中国バブルの崩壊(3)

2014.11.30

中国が振りかざす「社会主義市場経済」は、経済用語としては全く意味不明な言葉である。
「社会主義経済」とは「計画経済」のことであり、国家が経済を計画管理するという意味である。

一方、「市場経済」とは「自由経済」のことであり、国家は基本ルールのみを制定し、基本は市場原理に任せるという意味である。
つまり、この2つの経済は対立する概念であり、両立し得ないものである。
それを両立させるために、政治は共産党一党独裁にして反対の声を国家権力で封じる。
そうやって経済を政治の傘下に押し込めておけば「両立は可能」というのが、今の中国の主張である。

では、現実はどうなのであろうか。
中国メディアの最近の記事を拾い集めてみた。

1.金融経済情報ベンダー『Wind資訊』
中国の不動産各社は経営破綻の危機に直面している。
証券市場に上場している不動産企業45社の第3四半期における負債総額は、8,600億元(約16兆円)に上り、
そのうち12社の負債は100億元(約1,870億円)を超える。

2.中国国家統計局
2014年に入ってから新築住宅価格の上昇率は鈍っており、9月には主要70都市の内69都市で新築住宅価格が総崩れとなった。
上海でも不動産不況で仲介業者が軒並み潰れている。
事態は深刻さを増している。

3.経済紙『投資時報』
最近発表した『ゴーストタウン・ランキング』によると、急激にゴーストタウンが増えているという。
それによると、ゴーストタウンの判断基準は、1平方キロメートルあたりに1万人が収容できるとして、建築面積あたりの人口が0.5を上回るかどうかで判断されるという。
例えば100平方キロメートルに人口が50万人以下ならばゴーストタウンと判定されるというわけだ。
国土資源部は、ゴーストタウンの増加を受け、土地の節約と集約利用に関する意見書を出し、「新たな用地開発を厳格にコントロールすべきだ」と主張している。
最近5年間の盲目的な拡張工事が、"からっぽ都市"、"眠れる都市”、”死の都市”と呼ばれるゴーストタウンを生み出したと主張。

4.『捜房網』
住宅販売が振るわないだけでなく、金融機関では住宅ローンの焦げ付きが発生している。
ローン残高が新築住宅の評価額を上回り始めているため、債務者がローン返済不能になっている。
地方政府の財政収入の約6割が土地譲渡金収入なので、地方政府の信用不安が出てきている。
地方政府は不動産購入に関する規制を緩和するなど対応を急いでいる。

(注釈)中国では土地の私有が禁じられているため、国から民間が借り受ける定期借地権が売買の対象になっている。

不動産や建設業が不振になれば、材料など多岐にわたる業界がダメージを受ける。
この図式は日本となんらの違いはない。
中国政府が崩壊へ向かっている住宅市場に対して強力で有効な政策を打ち出せなければ、中国の住宅バブルは崩壊する。
結果として国内の格差が拡大し、やがて政権の基盤が揺らぐであろう。

しかし、中国メディアの『新京報』は、中国不動産市場の「黄金の10年が終わりを告げた」としながらも、政府が救済措置を相次いで打ち出し、不動産価格はやがて上昇に転じると楽観的な論説を掲げている。
これが、「社会主義市場経済」の効果だと言わんばかりの論調である。

一方、『華商網』は著名エコノミストの意見を掲載し、住宅価格は下落を続け、不動産業者の8割が淘汰されるだろうとしている。
政府の政策のことには一切言及していないが、その沈黙が同誌の答えのようである。

10月29日、中国国務院(日本の内閣に相当する)は、住宅消費を安定化させるために資金の利用条件を緩和していく方針を示した。
要するに、中国版アベノミクスの第1弾である。
さて、どうなることか。今後の動向を注視していきたい。