2015年7月15日(国際、政治)

2015.07.15

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2015年7月15日
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                発行日:2015年7月15日(水)

いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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          2015年7月15日号の目次
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★安保法制議論の無意味さ
★戦争と平和(その7):中国の戦争観
☆アジア諸国は、安部首相の成功を望んでいる
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こんにちは、安中眞介です。
本号は国際問題、政治問題の号です。
 
安保法案は、衆院特別委員会で可決され、16日にも衆院を通過する予定です。
野党は「審議不十分」と抵抗していますが、これ以上時間を費やしても議論はかみ合わないでしょう。
審議の場を参院に移して、別の角度からの論戦を期待したいものです。

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┃★安保法制議論の無意味さ                  ┃
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アニメの宮﨑(ざき)駿監督が、安部首相を「愚劣」と呼んで批判した。
反対意見を述べることは個人の自由であるが、反対派の人達の発する言葉が、どんどん暴力的になることが気にかかる。
これでは、抗議と言うより、アジテーションになってしまう。
かって、大学紛争が吹き荒れた大学構内で、さんざん聞かされたフレーズである。
宮崎監督のような方までが、こんな荒れた言葉を使うとは、とても残念に思う。

野党やマスコミは、「国民の理解が得られていない」と、そればかりを強調するが、国民の理解とは何であろうか。
野党の主張する「戦争になる」とか「徴兵制につながる」とかいう極端な主張のほうが「国民の理解が得られている」と言うのであろうか。
このような、ワンフレーズの乱暴な言葉で全ての議論を封じてしまう「言葉の独裁」は、マスコミの得意技で、戦前に「鬼畜米英」の言葉で、国民を戦争へと導いたのと同じパターンである。
かって、これを利用したのが、小泉首相であったことは記憶に新しい。

ここまでの国会内外の論争を振り返ってみると、このようなワンフレーズに邪魔をされて、この法案の可否に対する本質の議論が全くなされていないことに気付く。
それは、中国が武力で尖閣諸島を奪いに来るか否か、かつ、そうした事態になった場合、日本は尖閣を守るのか座視するのかについての議論である。
与党というより、野党が、その議論を避けているように感じる。

世論調査も、安保法案に対する賛否ではなく、尖閣防衛に対する賛否を問うたならば、結果はかなり違ったものになると思う。
こうした本質の議論を素通りした法制議論は、どう結論が出ようが、たいした意味はないと思う。
私の中では、すでに価値の乏しいテーマになってしまっている。

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┃★戦争と平和(その7):中国の戦争観            ┃
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今の中国は、戦争というものをどのように捉えているのであろうか。
今年になって、名前は出なかったが、中国人民解放軍の複数の中堅将校たちが語った言葉がある。

「人民解放軍は1979年の中越戦争以降、戦争を経験していない。『戦争しない軍隊は腐る』とは習近平主席の言葉だが、まさにその通りで、われわれ中堅若手は戦争を求めているのだ」

「3月にミャンマーの爆弾が誤って国境を越え、雲南省に落ちて中国人5人が死亡する事件が起きたが、われわれは上層部に、ミャンマーへの宣戦布告を建議したほどだ。北朝鮮の金正恩政権も、物騒な核ミサイル実験を止めないのであれば、解放軍が介入して政権を転覆させるべきだと具申している」

「もしも習近平主席が対外戦争を躊躇するならば、われわれは『戦争できる指導者』に代わってもらうまでだ」

仲間内の議論となると、このような盛り上がりを見せるのは、どこでも同じである。
最近の自民党の勉強会での発言しかり、反戦集会や反原発集会での発言しかりである。

だから、先の人民解放軍の将校たちの発言も割り引いて考える必要はある。
だが、人民解放軍が日本に対し戦争を仕掛けたい誘惑に惹かれているのは事実である。
彼らが一番戦争を仕掛けたいと願っている相手が日本であることを、日本は軽視できないのである。

いま中国は、経済力を背景に、軍事力の近代化を急ピッチで進めている。
だが、日本と戦争する場合、やっかいなのは日本を拠点とする米軍の存在である。
中国は、極東米軍と中国軍の戦力比を10:1とみなしている。
つまり、中国軍の実力は、第7艦隊を主力とする極東米軍の1/10しかないという認識である。
しかし、中国近海での戦闘となれば、沿岸に配備した地対艦ミサイル網があるため、戦力比は3:1に縮まると見ている。
それでも、まだ差がある。
米軍とは戦えないということである。
しかし、日本との戦力比は互角であり、中国近海では、中国が上回っているとみている。
そのリポートでは、問題の尖閣近海での戦力比を論じていないが、若干日本が優位と見ているようである。
だが、今のピッチで中国の軍拡が進めば、確実に日本を凌駕する日が来ると見ているようである。

そこに浮上したのが、日本の集団的自衛権の行使問題である。
今回の安保法案が通り、集団的自衛権の行使が明確になると、日中での軍事衝突に米軍が参戦する可能性が高くなる。
中国の海洋戦略に大きな狂いが生ずることは確実である。
これが、今の中国の戦争観なのである。

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┃☆アジア諸国は、安部首相の成功を望んでいる         ┃
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民主党など大半の野党は、アベノミクスと称される安部首相の経済政策が失敗に終わることを望んでいる。
朝日新聞などの反安倍政権のマスコミも同様である。

だが、考えると不思議なことである。
アベノミクスが失敗に終わると、日本は大きな不況に見舞われるであろう。
我々経済人は勿論のこと、大多数の国民もその事態を望んでいないはずである。
だが、野党や朝日新聞などは、そうではないらしい。

それでは、目をアジアに転じてみよう。
中国の意図は、単純かつ明白である。
「今後のアジアは中国のものだ」を確実なものにしたいのである。
そのための手段が、強大な軍事力とAIIBをはじめとする経済力(つまり、カネの力)である。
しかし、中国の意図は分かっていても、どの国も、軍事力も経済力も中国に遠く及ばない。
及ぶどころか、彼我の差は開く一方である。
ASEAN各国が束になってもかなわないし、将来の大国であるインドも、まだまだ力は及ばない。

現実面で、中国の台頭に対抗できる唯一の存在が日本なのである。
従って、東アジア諸国のほとんどは、外交および経済における安倍首相の成功を望んでいる。
もし、アベノミクスが失敗に終わったならば、アジアの諸政府は、中国と協調せざるをえなくなり、中国の圧力が高まることになる。
そうして、それらの国々は、やむを得ず、中国の指示に従い、中国の支配の基での繁栄を模索するしかなくなる。
そうなる恐れが現実化する可能性も大きいため、これらの国々は、用心深く日本を応援し、アベノミクスの成功を望んでいるのである。

だが、日本のマスコミは自虐に傾き、日本の重要性を過小評価し、逆に中国の重要性を過大評価している。
ここは、冷静に事実のみを見ていく必要がある。
たしかに中国のアジアにおける貿易の伸長は著しいが、その貿易の大半は、日本を含む先進国に親会社を持つ企業によって行われている。
(これらの会社は、統計上は中国企業に分類されている)
また、「爆買い」と称される中国の一部消費者の購買動向が話題になるが、一般の日本の消費者はまだ中国の一般消費者よりはるかにおカネを持っている。
つまり、アジア各国の輸出依存型経済を支えるのに、日本はまだまだ大きな役割を果たしているのである。

さらに、中国を含めたアジアの新興国は、日本のような先進国が提供する資本と技術なしに、その能力を発揮することができない。
東南アジア全体において、これまで、日本は中国よりはるかに多くの直接投資を行ってきたし、日本の大手企業は、アジア各国に多くの技術やノウハウの伝授を行ってきた。
中国の喧伝とは裏腹に、中国の輸出品の多くは、日本からの技術やノウハウがあってこそ出来上がってきたものである。

これらのことを、アジア各国はよく理解している。
だが、日本に“いい気”になっている余裕はない。
これまでの優位を失わないために、さらなる努力に挑まなければならない。
その第一は、「貿易関係の自由化」という困難な構造改革への挑戦である。
焦点のTPPは、その始まりに過ぎない。
域内貿易の無関税化に向けて、日本はリーダーシップを発揮していかなければならない。

安倍首相は、上記の努力を不可避なことと認識している。
日本経済の再活性化を目標としたアベノミクスの第三の矢とは、国内に留まらない規制緩和なのである。
特に農業などの、これまで保護してきた分野の門戸をより広く国際競争に向けて開くことなのである。
アジア各国が、この成功を強く望むのは当然のことである。

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<編集後記>
TPPが現実味を帯びるに従い、日本の高級農産物が世界で飛ぶように売れるようになるとの期待感が一部にあるようですが、どうでしょうか。
一粒1000円のイチゴとか、一房100万円のぶどうとか、この手のニュースを良く目にします。
そんな報道が、冒頭の「高級農産物が・・」に結びつくのでしょうが、幻想に過ぎないと思います。
私は、新潟の田舎で育ったせいか、農業には並々ならぬ関心があります。
自分が手がける第4の事業として、「アグリ(農業)事業」を構想しているくらいです。
でも、高級農産物には興味が湧きません。
普通の家の食卓に毎日乗るような農産物を安全に効率よく生産することに興味があります。
世界の人々が求める食材も、そんなものだと思っています。
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