つまり、日本の場合は、軍事より政治的影響力に力点を置いた改修ということです。
それでも、戦闘機を発進できる移動基地を持つことは、軍事戦略の幅を大きく広げることになります。
まして、対決するのは米国空母ではなく中国の空母です。
将来は原子力空母も備えると言われている中国ですが、そのハードルは一般に考えられているより遥かに高いです。
経済戦争の影響もあり、巷で6隻体制を目指すと言われている建造計画も実現は難しいと見ています。
また、偶発的な小競り合いは別にして、日本が巻き込まれる大規模な戦闘が起きる可能性は限りなくゼロに近いわけです。
つまり、“かが”などの空母化は、外交の道具としての軍事力強化という意味合いが強いものです。
しかし、矛盾するようですが、これらの空母化が実戦で威力を発揮するという姿を内外に示す必要もあります。
その日に向かって、日本が着々と歩を進めていることは事実です。
実際に“かが”にF-35Bが搭載され、訓練で発艦する姿が配信されることは、内外に相当のインパクトを与えることとなるでしょう。
なにしろ、本格的な空母群による熾烈な戦闘経験を有しているのは、日本と米国だけなのです。
他の国は、中露を含めて未経験の世界なのです。
75年という年月は、忘れるには短すぎます。
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<編集後記>
天安門事件から30年ということで、“ある記憶”が思い出されました。
あの事件から数日後に、私は米国へ出張に出ました。
米国に向かう飛行機の隣席は中国人の女性でしたが、なんと、彼女は事件に関与して米国へ亡命する途中という話でした。
驚くというより、しびれるような感覚を味わいました。
出発前、事件のことはニュースで見ていましたが、どこか“よそごと”という感覚でした。
それが、事件に関与したらしい人と隣席となったことで、いっぺんに現実感覚になりました。
今でも天安門のことを鮮烈に覚えているのは、この現実感覚のせいなのだなと思います。
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