あの東芝が・・・(その2)
2017.04.17
ついに、東芝が、買収した米国の原発メーカー、ウエスティングハウスの破産宣告をしました。
同時に、東芝の今期赤字は1兆円を超えるとの発表です。
巨額すぎてピンと来ない数字です。
今号では、その原因となった米国の原子力メーカー「ウエスティングハウス」の買収について分かっていることを解説します。
そもそも、ウエスティングハウスは、1953年に世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」の原子炉を製造納入したことで知られる超優秀な会社でした。
初の原子力空母エンタープライズの原子力エンジンも、この会社の納入です。
また、原子力メーカーである以前に、重電メーカーとして高収益を上げる超優良企業でもありました。
日本でいえば、日立製作所や三菱重工業のような会社だったわけです。
原発メーカーとしても、GEとならぶ2大メーカーでした。
私が原子力プラントの設計などに携わっていた当時は「スゴイ技術」を要する先進企業とのイメージでした。
しかし、東芝が買収して子会社にした頃は、ピークを過ぎた下り坂の会社になっていました。
でも、この買収話を聞いた時、すぐに疑問を持ったのは、そのことより原子炉の型についてです。
原子炉(軽水炉)には、蒸気を使う沸騰水型と高温水を使う加圧水型の2種があることはご存知のことと思います。
米国ではGEが沸騰水型、ウエスティングハウスが加圧水型の原子炉を製造していました。
日本は、原子炉の導入を決めた時、通産省の指導により、東日本の電力会社(東電など)は沸騰水型、西日本の電力会社(関電など)は加圧水型となりました。
(北海道は例外で、「とまり原発」は加圧水型の原子炉です)
同時に、沸騰水型は日立と東芝、加圧水型は三菱と、担当する原子炉メーカーも決まりました。
もうお分かりのように、東芝とウエスティングハウスは扱う原子炉の型が違うのです。
ですから東芝は、自らの技術の進化というより、沸騰水型と加圧水型の両方の型の独占を考えたのだと思います。
実際、ウエスティングハウスが新開発したAP1000型原子炉は次世代型の優れた設計で、米国を中心に10基の受注を得、さらに4基が内定していると言われています。
受注金額は、最初の4基で2兆円、全部では8兆円に及ぶと言われています。
しかし、大きな誤算がありました。
福島原発事故の影響で工期が大幅に伸び、建設コストが大幅に上がり、採算見通しが立たなくなったのです。
さらに、ウエスティングハウス破綻の直接の原因は、本体ではなく同社が買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社の数千億円に及ぶ損失と言われてます。
報道では、このことを見抜けなかった東芝経営陣の失態となっていますが、本当にそうでしょうか。
私の知るところは少し違います。
東芝のウエスティングハウスの買収を示唆したのは通産省であり、後ろには日本政府、さらに後ろには米国政府の存在がありました。
少し考えるだけで、この意味はわかると思います。
ウエスティングハウスは、米軍の原子力艦艇のエンジンを一手に引き受けてきた会社です。
米国としては、この会社が破綻して、万が一中国の手に落ちるような悪夢は見たくないでしょう。
つまり、東芝は「カネは出すが、口は出さない」という金庫のような存在だったのです。
事実、かつて、東芝の幹部はそのようなことを口にしていました。
全ては米国の事情が優先されていたのです。
ということは、結局、日立か三菱が後を引き受けさせられるということになるのでしょうか。
しかし、この問題の背景にはもっと重大な局面があるのです。
野党は、森友問題で安倍首相の首を取ろうとやっきになっていますが、はるかに大きな東芝問題にはひと言も言及していません。
こちらのほうが重大な問題なのですが・・