2023年10月31日号(経済、経営)

2023.11.17

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年10月31日号
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発行日:2023年10月31日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年10月31日号の目次
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◇企業連携の行方は、どうなる?
◇税金を考える(2)
◇企業にとっての借入金(6)
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
インボイス制度が始まりましたが、企業の経理作業は増え、受発注にも混乱が生じています。
 
「欧米では付加価値税として定着している」という声がありますが、それは導入当初からインボイスだったからです。
日本の場合、導入時に「売上3000万円以下の業者は、客から受け取った消費税を懐に入れられるので、儲かるんですよ」との甘い言葉で、反対する業界を抱き込んだのです。
その3000万円以下が1000万円になり、そしてゼロになるわけです。
 
ですが、企業の大きさに関係なく、受け取った消費税は納税するのが当然です。
日本流の「ごまかし」で導入したツケが回ってきたわけですが、さて、この先どうなるのでしょうか。
 
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┃◇企業連携の行方は、どうなる?              ┃
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インボイス、電子帳簿保存法、さらに2024年4月から厳格化される残業規制と、企業経営に対する法規制は厳しくなる一方。
特に建設業は「対応の遅れ」というより、乗り切る策に乏しく、倒産が増えていく様相が出始めています。
そんな中、大手では、異業種との事業連携に活路を見出そうとする動きが出てきました。
 
設計事務所最大手の日建設計とソフトバンクは、スマートビルディング事業で新会社を設立して事業提携することを発表しました。
また、東大と設備会社9社がGX実現で提携することを発表しました。
 
こうした事業提携が実を結ぶか否かは今後の推移を見ていくしかありませんが、過去の事例からは厳しい結果が予想されます。
日建設計とソフトバンクの提携は、スマートビルディング事業となっていますので、大型の高層商業ビルのエレベータ制御や空調環境の制御などが狙いかと思いますが、その分野でソフトバンクに大きなノウハウがあるようには思えません。
だとすると、データコントロール関係かと思われますが、詳細は不明です。
何より両者の企業文化が違いすぎるので、社員同士のコミュニケーションも取れないような気がします。
 
GX実現の提携については、あまりに漠然とし過ぎていて、論評することすらできません。
そもそも、参加企業に明確な戦略があるのかどうかが疑問です。
 
過去も現在も、行き詰まったときの企業提携という話は数多くありますが、長く続いて成功したという事例をほとんど聞きません。
鳴り物入りで始まり、一時は大成功と言われた日産とルノーの事業提携も、ゴーン被告の不正という大きなキズを産み、ついに提携解消へと進んでいます。
日産の受けた傷はあまりにも深く、未だに、その全容は明らかになっていません。
 
小さな事例ですが、弊社も提携の失敗を何度も繰り返してきました。
いったんは成功しても、長続きせず、やがて傷が深くなり解消ということのオンパレードでした。
それでも、現在まで長く続いている提携もあります。
ヒントは、互いの利益の相互作用が機能することであり、人間関係に深く立ち入らないことだと思っています。
 
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┃◇税金を考える(2)                   ┃
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前回、「消費税は受け取った段階では『預かり税』である」と書いたことに関して、「預かり税ではない」とのご意見を頂戴しました。
もちろん、財務的には「仮受消費税」という科目で処理すべきですが、意味は同じだと思います。
あえて「預かり」という言葉を使ったのは、財務に詳しくない人には分かりやすいと思ったからです。
ということでご理解いただきたいと思います。
 
ところで、経団連会長が消費税を19%に引上げるよう発言し、世間の批判を浴びたことは覚えておられると思います。
会長の発言は、消費税が上がれば「輸出大企業に対する還付金が増える」という思惑だとして批判を浴びたわけですが、同時に、社会保険料の引上げを阻止したいという思惑もあったはずです。
 
消費税率を8%に引き上げたとき、政府は批判をかわすため「消費税を社会保障財源にする」という税制改定を行いました。
その結果、「消費税法第1条第2項」にこう明記されました。
「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会補償給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」
 
国民の大半は、税の中身に関して関心が薄く、こうした条文にはまったく興味を示しません。
ですが、この改定議論は、そもそも経団連が火付け役でした。
そして現在でも、財界は社会保険料の増額を阻止しようと、「少子化対策するなら、消費税を上げろ」と主張しているのです。
もちろん国民は「消費税上げろ」には大反対ですが、「社会保険料の増額阻止」は、財界と意見は一致するでしょう。
 
この問題、一般の人にはピンと来ないでしょうが、企業経営側の人間にはピンと来る話です。
現在、国民は給料の「約30%」を社会保険料として支払っています。
ですが、これは給与所得者(社員)と雇用者(企業)が折半で負担しています。
つまり15%が「社員の支払い」、15%が「雇用者(企業)の支払い」となっています。
しかし、社員は、自分の給料から天引きされている「15%の負担」は意識していても、企業が負担している「15%」には意識が及んでいません。
この金額、給与明細書には記載されませんから当然といえますが、企業としては重い負担です。
企業の財務諸表で「法定福利費」という科目になっていますが、見る機会があったら、かなりの金額になっていることが分かるでしょう。
 
つまり、社会保険料が引き上げられれば、社員の手取りの給料が減るだけでなく、企業利益も同じだけ減るのです。
経団連がこれを避けたいのは当然で、それはほぼ全ての企業に共通の思いです。
 
国民は、「輸出大企業が潤う消費税増税」には反対だが、「社会保険料の増額を防ぐための消費税増税」には賛成という矛盾する気持ちに追い込まれるわけです。
 
現在、国民の関心は消費税に向いていますが、岸田政権は社会保険料の引上げを画策しています。
岸田政権が社会保険料の引上げを画策するのは、次のストーリーを描いているからです。
まず「膨れ上がる社会保障費を賄うために社会保険を引き上げます」と主張する。
すると、当然、反対の声が湧き上がる。
その声が大きくなるのを見計らって、「では、消費税法に明記されている、『社会保障財源』を賄うため、消費税を上げます。どっちにしますか」と問うわけです。
当然、財界は賛成ですが、国民は股裂き状態となります。
11年前の「消費税法第1条第2項」の改定には、このような思惑が秘められていました。
「さすが、財務官僚の考えていることは“奥が深い”と言うべきか、“小ざかしい”と言うべきか。
それは読者のみなさまにお任せします。
 
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┃◇企業にとっての借入金(6)               ┃
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これまでの話で、自社開発の商品を持つことは魅力ですが、そこに至る困難さは分かると思います。
多くの場合、多額な借入を行うことになるからです。
 
では、おカネがあって借入の必要がなければ良いかというと、そうでも無いのです。
私の知り合いに、資産家の息子がいました。
彼は、「画期的な商品を開発するんだ」と言って、会社を立ち上げました。
もちろん、設立資金は親のカネです。
立派なビルのワンフロアを借り切って、必要な器材を揃えました。
かなりの高給を提示して技術者を何人も雇いました。
私とは比べものにならない境遇を羨ましいとは思いましたが、私は確信していました。
彼の会社から画期的な商品など生まれないことをです。
 
数年後、そのビルから彼の会社の名前は消えていました。
個人的にも応答はなくなりました。
私に自慢した手前、会いたくも話したくもないのでしょうね。
 
彼のように「失ってもよい資金」での開発では、本気度は出ないのです。
新興企業は特にそうです。
ダメだったら、全財産をなくすだけでなく、夜逃げするしかない状況ぐらいでないと、画期的な商品も、独創的な商売も成功しないのです。
100円ショップを始めたダイソー創業者の矢野社長のお話しを聞いたことがあります。
100円ショップにたどりつくまでに経験した商売は30種で全部失敗、夜逃げも3回と笑い話のように話されていました。
 
私も似たようなものでした。
それまでに積み上げた利益と自己資金で用意した1億円では商品は開発出来ず、さらに1億円の借金をして、ようやく商品は完成したのです。
借金をしてからが本気になれたということなのです。
 
それでも、やはり借金は怖いですね。
そこで、幾つかの原則や限度額を設定したのです。
 
前に、その一つ、「借金をする時の鉄則」を以下のように書きました。
「自社の粗利%以上の金利で借りたら、返せなくなる」。
もちろん、短期で少額の借入なら問題はないでしょう。
 
では、どのくらいまで借入金が膨らんでも大丈夫かと聞かれることがありますが、結構難しい問題です。
その企業の商売の質、代金回収や支払いのサイクルなどを分析しないと確実なことは言えません。
ですが、私は、だいたい以下の基準で限度額を考えています。
仕入れ販売型の企業なら、年商の30%、自社開発商品を持つ企業なら、年商の90%です。
その上で、支払う利息金額は、粗利益金額の3%に抑えることが必要です。
 
ただし、上記の数字は、あくまでも平均的な目安です。
経営の立て直しを頼まれた場合は、弊社の算定方法で各種の指標を計算しています。
 
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<編集後記>
福島第一原発の処理施設で配管を洗浄していた作業員がその洗浄水を浴びるというトラブルがありました。
当然、国内外の反対勢力は、鬼の首でも取ったかのように騒いでいますが、なんの実害もない話です。
私が同原発内で仕事をしていた時、作業員が燃料貯蔵プールに転落するという事故が起きました。
当時でも「ヤバイ」という重大な事故でした。
この転落の事実が外部に漏れることはありませんでしたが、こうした情報隠蔽は良くないと思います。
あのとき、転落の事実を公表していたら大変な騒ぎになったと思いますが、当の作業員には、その後もなんの障害も出なかったことを公開していれば、今回のことはニュースにもならなかったと思います。
従って、今回の公表報道は正しい処置といえます。
 
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