第一列島線の攻防(1)

2019.10.01

軍事を毛嫌いされている方でも、「第一列島線」という言葉を聞いたことがあると思います。
戦後、共産党政権となった中国ですが、同じ共産主義国のソ連と同盟を結びながら、一番の仮想敵国はソ連でした。
実際、中ソ両国は、何度も国境で軍事衝突を繰り返してきました。
それゆえ、中国軍(人民解放軍)の主力は世界一長い国境線を守る陸軍でした。
その反面、海軍は沿岸警備隊に毛が生えた程度の戦力でした。
 
それが1991年のソ連崩壊で、仮想敵国は米国へと変わりました。
米国は、ソ連とは異なり、海洋国家であり、伝統的に海軍大国です。
その米国と戦うためには、海軍の整備とともに海洋に防衛ラインを制定する必要がありました。
その最初の防衛ラインが、九州~沖縄~台湾~フィリピン~ボルネオ」を結ぶラインであり、これを「第一列島線」と名付けたのです。
さらに、日本列島~グアム~ニューギニアを結ぶラインを「第二列島線」と名付け、この二つのラインを中国防衛の基本ラインとしたのです。
さらに、ハワイ~サモア~ニュージランドを結ぶ線を「第三列島線」と呼んでいますが、具体的な戦略は無いと見られています。
 
中国は2010年までに「第一列島線」を確保するとしていましたが、それは夢と終わりました。
それはそうです。
公海はおろか日本やフィリピンなどの領海までをも犯す戦略ですから、許されるはずはありません。
 
もちろん、中国も平時にこの範囲を手中に収めようとしているわけではありません。
あくまでも自国の防衛ラインとして、有事にはこの範囲内の制海権、制空権を確保し、米国太平洋艦隊の接近を阻止することを目的としています。
しかし、有事に備えるためには平時においても制海権および制空権を確保する必要があります。
実際、1992年に中国は「領海法」を制定しましたが、この法律で一方的に尖閣諸島、南沙諸島、西沙諸島の領有権を主張したのです。
それだけでなく、中国の大陸棚が沖縄まで続いていると主張し、沖縄近海の海域までの東シナ海全域の管轄権を主張したのです。
 
実際、南シナ海を、一方的な島々の占領と埋め立てにより中国の内海とし、急ピッチの軍事要塞化を進めています。
次は東シナ海を狙っているのは明白です。
尖閣諸島への領海侵犯が急増していることが何よりの証拠です。
 
こうした中国の軍事侵攻の意図を挫くため、日本は米国と協力し、逆に「第一列島線」を中国による侵攻を防ぐ防衛ラインとする必要があります。
 
もとより私は中国との平和共存を望んでいます。
両国の友好を深めていくことは何よりも重要ですが、中国が「第一列島線」を中国の傘下に収める意図をむき出しにしている以上、侵攻の意図を諦めさせるための防衛力強化は必須なのです。
それが東アジアの平和に欠かせない重要なピースです。
次回以降、第一列島線の攻防戦を軍事の視点で論じていきたいと思っています。