トランプvs DEI(その3)

2025.08.18


しつこく書きますが、DEIはDiversity(多様性), Equity(公平性), Inclusion(包括性)の頭文字をとった言葉です。
まあ、「当たり前」のような言葉ですが、トランプ大統領は大嫌いなようで、米政府内で、この言葉を排除する姿勢が顕著になっています。
では、民間企業の対応はどうなのでしょうか。
 
この言葉が生まれた当時は「差別はいけない」という考えが広い支持を集めていたので、多くの企業は賛同の姿勢を明確にしていました。
ところが、平等姿勢に疲れてきて、DEI撤廃を発表する大企業が出てきました。
そうした動きは、トランプ大統領の就任以前にすでに動き始めていましたので、トランプが始めたことではないわけです。
ただ、大統領選と同時進行の形で企業に対するDEI廃止運動が行われ出してきたのは偶然ではなく、トランプの言動が大きく加速させたことは事実です。
 
こうした活動の旗手として米国で急速に名前を売ってきたのが、ロビー・スターバック・ニューサム(Robby Starbuck Newsom)という30代の人物です。
Wikipediaでは「アメリカの保守派の政治活動家、ミュージック・ビデオ監督、インフルエンサー」として紹介されています。
コロナの世界的流行の時、マスクとワクチンの義務化に強硬に反対したビデオで知名度を上げ、SNSでインフルエンサーとしての人気を上げていった人物です。
 
彼は、特に保守的な顧客を持つマクドナルドやウォルマートなどをターゲットにSNSでの批判や販売ボイコットなどを組み合わせた圧力をかけ、そうした企業にDEI廃止や一部撤廃に追い込むことに成功しています。
彼とトランプとの関係は直接ないとされていますが、政権の次席補佐官としてトランプとの関係の深いスティーブン・ミラーが設立した、「アメリカ・ファースト・リーガル」とは深い関係があると言われています。
 
その一方、アップルやマイクロソフト、コストコなどの比較的新しい企業は、これまで通りDEIを遵守すると宣言しています。
これらの企業は、多種多様な人種や女性を多く抱えてきたDEIの歴史が長く、顧客もグローバル的に幅広い層です。
そのメリットと社会的影響の大きさからDEI推進になっています。
今後さらに多様化するアメリカ、そして世界の中で、DEIにどう対応するかで企業の持つ価値観が評価され、その立ち位置が問われることになるのは間違いないでしょう。
 
かつてトランプは、飛行機事故が起きた時「機長が女性だから事故を起こした」と発言したことがあります。
この発言に対し、レポーターから「DEIが原因という根拠はあるのか?」と問われたとき、「自分には常識があるから」と答えました。
この答えには「白人男性が優れているのは常識だろう」というニュアンスが含まれています。
ゆえに、この発言に、他人種や女性に対する明らかな差別意識を嗅ぎ取ったという人が多いようです。
実際、共和党の中には「少数の優れた白人がアメリカを支配すべきだ」という過激な意見が根強く残っています。
白人が少数派に落ちる未来が現実に近づいてくるにつれて、そうした過激思想が表に出てきているという指摘もあります。
 
民主主義は、多数派の意見が優先されながらも、少数派の意見も保護される政治体制です。
それがもし少数派による支配になれば、世界に数多く存在する独裁国家のようになり、アメリカの民主主義は崩壊することになります。
そして、トランプのアメリカは一歩ずつ、そこに近づいているように感じます。
ちなみにトランプ政権の閣僚は2人を除き全員白人です。
(ルビオ国務長官はヒスパニック系白人です)