2019年12月31日号(経済、経営)
2020.01.06
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年12月31日号
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発行日:2019年12月27日(金)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2019年12月31日号の目次
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★グローバル経済vsセクショナリズム経済
★配車サービスというビジネス
◇これまでの経済、これからの経済(5)
☆今後の建設需要(5):生産性は市場に評価されない(その2)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
早いもので、今年最後のHAL通信になります。
各国で露骨な自国第一主義が国民の支持を集めています。
そのことで世界経済が衰退すれば、結局、みんな負け組です。
そんなこと、「わかっちゃいるけど・・」なんですね。
今号は、そんな話題から入ります。
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┃★グローバル経済vsセクショナリズム経済 ┃
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地域や国の垣根を越えたグローバル化で世界経済は大きく発展しました。
しかし、経済発展には格差の拡大という負の側面が、必然的につきまといます。
金持ちは、より金持ちになることを目指し、その欲が止まることはありません。
それが経済発展の原動力の一つですが、反面、格差拡大の原因にもなります。
つまり、経済発展と格差拡大は、コインの表と裏のように切り離すことができないものです。
ネットによるグローバル化は、従来とは異次元の速度で世界経済を発展させました。
ということは、異次元の速度で経済格差が広がったことを意味します。
ほんの一握りの成功者が富の大半を独占する現象が世界のあちこちで起きています。
最上層に君臨する大成功者の富は天文学的な数字になっています。
しかし、大成功者たちは、この富を大衆に分配しようとはしません。
結果として、大衆の不満は膨れ上がっていきます。
民主主義国家では、そこで民主主義の根幹の歯車が動き出します。
それは「一人一票」という選挙の仕組みです。
どんな大金持ちであろうとド貧乏人であろうと、選挙の権利は等しく1票です。
そうなると、「負け組」と言われる大衆の票の力は大変な圧力となります。
トランプ米大統領のような政治家は、その圧力を自分の支持に変えようとするわけです。
つまり、「あんたたちのカネを奪っているのは、中国だ、日本だ」と煽るわけです。
いま、世界中で、こうしたグローバル化の逆転現象が起き、「〇〇ファースト」という自国第一主義が支持を得ています。
国内でも、至るところで「○○ファースト」を煽る政治家の声が大きくなっています。
結果として国境を閉ざし、あるいは地域で固まり、経済の流通を止めようという動きが加速されます。
経済は人々の欲求に直結する魔物のようなものです。
民主主義国家は、当然のごとく「自由」を大事にします。
金儲けすることも政治的にアジテーションすることも自由となり、経済格差や対立はどうしても広がります。
共産主義は、この魔物退治の方策として生まれましたが、独裁政治という別の魔物を生み出す劇薬でした。
成功したかに見えた中国も、結局は、この劇薬で魔物化しています。
経済に万能薬は無いのです。
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┃★配車サービスというビジネス ┃
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ソフトバンクGのウィーワークスへの巨額投資の損失が話題になっていますが、ソフトバンクGは他にも多額の投資を行っています。
その一つに、米配車サービス大手のウーバーがあります。
孫会長は、独特の勘で瞬時に投資を決めると言われていますが、ウーバーへの投資も同社の実情を精査した上での投資ではないようです。
そもそも、配車サービスというビジネスが「カネのなる木」になると判断されたのは、近い将来、自動運転車が普及すると思われたからです。
それは確かですが、目論見どおりになるためには大きな障害がいくつもあり、私は早期の普及は無理と判断しています。
しかし、大手の投資家は、そう遠くない時期に大きなビジネスチャンスが来ると判断し、大規模な投資に踏み切ったわけです。
そうした多額の資金を集めて急成長したのが、ウーバーやライバルのリフトという配車サービス会社です。
世界的な金余りを背景に巨額な資金を集めた孫さんのような投資家は、集めたカネを早期に投資しないと、自分へ投資した投資家への配当ができなくなります。
そうした様々な思惑が重なり合って、EV(電気自動車)や自動運転車などへの巨額な投資が急増しているわけです。
しかし、そうした事業は、どれも未来を語るだけで実情が追いついていません。
問題のウィーワークスなどは、その典型です。
ウィーと違って、ウーバーは、2019年5月にIPO(新規株式公開)を果たしましたが、安全性に関する報告や報道などで同社の評判には陰りが出ています。
その安全性に関する報告書には、驚くような報告が載っていました。
なんと、2017~18年にかけて性的暴行被害が5981件もあるというのです。
しかも、このうち464件はレイプ被害というのですから呆れる話です。
CNNの調査報道によると、昨年までの4年間で配車運転手の103人が、乗客に対する性的暴行などの罪に問われていたということで、運転手の逮捕や指名手配、民事訴訟といったトラブルが続出とのことです。
慌ててウーバーが発表した安全対策の強化は、「乗客がウーバーのアプリで非常ボタンを押すと地元警察に通報できるシステムの導入」とか「運転手の身元調査方針の見直しを毎年実施する」とかのお粗末な内容です。
こんな会社に巨額の投資をしている孫さんの眼力とは・・と思わざるを得ない事態です。
もっとも、ソフトバンクGの向こうを張って投資事業に乗り出した楽天の投資先であるリフトも、米国全土で似たような法的訴訟を起こされています。
リフト株の下落で、楽天が負った損失は1030億円と言われています。
配車サービスというビジネス自体が、うさんくさいビジネスとなり出していて、両社への投資が一気に焦げ付く恐れすら出てきています。
「真冬の怪談」のような怖い話にならなければ良いのですが・・
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┃◇これまでの経済、これからの経済(5) ┃
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本シリーズは「経済の発達の歴史から近未来の経済予測」という触れ込みで始めましたが、このところ、金貸しの話になっています。
ですが、経済を根底で動かしているのはカネです。
企業経営にとっても、資金調達は生命線です。
というわけで、もう少し金貸しの話にお付き合いください。
サラ金の衰退とともに街金や闇金の話題も下火になっていますが、どっこい、彼らはしぶとく生き残っています。
余談ですが、コミックから映画になった「闇金のウシジマくん」という映画がありました。
主演の山田孝之の怪演が堂に入っていましたが、あの映画のシーンでウシジマくんの机の後ろに「金融業の許可証」が張ってあるのに気が付いた方はいらっしゃるでしょうか。
あれが正規の許可証であれば、ウシジマくんは違法な闇金ではなく、一応正業の街金ということになります。
もっとも、表では街金を装う闇金業者もたくさんいますから、映画のシーンが間違っているわけではありませんが・・
弊社は、経営コンサルも事業の一つにしていますので、倒産の危機に面した会社の支援などもしてきました。
その一環で、闇金との借り入れ交渉を何度か行ったことがあります。
その結果、分かったことがあります。
彼らの話は、ほぼ全てがウソです。
たとえば、「ウチが入っている○○協会のブラックリストにはオタクのヤバイ借入がいくつも載っているよ」とか言いますが、そんなリストは存在しません。
たしかに闇金仲間同士のある程度の情報共有はありますが、リストと呼べるようなものではありません。
つまり、彼らの脅し文句は、いわゆる「カマ掛け」なのです。
でも、ビクビクしている借り主は、その脅しに負けてべらべら喋ってしまうのです。
そうしてカモになっていくのです。
そもそも闇金のバカ高い利息など、資金繰りに窮した会社が払えるわけはないのです。
もちろん、違法ですから、払う必要は微塵もありません。
「でも、暴力で脅されたら・・」と、たいがいの方は心配しますが、あれは漫画やドラマの世界の話で、せいぜい、「机ドン」程度です。
でも、たしかに怖いですよね。
ですから、そんな連中のところに行く前に、信頼できる存在に相談に行くべきなのです。
私であれば、その企業がどのくらいの負債に耐えられるのかを、まず計算します。
ですから、その前提となる各種資料を整えることが必要です。
その上で、正規の金融業者との交渉に臨むのです。
その前提となる財務数字を粉飾する経営者の方もいますが、どこかで数字の辻褄が合わなくなるので、すぐに分かってしまいます。
そうなると、支援したくても無理となってしまいます。
追い込まれたら正直になることです。
闇金とは違いますが、投資ファンドの資金調達も同様の構図です。
配当利率は、闇金とは違いますが、銀行融資に比べれば異常な高利息です。
ソフトバンクGの10兆円ファンドの大半は、7~8%の配当を約束しています。
ということは、12~13%ぐらいの投資利益が必要です。
かなり博打的な投資だということが分かると思います。
知り合いに米国の大手投資ファンドのマネージャがいますが、彼は投資先には「15%の配当」を要求すると言います。
「実際は13%ぐらいになっちゃうけどね」と言っていますが、調達金利を考えると、そのくらいはないとやっていけないのです。
投資ファンドの資金調達に必要なのは、資金を集める才覚と行動力、付き合いの幅、話術、そして度胸だと言います。
あのソフトバンクGが出資する資金もその大半は借金で賄っています。
次回は、そうした投資が生み出すバブルの仕組みを述べたいと思います。
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┃☆今後の建設需要(5):生産性は市場に評価されない(その2) ┃
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東日本建設業保証が2万社余りの財務統計データを発表しました。
それによると、総資本経常利益率は平均で5.19%、売上高経常利益率は3.23%、ともに2006年度以降で最高値とあります。
しかも、この統計にはスーパーゼネコンは含まれていませんので、業界全体が広く利益を上げているといえます。
ただし、業種、地域によるばらつきが大きいことが目に付きます。
そして、好景気の地域と大きな災害があった地域とが、みごとに重なっています。
東北地区が高いのは、東日本大震災の復興需要がまだまだ続いていることを意味しています。
こうした背景があるので、業界団体は世間に向かって「景気が良い」とは言えないのです。
それは当然です。
道義的なことより、こうした「天の恵み」に期待する経営はできないからです。
人口減など日本を覆う暗雲は、ボディブローのように建設産業にもかかってきます。
切り抜ける道として、国交省や業界紙が連日唱えているのが「生産性向上」です。
そうした一環で、建設技能者のマネジメントスキルの向上を目指した「建設キャリアアップシステム」がスタートしています。
2019年11月からは、受講者システムで使う4色のカードを無料で交付することが始まっています。
しかし、予算の都合上、無料登録は5万人までということで、普及に拍車がかかるかは疑問です。
5万人は、300万人超といわれる技能者の数からみると僅か1.6%です。
しかも、このカードを読み取るカードリーダーを設置できる現場は限られます。
中小建設業の小さな現場までの普及は、到底、無理です。
結局、「モデル現場での試行では○割が実施・・」といった大本営発表で終わる可能性があります。
こうした取組みの意義を否定はしませんが、これが生産性向上に大きな効果があると考えているとしたら、少々言葉は悪いですが、「笑止千万」と言いたいです。
また、IT施工への期待も高まっていますが、その導入費用に見合う効果が出るまで、どのくらいの年月がかかるか、先が見えないのが実情です。
いずれも、夢のような結果への期待が先行して、本質的な取り組みが疎かになっているように思えます。
私が現場監督していた時代は、はるか昔になってしまいましたが、現場生産性向上の基本は変わっていないと思います。
その基本を疎かにして、ITや制度ばかりを期待する今の行政や産業には危機感を覚えます。
「建設キャリアアップシステム」では、技能レベルを1~4に分けて色分けするということですが、人間の心理をまったく無視した官僚的発想です。
最低レベルの色のカードを持たされる人の身になったら・・という意識が無いのでしょうね。
政策側の官僚と現場の技能者との溝は、日本海溝のように深いと思わざるを得ません。
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<編集後記>
今年も1年、本メルマガにお付き合いいただき、ありがとうございました。
また、コメントをお寄せいただいた方には感謝申し上げます。
コメントを頂けることは励みになります。
どんな感想でも、また質問、疑問でも結構です。
ぜひ、お寄せください。
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お読みいただけてない回がありましたら、一度アーカイブスを覗いてみてください。
それでは、来年もよろしくお願いいたします。
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