2026年8月31日号(経済、経営)

2026.09.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2026年8月31日号
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発行日:2026年8月31日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2026年8月31日 号の目次
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◇骨太の方針2026の中身(1)
◇事業は安全が大事か、挑戦が大事か(1)
◇新車陸送の世界(16)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
経済政策は国家運営の要(かなめ)です。
その昔、「所得倍増」とか「貧乏人は麦を食え」などの、時の総理の発言が話題を呼びましたが、中身がよくわからないまま消えていきました。
今年6月、高市政権は「骨太の方針2026」を発表しました。
今号から数回、その内容について論評していきます。
 
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┃◇骨太の方針2026の中身(1)               ┃
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高市政権は「骨太の方針2026」で、それまでのPB(プライマリーバランス)重視の「増税+歳出削減」政策から、
「投資を重視して経済を発展させることでGDP(国内総生産)を拡大し、その結果として国債発行等の政府債務残高のGDP比率を下げていく」という「規律ある積極財政」政策への転換を表明しました。
 
企業経営に例えると、「経費削減で借入金を返済していく」経営から「借入金は借り換えし、投資拡大で売り上げを伸ばし、借入金残高の対売上高比率を下げていく」経営に転換するとなります。
企業は、増税に相当する“美味しい”収入を作れないので、投資で売上拡大を目指します。
国も安易に増税に頼るのではなく、投資拡大で経済のパイを大きくしていくべきです。
 
もちろん、国家運営と企業経営を同列には論じられませんが、同じ要素は多々あります。
その要素のひとつが、借入金です。
2026年度予算における債務償還費は全体の26%に上り、財政硬直化の要因とされています。
様々なネット情報に掲載されていますが、日本の財政は「国債の60年償還ルール」という意味の薄い(意味がないとは言いませんが・・)ルールに縛られています。
 
国もですが、多くの企業も「借入金は返すものだ」という固定観念に縛られています。
かくいう私も、長い間、その概念に縛られていましたから大きなことは言えません。
かくして日本では、無借金経営が“良い経営”と思われてきました。
(もちろん、悪いわけではありませんが・・)
 
こうした「国や企業の借金は返済するのが当然だ」という半ば絶対的な思考が、「借金は借り換えていけば良い」に変わるのに、かなりの時間を要してしまったわけです。
長かったこの時間が、「実にもったいなかったな」と、ため息が出ます。
 
もちろん、単なる赤字補填とか遊興費、また目的が曖昧な借金を回避するのは当然です。
ですが、投資目的の借金は、企業なら積極的に取り組むべきです。
ただし、利息等の経費が自社で制定した基準を超えないようにコントロールすることは必要です。
 
話を国政に戻します。
「規律ある積極財政」とは、投資拡大で経済の発展を促し、GDP(国内総生産)を大きくすることです。
その結果、国債発行残高を減らさなくとも、政府債務残高のGDP比率は下がっていきます。
これは小学校の算数の問題なので、理解できない方はいないでしょう。
故に「骨太の方針2026」に対する「最初の点数付け」は、及第点となります。
 
問題は、その後です。
当然「GDPが増えなかったら、どうすんだ!」の批判が出るでしょう。
だが、その結果が1年程度で出るわけはありません。
民間企業でも、投資した結果は、すぐには現れないため、経営者は二の足を踏むのです。
これまで財務省は、頑なに単年度(つまり1年)でのPB(プライマリーバランス)を声高に主張してきました。
短気な経営者と同じですね。
成長戦略会議で、この考えが否定されたので、財務省は「3年程度なら・・」と妥協し始めていますが、笑ってしまいます。
投資効果は、10~15年で考えていくべきものです。
弊社が7~10年としているように、企業の場合は、それぞれの経営戦略の中で考えていくべきです。
 
昨年に発足した高市政権は、まだ1年も経っていません。
まして、新しい骨太の方針は、2か月も経っていません。
最初の評価は、来年度(2027年度)の予算編成の結果に対して行うべきです。
すでに、新方針に呼応して各省庁の動きが活発化しています。
年末には、各省庁の概算要求の内容が国民の目に明らかになってくるはずです。
これを調整して、2027年3月に新年度の予算としてまとめた結果が、高市政権の2番目の点数付けです。
この2番目の点数付けは、当然、1番目より厳しくなります。
ゆえに、この調整をにらみ、首相は内閣改造を行うだろうと見ています。
その新たな陣容を見れば、首相としての予算決定方針が見えてくると思います。
 
そして、2027年4月から始まる実行結果が、その後の点数付けとなります。
この実行結果について、高市首相は、これまでのような単年度での予算執行を考えるのではなく、複数年度にまたがる執行で考えると発言しています。
 
次号に続けます。
 
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┃◇事業は安全が大事か、挑戦が大事か(1)         ┃
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企業経営者の心理には「損失回避バイアス」が付きまといます。
変化に適応するか、変化を避けるかの選択を迫られたときの心理です。
そして、圧倒的多数の経営者は、後者(変化を避ける)を選択します。
それはそうです。
経営者としては、安全領域にいる時間は心が休まる時間で、そこから出たくないのは当然です。
私も経営者ですから、その心理は理解できるし、できれば常に「そこにいたい」と思っています。
 
だけど現代は、そうしたリスク回避が、経営の大きな落とし穴となる時代に入りました。
今後は、「安全安心なオアシスは消えていく」ものであり、安全=停滞、そして死ぬことだと理解しなければなりません。
 
サラリーマン時代、私は上司や先輩から、こう言われました。
「いいか、計画をしっかりと立て、計画通りに実践していくことが大事だぞ」
たしかに、それを悪いとは言いません。
しかし、そうした計画経済の権化である共産主義国家の大半は破綻しました。
そこに決別し、実質的な自由経済へ舵を切ったのは、中国のかつての主席、トウ小平でした。
彼の残した有名な言葉があります。
「ネコは、白でも黒でも、ネズミを捕るのが良いネコだ」
つまり「共産主義とか自由主義なんかはどうでも良く、経済が伸びていくことが大事なんだ」ということです。
それで、西側諸国へ門戸を開いたことで中国経済は急成長しました。
 
しかし、共産主義の復古に囚われた現在の習近平主席は、「ネコは黒であるべきだ」として、次々に白ネコを殺しました。
その結果が、現在、我々が目にしている中国経済の惨状です。
 
中国の官僚たちは、現状を計画に合わせることに汲々として、意味のない投資拡大を続けました。
その結果、住宅不動産だけ見ても30億人分の住居があると言われる惨状です。
(正直、真偽は分かりませんが・・)
習近平主席が顕在の間、中国経済の惨状は止まらず、地獄の釜の中にまっしぐらという状況は変わらないでしょう。
日本経済への影響もあるので、どこかで踏みとどまって欲しい気持ちはありますが、今の中国とお付き合いすることは勘弁して欲しいが本音です。
 
我々の仕事の話に戻ります。
計画を立てることは必要ですが、その後の現実に合わせて計画を修正し、ときには全面的に切り替えることが必要です。
計画・実行のPDCAサイクルは大事ですが、うまく回らない企業が多いように思います。
最後のA(action=チェック後の行動)まで行かずに霧散してしまうP(plan=計画)のなんと多いことか。
弊社も同じでしたから、大きなことは言えません。
 
そこで、現代は「観察→方向付け→決心→実行」のOODAサイクルと組み合わせる時代になってきています。
OODAサイクルのことは今後の回で解説しますが、安全と挑戦を天秤に掛けると、「挑戦のほうが大事」という時代に入って来たと認識することが大切です。
そして、それを加速させるのがAIということになりつつある時代ですが、AIは両刃の剣です。
企業の自滅を招くことにつながるリスクも大きいのです。
次回に続けます。
 
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┃◇新車陸送の世界(16)                 ┃
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前回は、不快な話を申し訳ありませんでした。
でも、あの出来事は、長い時間を経た今でも頭の片隅から消えずに私の深層心理を圧迫し続けています。
前回の話に限らず、この新車陸送の記憶自体が一種のトラウマとなっているのです。
新車陸送の話、もう少し続けます。
 
高度成長期の時代、文字通り“洪水のごとく”日本から世界中に車が輸出されていた。
頂点に君臨するメーカーの傘下につながっていた陸送会社の階層がどのくらいあったかは今でも分からないが、自分たちが最底辺にいることだけは分かっていた。
事故の話は毎日のように耳にしていたし、悲惨な事故車も日常的に目にしていた。
先輩たちの「今月は2人で済んだか・・」の話が死者の数であるかを聞くことも出来なかった。
怖かったのである。
我々が、日夜走っていた“あの”速度で事故になれば、死んでも不思議はない。
当時はシートベルトさえ付いていなかったのだから。
いつしか来なくなった仲間がいても、誰も何も言わない。
私がいた世界は、「板子一枚下は地獄」という最底辺の世界だったのである。
 
ある日の明け方近く、まだ暗闇が残る国道で、先行していた仲間の車が急停止した。
そこには、中央分離帯に乗り上げ白煙を上げている一般車があった。
私を含めた数台の陸送車が止まり、現場に駆け寄った。
運転者と思われる若者が中央分離帯に投げ出されていたが、彼の体は奇妙に折れ曲がり、顔は土気色に変色していた。
顔を近づけて確かめたが、息をしていない。
大声を掛けてみたが、もちろん反応は無い。
少し離れたところに、ぺたんと放心状態で座り込んでいる同乗者らしき女性を発見した。
彼女は無事なようだったが、なにを聞いても反応ゼロ。
視線は虚空を見つめたままで、何も見ていないような状態。
 
我々は、すぐに発煙筒を焚いて後続の車に異変を知らせ、1台が交番に向かって走った。
(携帯電話など無い時代ですから)
最後尾から追いついたリーダーが人工呼吸を試みるが、若者の呼吸は戻らない。
若者の顔は土気色から徐々に色を失い、白色化していく。
事故で今まさに死にゆく人間の顔を初めて見た私は、ただ立ち尽くすだけであった。
 
やがて救急車が来たが、座り込んだまま放心状態の女性を乗せただけで、走り去った。
その後に、灰色のワゴン車が来て、動かない若者を運んでいった。
先輩の一人が「死体運搬車だな」と呟いた。
私は、その車の運転者の顔が死神に見えたが、もちろん何も言わなかった。
 
我々はパトカーで来た警察官にいろいろ質問された後で解放されたが、リーダーは、我々若手に「お前ら、今日はもう上がれ。ショックが残るようなら明日は休め」と言った。
私は「さすがにリーダーだな。どんな場合でも冷静にチームメンバーのことを見てるんだ」と感心した。
 
このリーダー、自分の彼女に売春までさせるという道徳心の欠片もないような人だったが、チームリーダーとしての言動は常に冷静で的確であった。
私はチームに対する彼の言動から“ある種”のリーダーシップを学んだと、今でも思っている。
そして、言いたい。
1960年代から1970年代にかけての高度成長期の日本を最底辺で支えていたのは、あの陸送チームのメンバーのような人たちだったのだと。
こうした底辺の“とんでもない”世界を実体験した私の精神は、間違いなく大きな影響を受けていた。
それが20代後半の私の言動に色濃く現れたと、今では思う。
 
二回続けてショッキングな話でしたが、次回以降、もう少し新車陸送の話を続けさせてください。
 
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<編集後記>
各地を集中豪雨が襲い、犠牲者の数も増えるばかりです。
建設会社時代、「人工気象室」なる施設を設計・施工しました。
実験室内に人工の気象状態を任意に作り出す施設です。
その人工気象のひとつが豪雨でしたが、設計仕様は「1時間100mm」でした。
当時は「最大でも、ここまでだろう」ということでしたが、近年は110mm超という当時の「想定外」が現実になっています。
試運転で「100mm/hの豪雨」の部屋に入りましたが、入るのを躊躇する怖さがありました。
部屋の中は、まるで水の中にいる感じで、「溺れる!」と本気で思ったくらいです。
犠牲者の方の恐怖を思うと、冥福を祈るしかありません。
 
 
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