中国の今後(前編)

2017.09.01


中国は間もなく第19回党大会を迎えるが、今年の大会は世界から大きな注目を浴びている。
強引な経済政策と対外政策でなんとか取り繕ってはいるが、中国経済が順調でないのは明らかである。
その理由の一つがNo.1の習近平主席とNo.2の李克強首相との微妙な関係にある。
それぞれの出身母体が太子党派と共青団派という”水と油”なので当然なのだが、それ以上に習近平主席の野望の大きさが影を落としている。
例年、党大会を前にして、避暑地の北戴河で幹部と長老が一同に会する秘密会議が開かれる。
最高人事はこの秘密会議で決まると言われているので、正式の党大会以上に意味の大きな会議である。
秘密会議ではあるが、例年だと人事の情報が伝わってくるのだが、今年は全く情報が漏れてこない。
中国の知り合いによると、今年の情報統制は異常なほど厳しいということである。
習近平主席は独裁に近い政治の確立を狙っているが、長老たちがそれを阻止しようと水面下での争いが激化しているとのことである。
私は、ここで“独裁”という言葉を使ったが、悪い意味だけではない。
人口13億人の国の政治は、我々の想像を絶する。
「欧米流の民主主義では統治できない」ということは、習近平主席の反対派も同意見である。
路線の違いは、政治トップ一人を神格化する「皇帝政治」にするのか、集団指導体制の「貴族政治」にするのかだけである。
どちらが勝つにしろ、今後の中国の経済運営は困難を極める。
これまでの習近平主席の成功要因は、人民解放軍を抑えたことにある。
実際、人民解放軍の腐敗ぶりはひどいものであった。
兵隊の給与のピンハネから軍需物資の横流し、賄賂の横行など、旧ソ連軍と似たり寄ったりであった。
だから、正当な考えを持つ軍人たちは、習近平主席による軍の改革、腐敗した将軍たちの摘発を支持してきた。
しかし、その改革も、これ以上推し進めると軍の既得権益にまで手を突っ込むことになる。
果たして、それでも軍の忠誠心をつなぎとめておけるか、習近平主席といえども悩ましいところである。
次回は、中国の目論見と世界情勢をどう見ているかを解説したいと思う。