経済と政治(6)政治の闇と政治の力
2016.10.03
豊洲への築地市場移転問題は、政治が経済の上に来てしまった端的な例である。
築地市場の老朽化による諸問題はたしかに放置できない問題である。
しかし、その解決方法は、あくまでも安全性と経済的効果で論じられるべきであった。
その結論に対して、感情的な反発や利権問題がからんで来るのも必定であるから、それを排除するのが政治の役割である。
しかし、豊洲移転は経済性を無視した政治的思惑で決まってしまった。
今になって、移転を決めた当時の都知事、石原慎太郎氏が「私もだまされた」と主張しているが、築地市場の豊洲移転は、都議会自民党と石原慎太郎知事が一緒になって推進してきた目玉プロジェクトである。
化学薬品で汚染されたガス工場の跡地を買い上げてもらうという”漁夫の利”を得た東京ガスを含めて、巨額の利権がからんでいたことは疑うべくもない。
石原氏は、都民に語りたいならば、自己弁護の妙な釈明ではなく、ご自分が知り得た政治の闇を語るべきである。
でなければ、都民は聞く耳を持たないであろう。
都議会自民党の幹部らが、地下空洞について、都職員の独断だとし、彼らの虚偽説明を責め立てているが、その言い分を鵜呑みにする都民はほとんどいないであろう。
長い間、都政の重要政策は、ドンと言われる内田氏率いる都議会自民党の意向で進められてきた。
石原氏の後を継いだ猪瀬氏も舛添氏も、それを後追いしてきた。
だからこそ、都から出された法案はほぼ100%議会で承認されるという”異常状態”が続いてきたのである。
ところが、小池百合子都知事の誕生という“青天の霹靂”が起きたわけである。
小池知事誕生以来、内田氏率いる都議会自民党は不気味に沈黙を守ってきたが、何もしていなかったわけではない。
移転推進派の業者と一緒に、「小池知事の移転無期限延期は暴挙だ。業者への補償はどうするのか」と知事を追い込む作戦を練っていたわけである。
ところが、今回の盛り土の問題発覚で、世論は『小池知事はよくやった!』と拍手喝采である。
袋小路に追い込まれた都議会自民党は、どうやら「今回の件は、まったく知らされていなかった」と批判の矛先が自分たちに向かうことを回避しつつ、適当な時期を見計らって「移転が完全にストップすれば、業者や自治体への影響は甚大」とし、なんとか移転を実施させようと必死になっている。
だが、共産党だけでなく都議会公明党までがこの問題を徹底追求する構えを見せたことは大きい。
公明党に対し、都議会自民党からは「裏切り者」との恨み節も聞かれるが、もはや与党体制はずたずたである。
小池知事は、この問題を来年の都議会選挙まで引っ張るつもりであろう。
都民の怒りを都政と都議会にぶつけていき、来年の選挙につなげていければ自分の展望が開けると読んでいるであろう。
政治の持つ力を正当に使うことが出来るかどうか、小池氏のお手並みを拝見したいと思う。