軍隊という組織(3)

2022.08.02

ロシア軍は、欧米の軍隊より厳格なトップダウン式の指揮系統で動いています。
これは旧ソ連時代から続く伝統であり、独裁国家の軍隊の特徴ともいえます。
そのため、下級指揮官への権限委譲が少なく、細かな戦術的な意思決定まで、上級指揮官が行っていると言われています。
ゆえに、師団長クラスの将官が、命令を最前線にいる部隊に理解・実行させるため、自ら最前線に出向き、ウクライナの狙撃兵の餌食になっているのです。
こうした上級指揮官が欠けることによって、司令部の指揮能力は極端に低下し、その傘下の部隊全体の行動が行き詰まるという事態を引き起こしています。
さらに、こうした事態における部隊の再編成能力にも欠けることが指摘されています。
 
旧ソ連時代の話ですが、実戦演習において、一個大隊がまる1日行方不明になるという事態が生じました。
後で真相が判明して、呆れた実態がわかりました。
800名の大隊を指揮する少佐が、演習のさなかに心臓発作で急死したというのです。
しかし、誰も後を引き継ぐ者がいなくて、大隊は、捜索隊に発見されるまで、そこで停止したままだったというのです。
米軍や自衛隊であったなら、大隊の下部組織である中隊の指揮官(大尉か中尉)の誰かが大隊の指揮を引き継ぎ、その後の演習を継続したであろうと思われます。
 
さらにロシア軍には、正規兵不足を補うため「徴集兵」と呼ばれる臨時に集めた兵隊が相当数います。
これら徴収兵は、教育訓練の不足で規律とプロ意識に欠けています。
指揮官が倒れたりして統制の効かなくなった部隊にいる、こうした徴集兵が店舗や民家で略奪行為や犯罪行為を働いていると報道されています。
 
これらは、独裁国家に共通した問題であり、天安門事件などにおける中国人民解放軍の兵士の行動などにも同様の行動が見られます。
弱者に対して容赦がないのが、こうした国の兵士に共通する要素です。
彼らは、人間に対する尊厳より“上からの命令”絶対の教育を徹底されているだけなのです。
その上からの命令がなくなったら・・、法律の効かない戦場では、むき出しの野望だけが突出することになるのです。