民主主義の脆さ(その4)

2022.08.31

岸田改造内閣の閣僚人事は発表されましたが、前号で取り上げた小林史明氏は、兼務していたデジタル副大臣と内閣府副大臣を外れました。
デジタル大臣に指名された河野太郎氏とのコンビネーションに期待していたのですが、残念でした。
それでも、前号の予告通り、各種の対談などで言及している彼の主張を解説したいと思います。
 
小林氏は「テクノロジーの社会実装によりフェアで多様な社会を実現する」という政治信条を掲げています。
具体的には、「デジタル化による規制改革と行政改革に一体的に取り組む」という考えを表明しています。
政府の一員としての政策課題も述べていました。
以下に、小林氏の言葉を要約して紹介します。
 
「日本におけるデジタル施策やイノベーションの促進は、これまでのところ残念ながらうまくいっていません。その理由を総括すると、課題は大きく3つあります。 まず、技術の進展に対してまったく社会制度が追い付いていませんでした。
2つ目の課題は国と地方のガバナンス(の混乱)です。地方に権限があることにより、本来、国が全国で統一的に実施した方が効率的なことが実施できなかったり、データの項目が自治体ごとに異なることで集約するのに苦労したりということがありました。
そして3つ目がリソースの問題です。問題意識が高まっても、政策を実現するために必要なリソースを準備できていませんでした。 」
 
今後の日本にとって、デジタル庁の役割は大きいです。
小林氏が指摘した3つの課題にどう取り組むかです。
小林氏は、「他省庁に対してもデジタル化を推進する権限と、リソースをもつ組織が誕生したことに意義がある」と述べています。
さらに「デジタル施策、規制改革、行政改革を1人の大臣のもとで推進する体制が大事」と述べ、
「自律的に社会をよくしていく取り組みがさまざまなところで起こり続けるのが理想的な社会像だと思っています。特に経済活動においては、前提になっている規制や慣習を当事者自らが参画しやすい仕組みがあれば、より自由な発想が生かせる社会になるはずです」と述べています。
 
その上で、「最も根幹のインフラは法律です。法律自体を民主化したい、つまり、議員と役所だけで決めるのではなく、みんなで決めようぜ、ということです。これは、テクノロジーを活用すればできます。 政府が国民や企業が活動しやすいインフラを整えていけば、多様性やQOL (Quality of Life=心身ともに健康で輝くような状態)が上がり、イノベーションも起きやすくなります。自ずと国の競争力も上がります。」との抱負を語っています。
 
私の主張してきたことと80%ぐらい重なる考えです。
ぜひ、新しい副大臣となった大串正樹氏に引き継ぐと同時に、小林氏のこれからの政治活動に注目していきたいと思っています。