戦争と平和(その10):習近平主席の目論見
2015.09.16
前号で、私は「習近平国家主席は“当面は戦争できない”と思っている」と書いた。
問題は、この「当面」とはいつまでなのかということである。
問題は、この「当面」とはいつまでなのかということである。
習近平主席が、自分の在位中に尖閣の奪取と台湾侵攻を本気で考えていることは確実と言える。
ただ、今の中国の軍事力では日米連合軍に勝てないという現実は、よく理解している。
だから、領海侵犯という嫌がらせで、国際社会に対し「尖閣諸島は紛争地帯なんだ」というアピールを続け、さらに、日本の疲労を引き出そうという戦略を採っているのである。
では、どのような状況になったら中国は本格的に侵攻を開始するのか。
中国の国家主席の任期は5年で、最大2期まで(10年)となっている。
ということは、習近平主席は、最大であと7年、2022年までやれるということである。
習近平主席は、演説で「中国の夢」という言葉をよく使うが、具体論として、「中国の大国としての自信を取り戻す」とも言っている。
ここから先は推測になるが、中国が「自信を取り戻す」には、以下の2つのことを成し遂げる必要がある。
それは、台湾を完全に中国の支配下に置くことと、かつて中国を侵略した日本を屈服させることの2つである。
これに成功すれば、太平洋の半分は中国の支配下になり、米国と対等の存在となる。
習近平主席の在位期間を考えると、それを2022年までに達成したいということになる。
とすると、仕掛けてくるのは、遅くとも2年前の2020年ということになる。
奇しくも東京オリンピックの年である。
オリンピックで浮かれている日本の足元をすくうという戦略かもしれない。
ただし、相手は、「孫子の兵法」の国である。
いきなり武力攻撃はしないであろう。
まずは謀略をもって侵攻を開始するはずである。
孫子には「戦わずして勝つ」という有名な言葉がある。
近年で、そのモデルとなっているのが、ロシアによるウクライナのクリミヤ半島の強奪である。
あの時、ロシアは、軍事力を背景にして、クリミヤで住民投票を実施、圧倒的多数の賛成を得てロシアへの編入という、一見、合法に見える謀略でクリミヤを強奪した。
第二次世界大戦前夜、ナチスドイツが当時のチェコスロバキアのズデーデン地方を強奪した手法とそっくり同じである。
今回も、あの時の英仏同様、アメリカや英国は口だけの非難に終始し、効果ある対抗策を打ち出せていない。
プーチン大統領は、英国などに対し「核戦争も辞さない」と露骨な脅迫を掛けた。
まさにヒットラー並みの発言であり、当時の英仏のように、今のEUも沈黙である。
中国は、この手法を台湾に仕掛ける準備をしている。
親中派の勢力が多数になれば、住民投票で中国への編入を決めさせ、間髪をいれずに人民解放軍を進駐させるという策である。
ただ、親中派と言われる現在の馬英九政権が今年の選挙で大敗したことで、政権が台湾独立志向の強い民進党に戻ると予測されている。
これは習近平主席にとっては誤算である。
そもそも、戦後、中国大陸から台湾に移住してきた人とその子孫である「外省人」系は人口の1割強を占めるに過ぎないとされているから、現在の情勢では、住民投票で台湾を中国に帰属させることは難しいと判断していると思われる。
とすると、武力侵攻となるが・・
実際、中国の台湾に面した対岸には、ずらりとミサイルが並んで、いつでも総攻撃に移れる体制を整えている。
では、台湾で民進党が政権党に返り咲き、独立機運が高まった場合、中国は武力侵攻に踏み切るのであろうか。
次章の「戦争と平和(その11)」を引き続き、お読みください。