2020年12月31日号(経済、経営)
2021.01.15
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年12月31日号
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発行日:2020年12月28日(月)
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2020年12月31日号の目次
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◇これからの近未来経済(2):EV(電気自動車)時代が到来?
◇中国の思惑通りにはいかない(その9)
☆商品開発のおもしろさ(7)
★今後の建設需要(12)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
コロナ禍に対する政府の対応についての国際世論調査によると、海外からは日本の対応を称賛する声が高いのに、日本国内では最低に近い数字でした。
これは、日本人の意識を象徴する調査結果といえます。
一言でいうと、「自虐主義」そして「批判文化」です。
そして、さらに深い根っこの心理は、昔から続く「同調圧力」です。
「村八分」という言葉が今も残るように、集団組織の中で「同調を強いる」意識です。
その同調意識で無謀な戦争にも突入したし、一転して戦後は単純平和主義に浸り切るわけです。
このコロナ禍でも同じですね。
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┃◇これからの近未来経済(2):EV(電気自動車)時代が到来? ┃
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主要先進国が先を争って2050年温室効果ガス“実質”排出量ゼロを宣言しています。
英国やEUだけでなく、日本の菅首相や米国のバイデン次期米大統領、そして中国の習近平主席までも全く同じ温室効果ガスゼロを宣言しています。
かつ、2030~2035年にはガソリン車の販売を禁止することまで横並びです。
「どうせ、その頃には自分は引退しているから・・」というような思惑まで透けてみえる光景です。
という皮肉は、ここまでにしておいて、技術的な面を述べます。
温室効果ガス排出ゼロを実現するための方法としては、電池駆動や水素の利用、さらにはCO2(二酸化炭素)を補足・貯留するカーボンサイクル、人工光合成などがありますが、経済的にどれも実用領域には達していません。
EV(電気自動車)は、CO2を排出しない発電で電気を作らないことには本末転倒となります。
原子力発電が最も良いのですが、今の世論では難しいですね。
太陽光などの自然再生エネルギーを普及させよという声は高いですが、不安定さやエネルギー効率の悪さ、新たな廃棄物問題といった課題をクリアーするのは、それこそ2050年までには無理と思われます。
ゆえに、各国とも、ガソリン車禁止以降もハイブリット車は5年ぐらい延ばすことにしています。
欧州や中国ではEV車が急激に増えていますが、補助金漬けで、フランスなどは購入代金の半額を補助するなど大盤振る舞いです。
かつ、フランスの電力の75%は原子力発電です。
とても日本の参考にはならないわけです。
電気代の問題もあります。
EV車の電気代は、燃費の良いハイブリット車より高くなります。
もし電気の大半を再生可能エネルギーで賄うとすると、その差は広がる一方です。
経済的には、とても合わない数字です。
韓国などでは、EV車の火災が頻発しています。
現在主流のリチウムイオン電池には微妙な温度調整が必要ですが、この調整が狂うと電池内部に異物が混じ、これとショートした火花が電解液に着火するというリスクがあります。
火災の大半はこうして起きます。
私も、かつて、現場で使用していた電池駆動の高所作業車の電池が爆発するという経験をしました。
部下の監督が負傷するなど、大変でした。
それ以来、電池駆動の車両を信用しなくなりました。
もちろん、日本のEV車の安全性は信頼できるのでしょうが、その安全費用の上乗せ分はバカにならない金額になっています。
日本は、EV後進国と思われていますが、焦る必要はありません。
HV(ハイブリット)からガソリンエンジンを外して電池を大型化すればEVになるし、PHV(プラグインハイブリット)なら、もっと簡単です。
日本のメーカーが焦っていないのは、いつでも投入可能だからです。
最大の課題は電池で、次世代の「全固体電池」が出来るまで焦らないという姿勢です。
全固体電池とは、超簡単に言うと、リチウムイオン電池の電解液を固体材料に変えたものです。
これで、発火リスクや性能の低下などを解消でき、かつ航続距離も長くなるという優れものです。
政府は、この電池の実用化への技術開発を後押ししていて、補助金支給などを予算化しています。
今後は、世界各国でこの次世代電池の開発競争が激化しますが、日本が先端を走っていることは間違いありません。
世界最大の自動車メーカーのトヨタは「後出しジャンケン」と言われる、かなりエゲツない戦略・戦術が得意です。
ある分野でトップに立ったライバル社を徹底的に研究し、すべての面でライバル車を上回る車を一気に市場に投入するという戦略です。
トヨタに限らず日本メーカーは、電池問題だけではなく、そのインフラ整備、費用対効果などに目途が立った段階で、一気に市場に打って出る準備をしています。
それを国が強力にバックアップするという二人三脚がカギとなるでしょう。
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┃◇中国の思惑通りにはいかない(その9) ┃
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中国の習近平主席が、TPP (環太平洋パートナーシップ)への参加意欲を表明しました。
日本政府は論評を避けていますが、いまは何も反応しないほうが賢明です。
では、中国の意図はどこにあるのでしょうか。
ずばり、TPPがメジャーになることの阻止です。
前号で取り上げたRCEP(地域的な包括的経済連携)は中国が主導権を取る連携となるでしょう。
その中国にとって邪魔なのがTPPです。
そのTPPへの加盟狙いは、ずばりTPPの無力化です。
TPPはRCEPより徹底した自由貿易を志向しています。
その協定には「国有企業改革や資本の自由化」という項目が含まれています。
つまり、共産党一党独裁国家であり、国営企業を国家が操っている中国は、国家政策を根本から変更しなければTPPには参加することができないのです。
しかし、急激な経済発展と軍事力拡大を実現した習近平主席は、「中国には民主化など不要」と確信しています。
むしろ、中国の権威主義体制をさらに強化し、欧米の民主主義に代わる「世界の政治体制のモデル」になると考えています。
しかし、国内においてさえ、その体制はほころびを見せ始めています。
香港の抗議行動への弾圧は、世界の先進国から批判を浴びています。
カネの力で押さえつけられている新興国は、国連の場で中国支持に投票していますが、それも限界に達してきています。
実は、新興国に対する融資では、日本のほうが中国よりも一段と早いペースで伸びているのです。
BIS(国際決済銀行)の情報によると、1年前の四半期のデータですが、日本の融資の増加が2,225億1000万ドルなのに対して、中国の融資の増加は457億5000万ドルにとどまっています。
もっと顕著なのは、1年半前のデータですが、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の融資残高がわずか64億ドルにとどまっているのに対し、日米主導のADB(アジア開発銀行)は、2018年単年で358億ドルを融資しています。
中国は「人民元の国際化」を図っていますが、中国自身の国際的な融資は圧倒的に「ドル建て」が占めています。
一方、目立つことは何もしていない日本の「円」は、国際取引において世界第3位の通貨です。
世界の取引全体における円の比率は、2019年2月の時点で4.35%ですが、同時期の人民元の比率は1.15%にすぎません。
世界の外貨準備高に占める割合でも、人民元1.89%に対し日本は5.2%で、その差は広がっています。
中国は、「一帯一路」を声高に喧伝し、新興国の頬を札束でひっぱたくという悪徳金貸しそのものです。
新興国は日本に期待を寄せています。
日本は、そうした国々に偉そうな態度を取ることはないし、アフガニスタンで非業の死を遂げた中村医師のように、地道な活動で現地に溶け込み頑張っている民間人も数多くいます。
日本の支援は、初期のODAで見られたような日本企業の利益優先の姿勢から、新興国の経済・産業の発展を第一に考える姿勢に大きく変わっています。
現地企業に技術支援し、工場運営のオペレーションを教え、人材育成にも力を入れています。
中国人は、どうしても利益優先の考えから抜けることが難しいようです。
日本のような「お人好し」なやり方では損すると思っています。
日本の「損して得取れ」の考え方は、悠長すぎると嫌われるようです。
習近平主席の中国は、自ら崩れていくでしょう。
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┃☆商品開発のおもしろさ(7) ┃
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今回は、少し視線を変えた話をします。
元通産省工技院の所長が起こした池袋の自動車事故の裁判が12月14日に開かれました。
母子が犠牲になり、多くの負傷者を出した痛ましい事故ですが、被告が「車の欠陥が事故の原因なので無罪」と主張していることで注目を集めている裁判です。
本シリーズは「商品開発」がテーマなので、有罪か無罪かではなく、被告側の主張の「車の欠陥」について述べます。
いろいろな方が指摘していますが「ブレーキを踏んだが逆に加速した」という被告の言い分は、ゼロとは言い切れませんが、車の設計上ありえないと断言できます。
それでも弁護団がそこに執着するのは、事故を起こしたプリウスのハイブリットシステムの特殊性に付け込もうという法廷戦術だと思われます。
そう思うのは、弁護側が電気系統のトラブルで“ブレーキが利かなかった”という主張ではなく、「その可能性は否定できない」という「悪魔の証明」を用いた主張を展開しているからです。
悪魔の証明とは「無かったことを証明せよ」という無理筋の主張のことです。
私も、プリウスαというプリウスシリーズのハイブリット車を運転しています。
しかも、5年前、自損事故を起こし、前輪部分の破損で、結果としてその車を廃車処分にしました。
その時に、整備工場で、前輪に集中しているハイブリットシステムの仕組みを自分の目で詳細に確認しました。
私は、大学では機械工学を専攻し、卒業研究は自動車のターボチャージャーでした。
さらに、アルバイトで自動車レースチームのメカニックを経験しています。
自分でいうのはおこがましいのですが、車に関する専門知識は素人では無いと自負しています。
自動車ブレーキの多くは、ブレーキペダルを踏む足の踏力を油圧作動でブレーキディスクに伝える機構になっています。
しかし、プリウスのブレーキは、ブレーキ作動で発生するエネルギーを回生(回収)するため、確かに複雑になっています。
ブレーキペダルは、直接ブレーキディスクに踏力を伝えるのではなく、単なる電気的なスイッチになっています。
その点から言えば、被告側の主張のように「電子部品のトラブルでブレーキが効かなくなる」可能性はゼロとはいえません。
しかし、トヨタは、そんなことは百も承知で車を設計しています。
非常時に、ドライバーは当然ブレーキを踏みます。
それでも減速しなかった場合、機械式のブレーキが自動で機能する設計になっています。
私の事故の場合は、ブレーキを踏むまもなく側壁にぶつかり跳ねかえされました。
それでも機械式ブレーキが自動で作動したことが確認出来ました。
池袋の事故とは状況が違いますが、ブレーキ作動の優秀性は証明できます。
また、ご存知のように、アクセルはブレーキとは完全に別系統になっています。
ブレーキを踏んだのにアクセルが全開になる確率は、完全にゼロといえます。
実際、池袋事故の3人の目撃者は、ブレーキランプはついていなかったと証言しています。
被告がパニクって、アクセルを踏み続けたことは明らかです。
米国でも、プリウスで事故を起こしたドライバーが「ブレーキを踏んだのに勝手に加速した」と言ってトヨタを提訴しましたが、米国運輸省の何重ものテスト検証の結果、完全に敗訴となっています。
池袋事故の担当弁護士は、車の構造に詳しくなくとも、こうした判例は当然に承知だと思います。
普通なら「運転ミスを認めた上で減刑嘆願を」と被告を説得するはずです。
憶測ですが、そうした説得もしたと推測されます。
それでも被告が「ブレーキを踏んだのに車が勝手に加速した」と言い張るので、「それならそれで面白い裁判になり、注目される」という算段が働いたのかもしれません。
もちろん、なんの裏付けもないので、そう思うだけですが・・
裁判所の「被告の訴えはすべて却下。有罪」との早期判決を望みます。
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┃★今後の建設需要(12) ┃
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国土強靭化5カ年加速化対策が閣議決定されました。
2021年度から15兆円を投資するとのことですが、近年の自然災害の大きさを考えると、心もとない金額といえます。
また、コロナ禍で財政がひっ迫している地方自治体は、公共事業に予算を割く余裕が乏しいのが懸念されます。
国土強靭化と直接関係がない政策ですが、BIM/CIMへの前のめり姿勢も気になります。
国交省は、2023年度に公共工事でのBIM/CIMの原則適用を目指したロードマップを発表しました。
それによると、2021年度には「ダムやトンネルなどの大規模構造物の詳細設計に原則適用する」となっています。
こうした目標を掲げることに何らの異存はありませんが、気になることがあります。
2019年度の適用件数が2018年度を大幅に上回ったことで、2025年度目標を前倒しにしたということですが、それでも設計で254件、工事で107件です。
経験としては圧倒的に少ないことと、大手企業中心の実績数字であることが気にかかります。
まだまだ試行段階を脱していないのではないでしょうか。
それと、マイナス面の声がほとんど聞こえないことも懸念材料です。
もし、設計BIMの不具合で施工に問題が出た場合は、誰がどのように責任を負うのかという議論もまったく聞こえてきません。
結局、いつものように暗黙のうちに施工側が負担することになるのでないかと危惧しています。
システム開発費用の回収やシステムの運用コストなども大事な要素ですが、そのような数字を見ることもありません。
なにやら、カネの問題は横に置いて、とにかく進めようという空気の濃厚さを感じます。
業界紙も、すべてがバラ色になるという論調ばかりで、少々“うんざり”です。
その昔、私は生まれたばかりのCADの推進役でした。
頼まれて日経コンピュータの記事なども書いていました。
所属していた会社の首脳陣からの推進許可を取るため、いろいろな細工をしました。
業界には、まだLANさえ無かった時代に、電話回線を経由して遠隔でCADを操作するデモンストレーションなども行い、導入予算の獲得などをしてきました。
そのための通信ソフトなどは、すべて自前で作成していました。
仕方ないとはいえ、“ごまかし”的なデモンストレーションやプレゼンテーションも行いました。
今のBIM推進にも、似たような空気を感じます。
もちろん、推進そのものには賛成していますが、バラ色だけの風潮に、少々皮肉を言いたくなった次第です。
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<編集後記>
コロナ禍で思うように人に会えないことでSNSが花盛りですが、SNSは天使のツールにも悪魔のツールにもなります。
知り合いの病院関係者が「友人から入るラインやメールにイライラが募る」と言っていました。
送る方は善意で「頑張って!」と送るのでしょうが、受け取るほうは「うるせえ!」となるのでしょうね。
送り手と受け手の意識のギャップは、SNS上では何倍にも拡大されてしまいます。
私がスマホを持たない理由の一つですし、パソコンのメールは読み手から見た目線で書いています。
直接会話の場合の数十倍の言葉使いになるよう心がけているので、少々疲れますね。
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