(4)ギリシャは、ドイツ、フランスに食い物にされた?

2015.07.06 11:00:00

林秀毅氏の欧州経済・金融リポート2.0「ピケティがみたユーロ危機」〔2015年5月8日 日本経済研究センター〕を読むと、興味深いことが書いてある。
以下に抜粋する。
 
経済書「21世紀の資本」の著者で、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、ギリシャ人が生産する以上に消費する“怠け者”であったために債務問題に陥ったとする論調に対して2010年3月に反論。
他国がギリシャ国内で所有する資産が、ギリシャが対外的に所有する資産を常に上回るという「負の遺産」を抱えてきたため、元々「ギリシャ国民が生産する以上に消費せずにいられる可能性はほとんどなかった」とした。
ピケティ氏はさらに、2009年秋にギリシャの財政収支の粉飾が明らかとなった後、金融市場が反応しギリシャの国債金利が急上昇したため、短期間で危機的な支払不能の状況に陥ったことが原因であると述べている。
粉飾決算の発覚が、短期間での危機的な支払不能の状況を招いたとの指摘である。
 
一考に値する意見であるが、一般に言われている原因を列挙すると、以下のようになる。
 
(1)財政が基準を満たさないままEUに加盟した
財政赤字を国内総生産の3%以内に抑えるという基準を満たさないままギリシャはユーロ圏に加盟した。
 
(2)身の丈に合わない借り入れと粉飾決算
EU加盟による通貨ユーロの採用で、ギリシャは市場からの信頼を獲得し、国債利回りは急低下。
政府は低い調達コストで海外から多額の資金を調達した。
しかし2009年10月、欧州統計局が粉飾決済を指摘したことで、同年の財政赤字は、対名目GDP比率で当初の3.7%から12.5%に急落。
危機が表面化した。
 
(3)公務員雇用、高額年金…公的資金“バラマキ”
海外からの借り入れで得た資金を、与党は、選挙対策である年金給付の増加や公務員雇用の拡大に使ってしまった。
中長期的な経済成長に貢献する投資には使われずに、調達資金は消えてしまった。
 
(4)脱税、政治家の利権で財政再建が進展せず
ギリシャの脱税規模は「政府財政赤字額の2倍」と言われるほど脱税が日常化している。
ユーロ圏諸国は、政府の徴税能力改善に向けて、人的、システム面で支援を行ってきたが、徴税能力の抜本的な改善は出来ていない。
さらに、国有資産売却策も、政治家の利権の壁で頓挫した。
 
(5)ドイツ、フランスの食い物にされた
ギリシャの軍事費は、GDP比2%超と北大西洋条約機構(NATO)加盟国としては突出して高い。
実は、ギリシャは、ドイツやフランスにとって兵器購入の得意客なのである。
つまり、両国はギリシャをカモにしていた?
 
各項目を見ていると、日本だって、いつ陥るかもしれないことばかりである。
国民は、「以って他山の石とすべき」である。