若い人の変化(その3)

2024.05.16


人は孤独に弱い生物です。
ヒトは、生物の中では巨大ともいえる大きな体を持っています。
しかし、運動能力は目を覆うばかりの低さです。
陸上100m競争の世界記録保持者ウサイン・ボルトでさえ、象やカバに負けるのです。
跳躍でも、ピューマは7m、トラは4mの高さをクリアします。
人間の世界記録は2m半ですし、一般人は自分の身長の高さすら飛べません。
海では、シャチが6m、イルカが5m、最高はアオザメの7.6mですから、シンクロ選手も遠く及びません。
 
こうした事実は何を物語っているのでしょうか。
「体は大きく、皮膚は柔らかい。そして動きはのろま」
つまり、捕食動物からみたら「捕まえるのが簡単で、食べやすい美味しいエサ」なのです。
その弱点を克服したのが、異常に大きく発達した大脳による深い思考力だったわけです。
しかし、いくら賢くなっても、単独で身を守ることには限界があります。
そこで、集団で防衛・攻撃するというシステムを確立して生き延びてきたわけです。
 
こうしたことから分かるように、ヒトは孤独に弱い生物なのですが、集団や個人間の情報共有で孤独を克服してきたわけです。
近年はコンピュータ・ネットワークという「離れていても繋がるテクノロジー」で、より広範な情報共有ができています。
だから、独裁国家は、個人間の情報ネットワークを、リアルな集会などはもちろん、ITの世界でも規制して、人々を孤独という檻に閉じ込めるのです。
そうして、「全体主義は孤独になった大衆の支持により維持される」という世界を作るのです。
ロシアや中国などの現状をみれば、よく分かりますね。
大衆を徹底的に孤独化した中で行われたロシアの大統領選挙、その選挙すら行わない中国、そしてトップが世襲の北朝鮮。
 
民主主義国家は、どうしても公平(一人一票)な選挙による政権選択などの非効率な政権運営を強いられるため、大衆を孤独化している独裁国家に比べてスピードに欠ける政治となります。
核戦争後の世界を想定して生まれたインターネットは、今では大きな人の輪を形成する手段となっていますが、今度は、若者がネットの世界に引きこもり孤独化が進行するというパラドックスが起きています。
心理学者は、これを「孤独の襲撃」と呼んでいますが、この襲撃への対処においては、男女に明確な差があると言われています。
 
若い男性ほど、この襲撃を受けて「引きこもり傾向が強まっている」というのです。
たしかに、会社の飲み会などに参加しない若者が増えているようですし、学校では部活動に入らない「帰宅部」の子供が増えていると言われます。
こうした孤独に閉じこもる傾向が強まると、政治への関心が減り、結果として「組織票」と呼ばれる独裁的な組織によって政治が左右されるようになります。
日本や米国では、すでにそうした傾向が顕著になってきています。
 
このような若者の傾向は強まっていくと思われますが、一条の光は女性にあります。
その話は次回で・・