2026年5月15日号(国際、政治)

2026.06.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2026年5月15日号
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発行日:2026年5月15日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2026年5月15日号の目次
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◇米中首脳会談
◇平和は商売道具なのか(前半)
◇ひとつの中国は、期待から幻滅、そして妄想となりつつある
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
5月14日、世界が注目する米中首脳会談が行われました。
トランプ大統領は、この会談前にイラン問題を片付け、有利な状況で会談に臨みたかったはずです。
その目論見は外れましたが、それで大人しくなる人ではありません。
今号は、この話題からお送りします。
 
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┃◇米中首脳会談                      ┃
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一言で言えば「具体性、ほぼゼロの会談だった」です。
「9月24日に習主席夫妻をホワイトハウスに招待する」とのトランプ発言も、11月の苦戦が予想される中間選挙対策の“子供だまし”のようなもので、巷の反応はゼロ状態です。
 
会談の冒頭、習近平主席は「世界は新たな岐路に立っている。両国は手を携えて地球規模の課題に対応できるのか、美しい未来を創造できるのか。これらは歴史的な問いであり、大国のトップとして答えを出さなければいけない」と述べ、さらに「中国とアメリカはパートナーであるべきで、ライバルであるべきではない。2026年は両国にとって歴史的な一年になるだろう」と述べました。
これに対しトランプ大統領は、「友人である習主席と会談できて光栄だ。最大規模の会談になり、今後は素晴らしい関係を築いていけると信じている」と応じ、「米中関係はかつてないほど良好になるだろう。困難な時期でも我々はうまくやってきた」と続け、「問題が生じる度に、私があなたに電話し、あなたが私に電話し、我々はすぐに解決してきた」と両氏の良好な関係をアピールしました。
 
しかし、知りたいのは、こんな“歯の浮くような”言葉ではなく、両首脳の本音です。
その焦点の一つがイラン情勢ですが、両者は「ホルムズ海峡は開放されたままであるべきだとの認識で一致した」とされています。
トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで「習主席から、ホルムズ海峡の開放に向け支援の申し出があった」と言及し、さらに「習氏がイランに軍事支援しないと明言した」と言いました。
しかし、中国側の発表はゼロなので、この話は嘘だと思ったほうが良さそうです。
この会談の直前、米国はホルムズ海峡でイランの石油タンカーをミサイル攻撃しました。
ただし一隻のみで、それも機関停止だけを狙った精密攻撃でタンカーを動けなくしました。
これが、この攻撃の狙いで、イランの石油輸出の阻止が目的です。
この攻撃で、他のイランタンカーは動けなくなると考えたのです。
では、この効果はあったのでしょうか?
会談直前というタイミングは、中国へのアピール(脅し?)と考えるべきでしょうが、狙った反応は引き出せなかったようです。
 
次の焦点はイランの核開発ですが、詳細は完全に伏せられたままです。
ホワイトハウスの報道官は、両首脳が「イランが核兵器を保有することは決してあってはならない」で合意したと述べていますが、「嘘だろう」と突っ込みたくなります。
会談に同行しているルビオ国務長官は、出発前に米国のニュース・インタビューに応じ、イラン情勢で「中国がより積極的な役割を果たすよう説得したい」と述べていましたが、会談後は無言でした。
そもそも、中国の説得をイランが受け入れるか以前に、中国は、イランの核疑惑をこのまま残しておいたほうが“利がある”と考えているはずです。
ゆえに、この問題は俎上にすら乗らなかったと考えるのが妥当でしょう。
 
経済協力の拡大は、関税騒動が落ち着いていることもあり、さらに両国とも苦しい事情は同じですから、貿易拡大を目指す枠組みの合意は当然のことです。
 
最後に、日本が最も関心を持つ台湾問題について述べます。
会談前、米政府高官は、米国の従来の台湾政策に「変更はない」と強調し、大統領自身も台湾への武器売却について協議する方針を表明していました。
しかし、中国は「この問題は適切に処理されなければ両国は衝突し、中米関係全体を非常に危険な状況に追い込む」と述べて米国をけん制し、「『台湾独立』と台湾海峡の平和は相容れない」と強く釘を刺していました。
習氏としては、会談で台湾有事に対し米軍が動かない確証を得たかったはずですが、さすがに、トランプ氏に対しストレートには要求しなかったようです。
大統領自身から、面と向かって拒否される可能性が大きいからです。
 
それでも、中国としては何らかの言質が欲しい。
せめて、台湾に対する武器売却を止めるか延期の確証が欲しい。
だが、この売却は米国にとり大きな利益になるので、トランプ大統領が承諾するはずはありません。
では、その代わりに中国は何を要求したのでしょうか。
 
危惧されるのは、トランプ大統領が過去に発言した「世界を米中の2大国で治める」ことの再確認を与えることです。
傲慢極まりない話なのですが、トランプ氏は後から「あれはジョークだ」と煙に巻けば良いと軽く考える人物です。
それでも、この言質を得たら中国は具体的に動き出すでしょう。
その第一のターゲットは、当然台湾ですが、第二は日本となる可能性が大きいです。
トランプ氏は、そこまで明確な合意は与えないと思いますが、小さな言質でも、どんどんと拡大解釈してくるのが、今の中国です。
今回の会談内容は霧の中のままでしょうが、日本の安保体制の強化を急ぐ必要があります。
 
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┃◇平和は商売道具なのか(前半)              ┃
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高市首相は先月、殺傷能力のある武器輸出の解禁を含む防衛装備移転三原則と運用指針の改定を明言しました。
米露が手前勝手な理屈で他国を軍事攻撃する“今”を考えると、東アジアの情勢も危険度が増しています。
マスコミは「殺傷能力のある」という言い方を好んで使いますが、妙に含みのあるこの言い方は、好きになれません。
 
最初に2作の映画の話をさせてもらいます。
ロシアの文豪トルストイの小説「戦争と平和」を知らないという方は少ないでしょうが、全巻読んだという方も少ないのではないでしょうか。
私は、高校時代に読みましたが、10代の頭では表面的なことしか理解できませんでした。
その後、旧ソ連が1965年から1967年にかけて、この小説を全4部作という大作にして公開しました。
(日本では、二部を一つにして、前・後編として上映されました)
私は、その後のリバイバル上映を含めて3回鑑賞しました。
それで、ようやく、この小説の全貌を少し理解したと思えるようになりました。
 
1960年代当時のソ連は、真っ向から米国と覇を競う超大国でした。
この映画にかける執念はすさまじく、最大の戦闘であった“ボノジノの戦い”のシーンでは、自分が本当に戦場にいるかのような臨場感に圧倒されました。
エキストラ全員がソ連正規軍の兵士だということもあって戦闘シーンの迫力は真に迫っていました。
画面の1ショットで最大12万人が映っていると言われていますから、その迫力が分かると思います。
CGの無い時代ですから、そこにいたのは、すべて本物の人間兵士でした。
この映画は、ソ連のプロパガンダ映画ではなく、原作に忠実に作られていて、この大作の解釈を深めてくれ、深く考えさせられました。
 
もう一作の「西部戦線異状なし」は、戦争について別の考えを深めてくれた映画です。
戦前の1930年の米国映画で、第一世界大戦における一人のドイツ兵を中心に据えたストーリーでした。
高校生だった主人公は、先生の「ドイツを愛しているならば立て」という言葉で兵役を志願し、最前線に赴きます。
しかし、戦場は「祖国のために」などという感傷の世界ではなく、生と死が交錯する地獄です。
負傷して故郷に戻った彼は戦場の英雄として扱われますが、かつての高校で相変わらず生徒たちを戦場へと煽る教師の姿を目にし、凄惨な戦場に縛られたままの心は揺れ動きます。
 
やがて負傷が癒え戦場に戻った彼は、多くの戦友が命を失って消え、その補充に送られてきた、かつての自分のような新兵たちを目にします。
 
戦場が膠着状態に陥り、つかの間の平穏が訪れたある日、塹壕の鉄条網の向こうに一匹の蝶を見つけた彼は、蝶に向かって体を乗り出し、そろそろと手を伸ばしていきます。
しかしスクリーンには、その彼を狙うフランスの狙撃兵の姿が続きます。
そして、蝶とそこに向かって伸ばす彼の手だけが画面に大きく映ります。
彼の手が蝶の近くまで伸びた時、銃声が響きます。
そこで画面はストップし、次のテロップが流れます。
「この日、ドイツ司令部は発表した。『西部戦線異状なし』と」
 
私はレマルクの原作も読みましたが、映画からはそれ以上の鮮烈な衝撃を受けました。
映像の力ですね。
そして、現代の今も、同じような光景が世界の各所で起きていることに胸が痛みます。
 
先日、辺野古で起きた小舟の転覆事故で高校生が犠牲になりました。
基地建設反対の小さな抗議船に高校生たちを乗せたことで事故が起きましたが、現地の抗議団体と学校側の無責任な対応には呆れるばかりです。
また、この抗議運動を支援している日本共産党に抗議が集まったことを受け、同党の小池書記局長は「平和学習を受けて・・」と、あたかも犠牲となった高校生が「平和学習の成果として辺野古に来た」と思わせるようなコメントを出しました。
しかし、この高校生は自身のSNSに「きれいなサンゴ礁が見るのが楽しみ」と投稿していました。
こちらの気持ちのほうが本当ではないでしょうか。
 
このような意見を発信すると、非難を受けるかもしれませんが、政党の一部や平和団体が唱える平和は、商売道具のように思えて仕方ないのです。
こうした平和運動は、冒頭で紹介した二作品の映画に及ばないどころか、若者の気持ちを利用しようとする黒い霧に見えるのは私だけでしょうか。
 
次回は、国会の政争の的となっている「スパイ防止法」や「武器輸出」のことについて論じたいと思います。
 
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┃◇ひとつの中国は、期待から幻滅、そして妄想となりつつある ┃
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少し前の話になりますが、日本を牽制する意味で、中国が「旧敵国条項」を持ち出し、あたかも今でも「日本は国連から敵国扱いになっている」との印象操作を行いました。
しかし、この条項は1995年の国連決議で「死文化」が確認され実効性は失われていますから、意味のない印象操作です。
ただ、国連憲章の改正手続きが進んでいなくて条文自体が残っているため、中国などが繰り返し利用するのです。
しかし、各国がまったく反応しないことに焦った中国は、挙句の果てに1952年発効のサンフランシスコ条約を認めないとまで発言しました。
しかし、そうなると、台湾は日本が統治権を放棄しただけの存在となり、どこにも帰属しない宙ぶらりんの地域となり、実効支配している台湾政府の国となります。
 
このように中国側の論理は支離滅裂なのですが、彼らにそこまで言わせてしまう隙を与えている日本の政治家の歴史認識の欠如のほうが深刻かもしれません。
 
そもそも「中国は一つ」と言えるのかが問題です。
確かに、台湾は大陸中国の大きさに比べて、はるかに小さな国です。
しかし、独立国か否かは、国の大きさで決まるものではありません。
何より重要なのは、政治形態と国民の意識です。
大陸中国は共産主義国家というより、習近平主席による独裁国家になっています。
一方の台湾は、民主選挙でトップを選ぶ民主主義国家で、両者は「水と油」の関係です。
政治形態はもちろん、国民の意識からも、とても一つの国に収まることは無理です。
 
「一つの中国」という言い方は、互いが「自分が正当で、相手は反乱地域だ」と主張し合っているという状態のことを意味します。
かつて、台湾政府もそう主張し、大陸への反攻を計画していた時期がありました。
しかし今の時代、そんなことを考えている台湾人は、ほぼいないでしょう。
頑なに「一つの・・」と言って、軍事侵攻を考えているのは大陸中国のほうです。
 
では、日本を含む周辺諸国は、この両方とどう付き合えば良いのでしょうか。
外交の基本は「断定戦略」より「曖昧戦略」にあります。
米国を中心とした西側諸国は、「経済が豊かになれば中国は民主主義国家になり、大陸と台湾は平和裏に一つの中国となる」とみて、経済支援を積極的に行いました。
日本はその先頭に立ち、率先して中国との国交を回復し、大金を投じた経済支援や技術支援を行い、中国の経済発展を援助してきました。
 
米国は、中国との貿易関係を拡大させ、「台湾有事の際にどう動くか」を明確にしないことで中国の侵略意図を抑えてきました。
そうして西側諸国は、民主主義に生まれ変わる中国を期待したのです。
しかし、その期待は無残に打ち砕かれ、今の中国は共産党の一党独裁すら捨てて、一人の皇帝のような習近平主席の専制独裁国家となり、周辺国を武力で脅し続けています。
 
こうした好戦的な中国に対し「台湾有事は日本の有事」と主張すること自体は間違いではありません。しかし、上手い外交とはいえません。
今の中国に、核兵器以外で日本を武力攻撃することは難しいと思われますが、無用な挑発は、それこそ無意味です。
されど黙認は、かつて、ナチスドイツの横暴を許した欧州の愚を再び犯すことになりかねません。
武力攻撃に対する有効な反撃能力を備えながら、友好国との連携を強化した“戦う姿勢”を見せることが大事です。
 
台湾進攻に及び腰の人民解放軍のトップたちを次々と粛清している習近平体制は確実に崩壊に向かっていますし、トップが変われば方針が変わる可能性があります。
ただし、その前に暴発する危険があることは、ロシアによるウクライナ侵攻が示しています。
万が一、それが現実になった場合は、隣国である日本は米国と協力して侵攻を阻止するように動く必要があるので、その準備を怠るわけにはいきません。
中国は、米国の介入を何よりも恐れていて、米国との裏取引を仕掛けています。
それゆえ、トランプ大統領の中国訪問の“公開されない”真の成果が期待されますが、無条件の期待は禁物です。
日本は、いつでも戦える準備をしながら、米国と連携して台湾有事は座視しないことを、言葉だけでなく態度と準備で示していくべきと考えます。
 
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<編集後記>
磐越自動車道で起きた新潟の高校生を乗せたマイクロバスの死傷事故。
痛ましいできごとですが、あのバス会社は、私の郷里の、昔は単線のローカル鉄道会社でした。
幼少期の私が電車を見に毎日のように通った駅舎は、現在、この会社の本社になっています。
映像に映る老朽化した“かつて”の駅舎が、高校生の痛ましい死と相まって、墓標のように見えました。
 
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