2021年6月30日号(経済、経営)
2021.07.01
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年6月30日号
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発行日:2021年6月30日(水)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年6月30日号の目次
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◇これからの近未来経済(8):日本の産業構造は問題か?
◇経済政策の通信簿(その3)
☆商品開発のおもしろさ(13)
★今後の建設需要(17):まちづくり
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
コロナ禍で苦境に陥っている企業を対象に、政府は事業再構築補助金(緊急事態宣言特別枠)を設けました。
その第一回の公募での採択率は55.3%でした。
この採択率が高いか低いかは受け止め方によりますが、二回目以降は審査も厳しくなり、採択率は下がっていくことが予想されます。
他のコロナ補助金における不正の発覚も影響するでしょうし、単なる補助金目当ての申請が多かったことも事実です。
国や自治体からの補助金は、各企業の自助努力の補完としての他力のはずです。最初から他力ありきの事業計画では「そりゃ、ダメでしょう」ということです。
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┃◇これからの近未来経済(8):日本の産業構造は問題か? ┃
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前号で述べた「日本が韓国より貧しくなった」原因として、ある識者は「世界一の勤勉さにある」としました。
そして、もうひとつ「中小零細企業が圧倒的に多い日本の産業構造」を原因にあげていました。
以下は私の意見ではなく、この識者の意見の要約です。
「日本企業の99.7%、従業員数の68.8%は中小・零細企業である。
その結果として賃金が先進国の中でも際立って低く抑えられてきた。
中小・零細企業の大半は、輸出や商品開発などに資金や労力を投ずることは難しく、昔ながらの内需型かつ現状維持型のビジネスモデルを続けている。
それゆえ、人口減少で内需が縮小する中で過当競争に陥り、賃上げどころではなくなっている。
そもそも、資本主義社会では、企業が成長して、その果実を労働者へ還元する。
そうした経済が回ることで国民全体が豊かになっていく。
ゆえに、資本主義社会では賃金が上がり続けることが必要なのだが、日本だけがそれを出来ていない。
その根本の要因が、中小・零細企業が圧倒的に多い産業構造にある」
これが、この識者の主張です。
この識者は、そうした構造をつくった原動力の一つに、1963年に制定された「中小企業基本法」をあげています。
この法律によって中小・零細企業を手厚く優遇したおかげで爆発的に企業数が増えたとしています。
さらに、高度成長期が終わってもこの保護政策を続けたため、それを狙っての起業が後を絶たず、現在の「低賃金企業だらけ」の状況に陥ってしまったとの主張です。
うなずける点もありますが、賛同できないことも多いです。
たしかに「中小企業基本法」は、中小企業にある程度の恩恵を与えていますが、日本の商慣習や官庁の政策は、それ以上に大企業有利になっています。
また、大企業が圧倒的に強く中小企業が育っていない韓国では、労組寄りの文在寅政権による大幅な賃金上昇が続きましたが、それで「韓国は日本より裕福になった」と、この識者は主張するのでしょうか。
もっとも韓国は、就労者の4人に一人が自営業者と言われていますので、財閥と自営業者に挟まれた形で中小企業が育たない経済だといえます。
私は、中小企業の多さこそが日本の強みだと思っています。
ただ、その強みを活かせていない政策が問題です。
政治家の劣化が甚だしい日本ですが、それに劣らず官僚の劣化もひどくなっています。
私には、付き合いのある官僚の方もいるので、劣化などと言いたくないのですが、コロナ補助金を騙し取る官僚が出るに至っては、言葉もありません。
一つの大学出身者が多くを占める現在の採用制度を改め、多様な人材を登用できる制度へ改めることが急務です。
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┃◇経済政策の通信簿(その3) ┃
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これまで2回に渡って、デフレからの脱却ができなかった日本の30年間を政府の経済政策の面から眺めてきました。
この30年間で、実に16人もの首相が登場しました(安倍晋三氏は2回なので、実質15人)が、合格点を与えたのは2人だけでした。
読者のみなさまは、第二次安倍内閣はアベノミクスで大規模な財政出動と公共投資増を行ったではないか、安倍首相はもっと評価されるべきではないかと言われるかもしれません。
しかし、統計データを調べてみると、安倍内閣での公共投資は、その前の民主党政権時代から、それほど増えてはいないのです。
逆に、消費税率を5%から8%、さらに10%へと増税しました。
その上、橋本政権や小泉政権と同様の「構造改革」を進めました。
こうした政策は、プライマリーバランス達成という財務省のシナリオに沿った「緊縮財政」政策に他なりません。
経済は、ある意味で単純な算数の世界です。
「需要>供給」ならばインフレになり、「需要<供給」であればデフレということになります。
ならば、それぞれ反対に誘導する政策を行えば良いということになります。
この30年間、日本はデフレ状態が続いてきたわけです。
ならば、供給より需要を増やす政策を行うべきです。
具体的には、大幅な公共事業投資を呼び水とし、投資減税、法人税減税、消費税減税で需要を喚起する政策を大胆に進めるべきなのです。
ところが、小渕、麻生の2つの政権以外は、政府支出を削減し、消費税を増税するという「緊縮財政」を推進してきたのです。
その残念な結果が「韓国にも負けた日本」と言われるまでになったのです。
しかし、日本の基礎技術は、まだ世界最高レベルで、韓国の及ぶところではありません。
負け犬になる必要はなく、政府が「積極財政」を進めていけば未来は開けるはずです。
ただ、ひとつだけ問題があります。
それは、建設業界を始めとする産業界が呪文のように唱えている「生産性の向上」です。
「生産性の向上」とは供給力をアップさせることを意味します。
需要が停滞したままで生産性が向上すると「需要<供給」となり、デフレがさらに進行してしまいます。
インフレ経済になることに備えた生産性向上活動は良いのですが、その前に政府は、大規模な公共投資や研究投資を実施して需要を喚起する必要があります。
「それではインフレになる」という評論家がいますが、そもそもインフレにすることが目的です。
インフレになったところで、準備した生産性向上政策を徹底的に進めればよいのです。
こうした経済理論を理解し、大胆な経済政策を実行できる人が次の首相になることを期待します。
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┃☆商品開発のおもしろさ(13) ┃
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水商売の話が長くなってしまいましたが、この経験が今の自分を支えているという思いがあります。
もう1回だけお付き合いください。
さて、店を守るためヤクザと立ち回り(?)を演じましたが、その当人が夕方、店を開けたばかりの時間に来たのです。
さすがに私は身構えました。
そんな私を見て、彼はこう言ったのです。
「仕返しに来たわけじゃないぜ、この店に“客としてなら”来ていいか?」
私は、彼の真意を図りかね、しばし無言でした。
その沈黙の後、彼の顔を見ながらこう言いました。
「他のお客様に迷惑になることをせず、静かにお酒を飲むだけならば、お客として歓迎します」
その言葉に、彼は、心なしか顔を緩めて「ありがと、そのうち寄らせてもらうよ」と言い、帰っていきました。
その後、彼は、時折、酒を飲みに来るようになりました。
私は警戒していましたが、いつも、二、三杯の酒を飲んで帰るだけでした。
手下と思える者を連れてくることもありましたが、彼らの声が大きくなると、それを制するなど、驚くほど大人しいので、少々意外に思っていました。
ある日、彼はカウンターに来て、カクテルを注文しました。
カクテルを作る私の手元を見ながら、こんなことを言いました。
「あんた、大学に通いながら、この店をやっているんだって」
それが、あの時以来の彼との会話でした。
私は「ええ」としか言いませんでしたが、彼は独り言のように続けました。
「学っていうのは大切だよな。“うち”の若いモンは、まともに学校出てないヤツばっかだからな。
あんなヤツラでも行ける学校があったら、もう少しまともになれたかもな。」
それから、少しずつ、彼とはカウンター越しに話すようになり、彼の手下とも会話するようになってきました。
そんな彼らの話は、実は、とても興味深く面白かったのです。
自分の知らない世界の話は、善悪抜きに面白いですね。
テキヤ商売や博徒商売の内幕話、騙しやサギの手口など、商売のヒントになる話が盛りだくさんでした。
ちょっと、ここには書けない話もたくさん聞きました。
また、彼らとの付き合い(?)の中で、重要な商売のヒントを得ました。
それは、「相手が誰であれ、同じ目線で見て、同格の人格として相対する」ことの大切さです。
簡単に言うと、彼らを決して恐れず、しかし同格の人間として見る姿勢を“ぶらさない”ことです。
一般の人は、これと真反対の態度を取ります。
彼らを恐れながら、ウジ虫のごとく忌み嫌い、蔑んでいます。
その反面、有力者や金持ちには、ひれ伏し、ごまを擦ります。
もっとも、誰に対しても同格の姿勢を貫くことは、とても難しいのですが・・
ヤクザの彼ですが、ある時期、1ヶ月以上も姿を見せない時がありました。
久しぶりにカウンターに来た彼に「久しぶりですね。忙しかったのですか」と声を掛けながら、
ふと胸元を見ると、シャツの下に分厚く包帯を巻いているのが分かりました。
「まあ、いろいろな・・」としか答えなかった彼ですが、手下の話から真相が分かりました。
他の店で飲んでいる時、敵対するヤクザの鉄砲玉(監獄行きを覚悟で相手の幹部を闇討ちする者)に後ろから日本刀で切られたとのこと。
その話を聞いた時、「オレは、とんでもないヤツを相手にしていたんだ」と、冷や汗が出ました。
やはり、ヤクザは怖いですね。
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┃★今後の建設需要(17):まちづくり ┃
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「まちづくり」というと聞こえは良いですが、実態は不動産開発事業です。
前回、そこには「私権の調整」と「ファイナンス」という2つの大きな壁があると書きました。
建設会社の社員時代、そうした壁への対処は別の部署の仕事だったので、正直あまり気にかけてはいませんでした。
しかし、起業してからは、この難題から逃れることはできずに苦労してきました。
ある政令指定都市の依頼で、再開発計画の公聴会にオブザーバーとして参加したことがあります。
参加した住民たちの意見を集約すると、自分の土地には6階建てを許可して欲しいが、隣の土地には建てられないようにして欲しいというものでした。
あるいは、自宅の目の前にバス停が出来るのは嫌だが、近くには欲しいというような意見です。
まあ、当然といえば当然の主張なのですが、みなが同様の意見を声高に述べ、お互いの主張の矛盾に気が付かないのです。
いや、気付いている人もいたのですが、呪縛にあったように口に出せないのです。
まさに「空気の持つ圧力」に支配されてしまうのです。
同席していた市役所の方々は、住民の矛先が自分たちに向かないようにと、曖昧な説明に終始するのみ。
そのうち、頃合いを見計らっていたのか、担当課長が私に意見を求めました。
そう、この場の利害関係に最も遠い私に参加を依頼した理由がそこにあったのです。
その頃には、頭に血が上って声高に主張していた住民たちも疲れたのか、黙る人が増えてきました。
この段階ならば、住民たちに利害関係のない者の意見を聞く雰囲気が生まれるとの読みだったのです。
私は、次のような意見を述べました。
「みなさんのご意見は、どれも“ごもっともな”ご意見です。しかし、その全てを実現することが不可能なことも分かっておられると思います。
でも『だから妥協しろ』と言うのではなく、少しでも『今より良い街にする』という大きな目標を確認し合うことから始めませんか」
たしかに、この時の私の意見は「あいまいな綺麗事」にすぎません。
しかし、ものごとの第一歩は「嵐の状態」、つまり徹底的に自己主張をぶつけ合う場を設けて腹の中を吐き出させることから始め、第二歩で「チーム意識の形成」、つまり目指す共通目標への合意へと導くことで、最終成果の半分は出来上がります。
それを実感した経験でした。
もうひとつの難題「ファイナンス」の話は次回で。
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<編集後記>
五輪への代表選手が続々と決まる現実は、日を追う毎に重たくなっています。
もはや開催以外の道は無いも同然の状態です。
こうなると開催への賛否は意味を失い、安全な大会にするための方法論に議論は移っていきます。
政府が最初からそこを狙っていたことは明白です。
実は、国民の多くは、こうなると思っていたのではないでしょうか。
これまで、反対が大多数という世論調査結果が連日報道されていましたが、賛成や「どっちでも良い」と思っていた人は、そもそも回答しなかったと思います。
かくいう私もそうでした。
五輪に対する関心そのものが薄く「どっちでも・・」派でした。
ある調査で、電話での賛否を求められた時、回答することを拒否しました。
その新聞の記者に聞くと、私のように回答しない人の割合がかなり高かったと言っていました。
母数が少なすぎる世論調査は、発表する価値より誤った報道となる危険が大きいと思います。
そのようなマスコミ報道が多すぎるように感じます。
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