トランプ大統領をどう判断すれば良いのか(1)

2016.11.15

 
選挙期間中の計算された暴言(?)以外に判断材料に乏しいトランプ氏ですが、意外と単純に分析すれば良いのだと思いました。
まず、トランプ氏の個人的な価値観ですが、これはとても分かりやすいです。
「勝負に勝つ」。
これに尽きます。
かつ、「どんな汚い手を使ってでも勝つ」との執念の持ち主です。
さらに、「やられたら、やりかえす」といった強烈な「負けず嫌い」です。
 
だから、選挙期間中の人種差別、性別差別発言は、信念ではなく、単なる「ケンカの手段」に過ぎなかったのです。
クリントン氏への個人攻撃も、個人への偏見や憎しみではなく、この戦いに勝つための計算された手段だったのです。
この点は見事で、私も騙された部類に入ります。
TV討論会で、司会者から「互いに尊敬する点は?」と聞かれ、クリントン氏の「決してあきらめない戦士である点」と語った時に、トランプ氏の過激な発言が“手段”だということに気づきましたが、
それでも彼が勝つとは思えなかったのです。
彼を差別主義者と本気で批判してきたマスコミ(日米とも)は、完全な間違いを犯してきました。
クリントン側も、この術中にはまって、虚像のトランプ氏に振り回されたわけです。
 
次にトランプ氏の政治信条ですが、以前にも述べたように、「古き良きアメリカの復活」です。
「アメリカ人は、自らの力によって生き、そして富を築き上げてきた。
アメリカを再び成長への軌道に乗せるには、フロンティア精神を呼び起こし、あくなき挑戦を続け、軟弱になった米国を変革し、成功への執念を燃やそうではないか」
こうしたアジテーションに閉塞感を抱える有権者たちが動かされ、投票所に向かったのです。
もちろん、実際に「古き良きアメリカ」の復活などあり得ないし、経済のグローバル化をとどめることも出来ないのですが・・。
 
経済政策に関しては、基本的には古典的なケインズ論者のように思えます。
選挙後も、インフラ投資の拡大や大幅減税など、かつてのニューディール政策のような発言をしていますから、財政緊縮主義者でないことは確かです。
 
また、選挙期間中はFRB(米連邦政制度理事会)の低金利政策を批判していましたが、同時に、積極財政政策を進める財源を「国債の借り換え」に求めています。
となれば、低金利のほうが良いわけで、FRB批判は的外れです。
案外、トランプ氏自身はあまり経済理論に強くないのかもしれません。
それならそれで、経済ブレーンの能力が問われることになります。
 
いずれにしても、これから徐々に明らかになってくる新政権の人事に注目です。