2019年10月31日号(経済、経営)
2019.11.15 1:00:00
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年10月31日号
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発行日:2019年11月1日(金)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2019年10月31日号の目次
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◇キャッシュレス決済に思うこと
◇情報化社会の行き詰まり
◇これまでの経済、これからの経済(3)
☆今後の建設需要(3):地方行政の弱さ
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
台風や大雨の被害が相次いだことで、各所で災害対策の見直しを求める声が聞かれます。
しかし今は騒いでいますが、結果として、すぐに忘却の彼方となってしまうのが日本人です。
そうした日本人の気質が「過去の罪を顧みない」として、粘着性気質のお隣の国民は、しゃくに触るようです。
しかし、「起きたことはしょうがない。これからどうするかだ」との切り替えの早さと言ってしまえば、それは良い気質と言えるでしょう。
つまり、物事に「絶対的に良いこと」も「絶対的に悪いこと」もありません。
悪い方向に見るよりも良い方向に見たほうが得のように思います。
今号で取り上げた話題も、賛否ではなく問題提起と受け止めて読んでいただければと思います。
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┃◇キャッシュレス決済に思うこと ┃
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5%のポイント還元の効果もあってか、日本のキャッシュレス決済が6割増加したと報道されています。
と言っても、決済全体の3割にも届かず、まだまだ高いとは言えません。
キャッシュレス決済が100%になろうかという中国や韓国はもちろん、インドより低い水準です。
多くの経済評論家は、「日本は、こうした認識を持って、もっとキャッシュレス決済の割合を増加させていくべきだ」と主張します。
でも、そうした主張の根拠は何なのでしょうか?
キャッシュレス決済が普及しないと、どんなマイナスがあるというのでしょうか。
世界の潮流から置いていかれる? 経済の活性化にマイナス? などなど、どれも、もっともらしい理由ですが、よく考えると説得力に乏しい説ばかりです。
50年以上コンピュータと付き合ってきた私ですが、スマホは持たず、普段の買い物は現金決済派です。
当然、周りからは「どうして?」と不思議がられています。
まとまった額の決済やETCなどの交通系以外は、基本、現金払いにしています。
その理由を以下に述べたいと思います。
ネット決済は、使用者の金銭感覚を確実に狂わせていくように思います。
私も、現金派と言いながら、本などはアマゾンで買いますし、ネット通販も利用します。
でも、「月に1,2度」のように自制しながら利用しています。
かつ、月末にはパソコンからネット決済した内容と金額を必ずチェックして記録しています。
それでも「おカネを使った」という実感が薄くなり、危険を感じます。
ゆえに、コンビニなどでの買い物や食事代金の支払いは現金に限定しています。
「いま、どのくらいおカネを使ったか、財布の残金はいくらか」という感覚を残すためです。
キャッシュレス決済が9割以上と言われる韓国では、カード破産が急増しています。
家計債務がGDPの97%に上るといいますから個人借金大国となっています。
このように、ネット決済が進めば、家計債務が膨れ上がり、破産者が増えていくのは必然です。
もっとも、商売を仕掛ける側に回れば、キャッシュレス決済が進展するほうを歓迎します。
ユーザーの「おカネを使う」ことへの抵抗感を減らせるからです。
たとえユーザーが破綻しても、損失はカード会社や信販会社が被るので、安全性も高いのです。
それでも、カード会社等は膨大な買い物データを企業に売って別の利益を得ますから、そうした損失も織り込み済みなのです。
結果として、キャッシュレスのユーザーは個人情報をタダで取られているのです。
スマホも同様、持っているだけで個人情報は全部吸い取られています。
ゆえに、個人としてはスマホを持たず、極力キャッシュレスを回避して防衛に徹し、商売としてはキャッシュレス化を進展させ攻撃に転ずることに徹しています。
これって、まさに「悪魔の心理」ですね。
こうした考えは、私の年齢からくる「じいさん」思考かもしれません。
若い方は、そんなことには無頓着にスマホに馴染み、キャッシュレス決済にも抵抗はないでしょう
しかし、リクルートのリクナビ・データが密かに企業に売られていたことなど、そうした若者の行為が商売を仕掛ける側に利用されている事例には事欠きません。
そうした危険性があることぐらいは頭の片隅に入れておいたほうが・・と老婆心から思うのです。
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┃◇情報化社会の行き詰まり ┃
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私は、46年前、米国でまだ実験段階だったインターネットに触れました。
その数年前、米国国防総省が、核戦争後に生き残る人類の数を確率・統計論で計算したところ、全世界で1000万人と出ました。
かつ、この人数が地球上にばらばらに生き残っただけでは人類は滅亡するという結果が出ました。
そんな世界で人類を存続させるには、生き残った1000万人がひとつに集まるしかない。
そのためには、生き残った通信網とコンピュータを介して、お互いの生存を確認し、一つに集まるための通信手段が必要としたのです。
その手段として、国防総省の総力を上げ設計したのがインターネットです。
このような背景を考えればインターネットのセキュリティが脆弱なことは当然だと分かるでしょう。
核戦争後の非常時に、セキュリティなど邪魔者以外の何物でもありませんから。
しかし、核戦争は起きず、インターネットは設計者の思惑を超えて、普遍的な通信手段になっていきました。
脆弱性を置き去りにしたままです。
それは、悪の存在からしたら、“美味しい”世界です。
かくして、現代の情報世界は、西部開拓時代と同様、無法な世界となってしまっているのです。
こうした世界で自分の身を守るには、二丁拳銃の射撃の腕を磨くか、信頼できるガンマンと契約して守ってもらうか、そのどちらかしかありません。
今は、まだそんな黎明期の世界なのです。
インターネットで成功した大手企業とは、“こんな”無法が当たり前の世界の成功者です。
言い方は悪いですが、「○○一家」などの西部劇の悪役と呼んでもよいでしょう。
たとえばグーグルです。
グーグルは、世界中のあらゆるデータにアクセスできる存在になろうと、ユーチューブなどのインターネット配信会社を次々に買収し、アンドロイドアプリやインターネット検索サービスなどを無料で提供しています。
「無料」は落とし穴です。
ユーザーはアクセスする度に、貴重な自分の時間を対価として支払い、貴重な自分の情報を盗み取られているのです。
ヤフーやフェイスブックも似たような会社です。
そして、中国やロシアは、国家ぐるみで彼らと同じか上回る存在になろうと画策しています。
米国政府だって似たようなもので、グーグルはNSA(米国国家安全保障局)と手を結んでいると言われています(私が証拠を持っているわけではないので、うわさですが・・)。
断っておきますが、私は、彼らを「悪い」と言うつもりはありません。
裏はともかく、表向きは合法組織です。
ただ、彼らに利用されたくないと思っているのです。
「タダより怖いものは無い」ので、出来る限り、情報網に無用に関わらないようにしているのです。
それでも、企業運営上、情報社会と手を切るわけにはいきません。
「痛し痒し」といったところです。
あまりにもセキュリティの弱い今のインターネットに代わる新たな通信手段として、「クリプトコズム」と呼ばれるシステムの研究が進んでいます。
この世界では、個人や企業の許可なく勝手に情報を入手することが出来なくなるといわれています。
こうした通信世界の到来を心待ちにしていますが、その時、いまのネット大手会社は消えていくのでしょうか。
結構、しぶとく残るような気がしますが、新たな別の存在が現れてくるでしょう。
それもまた、楽しみです。
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┃◇これまでの経済、これからの経済(3) ┃
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金貸しは効率の良い商売です。
生産設備も社屋も不要、従業員がいなくても一人で出来ます。
モノを作る時間も不要です。
ゆえに、貨幣経済の誕生とともに生まれ、発展してきた商売です。
そうは言っても、流通する貨幣の信用度が低い時代はリスクの高い商売で、破綻する者も多かったようです。
貨幣の信用度が上がったのは、江戸時代です。
江戸時代は、驚くほど平和な時代で、経済が大いに発展した時代です。
経済の基となる人口は初期の1500万人から幕末の3200万人へと2倍以上に増加しています。
興味深いのは耕地面積です。
この間、田畑は210万町歩から320万町歩と約1.5倍しか増えていないのです。
しかし、庶民生活は豊かになり、食費は人口増以上に増えています。
つまり、農業技術が向上し、耕作面積あたりの収穫高が2倍に増えたというわけです。
本当に良い時代だったのです。
こうした経済の発展に貨幣価値の安定が欠かせないことを徳川幕府はよく理解していました。
そうして、貨幣の価値を幕府が保証することで貨幣経済は大いに発展しました。
また、城勤めの侍が世襲制で身分保証があったことでカネを貸すほうのリスクは大幅に軽減されました。
侍相手の商売が安全になり、庶民生活も安定すると、消費は上昇の一途をたどります。
当然、収入以上の消費需要が増えれば、金貸しの市場も大きくなります。
それでも、借りたほうの収入増加が見込めれば、金貸しの安全性も高くなります。
こうして金貸しの安全性が上がるにつれ、利息は下がってきました。
ところが、先号で述べたように、利息は25%ぐらいで下げ止まりました。
この金貸し利息の限界は、借りる側の破綻が一定の割合で起きることから生まれます。
定期収入がある侍でも、身の丈以上に借りれば、返済のための借金という地獄に陥ります。
ついには刀を質に入れる者さえ出てくるのは、時代劇でもおなじみのシーンですね。
こうした侍が増えると、困った事態になります。
侍は、いざという場合の軍事戦力です。
しかし、竹光の刀を差した侍では戦力になりません。
幕府の直轄戦力である旗本でも事情は同じでした。
仕方なく幕府は徳政令を発し、侍の借金を強引に棒引きさせ、刀を取り戻させました。
こうなると、金貸しは大損します。
こうした危険を考えて、利息は25%ぐらいで下げ止まりしたというわけです。
現代でも、こうした事情は同じです。
政府が現代の徳政令を施行したため、一時期、隆盛を極めたサラ金会社はみな破綻しました。
次回は、その話をしましょう。
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┃☆今後の建設需要(3):地方行政の弱さ ┃
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鹿児島建設新聞の10月11日号の一面に興味深い記事が載りました。
建設施工の平準化を実現するには翌年度への繰越を3割にする必要があるという主張です。
鹿児島県の場合の実態数字を、繰越率と繁閑比(記事では、繁忙期(12月)と閑散期(5月)の工事量の比で表していました)で対比していました。
「年度末の繰越率が上がれば翌年度の繁閑比が下がり、工事量が平準化される」という結論は当たり前の理屈ですが、具体的な数字で表しているので、説得力のある記事になっていました。
この記事では、前年度からの繰越:当年度内:翌年度への繰越の比率を「3:4:3」とすることを理想比率として、「黄金比」と呼んでいました。
公共工事を主体とする地方建設会社にとっては納得の比率といえますが、実現への道は簡単ではないでしょう。
今回のサブテーマにあげた「地方行政の弱さ」がネックになっているからです。
日本の地方行政は、47都道府県に分かれ、さらに1700余りの市町村に分かれています。
平成の大合併の前は3000ぐらいありましたから、だいぶ減りました。
しかし、それでも多いし、形は減ったけど、実態は前のままというところもあります。
私の故郷もそうです。
故郷の町を含め幾つもの町村が一つの市に合併されましたが、実態は何も変わりません。
親戚との会話の中でも、旧町村名しか聞こえてきません。
この平成の合併策は何を目指したのでしょうか。
地方行政の強化であったとしたら、全くの失敗策です。
企業合併もそうですが、「とにかく合併して大きくなれば強くなる」という考えは間違いです。
弱者同士が合併すれば、もっと弱くなるだけです。
具体的でリアルな「財政基盤の強化」策や「発展的投資計画」策があってこその合併でなければならないのです。
もっと根本的なことがあります。
47都道府県をそのままにして、地方行政の二重化というムダと非効率さにメスを入れなかったことです。
交通手段も通信手段も無いに等しい明治維新時代に作られた47の行政区を、交通も通信も劇的な変貌を遂げた現代に、そのまま維持している理由が理解できません。
都道府県を廃止し、10程度の行政区に編成し直す必要があったのです。
それにより、当然、地方を統括する国の組織を絞り込み、新たな地方行政区に徴税権を含む広範な権限を移譲することをすべきなのです。
もちろん、これだけの改革を断行すれば、マイナスの側面も一気に吹き出し、相当の混乱と不満の渦になるでしょう。
断行する内閣も倒れるでしょう。
でも、考えてみてください。
消費税導入に至る過程で内閣が3つ倒れたのです。
その痛みなくして、行政の大改革など出来るはずもないのです。
冒頭で紹介した鹿児島建設新聞が提唱する黄金比の実現は、こうした改革の中でしか実現出来ないと思う次第です。
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<編集後記>
沖縄の首里城が一夜で焼け落ちる映像は衝撃的でした。
私は5年ぐらい前に訪れましたが、沖縄独特の「桐油(とうゆ)」を使った強烈な朱色が今も目に残っていて胸が痛みます。
こうした文化財の再建には莫大な費用と年月がかかります。
当然、地元自治体の力では無理なことは明白です。
しかし、国と法廷闘争まで繰り広げる玉城知事の政治姿勢がネックになる恐れがあります。
「だから国に従え」とは言えませんが、「自分の任期中に辺野古を」という狭い考えも間違えています。
江戸時代の藩政改革で有名な上杉鷹山の名前は広く知られていますが、上杉藩が莫大な借金を完済したのは、鷹山の死から60年後と言われています。
玉城知事には、沖縄県民を国との対立で煽るのではなく、日本国の中の沖縄の発展という理念を掲げることを願っています。
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