民主主義の脆さ(1)

2022.06.01

5年半前の米国トランプ大統領の誕生から今回のウクライナ侵攻に至る過程は、民主主義の脆さを浮き彫りにしているといえます。
特に、民主主義国家群のリーダーである米国の振れ幅の大きさは、世界を不安定にさせている大きな要因となっています。
 
現在、米国ではバイデン大統領に対する失望が広範に広がっています。
私の義弟を始めとする米国の知人は民主党支持者が多いのですが、言葉の端々から強い失望感を感じます。
同時に、未だ根強いトランプ前大統領への支持の高さを危惧しています。
今年秋の中間選挙の結果によってはトランプ氏の復活が現実化する恐れがあります。
なぜなら、トランプ氏を大統領に選出した要因が一向に改善していないからです。
 
ラストベルトに代表される製造業の落ち込みや違法移民の増加は、バイデン政権になっても改善される様子が見えません。
そのことが「トランプだったら・・」という根拠のない待望論が維持される原因を作っています。
 
バイデン大統領が就任後に真っ先にやるべきことは、その待望論を払拭することでした。
しかし、アフガニスタンからの撤退という失態を犯した上に、バイデン大統領自身の失言や放言、虚言といったことが続き、統治能力に疑問を生じさせてしまいました。
そこへ、ロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったという事態が生じました。
侵攻の危機が高まった時に、バイデン大統領は早々と「軍事的対抗手段は取らない」と発言してしまいました。
その言葉だけでプーチンが侵攻を決断したとは思いませんが、何らかの影響を与えた可能性は排除できません。
 
バイデン大統領の発言は、ロシアとの間で核戦争が起きることを危惧したというより、腰が引けてしまったと受け取られています。
そのことへの後悔からか、ウクライナへの軍事支援は大方の予想を超える早さと規模です。
結果としては良い方向に向かっているといえますが、ロシア軍の予想外の弱さに助けられている側面は否定できません。
 
一方のプーチンは、一応、民主選挙で選ばれた大統領です。
少々、陰ってきたとはいえ、いまだ80%以上の支持率を得ています。
この事実は、民主主義の欠陥を証明した形になっています。
さりとて、「では、どんな政治体制がよいのか?」と問われると「民主主義・・」という答えしか浮かんできません。
熱烈な宗教信者であれば「神が・・」と言うのでしょうが、それでは答えになりません。
 
さて、次回は、もうひとつの民主主義の弱点について話をしたいと思います。