抑止力という名の軍事力(7)

2020.11.30


中国の歴史に詳しい方はもちろん、TVや映画などで中国の歴史ドラマを観られた方なら、合従連衡(がっしょうれんこう)という言葉はご存知かと思います。
紀元前の春秋戦国時代、多くの国が相争う中で強大になった秦国に対し、他の六カ国が連合を組んで対抗したことが語源と言われていますが、そう単純な話ではありません。
合従(がっしょう)とは、縦(つまり南北)につながった六カ国が秦に対抗したことを指し、連衡(れんこう)とは、秦がその六カ国を分断し、それぞれと別々の同盟を組む横糸(東西)の関係を指す言葉です。
 
この言葉は、戦争というより、外交術を指す言葉です。
現代でいうなら、アジアで最大の力を持つに至った中国に対し、周辺の日本、豪州、インドが連合を組み、さらに遠方の米国を後ろ盾にして、他のアジア諸国もこの連合に加えようとする外交戦略です。
これに対し、中国が、それらの国々と個別の関係を結び、この同盟を分断させようという駆け引きといったら良いでしょうか。
 
この合従に入らず、中国に媚びを売る韓国は、中国の真っ先のターゲットになっているわけです。
しかし、中国にとって、太平洋への入口を持たない韓国を味方にする利点は薄く、子分扱いから抜けることが出来ない宿命です。
韓国は、日米を核とする連合に加わり、中国に対する橋頭堡の役割を果たすほうが自国の国益にかなうはずです。
だが、それが分かっていても、小中華思想から抜け出せない国民性が障害となり、反日思想から抜けることは無理なようです。
日本は「朝鮮半島は中国の属国から抜けられない」と認識し、対馬海峡を防衛ラインとする防衛戦略を早期に組み立てる必要があるのかもしれません。
 
「インド太平洋」の合従は日米同盟が基軸となりますが、地理的に遠い米国の軍事力に全面的に依存するわけにはいきません。
日本単独でも中国の侵略から尖閣を含む日本国土を守るだけの防衛力を備える必要があります。
もちろん、中国が全力をあげて攻撃してきた場合、守り切ることは難しいので、後方支援的に「自由で開かれたインド太平洋」戦略を、早期に実効性のあるものに進化させる必要があります。
まごまごしていると、中国が仕掛けてくる連衡で、この連合が崩されてしまいます。
 
外交とは、平和な付き合いではなく戦争の一形態です。
孫子は、戦争とは「謀攻、外交、野戦、城攻」の順に行うものと教えています。
尖閣諸島に対する中国の領海・領空侵犯は、もはや「野戦」と呼ぶべき状況になってきています。
中国による城攻(つまり尖閣奪取)が始まる前に、外交と野戦の組み合わせで、尖閣防衛を果たす必要があります。
 
一帯一路が行き詰まりを見せ、習近平主席の焦りは、かなりのものと思われます。
その打開を図るため、台湾への武力攻撃、その前哨戦としての尖閣奪取の可能性は高まっていると考えたほうが良いでしょう。
その武力侵攻を諦めさせるために、日米豪印の合従の重要性は高まっているのです。