純粋な軍事の話(3)
2019.02.01
日本のヘリコプター空母「いずも」にF-35Bを搭載して本格的な空母にするという案が、策定中の防衛大綱骨子に盛り込まれることになった。
当然のように、中国や韓国が反発し、日本でも「憲法違反」という声があがっている。
本章は「純粋な軍事の話」なので、こうした政治や憲法のことは横に置き、純粋に軍事的な側面から解説を書いている。
そのことを念頭にお読みください。
日本が保有するヘリコプター空母「いずも」と「かが」の2艦に搭載できるF-35Bは、合わせて24~28機と言われている。
しかし、ヘリを積まなければ、40機程度は搭載できるかもしれない。
この数は、結構あなどれない戦力となる。
日本の場合、F-35Bを積んで遠洋に出ることはなく、日本近海での活動に限定される。
しかし逆に、地上基地との連携が密になるという利点が生まれ、防衛能力は格段に向上する。
戦闘機を積んだ空母は、もはや憲法の範囲である「防衛的兵器」とはいえず「攻撃的兵器」だという反対意見があるが、軍事的にはまったく意味を為さない意見である。
日本が国境付近にある島々のすべてに自衛隊を駐屯させることはできない中で、自由に移動できる航空基地としての空母保有は、理にかなった防衛策といえる。
そう解釈すれば「防衛的兵器」となるが、敵対する国の領海に近づき、そこから攻撃機を発進させれば、「攻撃的兵器」となる。
ゆえに、このようなナンセンスな議論は止めるべきだと言いたい。
話を元に戻す。
空母は、単独では防御能力が弱く、使い物にならない。
米国の巨大空母とて、同じである。
ゆえに、米国のように、護衛艦を周りに配置する「空母打撃群」を構成する必要がある。
イージス艦は、もともと、こうした空母の護衛用として設計されたものである。
最新鋭のイージス艦は、一艦で同時に100の目標を撃破できるというが、まさに空母を守るために必要な能力といえよう。
中国の空母も、同様な護衛艦に守られているが、中国版イージス艦の能力は推測の域を出ない。
従って、日中の空母艦隊が戦う場面になったときの優劣は、正直言って分からない。
ただ、中国は空母建造を急ピッチで進めていて、短期間で5艦体制になると言われている。
イージス艦の性能以前に、それは十分な脅威といえる。
世界は、戦前の日本が、世界に先駆けて空母艦隊を運用し、米国に並ぶ戦闘能力を保持していたことを知っている。
ゆえに、いずれ、6万トン級の本格空母を建造するであろうとの予測は多い。
当然、中国は反発を強めるであろうが、米国は支持するであろう。
欧州各国は、警戒心のほうが強かったが、ここに来て英国が艦艇を南シナ海に送り、フランスが北朝鮮の瀬取り監視で日本海に艦艇を送ることを発表した。
両国とも、補給基地としての日本に期待し、海自との共同訓練まで希望している。
日本の空母保有に関して反対する理由はないであろう。
ただし、空母艦隊の保有と運用は、人員面および予算面において負担が大きくなる。
政府は、そのことを含めて国民に丁寧な説明が必要である。
モリカケ問題のお粗末な対応を繰り返してはならない。