原発の再稼働(その3)
2021.09.30
一般の方は、放射能と放射線の違いも理解できていない方も多いと思います。
読者のみなさまには「釈迦に説法」ですが、小学生レベルの解説を少々させていただきます。
太陽から来る光には、目に見える可視光線の他に熱線である赤外線や殺菌効果のある紫外線のように見えない光線があります。
そのすべては、太陽の中で起きている核融合反応によって放射される光線です。
その意味では、太陽光のすべてが放射線といえます。
そして、太陽そのものが「放射性物質」というわけです。
この放射線を放射する能力のことを「放射能」といいます。
放射性物質は、放射を行うことで原子が崩壊あるいは融合していき、それが尽きたときが寿命です。
我々の太陽も、50億年くらいで、燃料である重水素が尽きて、やがて冷たい「死んだ星」になります。
軽水炉と呼ばれるいまの原子力発電所は、太陽とは違って重たい元素であるウランやプルトニウムが核分裂する際に失われるごく微量の質量がエネルギーに変わることを利用しています。
それだけなら問題は少ないのですが、核分裂反応の後に残る放射性廃棄物が問題なわけです。
いま、韓国や中国が騒いでいる福島第一原発の事故によって発生している汚染水は、こうした放射性廃棄物ではなく、壊れた原子炉の冷却に使われている水や湧き水が廃棄物に触れたことで放射性を帯びてしまった水です。
もちろん、その水には微量の廃棄物が含まれていますが、大半は特殊処理によって取り除かれています。
しかし、トリチウムと呼ばれる三重水素だけは、他のどんな物質とも反応しないため、完全な除去ができないのです。
ゆえに日本は「汚染処理水」と呼んでいますが、中韓両国は悪意を込めて「汚染水」と呼ぶのです。
もちろん、彼らは、上記のことを分かったうえで、日本を貶める目的で、その表現を使っているわけです。
私は、原発や放射線施設で、トリチウムを手に取ったりしていましたが、なんの障害も起きません。
さすがに飲んだりはしていませんが、飲めと言われたら飲めるでしょうね。
そう言えるのは、福島原発で仕事をしていた時期、はるかに危険な事態になんども遭遇していたからです。
これまで何度も言及したように、我々は、原発の核心部である圧力容器内で発生する放射性廃棄物の動向調査を行っていました。
危険な放射性廃棄物が格納容器の外へ漏れていないかの調査研究です。
毎日、原発内のあらゆる箇所からサンプルを集め、特種な分析器に掛け、含まれる核種とその量を確認するという作業を行っていました。
少人数のチーム員で、4基ある原発の隅々や空気中から24時間、サンプルを採取し、分析するわけですから、連日、夜中まで原発内に居続けるという過酷(というより、法的には違法)な仕事でした。
そんなある日、とんでもない分析結果が検出されました。
回収したサンプルから、最も危険な核種のひとつである「ストロンチウム90」が検出されたのです。
しかも、その場所は建屋内でしたが、格納容器の外でした。
ストロンチウム90は、体内に摂取されると骨髄に取り付く核種です。
骨髄は血液を作る場所ですから、白血病を起こす要因となります。
この検出結果が本当となったら原発が停止になりかねない事態です。
20代が中心のこのチームでは判断がつかず、東電側の責任者に報告しました。
その結果は単純なことではないので、次回に解説することとします。