2021年4月15日号(国際、政治)

2021.05.06


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年4月15日号
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発行日:2021年4月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年4月15日号の目次
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★国産ワクチン開発の遅れ(前半)
★ミャンマーの絶望
◇抑止力という名の軍事力(12)
◇近代史を闇の中から引き出すことで、これからの戦略が見えてくる(1)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
韓国の二大都市、ソウルと釜山の市長選挙で与党が大敗しました。
失政、不正が続く現政権の酷さからいえば、この結果に驚きはありません。
しかし、これで日韓関係が好転するかといえば、「否」でしょう。
長年、日本を悪とする教育を受け続けてきた韓国民の感情に変化は望めないからです。
一方、日本においては、何度も国家間の合意を踏みにじってきた韓国に対し、怒りというより諦めに似た「冷めた」国民感情が定着した感があります。
文在寅大統領は、完璧に日韓関係を壊した大統領として歴史に名が残るでしょう。
 
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┃★国産ワクチン開発の遅れ(前半)                  ┃
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コロナ禍の第4波が広がる中、国産ワクチンの開発の遅れが指摘されています。
日本は先進国ですが、新薬開発においては先進国と言えないのが実情です。
「なぜ、そうなってしまったのか」を2回に分けて解説します。
 
まず、新薬の臨床試験の難しさがあげられます。
通常、新薬の開発には3~8年もの年月が掛かります。
「しかし今回、米国や英国はわずか8ヶ月で開発したではないか」と言う声があります。
そのとおりですが、こうした緊急事態に備える法律が日本にはなく、同様の開発は不可能なのです。
例えば、米国には“EUA(Emergency Use Authorization、緊急使用許可)という制度があり、通常の薬事承認ではない緊急用の制度が法制化されています。
日本でも接種が始まったファイザー製のワクチンは、このEUA承認でスピード開発したものです。
モデルナ、J&Jのウイルスベクターワクチン、ノババックスの組み換えタンパク質ワクチンなどもEUA承認で開発されたワクチンで、英国のアストラゼネカも同様です。
それに対し、非常事態法などの法案が潰されてきた日本では、同様の方法が採れないのです。
 
こうした「日本ではできない」米国や英国の制度を簡単に説明します。
新薬開発は、フェーズ1から3の各段階で、一定の規模でのテスト投与が必要です。
そもそも、この各段階で多数の被験者を集める制度が日本にはありません。
(たとえば、被験者への報酬や休業補償などです)
 
さらに英米では、フェーズ1、2において一定規模のテスト投与で安全性が確認できたら、フェーズ3を省略することができます。
(ロシアや中国では、フェーズ2すら省略しているとの報道もあります)
その代わりにウィルスを無毒化する中和抗体とウィルスを排除しようとする細胞性免疫が確実に機能していることを確認すること、さらに接種の副反応や、接種後に発症した人のデータを細かくモニタリングすることを条件にして、仮承認しているのです。
 
こうした制度がないことで後発組となった日本は、ファイザーなどの先発組を追いかけることが絶望的に難しくなっているのです。
なぜかと言えば、有効性が確認されているワクチンが既に複数ある中で、多数の被験者を集めてフェーズ3まで実施するメリットがほとんどないからです。
開発費用の回収が難しいだけでなく、いまさら、健康な治験者に試験段階の薬を接種することが倫理的な問題を引き起こす危険があります。
こうした問題は、日本だけでなく世界中の後発会社が直面している問題です。
中国やロシアのような国なら、それでも強制できるでしょうが、民主国家では無理です。
 
しかし、先行しているワクチンがベストなワクチンなのかどうかは、まだ断定できないので、チャンスが無いというわけではありません。
それに、有効な治療薬や診断薬の開発は、まだ道半ばです。
今回のようなウィルスを抑え込むには、ワクチンだけでなく、治療薬、診断薬の3つが完全にそろうことが必要ですが、それには、あと2~3年はかかると言われています。
日本は、それを短期間で成し遂げるよう産学官が一体となって進めれば、先行組と肩を並べることが可能と思われます。
しかし、技術者を目指す若者が減り続ける日本では、感染症研究者もどんどん減っています。
子どもたちが将来なりたい職業の1位が「会社員」という日本は絶望的かもしれません。
後半の次回では、こうした根本の問題を解説したいと思います。
 
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┃★ミャンマーの絶望                         ┃
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毎日、多数の死傷者が出るミャンマーですが、情報が極端に少ないため、事態がよく掴めません。
映像で見る限り、市民に発泡する国軍兵士には、まったく躊躇する様子が見えません。
殺人ロボットのような兵士たちの姿に戦慄を覚えます。
 
国軍のバックにいるとされている中国も、本音では困っているようです。
このような虐殺映像が世界中にばらまかれる現代では、いつ非難の矛先が中国に向かうかもしれないからです。
中国自身、いまの事態を歓迎するとはいえず、かといって、国軍の非難もできず、難しい立場に置かれているわけです。
 
はっきり言えることは、先の総選挙の惨敗に対する国軍の危機感が、我々の想像をはるかに超えていたということです。
利権を独占してきたミャンマー国軍の兵力は50万人と言われています。
日本の自衛隊の総兵員数が24万人ですから倍以上です。
人口比から計算すると、日本の5倍くらいの兵力を抱えていることになります。
相当な軍隊規模であり、それだけ国民生活を圧迫しているわけです。
死者を出し続けても市民側の抵抗が止まないのは、こうした軍政に対する怒りも頂点に達しているということです。
 
国際社会は、少数民族のロヒンギャに対する迫害で、アウン・サン・スー・チー氏を非難してきました。
しかし、非難の矛先をスー・チー氏に集中させ、その影で利権を独占している国軍の横暴には見て見ぬ振りを続けてきました。
こうした薄っぺらな人権意識が、今日の事態を招いたともいえます。
 
今後の展開を予想することは難しいですが、若者を中心にして少数民族の中の武装勢力と手を組むという動きが伝えられています。
こうした動きが本格化するとミャンマー全土が内戦状態となり、死傷者の増加だけでなく大量の難民が発生するという事態に陥るでしょう。
 
このような事態を防ぐためには、国連軍を組織して国軍を抑え、鎮圧を図るしかないと思います。
しかし、中国とロシアの反対で安保理の決議すら出来ない国連はまったくの無力です。
いまの国連組織が時代に合わなくなっている証拠です。
今回のミャンマー騒動は、国連が存在価値を失ってきていることを端的にあらわす出来事になってきています。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(12)                  ┃
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兵器は、使われないことが一番の目的という、特殊な工業製品です。
もちろん、いざという時には、相手の想像以上の機能を備えていることが必要です。
そうして、相手がその威力を信じて攻撃を思い留まれば、立派に機能を果たしていることになります。
つまり、これが「抑止力」としての軍事力です。
 
この本質は、戦争の絶えなかった昔の時代でも同じです。
強大な軍事力を備えれば、敵は攻めることを躊躇します。
また、圧倒的な軍事力で敵国に攻め入れば、相手は撃退を断念し、早期に降伏するでしょう。
つまり、無駄な殺し合いを防ぐための「抑止力」としての機能が兵器の本質的な目的なのです。
 
こうした見方からすると、抑止力の本質は「ハッタリの掛け合い」といえます。
軍事戦略とは、極論すれば「ハッタリ」の有効性の構築に他なりません。
その一例が、本メルマガでも連載した、中国の「A2/AD戦略」です。
A2とは“Anti-Access”の略称で「接近阻止」と訳されています。
また、ADは“Area-Denial”の略称で「領域拒否」と訳されています。
これは、近年、中国が採っている防衛戦略で、米軍やその同盟国の軍隊を中国の沿岸に接近させない、かつ、特定区域で自由に行動させないという戦略構想です。
具体的には、沿岸部や特定地域に「対艦ミサイル」を大量に配備し、接近する米艦隊やその同盟国の軍艦を排除しようというものです。
 
「おもしろい」と言っては語弊がありますが、この用語は中国が言い出した言葉ではなく、米国の軍事専門家が使い出した言葉なのです。
米国という国は、強大な軍事力を有するだけでなく、戦争をあらゆる局面から研究するシンクタンクが無数にあり、官民一体で軍事戦略を構築しています。
これが米国のすごさであり、こうした知的政策サークルの厚さは、日本とは比べものになりません。
何度も言及していますが、孫子の兵法を研究する研究所だけでも100を超える数です。
戦後の日本は、戦争や軍事を考えることすら「悪」という国民意識が形成され今日に至っています。
それゆえ、政府ですら、こうした米軍の戦略構想を十分に把握しているかどうかが怪しい国になってしまっています。
 
中国による執拗な尖閣侵入に対しても、マスコミの多くや野党は「外交で解決を」と、判で押したようなことしか言いません。
しかし、その外交も軍事力を背景に出来なければ有効に機能しません。
永世中立国のスエーデンは相当な軍事力を備えていますし、スイスは国民皆兵制度で侵略されれば最後のひとりになっても戦うという意志を鮮明にしています。
中国が南シナ海で傍若無人な振る舞いをしているのは周辺諸国の弱さゆえですし、尖閣諸島への執拗な侵入も戦争できない日本を侮っているからです。
「戦争する」というのではなく、「戦争できるぞ」という“はったり”が日本の外交には必要なのです。
 
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┃◇近代史を闇の中から引き出すことで、これからの戦略が見えてくる(1)┃
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私が小中学校で受けた近代史の教育は、「太平洋戦争は日本が始めた侵略戦争で・・」から始まる簡単なもので、開戦前後の世界情勢や日本が置かれた状況などは皆無でした。
おそらく、読者のみなさまが受けた教育も似たような内容だったのではないでしょうか。
 
もちろん、それがGHQの日本解体政策であったことは、今日では分かっています。
しかし、今日に至るまで、こうしたGHQの政策で隠された歴史の多くは埋もれたままです。
そのことが、左派勢力の「平和日本」というプロパガンダに利用され、逆に右派勢力の「神国日本」という喧伝に利用されています。
必要なことは、そのどちらに加担することなく、確実といえる証拠に基づく客観的な教育なのです。
そのことを時系列に少し述べてみたいと思います。
 
1920年(大正9年)、ソ連の初代最高指導者ウラジミール・レーニンは、「世界の共産化を進めるため米国を利用して日本に対抗し、日米の対立を煽(あお)るべきである」と主張しました。
レーニンの後を継いだヨシフ・スターリンは、日中戦争を背後で煽り、戦争の拡大を仕掛けました。
1938年(昭和13年)、日中戦争に深入りした日本を以下のように評しています。
「歴史はふざけることが好きだ。ときには歴史の進行を追い立てる鞭(むち)として、間抜けを選ぶ」と、日本をバカにして、米国との戦争に引きずり込む算段をしていました。
それに乗ってしまった日本は、本当に「間抜け」としか言いようがないのですが、この間抜けさは日本人の本質かもしれません。
 
さて、ここで視点を中国大陸に向けてみます。
当時の中国大陸で日本が戦争していたのは、蒋介石率いる国民党政権であり、中国共産党ではありません。
この日中戦争を背後で煽っていたソ連のコミンテルン(国際共産主義運動の指導組織)の命令で動いていた中国共産党は、巧妙に日本軍との衝突を避け、時には裏で日本軍へ国民党軍の情報を漏らしていました。
 
ただ、私はこの時の中国共産党を「汚い」というつもりは全くありません。
むしろ、そうした戦略、そして実行力を評価しています。
情けないのは日本で、終戦直前までソ連が味方だと信じていたのですから、お人好しに呆れるばかりです。
 
次回は、開戦の裏側をもう少し掘り下げ、国共内戦までを解説したいと思います。
 
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<編集後記>
福島第一原発の汚染処理水の海洋放出決定を受け、漁業関係者を中心に反対意見が続出しています。
トリチウム(三重水素)は、たしかに放射性物質ですが、軽水素(普通の水素)や二重水素(重水素)と同種の水素です。
将来の核融合発電の有力な燃料でもあります。
海水中に普通に存在し、危険性は無視できるレベルです。
私が関与した原発や核施設でも発生していましたが、我々はまったく危険を意識していませんでした。
ただ、科学的知識に乏しい一般国民の不安は当然で、地元の反対の声も理解できます。
漁業関係者の多くは危険性が無いことは理解していますが、風評被害を恐れているわけです。
政府は、IAEA(国際原子力機関)の協力を仰ぎ、IAEAの監視のもとでの放出と情報発信を続け、国際社会の理解を得ていく努力が大事です。
かつ、福島沖だけでなく、全国で放流の負担を分担する政治の指導力が求められています。
菅首相には、そうした政策に対する非難を一身に受けるという覚悟を要求します。
 
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