空母化する「いずも」「かが」は戦力となるのか(3)

2023.12.15

2023年11月15日号
 
3回目の今回は、そもそも日本が空母を保有する是非について論じたいと思います。
最大のマイナス面は、建造費、運用費とも膨大な金額になることです。
米国の最新鋭空母ジェラルド・R・フォードの建造費は1兆9000億円と驚くほどの金額です。
それ以前に建造された他の空母も7000~8000億円とやはり巨額です。
また、原子力空母の運用コストは年800億円と言われますので、30年間運用すると考えると、
トータル3兆円を超えるし、フォード級だと4兆円を超えるでしょう。
さらに護衛するイージス艦や潜水艦、補給艦などが必要で、1艦隊だけで10兆円規模となるでしょう。
米国は空母を11隻保有していますので、合計で100兆円を超える金額です。
中国がこれに対抗するのは、到底不可能な金額なのです。

そもそも空母を世界最初に保有したのは戦前の日本であり、太平洋戦争の開戦当時は10隻という世界最大の空母保有国でした。
この財政負担と当時の経済規模を考えれば、あの戦争を遂行できる能力は日本には無かったのです。
しかも真珠湾攻撃により、日本の空母は防衛ではなく侵略の道具として認識されてしまい、戦後は保有そのものが封印されてきたのです。
 
さて、本題の「空母は本当に必要か?」に戻ります。
単に攻撃能力だけを考えれば、空母を持つより「多数の戦闘機+航続距離の長い空中給油機」を保有するほうが理にかなっています。
そのため、「いずも」「かが」とも多用途艦として建造されました。
搭載するのはヘリコプターですから、攻撃用ヘリとしても敵戦闘機との空中戦は無理で、陸上戦闘の支援に限定されます。
離れた離島に上陸した敵部隊の撃退など限定的な戦闘用としてしか使えません。
 
それ以上に用途があるのが、災害救援や人道支援などの活動です。
広い飛行甲板や多数のヘリコプターは、そうした救援にはもってこいの装備です。
実際、東日本大震災の際の救援には大きな力を発揮しました。
今後、平和維持活動や災害救助、人道支援などの国際的な救助活動への積極参加で、他国からの支持を得る機会が増すでしょう。
こうした用途には迅速に対応すべきであり、とても役立つ海上拠点となります。
実際、空母保有は、上記の国際的な支援を含めた政治的な意味合いのほうが大きいといえます。
 
戦闘機(F35B)を運用可能にする今回の改修は、当然、武力戦闘を想定したものです。
この場合、他国同様、空母単艦での行動はあり得ず、イージス艦や潜水艦を従えての空母艦隊となります。
つまり、艦隊が戦国時代の「城」とすると、空母は「天守閣」のような存在といえます。
米国などの同盟国との軍事演習における存在感を示す効果も大きいでしょう。
つまり、「戦争用の武器」という意味よりも、国際的な日本の存在感を高める「外交的な武器」という側面のほうが強いということです。
ただし、運用コストが上がることは当然ですので、予算の見直しが必要となります。
 
今回の空母化は、こうした強力な外交武器となるため、中露の反発がより大きいという面に着目する必要があります。
また、韓国の反発は、「うらやましい」が原因ですが、それも外交的な意味合いの強さを表しています。
 
我々国民は、一方に偏った賛否ではなく、プラスマイナスを考えた上で保有の是非を考えたいものです。