日本流の中国との付き合い方を(その7):台湾
2019.07.01
今号の最初の章で書いたとおり、膨張を続ける中国と阻止せんとする米国の争いは激化の一途をたどっている。
こうした中、韓国の迷走が続く限り、米中の最前線が38度線から第一列島線へと後退する危険性が増している。
しかし、日本列島がその第一列島線の真上に乗っている現実を、ほとんどの日本人は深く考えていない。
これが戦後74年間、平和を貪ってきた“つけ”なのであろうか。
この第一列島線の西の端に台湾がある。
歴史的な経緯もあり、中国政府にとって台湾を制覇することは必須事項である。
ただ、今すぐ軍事攻撃をかけるかというと、それは無い。
急速に力を付けたとはいえ、今の中国軍に米国の空母艦隊を撃破する能力はない。
また、台湾の軍事力も侮れないものがある。
侵攻を開始したとしても、上陸を阻まれ、米国の機動艦隊にはさみうちにされるのがオチであろう。
あの孫子を生んだ中国である。
そのような拙策な戦略を取るはずはない。
まずは、カネの力で後方を攪乱し、そして台湾人民の心理誘導戦を仕掛ける。
こうした戦略はすでに発動され、台湾に対する中国のサイバー攻撃は激しさを増している。
この効果で、相当数の台湾マスコミが中国寄りの報道を行うようになり、台湾政府に対するフェイクニュースまで垂れ流される事態となっている。
勿論、台湾政府も手をこまねいているわけではなく、対策を打ち出している。
民間機関や大学、研究機関を広く包含した台湾戦略研究学会と戦略対話の定期開催に関する覚書を結んだ。
米国から100両超の戦車を購入する話も進んでいる。
一方、こうした状況に対する日本の対応はどうであろうか。
米中対立が激化する中で、気持ちが悪いほど日中関係は雪解けが進んでいるように見える。
この理由を考えてみたい。
もちろん、中国の意図は明白である。
「離間の計」で日米の間に楔(くさび)を打ち込もうという戦略である。
安倍首相の訪中を仕掛け、その首相を最大限にもてなし、首相に「日本と中国の関係は完全に正常な軌道に戻った。日中関係は競争から協調へ変わった」と言わしめたのである。
こうした首相を後押ししているのが、中国市場が大事な日本の経済界、そして中国とのパイプを誇示したい与党の親中政治家、そして左派マスコミである。
誤解しないで欲しいが、私は中国との対立を煽っているわけではない。
中国とは上手に付き合っていくべきである。
だが、尖閣周辺海域に60日以上にわたって侵入し続ける中国海警の行動を座視するわけにはいかない。
「尖閣諸島は中国の領土」という主張を、侵犯を続けることで既成事実化しようとしているのは明白である。
このような中国の挑発は実力をもって排除しながら、外交力で中国との関係を正常化することが日本の政治には求められている。
かつ、台湾との付き合いも日本の国益にとっては重要である。
二股と捉えられようが、それが台湾海峡の平和にとって、また日本の国益にとって必要なのである。