2018年11月30日号(経済、経営)
2018.12.15
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年11月30日号
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発行日:2018年12月1日(土)
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2018年11月30日号の目次
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★相次ぐ優良企業の不正(後半)
★韓国経済の終わりの始まり
★金融引き締め
★企業における社長の力(5)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
日産のゴーン会長の逮捕は、驚きよりも「あり得ること」だとの思いのほうが強かったです。
日本人の感覚からすると、「10億円もの報酬を得ながら・・」ですが、欧米の経営者からすれば「それでは少ない」ということなのでしょう。
金額の桁数は少ないですが、似たような経営者は少なくありません。
経営者の思考は十人十色です。
違法性を別にすれば、何が良くて何が悪いか・・、なんとも言えません。
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┃★相次ぐ優良企業の不正(後半) ┃
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「コンプライアンス」という言葉が日本に入ってきてからずいぶん時間が経ちました。
でも、本当の意味が正しく定着したとは言いがたい状況です。
日本語訳だと「法令遵守」となりますが、日本人の多くはその意味を「当然!」というレベルでしか考えていません。
しかし、「コンプライアンス」という言葉は、もっと深いレベルまで考えないと理解したとは言えないのです。
その深いレベルとは倫理観です。
日本では、倫理は道徳と混同されて受け止められています。
つまり、「こうしては“いけない”」、「このようなことは“いけない”」という道徳を倫理だと錯覚していることが多いのです。
倫理は道徳とは違います。
他人や公権力から規制されるものではなく、自分が自らに課す「規範」なのです。
要するに、倫理は法とは無関係な規範なので、他人に公言する必要のないものです。
学校の校則を考えてみてください。
「制服の丈は膝まで」とか「髪を染めてはいけない」、「爪を伸ばすな」・・、こと細かな禁止条項が並んでいます。
でも、このような校則を守らなくても学業や人間形成に支障はないし、学校運営にもたいした問題はありません。
そうなのです。
守らなくても本質的な支障が出ない「不要なルール」を校則として「生徒を管理する道具」として使ってきたのです。
でも「管理する道具」とは公に言えないため、「道徳」という衣を着せたのです。
当然、こうした校則は倫理とは無縁のものです。
だから、「なぜ、この校則があるのか」という本質を考える機会を生徒に与えるわけにはいかなかったのです。
欧米では、小学校高学年くらいから、倫理的なテーマについて、とことん議論する授業が必ずあります。
大学ともなると、同様のテーマで激しい議論を戦わせる場が頻繁に与えられます。
日本のTVでも放映されたハーバード大学の「白熱教室」をご覧になられた方は感じられたと思いますが、あのような光景を日本の大学で見ることはほとんどありません。
こうした訓練を経験することなく社会に出た日本人は、自分たちに課せられたルールの意味を考え理解するという意識が芽生えず、ただ盲目的に従うという「隷属」意識しか無いのです。
つまり、そのルールが正しいから守るのではなく、上から言われたから守るだけなのです。
京都大学大学院教授の藤井聡氏は、『コンプライアンスが日本を潰す』の本の中で以下のように述べています。
「会社の中で、個々の社員が『何が正しいのかを考え行動すること』が企業活力の源泉なのに、日本は顧客からのクレーム対応や、個人情報保護などの問題で『訴えられないようにする』ことがコンプライアンスの目的となっています。テレビも自主規制が多くなってつまらなくなったとよく言われますが、これも過剰なコンプライアンスが招いた結果だと思います。世間からバッシングされることを恐れ、守れない過剰な規則を設けて、ルール違反が起きたらさらに厳しいルールを作ってしまう。そんな悪循環に陥っているのが現状です」
そうして、「最終的には、企業の活力が著しく低下する」と警鐘を鳴らしています。
コンプライアンスに限らず、今の日本にはカタカナ外国語が溢れています。
しかし、この解釈や訳語が的確に言語の意味を伝えていないのです。
そのことで本来の意味から外れた解釈が横行し、社会に悪い影響を与えています。
国会中継などを見ていると、やたらこうしたカタカナ外国語を振り回す議員がいますが、多くは、本質をごまかすために使っています。
東京都の小池知事もこうした言葉が多い方ですが、どうしても「ごまかし」の匂いを感じてしまいます。
どうか、適切な日本語を使って欲しいものだと思います。
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┃★韓国経済の終わりの始まり ┃
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慰安婦や徴用工裁判で日韓関係は悪化の一途をたどり、ネットでは「国交断絶」という過激な言葉が飛び交っています。
両国政府とも、さすがに断交には踏み切れませんが、経済への悪影響は深刻なレベルになっていくと思われます。
その場合、日本より韓国の打撃のほうがはるかに大きいことは、解説不要です。
韓国政府は、自動車部品業界の競争力を高める中長期対策が急務として「自動車部品活力向上案」を発表しましたが、そうした危機感をありありと反映した内容になっています。
本案の柱に据えたのが、未来自動車に焦点を合わせた大規模研究開発支援策で、電気・水素自動車などのエコカー研究開発に1兆ウォン(約1000億円)、自動運転車研究開発に1兆ウォンを投じるということです。
と言っても、その中身は「当面の業界の資金難解消」という金融支援対策で、なんら目新しい具体策はありません。
そもそも、韓国を代表する現代自動車もサムソンも部品の多くを日本からの輸入に頼っていて、裾野の部品産業が日本のように育っていません。
技術開発支援といっても、肝心の技術の芽が無いのですから、資金支援しかないわけです。
韓国産業研究院の研究委員が「労働組合が足かせとなっている韓国自動車会社が高コスト・低効率構造を克服できなければ自動車産業の基盤が崩壊するおそれがある」と指摘しているように、異様に強い労働組合が産業の足を引っ張っています。
苦境にあえぐ現代自動車ですが、労働組合は「基本給5.3%引き上げ」を要求し、断続的なストライキを行っています。
こうした労働組合を中核とする左翼組織が、今の文大統領を誕生させたわけで、その時点で韓国経済は暗闇へ落ちていく路線となったわけです。
こうした「終わりの始まり」に付き合っていっても危ないだけなので、韓国進出企業は本気で撤退を考えたほうが良さそうです。
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┃★金融引き締め ┃
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トランプ政権が誕生したとき、多くの評論家は経済の減退を示唆したが、逆に株価は上昇し、米国経済はひとり勝ちの様相を呈した。
このことは意外でも何でもなく、評論家の力が落ちた証明のようなものである。
先日も、TVでもよく見かける著名な評論家の講演を聞いたが、陳腐で中身の無い話ばかりで退屈ですらあった。
誰が見ても分かることだが、トランプ政権を誕生させたのは、世界に広がるポピュリズムである。
ポピュリズムの本質とは「自分さえ良ければよい」とする強欲主義である。
こうした欲に火を付ける仕掛け人の火付けで株価は大きく上昇し、リーマン・ショックで下落した住宅価格も値上がりした。
そうした火付けを支えたのは、米国ドルの過剰流動性である。
実態経済に対する金融経済の適正規模は2.5倍が限度といわれ、それを超えたカネが過剰流動性を生むと言われている。
リーマン・ショックの影響から脱しないうちに、今の金融市場は実体経済の3倍を超える規模まで拡大し、完全にバブルとなってしまった。
一時は、景気回復を名目にカネをばらまき続けた米国や欧州の中央銀行だが、さすがに危険だと思い始め、「景気は回復した」ことを理由に資金を引き揚げ、過剰流動性を解消する方向に舵を切ったのである。
つまり、カネの流れが逆回転し始めたのである。
たとえば、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は、バランスシートの縮小を開始し、すでに2520億ドル(約28兆円)の保有資産を減少させている。
どの国でも同じだが、中央銀行のバランスシート(BS)は経済に大きな影響を与える。
BSが拡大すればするほど市場に資金が回り、あらゆる資産の価格が上昇する。
逆にBSが縮小すれば、金融市場からその分だけ資金が消えるということになる。
自由主義社会の3大中央緒銀行(FRB、ECB(欧州中央銀行)、日本銀行)を合わせた、この1年間の市場からの買い入れ額は、前年度の月額1000億ドルからゼロに落ちる見込みと言われる。
つまり、今は月額11兆円のマネーが市場から消えているのである。
その中にあって異次元の金融緩和を続けている日本銀行だが、その裏で膨大な額の国債を銀行から買い入れている。差し引きマイナスになっているのが実態なのである。
それでも先進国にはまだ余力があるが、深刻なのは「外貨準備高の少ない国」である。
莫大なドル建て債務を背負っているトルコが通貨危機を引き起こしたが、「次は南アフリカ、そして・・」と多くの国の名前があがる。
米国の株価が軟調傾向となり、日本の株価の下落が始まったのも、過剰流動性の急激な減少が主な原因である。
そうした中で一番の懸念は中国経済の減速である。
習近平政権がメンツを捨てて米国の経済攻撃に屈し出しているが、本格的な減速となった場合、世界経済の受けるダメージは大きくなる。
難しい時代になったものである。
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┃★企業における社長の力(5) ┃
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フィットネスジム運営のRIZAP(ライザップ)が、2019年3月期の連結業績予想を下方修正しました。
当期の最終損益が当初の159億円の黒字から70億円の赤字に、営業損益が同230億円の黒字から33億円の赤字にそれぞれ修正するとの発表です。
つまり、赤字転落ですから、完全なる経営の失敗というわけです。
派手なTVコマーシャルなどから意外に思った方も多いと思いますが、赤字転落の主因は、M&A(企業買収)でした。
経営不振企業の買収を積極的に続けてきたのですが、それらが軒並み赤字脱却できなかったということです。
急遽、新規のM&A(企業の合併・買収)の凍結や社長の役員報酬の全額返上を発表しましたが、回復可能なのでしょうか。
来期の動向が注目されます。
そんな折、ソフトバンクが、ドローンを使ったインフラ点検事業に2019年春から参入することを発表しました。
「そんな技術を持っているの?」と思いましたが、米国の会社(5×5テクノロジーズ)に出資して、技術を独占するということです。
ソフトバンクは、M&Aとアリババへの出資のような投資事業で大きくなった会社ですから、ライザップの先輩のような会社です。
ソフトバンクは、上場するということで大宣伝を繰り広げていますが、市場から資金調達をせざるを得なくなっていると、私は受け止めました。
上場すれば投資家に対する説明責任が生じますから、これまでのような孫社長の独断による意思決定に制約がかかることになります。
もちろん、そんなこと十分に考えた上での上場でしょうから、外野がとやかく言うことではありません。
しかし、孫社長の経営手法は「すごいけど、まったく参考にならない」と思わざるを得ません。
やはり、自分には孫子の兵法から得た「強者には出来ない、弱者だけが出来る道」を行こうと思います。
前号に書いた「ブルー・オーシャン戦略」は、その現代版といえる戦法です。
しかし、いくら立派な戦略があっても、実行できるレベルにまで落とし込んでいかなければ成果は得られません。
我々は、その具体的な手法として、「競争前の競争に勝とう。競争に巻き込まれたら撤退しよう」を合言葉にしています。
まさに、孫子の説く「戦わずして勝つ」の自社流のアレンジです。
新規営業の場面などでは、競合相手と価格競争を強いられたら「引け」と指示しています。
不毛な価格競争に巻き込まれるのは愚の骨頂だからです。
実は、この「競争前の競争に勝とう」は、サラリーマン生活20年の中でたどり着いた戦法なのです。
この話は、また次回に。
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<編集後記>
フランス政府は、ゴーン会長の不正という事態を自国の利益に使おうとしているようです。
いまや自動車会社としてはルノーより日産のほうが、販売台数、利益、技術のすべてにおいて上です。
それを知った上で、フランス政府は両社を完全統合し、フランスの会社にしてしまおうと目論んでいると報道されています。
日本としては、阻止すべきだと思いますが、阻止が可能かどうかです。
もし、日産がフランスの会社となったら、私は永遠に日産車を買わなくなるでしょう。
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