2022年10月31日号(経済、経営)
2022.11.02
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年10月31日号
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発行日:2022年10月31日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年10月31日号の目次
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◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(3):円安は悪いこと?
★あえて、カーボンニュートラルに異論を述べる
★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その4)
◇これからの近未来経済(21):新しい資本主義を知ろう(3)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
円安が進む状況に、経済評論家のみならず、ネットでも「良い」vs「悪い」の意見が飛び交っています。
ですが、「これぞ正解」と言えるほどの意見はなく、政府は様子見の姿勢を崩していません。
何度も言及しているように、いま世界は100年に及ぶ大転換期のピークに向かっているので、混乱は深まっていくと思われます。
企業経営にとって難しい時代ですが、チャンスを見出す時代ともいえます。
勇気と冷徹さを兼ね備えた経営者の時代が、すぐそこに来ています。
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┃◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(3):円安は悪いこと? ┃
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円安の話を続けます。
前号から1ヶ月経ちましたが、日銀の介入もあり円ドルレートは150円を挟む攻防になっています。
円安は、輸入比率が多い企業にとっては死活問題ですが、海外からの個人旅行が解禁になった効果も重なり、観光業などは大歓迎です。
ところで、前回述べたように1ドル360円時代を経験している私には、「この程度の円安、たいしたことではない」と思ってしまいます。
たしかに、海外旅行は「円高になるまで待とう」という気持ちになっていますが、それで困るわけではありません。
建設商売のほうでの輸入資材の高騰は痛いですが、吸収する手段はいろいろあります。
先輩経営者の方からは「そのくらいの才覚が無ければ商売人とはいえない」と言われます。
もっとも、実際に損失を被っておられる方からは、「何を言うか!」とお叱りを受けそうですが・・
通貨の売買も、モノの売買と同じです。
さらに、円もドルと同様、国際通貨です。
つまり、商品としての円を発行する「日本商店」の信用が世界で認められていることを意味し、“円”は国際的に流通性の高い商品だということなのです。
そうなると、市場における円とドルのどちらが多いか少ないかで円ドルの為替レートは動きます。
多ければ希少価値がなくなり値下がり(円安)し、少なければ希少価値があるとして値上がり(円高)します。
となると、日米両国のマネタリーベース(通貨の供給量)が「円ドルレート」を決める要素になります。
日本は、景気対策で大量の国債を発行し、しかも日銀がその国債を買い続けた結果、円は市場に溢れる結果となり、希少価値がなくなり、値下がりしているわけです。
米国もコロナ対策で大量の国債を発行していますが、中央銀行がドルを刷って買っているわけではないこと、経済規模がはるかに大きいこと、及び国際基軸通貨としての価値が円よりはるかに高いことで、市場への影響は限定的となっているのです。
ゆえに、現在の日銀の姿勢が続く限り「円売りドル買い」は続くことになります。
もちろん、ヘッジファンドは、現在値だけでなく、将来の予想値を加味して売り買いを決めますので、思惑だけでも為替相場は動きます。
もし、日銀が小幅でも利上げに踏み切り、さらに「追加の利上げもあり得る」なんて言うだけで、一気に円高へと流れは変わるでしょう。
ゆえに、ヘッジファンドは日本の政策に神経を尖らしているのです。
それが、世界一の債権国である日本の力といえます。
バブルの頂点の1990年末での対外純資産は44兆円でしたが、2022年6月末は449兆円と10倍になっています。
1990年までは日本は貿易で稼いでいましたが、現在は対外資産で稼ぐ国になっているのです。
つまり、30年続いたデフレ経済で国内投資は減少し、人件費も上がらなかったことで、大量のカネが余ってしまいました。
そのカネを海外へ大量に投資した結果なのです。
こうして世界一の“カネ貸し”国となった日本では、円安メリットは貿易赤字を打ち消すほどに大きくなっていて、経常収支では黒字になっているのです。
しかも、最大のメリットを享受しているのは「外為特会」といわれる外国為替資金特別会計で外貨資産を保有する日本政府なのです。
こうした日本国の能力に見合う政策を発揮できない日本政府の力の無さが最大の問題なのです。
もっと経済に強く、かつ果断な政策を立案・実行できるリーダーが必要なのです。
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┃★あえて、カーボンニュートラルに異論を述べる ┃
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「温暖化阻止」から、最近は「カーボンニュートラル」と、言葉は“カッコよく”変わってきていますが、欧米では環境保護派の主張が勢いを増しています。
こうした「地球環境の激変を阻止する」という大義名分に反対するつもりは毛頭ありませんが、環境保護派の主張に素直に同意できない自分がいます。
それで、あえて、こうした流れに異論を述べてみたくなりました。
このカーボンニュートラルの象徴になっているのが、化石燃料発電から太陽光発電を始めとする再生可能エネルギー発電への転換です。
そして、それと対をなすのが、ガソリン自動車から電気自動車への転換です。
まずは、こちらから異論を述べたいと思います。
誰もが知るように、この電気自動車への流れで大儲けしたのがテスラ社のイーロン・マスク氏です。
今や、資産総額2094億ドル(約31兆円)ともいわれる世界一の富豪となり、言いたい放題、やりたい放題の観すらあります。
(※ここで、ちょっと一言)
マスク氏の2022年9月での資産総額は2094億ドル(約31兆円)ですが、1年前の2021年11月のデータでは、3203億ドルとなっています。
現在の円ドルレート(148円)だと47兆円となり、16兆円も減ったことになります、
ですが、2021年11月の円ドルレートは113円ですから、約36兆円となり、5兆円減っただけとなります。
まさに円ドルレートのマジックで、「ドルで約35%減った」というのが正解でしょうね。
(話を本題に戻します)
自動車の未来が電気自動車一色になる可能性は否定しませんが、法律でガソリン車の販売を強制的に禁止するという流れには反対です。
この流れが、ハイブリット車主流の日本車には到底勝てないと察した欧米の陰謀であることが分かりきっているからです。
しかし、日本でも「カーボンニュートラル」という錦の御旗の前に、反対どころか疑問の声すら挙げづらくなっているのが現状です。
私も、今回の記事は、強いプレッシャーを感じながら書いているくらいです。
誰もが知っているように、電気自動車の最大のネックは充電時間の長さです。
中国では、「ガソリン車なら10時間で行けるところを、EVだと40時間かかる」といった投稿が話題になっています。
実際に昨年、EV車を買うかどうかを尋ねたアンケートでは、「充電の利便性が良くなれば」をトップに挙げた回答者が64%に上ったということです。
中国政府はEV車の数と同数の充電ポストの設置を政策目標として掲げていますが、高速道路で今年8月末までに設置されたのは全体の約2%とほとんど進んでいません。(中国交通運輸部のデータ)
私は、現在、2500ccの四躯ハイブリット車に乗っていますが、満タン(55リットル)で約1000kmは走れます。
よって、給油回数は月平均で1回、時にはゼロです。
遠出も、東京から故郷の新潟まで給油無しで楽々往復できます。
環境派の人々から石を投げられても、とても電気自動車に乗り換える気にはなれません。
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┃★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その4) ┃
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中国国家統計局が10月24日に発表した1~9月の不動産投資は前年比8.0%減でしたが、床面積ベースの不動産販売は前年比22.2%減と、売上の下落に比べて投資の減額は進んでいない様子が分かります。
公式発表でも不動産市場の落ち込みは隠しようもありませんが、実態はもっと危ない状況です。
不動産業界の上位100社が1~9月に販売したマンションの累計成約額を見ると、約4兆6700億元(約95兆3978億円)と前年同期比45.4%という大幅な落ち込みです。
中国の不動産業界は、地方政府が資金を出して開発・販売し、投資資金の回収を行う仕組みです。
販売が不振だと資金回収が出来ず、次の開発投資を行うカネの流れが止まるのは自由主義国と同じですが、地方政府は中央からの「経済発展を続けろ」の指令に逆らうことができず、不動産投資を減らすことができません。
結果、過剰建設が続き、既に何年も前から全人口以上の住宅が供給される状況に陥っています。
その戸数は30億戸に達するとも言われていますが、本当なら全人口14億人の倍以上の数字です。
しかも、少子高齢化が加速度的に進む中国では、事態は深刻になる一方です。
こうして売れない不動産の急増やローン返済拒否などの問題が広がる状況に、中国政府は一転して、不動産産業に対する規制を大幅に緩和し、不動産市場回復に向けた大号令を出しました。
しかし同時に、不動産価格の値崩れを防ぐため、日本では考えられないような「値下げ制限令」を出すよう地方政府に圧力を加えています。
その圧力を受けて、例えば、広東省中山市は、商品住宅価格を申告制にして、3ヵ月間はその価格を5%以上、下げてはならないとし、さらに実際の販売価格は、その申告価格の上下15%を超えてはならないとする通達を出しています。
また、福建省平潭市は、かつて不動産価格が炎上し「ホットランド」というありがたくない異名が付けられた行政区ですが、不動産不況がひどく、一平方メートルにつき2万元(約40万円)割引で在庫をさばいていたところ、今年6月にやはり値下げ制限令が出されて販売は止まってしまいました。
日本から見ると、まず、この値引き額に“びっくり”です。
40坪の家だと、実に5,280万円の値引きになる計算です。
「最初の価格はいくらなんだ?」と言いたくなりますね。
こうした事例は、いかに中国の不動産バブルが異常なまでに膨れ上がっているのかを物語っています。
中国のGDPの半分が不動産取引と言われていますから、こうした惨状を見ると、これまで発表された中国のGDP値そのものが信用できなくなります。
習近平総書記の三選の舞台となった共産党大会でGDP値の発表を延期した理由も“推して知るべし”です。
大会が終わった後に成長率3.9%と抑え気味の数字を発表しましたが、誰も信用しない数字です。
中国では、不動産の利益率は、銀行利息や付加価値税などを含めて17%は必要と言われています。
日本でも似たような数字ですが、この利益率で販売価格を15%値下げすれば、企業利益は完全に赤字になり、倒産へまっしぐらです。
それに対し、中国政府は不動産企業を倒産させずに不動産価格を安定させようと、強権的な規制で市場をコントロールしようとしているのです。
まさに共産主義の発想であり、中国が共産主義国なのだということを改めて認識させられます。
しかし、不動産に限らず、高騰したモノの価格は、当然に購買量が減り、やがて市場メカニズムにより適切な価格まで引き下げられるのが自然の法則です。
中国では、このメカニズムを「値下げ制限令」で政府が強制的に封じるのですから、これでは在庫は減りません。
このような「値下げするな」と「在庫減らせ」という矛盾した二つの政策を課せられた現場は、パニック状態です。
それでも、独裁国家では上からの命令は絶対です。
地方政府と不動産企業は「値下げ制限」と「脱在庫あまり」という矛盾した二つの政策を同時に達成しなければ、クビどころか、本当に自分の首が飛びかねないのです。
彼らは、「値下げ制限」に従いながら「あまった在庫」を売るために、不動産市場の需要をなんとか掘り起こそうと懸命なのです。
その結果、悲惨でもあり、滑稽でもある光景が全土で広がっています。
例えば、預金があるのに家を買わない市民を「悪意で家を購入しない人物」として圧力をかけたり、親の老後資金で若者に強引に不動産を買わせたりという、日本では考えられない滅茶苦茶な政策が横行する結果となっています。
もっと奇妙な政策が次々に起こっていますが、それは次号でお伝えしたいと思います。
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┃◇これからの近未来経済(21):新しい資本主義を知ろう(3) ┃
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「新しい資本主義」3番目の「スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進」ですが、中身の薄さは隠しようもありません。
この中で「スタートアップ育成5か年計画の策定」を挙げていますが、丸投げされた官僚の困り顔が目に浮かぶようです。
結局、「新興企業への投資額を5年で10倍に増やすことを視野に入れた『5カ年計画』を年末に策定する」としていますが、「カネ以外の策は無いのか」と“やじ”を飛ばしたくなります。
ある評論家が以下のように述べています。
「日本政府のスタートアップ支援は他の先進国に比べて相当に遅れており、今さら『新しいことをやっている』とアピールしていることに違和感を覚えざるを得ない。また、スタートアップに対するM&A(企業の合併・買収)も同様で、2018年時点での日本における件数はわずか15件で、米国の約1%にすぎなかった」として、2022年4月12日付け産経新聞の『スタートアップ支援、政府に司令塔、新しい資本主義実現会議、実行計画に反映へ』を題材に批判しています。
続けて、
「岸田首相は、今年を『スタートアップ創出元年』とする意向だという。だが、元年だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ。これだけ後れを取っている中、投資額を増やすだけで、世界と伍して戦えるスタートアップが出てくるのか。教育面など、他の領域においても抜本的なテコ入れが不可欠である。 」と批判を強めています。
私は、この意見に概ね賛同しますが、M&Aの部分には賛同しかねます。
小企業なれど、創業者の端くれとして思うことがあります。
32年前の創業時とそれ以降も、いくつかの大企業からM&Aではありませんが、資金提供の申し出がありました。
かなりの金額に心が動きましたが、結局、資金提供の申し出はすべて断りました。
資金提供を受けていれば、「もっと事業を大きくできたのでは」とか「今ごろは楽々だったのでは」と思うことはありますが、経営の主体を取られていた可能性もあり、後悔はありません。
M&Aが一種のブームになっている感がありますが、後悔しているという話も耳にします。
経営トップにしかできない判断なので、「是も否もない」が私の考えです。
もうひとつの「オープンイノベーションの推進」ですが、首相の意図はまったく分かりません。
よって論評しようもありません。
企業の経営陣が理解できる具体的な施策を発表して欲しいです。
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<編集後記>
米国のネットには、その名も「レイオフ(layoffs)」 という名のサイトがあります。
それによると、今年は8月前半までに、493のベンチャー企業が6万7000人以上をレイオフしたということです。
想像してみてください。
もし、貴方が理由を告げられないままZoom面談に呼び出され、CEOからいきなり「貴方は、運悪く解雇の対象になった」などと言われたら、どんな気がするでしょうか。
この動画はソーシャルメディアで拡散され、「ズーム首切り(zoom firing)」として話題になっています。
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