戦争を起こさせない二つの仕組み(5):日本の役割

2017.01.11


今号で「戦争を回避する戦略」のまとめを行います。
日本が戦争を起こす可能性は少ないので、本章は、日本に対し他国が「戦争を起こさせない仕組み」ということになります。
原則を復習すると、
1.有効な同盟関係を結ぶ
2.相対的な軍事力を保持する
3.民主主義の程度を増す
4.経済的依存関係を強める
5.国際的組織への加入
この5項目に加えて、前号で「核兵器という”相打ち兵器“を持つ」こと6項目目として挙げた。
もし、私が政治家であったなら、このような発言をしただけでマスコミや平和団体に袋叩きにされることは確実である。
「核兵器を持て」と言っているわけではなく、「なぜ核兵器が存在しているのか」の解説に過ぎないのにである。
こうした問答無用の“乱暴な”平和論が、平和を真剣に論ずる芽をつぶしてしまうのである。
昨今の国会における野党の論調がこの傾向にあることを危惧している。
戦争することを考えない「戦争の抑止」など何の役にも立たないことは歴史が証明している。
2500年前、中国の思想家「韓非子(かんぴし)」は、「善を為すために悪を知れ」と言った。
この言葉が全てである。
では最後に、日本はいかなる仕組みで他国に「戦争を起こさせない」かを論じてみたい。
今の日本の平和を脅かしている国は、北朝鮮、中国、ロシア、そして米国である。
いつでもミサイルを日本に撃ち込める用意を整えている北朝鮮と中国、それに、北方領土を占領し日本の領空侵犯を繰り返しているロシアは、どう考えても友好国とは言えない。
米国は友好国だが、在日米軍の任務の一つが「日本を抑えておくため」である限り、真の友好国とはいえない。
中国に至っては、領海や領空の侵犯だけでなく、数々の軍事的挑発行動を繰り返している。
まるで、日本が我慢しきれずに軍事手段に打って出ることを待っているようである。
ただし、これらの国々に「止めろ」と言っても止めるわけはないので、先の6項目に照らして考えてみた。
まず、「1.有効な同盟関係を結ぶ」だが、米国と軍事同盟を結んでいる限り、米国とは戦争にはならない。
また、この同盟が中国に戦争を思いとどまらせている側面もある。
次の「2.相対的な軍事力を保持する」は自衛隊の存在のことだが、急ぐのは空の防衛力強化である。
詳しくは、別の機会に述べるとする。
「3.民主主義の程度を増す」を今の中国に期待することはできないから、この策はダメ。
「4.経済的依存関係を強める」は大事だが、かつてのレアアースのように、中国はすぐに政治に結び付けてくる国である。
多国間の経済関係を拡大し、中国依存度を増やさないことが肝心である。
「5.国際的組織への加入」は、南シナ海の裁定を下した国際司法を無視する態度から、期待はできない。
だが、太平洋を囲む各国と協調する協定や同盟を結ぶことは、大いに進めていくべきことである。
そうして、無視できなくなった中国が入ってくる環境を整えていくことである。
最後の「核兵器=相打ち兵器」を日本が持つことは外交的には損なので、米国の核抑止力に頼るか、諦めて「打たれたらおしまい」と腹をくくるかである。
結局、現在、日本が打てる手段は限られていると言える。
読者の皆様は、どのように考えますか。