2023年1月15日号(国際、政治)
2023.01.16
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年1月15日号
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発行日:2023年1月15日(日)
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2023年1月15日号の目次
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◇反撃能力の保有は、専守防衛と矛盾するか?
◇岸田首相は、5月の広島G7まで?
◇米国の下院の混乱から2024年大統領選を予想する(共和党では)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
日本の反撃能力保有の方針に対し、国の内外から、予想どおりの賛否両論が飛び交っています。
その中に「国を守るのは平和だ」とする意見がありますが、目的と手段を取り違えている典型的な例だと思います。
「平和」は目的であって、国を守る手段ではありません。
その平和をどうやって達成するかの手段が「外交」です。
そして、どうやって守っていくかの手段が「防衛」です。
この2つの手段の組み合わせで平和を達成し、保つことが政治の要諦といえます。
議論になっている反撃能力の保有は、「防衛」のみならず「外交」の道具の一つでもあります。
今号は、この問題から始めます。
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┃◇反撃能力の保有は、専守防衛と矛盾するか? ┃
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「専守防衛」は、純軍事的な意味では特殊な戦略概念です。
公式に唱えている国は世界で日本だけでしょう。
防衛白書では、以下のように明記されています。
「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も、自衛のための必要最低限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」
これを狭義に解釈すると、「自国が武力攻撃を受けた時に『自国内でのみ武力を行使する』」ということになります。
つまり、「戦場は自国内だけに限定」され、犠牲となる市民も自国市民だけということになります。
まさに現在のウクライナであり、どこか割り切れない思いがするのは、私だけでしょうか。
また、攻めてきた敵の撃退にしか武力行使ができないとなると、攻めてきた敵国の軍事力より自国の軍事力が上回っていない限り、防衛は不可能という理屈になります。
でも、日露戦争のように、軍事大国に勝つこともあるではないかと言われるかもしれませんね。
しかし、日露戦争は、ロシアから見れば、全面戦争ではなく、極東における辺境戦争でした。
対する日本は、軍事力を特定地域に集中させた局所勝利を積み重ねた上に“表”の外交、さらには“裏”の外交を絶妙に組み合わせて勝利(というよりは、有利な条件での講和)を得たのです。
実際、日本軍の損耗は激しく、皇居守備の近衛兵団の一部まで動員しての薄氷の勝利でした。
当時の国民は「大勝利」と浮かれ、マスコミは「モスクワまで進撃しろ」などと無責任に煽りましたが、日本軍は人員、物資とも補給が尽き、もう一歩も前進できない状態でした。
小説「坂の上の雲」でも描かれていましたが、前線を指揮した児玉源太郎参謀総長に対し、当時の陸軍大臣・大山巌が奉天会戦に勝利した後に言った言葉が象徴的です。
「ここからは、おいどん達、政治家の出番じゃ」
実際、当時の明治政府は、激しい消耗戦を戦いながら、海外からの資金調達やロシアの革命勢力への支援、さらに米国を仲介役とする講和交渉を必至に続けていたのです。
軍事的勝利をうまく講話に結びつけた総力戦の勝利でした。
日露の講和条約が米国のポーツマスで締結されたことが、そのことを物語っています。
しかし、それから118年後の世界は、政治、軍事とも複雑さを増しています。
核兵器の誕生は、大国どうしが第二次大戦までのスタイルで戦争することを抑止する効果がありました。
核廃絶を訴える人々は、こうした解釈を非難するでしょうが、厳然たる事実です。
キューバ危機は、米ソ両国が核大国であったから回避されたと言えます。
現在も世界各地で続く戦争は、「核兵器を使わない」という大前提があって行われています。
もし、ロシアがウクライナで核兵器を使用すれば、その大前提が崩れることを意味します。
そして、その時はもう間もなくかもしれないのです。
また、もし、ウクライナが核兵器保有国であったなら、プーチン大統領は、この侵攻を決意したでしょうか。
おそらく、出来なかったでしょう。
嫌な解釈ですが、核兵器保有こそが最も効果的な「抑止力」であることは認めざるを得ないのです。
その意味では、北朝鮮が核を持つのは当然といえます。
ただし、駄々っ子が銃を持って脅している構図ですから危なくて仕方ないのです。
しかも、保護者の中国が、叱らずに、むしろ、その状況を利用しているのですから、ほとんど暴力団の構図です。
もちろん、日本の反撃能力保有は、核兵器保有を意味していません。
政府が昨年の12月16日に改定した国家安全保障戦略では、こう述べています。
「平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」
明記はしませんでしたが、核兵器を除く敵基地を叩くための攻撃能力を備えることを宣言し、反撃能力の保持は「専守防衛の中に含まれる」と宣言したわけです。
でも、世界は、日本が核兵器を持つのは時間の問題とみています。
問題が大きいので、この話題、次号に続けます。
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┃◇岸田首相は、5月の広島G7まで? ┃
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岸田首相は「インフレ率を超える賃上げを」と、さかんに賃上げアピールを繰り返しています。
ご丁寧に、連合の新年交換会に出席して「5%を超える賃上げの実現を支援する」とのリップサービスまで行いました。
国民の多数を占めるサラリーマンを意識してのことでしょうが、評価する声はほとんど聞かれません。
どうも、岸田首相の言葉は、聞く人に対する「訴求力」に乏しいようです。
情緒的な言葉で言えば、「心の琴線に響かない」のです。
「賃上げを」の言葉の後に、防衛費増額や少子化対策用として増税に言及するという“ちぐはぐ”さに、国民は白けてしまうのです。
岸田首相は、「首相になりたい」という名誉欲のみが強く、「この国をどう導く」という強い理念を持っていたわけではないのでしょう。
良くも悪くも安倍元首相には「日本を戦後レジームから脱却させる」という明確な意志がありました。
戦後レジームとは「日本を戦前の負の遺産に縛り付けている内外からの鎖」であることは明らかです。
ゆえに、安倍氏の個々の手段に間違いは多かったけれど、理念としては“真っ当”でした。
安倍政権が長期政権になったことは、それを国民の多くが支持したことの証です。
岸田首相は、その安倍氏の威光をバックに首相になったわけですが、突然にその後ろ盾を失ったことで、羅針盤なき航海になってしまっています。
ならば、腹をくくり、明るい方向は分かるので、「こっちへ行くぞ」と国を引っ張っていけば良いのです。
5月の広島G7は、その絶好の機会です。
それまでに自分の理念を固め、世界に発信し、返す刀で国民に繰り返し説明し実行していけば良いのです。
しかし、最大の懸念は、岸田氏のブレーンの実態が見えないことです。
そもそも、「自身を支える力を持ったブレーンがいるのか?」という疑問すら湧きます。
企業経営でも、大企業はもとより、中小企業だって、トップ一人の能力だけで作った理念は弱いし、実行段階で頓挫し、迷走する危険も大きいです。
夫婦ふたりだけの商店だって、ブレーンとなる連れ合いの助言や助力は欠かせません。
一人だけの自営業者でも、適格な助言をくれる外部ブレーンの存在は必要です。
議長国として迎えるG7サミットは、得意の英語を生かす岸田首相にとっての絶好の舞台です。
インパクトある政策を世界に発信し、その実行のためとして現在の自公の枠組みを終わらせるのです。
与党以上にひどい野党の姿を考えると、国民の中に与野党の政権交代の声は起きません。
なので、与党の枠組みを大胆に変える政策を発表するのです。
当然、与党内の大きな反発を呼ぶでしょうが、総選挙に打って出て国民の審判を仰ぐのです。
これが民主政治としての王道です。
そして、解散権こそが首相の持つ最高の切り札なのです。
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┃◇米国の下院の混乱から2024年大統領選を予想する(共和党では) ┃
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かつてのキューバ危機を描いた映画「13days」の1シーンを思い出しました。
ケネディ大統領から意見を求められた幹部の一人がこう言いました。
「ソ連が理解する唯一の言葉は“行動”だ、そしてリスペクトする言葉は“力”である」
ソ連を今のロシアや中国に置き換えてみると、米国の国策が「なるほど」と理解できます。
その米国が、下院議長選出で、共和党のドタバタ劇による呆れた醜態を晒しました。
共和党は、下院で勝ったとはいえ、議席数の差はわずかで、上院では1議席を失いました。
さらに、同時に行われた州知事選挙では2人の知事の座を失いました。
惨敗ではありませんが、敗北といえる内容でした。
その原因を作ったのがトランプ氏であることは誰もが知るとおりです。
しかし、当の本人には、その反省もなく大統領職に未練たっぷりなことが、この混乱の要因です。
ところで、彼が推薦した250人の共和党の候補者の当落はどうだったのでしょうか。
勝率は82%でしたが、大半は共和党の地盤で、もともと再選確実な現職候補でした。
民主党との激戦州で、トランプ氏が肩入れした候補の結果は以下のとおりです。
下院は0勝5敗、上院は1勝4敗、州知事選は0勝2敗
つまり、次の大統領選挙で接戦が予想される州では惨敗という結果でした。
その要因は、トランプ氏が政治家としての資質のない候補者をゴリ押しして、無党派層の離反を招いたことにあります。
それに責任を表明することもなく、次の大統領選への立候補に踏み切ったトランプ氏に対する批判が党内で高まっているのです。
そうした党内の空気に熱烈なトランプ支持派の議員たちが猛反発して今回の事態を招きました。
「しまった」と思ったトランプ氏は慌てて本命のマッカーシー院内総務への支持を訴えましたが、
効果はなく、氏の凋落が浮き彫りになっただけでした。
焦ったトランプ氏の攻撃対象は、党内で有力候補となってきたフロリダ州知事のロン・デサンティス氏に向かうでしょう。
明確な政治理念を持たないトランプ氏には、他者攻撃しか戦略がないのですから。
デサンティス氏は、“小型トランプ”と言われるように、かなりの保守派です。
しかし、44歳という若さに加え、名門イエール大学からハーバード大学を経て法務博士号を取得という米国人好みの超エリートであり、大学では野球選手としてならしたスポーツマンでもあります。
さらに、イラクに派遣された軍歴の持ち主と、これ以上ない“ピカピカ”経歴の持ち主です。
トランプ氏が焦るのは当然で、今後、デサンティス氏の家族にまで、なりふり構わぬ攻撃が及ぶことが予想されます。
このように、デサンティス氏の存在感は増すばかりですが、圧倒的な優位性は逆に落とし穴にもなり得ます。
たとえば、弱者である有色人種や低所得にあえぐ白人層の反発を招くという点です。
それを意識してか、ハリケーン被災の際には、バイデン大統領に協力して対策に奔走していました。
また、熱心なカソリック信者でもあり、キリスト教信者からの支持も厚いです。
冒頭に挙げた「敵対する国へは“行動”で、そしてリスペクトする言葉は“力”」という伝統的な米国の価値観に最も近い候補だともいえます。
ただし、こうした優位性はマスコミが作り上げている側面もあり、全米レベルで支持が広がるかは、まだまだ未知数です。
ところで、共和党で、ウィスコンシン州選出のマイク・ギャラファー議員(38)が面白いことを述べています。
「確かに今の下院は乱雑だ。だが、考えてみれば民主主義というものは意図的に乱雑な制度なのだ」 彼も、イエール大学を経て、ジョージタウン大学で博士号を取得した元海兵隊員で、安全保障問題のエキスパートとしても知られている共和党保守派のルーキーです。
まだ若すぎますが、彼の今後も要注目です。
次回は、民主党の動静を考えてみます、
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<編集後記>
予想どおり、突然にゼロコロナ政策を止めた中国で感染が爆発的に増えている様子。
中国政府は、“ごまかし”の情報発表すら止めてしまい、感染状況はまったく闇の中になってしまいました(14日になって、突然「死者数は約6万人」と発表しましたが、信用できる数字とは見られていません)。
当然、日本や韓国は、水際対策を強化したわけですが、逆ギレした中国は、ビザの発給停止で脅しを掛けるという“やくざ”まがいの報復に出ました。
習近平政権は、完全に国際ヤクザと化したようです。
ならば日本は、実際のヤクザ対策と同様の手を使うことです。
「恐れず、引かず、しかし相手を人間としては認める」という対処法です。
私が、水商売や建設現場で実践した方法です。
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