(1)事前のつばぜり合い

2015.07.06 8:00:00

報道で“トロイカ”と称されるのは、EU(European Union=欧州連合)、IMF(International Monetary Fund=国際通貨基金)、ECB(European Central Bank=欧州中央銀行)の3機関のことで、ギリシャの大口債権者である。
ギリシャは、このトロイカから、待ったなしの財政改革案を突き付けられていた。
この改革案をのめなければ、これ以上の支援には応じられない、とである。
 
それに対し、ギリシャのチプラス首相は、6月30日というギリギリの日に、ユンケルEU委員長、ラガードIMF専務理事、ドラギーECB総裁に、条件付きで受け入れるという書簡を送っていた。
その条件とは、以下のように言われている。
 
1.観光業に適用する消費税を13%にする(トロイカは23%を要求している)。
2.離島での消費税は30%の特別割引を適用する。
3.年金支給年齢を67才に引き上げるのを今からではなく、10月から適用。
4.最低額の年金受給者への特別手当(EKAS)は2019年末まで維持。
5.軍事費削減を2016年に2億ユーロ(280億円)、2017年に4億ユーロ(560億円)とする
(トロイカは2016年も4億ユーロの削減を要求している)。
 
ギリシャは、2017年までに債務返済などで290億ユーロ(4兆600億円)の資金が必要だが、自力での調達はとても無理である。
それに対し、ドイツのメルケル首相は、ギリシャのチプラス首相に以下の案を提示した。
その案とは、ギリシャが緊縮策を受け入れることを条件に、350億ユーロ(4兆9,000億円)の支援パッケージを用意し、さらに10月に債務の減免と再編を検討する用意があるという内容であった。
 
ギリシャにとっては破格ともいえる好条件であり、チプラス首相は、上述の5項目の条件が通らなくても受け入れるだろうと思われていた。
 
ところが、チプラス首相は7月2日のテレビ演説で、「国民投票では『NO』に投じることを希望する」と、
驚くような発言をした。
なぜ、チプラス首相は、トロイカの改革案を条件付きで受け入れる書簡を送る一方で、国民には「NO」を呼びかけたのであろうか?