★第一列島線の攻防(6)
2020.03.02
米国人は、異常なほどに契約違反を毛嫌いする。
私の仕事上の経験からも、「契約」という概念は、米国人の国民性であり、信念に近いということが言える。
ゆえに、日米安保条約が存在している限り、日本有事の際は、条約第5条に規定されている「日米共通の軍事的脅威に対処するための行動」を実施することは確かである。
しかし、「軍事的脅威に対処するための行動」を、ただちに戦闘行為と解釈することは危険である。
この「行動」の意味は、武器、弾薬、燃料などの後方支援や外交支援、軍事情報の提供など、非常に広範囲に渡るからである。
これは、国際的常識である。
日本で、国会の野党質問などを聞いていると、「軍事行動=戦闘」と短絡的に捉えている傾向が強いが、こうした幼稚な議論に終始していることに危惧を覚える。
想定される中国による尖閣列島の奪取等、対日軍事攻撃が発生した場合、米国がただちに戦闘部隊を派遣すると考えないほうが良い。
米国は、米中戦争を避けるという意味から、緒戦では、武器弾薬やミサイルなどの後方支援に回るであろう。
それでも、普段の弾薬備蓄量が極度に貧弱な自衛隊にとっては、ありがたいことではあるが・・
かなり前になるが、自衛隊の前線指揮官の方に有事の際の弾薬の備蓄量を聞いたことがある。
最初は「1ヶ月」と言っていたが、そのうち「実際に戦闘に入ったら、1週間も持たない」と本音を語ってくれた。
孫子の兵法を学ぶことがなくても、後方支援の重要性は理解できると思う。
その後方支援を米軍に頼るしかない自衛隊の現実がある。
まずは、この現実の劇的改善がなければ、米軍の支援が始まる前に事が決してしまうであろう。
第1列島線を守るミサイル網を構築するのであれば、砲弾以上に厄介なミサイルの備蓄という大きな問題が横たわる。
日米安保条約の限界を十分に吟味した上で、第一列島線の防衛を現実論で構築すべき時に来ている。