中国の思考法を学び、対処する(6)
2020.12.30
11月24日、来日した中国の王毅・国務委員兼外相は、尖閣諸島海域に日本漁船が侵入し、中国は主権を守るため、その排除を行っていると、居丈高に発言しました。
この発言を、記者会見の場で行なったことで、今回の王毅外相の来日の目的が分かりました。
中国は、孫子の兵法を駆使した外交を仕掛ける相手です。
今回の記者会見での発言も、その分析で捉えるべきです。
まず、「正体不明の漁船が敏感な海域に侵入・・」と言いましたが、「正体不明の漁船」とはいったい何でしょうか。
中国情報に精通している人によると、「右翼勢力が乗り込んでいる漁船」という意味だそうです。
日本では、「中国海警局の船が日本の漁船を追い回している」と報道されましたが、そうではなく日本側の挑発に「やむを得ず」対処しているというわけです。
右翼の乗船が事実かは確認が取れていませんが、報道関係者が乗り込んでいる例はあるといいます。
中国側にはその区別はつかず、過剰反応しているともいえます。
どうやら、2012年の日中の秘密交渉で、「尖閣の領有権問題」が政治・外交問題に発展しないよう、事実上「棚上げ」する“黙約” があったのは事実のようです。
それ以降、中国公船の海域侵入は減ったのですが、今年に入り急激に増加しています。
中国側の言い分としては、「漁船に報道関係者だけでなく政治活動家までが乗船して挑発している。その排除だ」ということです。
さらに、「日本は、中国公船の追尾を大きく報道させることで『中国は横暴だ』というイメージを拡散させ、習近平主席の訪日反対の世論を盛り上げようとしている」とみています。
唐突な王毅外相の来日と記者会見での発言は、国際社会を意識したプロパガンダとみれば納得がいきます。
それは「中国は、“やむを得ず”追尾・・」という「やむを得ず」を強調した言い方で分かります。
米中対立の中で、現在の正常化しつつある日中関係を損ないたくないという本音がよく分かります。
茂木外相が即座に抗議しなかったことが責められていますが、たいした問題ではありません。
中国が米国大統領選後の空白を狙っていることは明白ですが、焦りも感じます。
茂木外相には、その焦りを逆手にとって切り返す手腕を期待します。
その手腕を見るまでは、茂木外相への評価はお預けです。