2019年11月30日号(経済、経営)
2019.12.04
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年11月30日号
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発行日:2019年11月29日(金)
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2019年11月30日号の目次
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★韓国経済の窮状を、明日の日本にしないために
★ベンチャーバブルの崩壊
◇これまでの経済、これからの経済(4)
☆今後の建設需要(4):生産性は市場に評価されない(その1)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
大方の予想を覆すGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄延長。
しかし予想通り、韓国は「日本が譲歩した」とか「日本が事実を捻じ曲げて発表した」とか、相変わらずの姿勢です。
日本の一部マスコミは「これを契機に話し合いの進展を」と主張しますが、韓国に対する日本国民の心情は冷え切ったままです。
韓国の不買運動も収まる気配はなく、当面、両国の経済関係は真冬状態が続くでしょう。
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┃★韓国経済の窮状を、明日の日本にしないために ┃
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日韓のGSOMIA問題は、韓国経済の苦境を浮き彫りにした側面があります。
輸出依存型の韓国経済の立て直しには国内消費の活性化が必須ですが、文在寅大統領は社会主義的な理念に凝り固まっていて自分の失政を認めようとはしません。
日銀に相当する韓国銀行は、基準金利を1.25%に下げましたが、市中金利は逆に上がっています。
つまり、企業投資も消費も下がり続けていて、金融緩和が効かないということです。
一方、危機に直面している中小企業の支援や雇用促進に大規模な財政出動を行っているため、財政赤字は急速に膨らんでいます。
しかも、その支援策も、高齢者の短期雇用などの効果の薄い政策ばかりです。
経済音痴の政権の怖さです。
しかし、「だから韓国は・・」と言えるほど日本経済が堅調なわけではありません。
今月14日に、7~9月のGDP(国内総生産)の速報値が発表されました。
物価変動を除く実質値で0・1%増、年率換算値でもわずか0・2%増という危ない状況です。
しかも、これは消費税増税前の数字です。
内需に対して増税の影響が出てくる今後が懸念されます。
しかし麻生財務相は、記者会見で、中国や欧州などの海外経済の失速基調に対し「万全の対策が必要」としながらも、「内需の減速を阻止する予防対策は必要ない」と言いました。
政府のこうした安心姿勢は、失業率が2.4%という歴史的低さにあることが原因と思われます。
この雇用効果で安倍内閣は若者の支持率が高く、それが長期政権の土台になっているというわけです。
ということは、雇用が不安定になれば一気に支持を失うということを意味します。
韓国の失政の後を追うことがないよう、やはり早めの対策が必要です。
桜を見ている場合ではないし、野党も追求すべきは、桜より経済対策のはずです。
でも・・無理か?
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┃★ベンチャーバブルの崩壊 ┃
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ソフトバンクが大赤字の決算を発表しました。
稀代のパフォーマーである孫正義会長は、決算発表のプレゼンを喜劇仕立てにして、報道陣を煙に巻きました。
たしかに赤字を公にする姿勢は潔いと言えますが、あの発表姿勢には良い印象は感じませんでした。
誰もが知るとおり、赤字の大半はシェアオフィスを展開する米国ウィーワークスへの投資の評価損です。
孫さんは、ウィーの創業者アダム・ニューマン氏と会って10分で103億ドル(約1.1兆円)の投資を即決したといいます。
「さすが、孫さん」と言いたいところですが、「え~」が正直な感想です。
結局、この投資が9月末の中間決算で82億ドル(約8900億円)の評価損となったわけです。
孫さんは、ウィーの価値は5兆円以上と豪語していましたが、実際はわずか4%程度の価値しかなかったということです。
しかも、こんな会社に1兆円もの追加融資を行うというのですから、私が社員だったら「ついて行けねえ」となるでしょうね。
この資金調達についてメインバンクのみずほ銀行に6800億円の融資を依頼しましたが、みずほの回答は3000億円ということで、しかも協調融資を依頼した他行からは断られたとか。
そもそも、この融資は、禁じ手と言っても良いと思います。
我々中小企業が「大赤字の会社に融資するから、カネ貸して」と言ったら、絶対に断られます。
金融機関の姿勢として疑問を感じます。
これまでソフトバンクが巨額の資金を集めてこられたのは、初期に投資したアリババの株が大化けしたからです。
そうした奇跡的事例と世界的な金余りが合わさって孫さんを後押ししてくれたのです。
つまり、第二のアリババを期待したカネが孫さんにどっと集まったということです。
しかし、サウジアラビアと組んだ10兆円ファンドも、その過半は元本を保証した上、年間7%の配当を確約した優先株です。
このようなファンドが他にあるのか、よく知りませんが、危険すぎる契約です。
それでも、孫さんは同規模の第2ファンドを立ち上げると発表しています。
孫さんがこれほど強気なのは、ロボットが人間を駆逐する世界がもうそこまで来ているとの予見からです。
遠い将来はそうなるでしょうが、私には「もうそこまで・・」とは思えません。
今は、テスラなどのベンチャーバブル企業が花盛りですが、その大半は消えると予測しています。
かつて、同じような時代がありましたが、生き残っているのはマイクロソフトなど、ごく数社です。
多くの企業の屍の山の上に、ごく少数の勝利者が残るベンチャー企業の攻防戦は、日露戦争の「203高地」となる運命です。
ソフトバンクは、第2ファンドの出資の相当分(2~3割?)について、「社員からの出資を募り、それを邦銀が支援する」と言っているようですが、「これってあり?」と思ってしまいました。
同社は、理解不能な領域に入っているようです。
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┃◇これまでの経済、これからの経済(4) ┃
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金貸しが多額なカネを持っているとは限りません。
多くは、金持ちからおカネを借りて又貸しをしているわけです。
銀行だって同じですね。
預金者から集めたおカネを企業や個人に又貸ししているわけです。
かつて隆盛を極めたサラ金も全く同じ構図です。
ただ、銀行に比べて信用度がまるで低いので、低利でおカネを調達することができません。
どうしても、高い金利をエサに、おカネを集めるしかありません。
最初は個人の金持ちに10~20%もの利息を提示して集めていたとのことです。
今は破綻したサラ金大手に勤めていた知人から話を聞きました。
彼は、サラ金だけではなく、街金(まちきん)や闇金(やみきん)の事情にも詳しく「なるほど」という話を豊富に教えてくれました。
彼の勤めていた会社は、ある程度節度を設けていたようですが、貸し出しが拡大するにつれて、焦げ付きが増えていったようです。
そうして穴が開いた資金手当てに高利息のカネを調達するようになっていき、急速に利益が落ちていったということです。
それでも、大手都銀からの融資が得られて一息つきました。
でも、金利は8~13%だったといいますから、大手もえげつないものです。
ところが、大手からの融資で一息ついたのも束の間、予想外のことが起きました。
政府による徳政令です。
読者のみなさまも記憶にあると思いますが、金利のグレーゾーンの撤廃です。
利息制限法によると、元本に応じて、利息の上限は年15~20%以下と決められています。
企業融資の場合は、大半が100万円以上となるでしょうから、15%が上限です。
これに対し、出資法で違反とされる金利は年29.2%でした。
この二法の金利の隙間が「グレーゾーン」と呼ばれ、サラ金は、この領域で商売をしていました。
つまり、お客の信用度に応じて、15~29.2%の金利でおカネを貸していたわけです。
この29.2%を超える利息を取ると、「闇金」と呼ばれる違法会社になるわけです。
ちなみに、「街金」はサラ金と同じグレーゾーンで商売していた合法会社です。
以前から、利息制限法(15~20%)以上の貸付は違法でしたが、顧客が任意に払った場合は返還要求が出来ないとされていました。
ところが、2006年にこの条項が撤廃されました。
そこに目を付けた弁護士や司法書士が「過払金請求ビジネス」を大々的に展開したことは、読者のみなさま御存知の通りです。
さらに、2010年6月に、二法の間のグレーゾーンが撤廃されたことで、サラ金、街金は、完全に息の根が止まってしまいました。
サラ金にいた知人によれば、こうした金貸し業のリスクは江戸時代から変わっていなくて、金利25%が下限だということです。
つまり、借り手の4人に一人が返済できなくなると、儲けはゼロになり商売が破綻してしまうということであり、そのリスクに近い焦げ付きがあったとのことでした。
結果として、彼のいたサラ金を含めて、全ての大手サラ金は大手銀行の傘下に吸収されました。
大手都銀は、サラ金の顧客リストと返済履歴を手に入れ、優良顧客は自行のカードローン会社の顧客にして、不良顧客は切り捨てました。
切り捨てられた顧客は、ハイエナのような闇金の餌食になっていったのです。
これが、平成の徳政令の結末です。
次回は、闇金の世界を少々説明します。
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┃☆今後の建設需要(4):生産性は市場に評価されない(その1) ┃
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私は、仕事柄、毎日業界紙を読んでいますが、「BIM」と「生産性」の単語が目につかない日はありません。
そのくらい、業界では当たり前のテーマとなっていますが、両単語とも顧客であるエンドユーザーには全く届いていない単語です。
個人顧客はもちろん、法人顧客に訊ねても、的確な解釈を聞くことはあまり無いと思われます。
弊社は、29年前の創業当時は、建築設計だけの会社でした。
社員3人の会社でしたが、CADを駆使し、3次元CGまで作っていました。
当時としては、非常に斬新な会社だと自負し、評価も得ていました。
ところが、CADやCGがたいしたお金にならないのです。
有効なツールもなかった時代ですから、2次元設計に比べて3次元の手間は5倍くらいに及びました。
確かに営業上の有効な道具にはなりましたが、対価に反映しないのです。
そうした事情は、現代でもそう変わらないようです。
「BIMで設計しました」と言っても、お客は「それで?」と言うだけです。
「大したもんだね」と言ってくれたら、涙モノです。
それはそうです。
お客の関心は、出来上がる建物と価格にしかないのですから。
ちゃんとしたものを作るのは「当たり前」に過ぎないのです。
そして、CAD図やCG画像は「綺麗だね」とか「おっ、いいね」で終わってしまうのです。
今のBIMも、その延長線上にあることは間違いありません。
そのBIMよりお客が関心を持たないのが「生産性」です。
現場代人時代、会社からは「品質、工期、安全、コストの4大管理が『お前の責任』だ」と言われ続けました。
たしかに、公共、民間を問わず、お客は品質、工期には神経を尖らし、事故を起こさないことは絶対的条件でした。
しかし、コストのことをとやかく言うお客は皆無で、せいぜい追加に対して「そんなカネない」というだけでした。
それは、そうです。
契約金額内で品質、工期を守れば文句は無いのです。
あとは、こっちがいくら儲けようが損しようが関係ないのです。
当然ですが、「生産性の向上」とは「コスト削減」のことであり、全面的に請負者側の世界なのです。
これが自動車や家電のような汎用品であれば、コスト削減が販売価格の低下につながり、顧客の歓迎するところとなります。
ところが、一品生産品の建設物には、その効果が見えず、顧客が関心を持ちようがないのです。
かろうじて、住宅市場では「坪○○円」といった低価格に飛びつくお客がいるので、コストダウンも意味があります。
それでも、完全に同じ住宅はないし、立地条件など様々な個別要素に左右されてしまいます。
「坪26万円」というような超低価格で売上を伸ばしたハウスメーカーもありますが、「結局は60万円になったよ」というような投稿が増えるに従って営業は苦戦していると聞きます。
この生産性について、次回から、もう少し掘り下げて論じたいと思います。
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<編集後記>
旅客機の操縦席に乗客を入れて処分されたパイロットの話がネットに載っていました。
実は、30年近く前になりますが、私にも同様の経験があります。
南米での経験でしたが、搭乗していた旅客機の機長に誘われ、飛行中の操縦席に入りました。
入った瞬間、目もくらむ光に包まれ、自分が生身で空に浮かんでいるような錯覚に襲われました。
それは、言葉では言い表わせない異空間の体験でした。
機長に通信士の席に座るよう勧められ、日本の話題で盛り上がり、コーヒーまでごちそうになりました。
SNS時代となった現代では、もう出来ない体験なのかなと、こうしたニュースを見るたび、複雑な心境になります。
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